2025年6月18日

(院長の徒然コラム)

はじめに
またまたこんにちは。
またまた別の新しい情報から、歯科コラムを書いています。もはや趣味ですね。
今回ご紹介するのは、DENTAL TRIBUNEからです。
Periodontal considerations in aligner treatment
という記事なのですが、例の如く英語ですが、面白い内容なので見てみてください。
現在、歯科矯正の分野では従来の固定式ブラケット装置に代わり、透明なアライナー(マウスピース型矯正装置)が急速に普及しています。
1950年代にDr Harold Keslingによって提唱されたアライナー療法は、その後の技術革新とマーケティング戦略により、世界中の患者にとって魅力的な治療選択肢となっています。
本コラムでは、アライナーの歴史や利点、特に歯周健康との関係性について解説していきたいと思う。ともに、エビデンスに基づく実務的なポイントも紹介します。
アライナーの進化と現状
アライナー療法は、もともと成人患者のニーズに応える目的で始まりました。
従来の固定式装置と比べて、外見上の目立ちにくさや取り外し可能性、口腔衛生の管理が従来より大きな特徴です。
特に、2000年代以降のデジタル技術の進歩により、治療計画のコンピューター支援や3Dプリンティングの導入によって、精度や治療期間の短縮も実現しています。
新型アライナーは、患者個々の歯列モデルをもとにカスタマイズされ、従来の方法よりも緻密な歯の動きを促進しています。
これにより、疼痛や不快感の軽減、口腔内の傷害リスクの低減も報告されています。
アライナー矯正と歯周病の相関性
歯科医師にとって重要な課題の一つは、矯正治療中の歯周組織の健康維持です。
固定式ブラケットは着脱が困難で、歯垢や歯石の付着リスクが高くなるため、歯周炎の進行や歯肉退縮のリスクが増えることが知られています。
一方、アライナーは取り外しができるため、口腔衛生の管理が容易で、歯周病の予防や管理に適しています。
実際の研究でも、アライナー治療を受ける患者は、歯肉の炎症や出血、歯周ポケットの深さなどの歯周指標が、固定式装置を用いた場合よりも優れていると報告されています。
また、アライナーは歯垢蓄積の原因となる装置の出っ張りが少なく、口腔内の傷害リスクも低減されることから、特に歯周病の既往のある患者や歯周病が起こりやすい方にもうってつけです。
さらに、歯周基本治療やメインテナンスと併用することにより、歯周組織の炎症をコントロールしながら矯正治療を進めることも可能です。
これは、矯正治療が歯周組織に与える生物学的影響について多くの研究が示しているところであり、適切な評価と定期的なメインテナンスが矯正治療時には必須と言えます。
矯正治療に伴う歯周リスクとその対策
矯正治療中には、歯肉の退縮や歯肉過形成、歯根吸収といったリスクが存在します。
特に、治療期間が長期化する場合や、既存の歯周疾患が十分に安定していない場合には注意が必要です。
したがって、治療前の歯周状態の評価と、必要に応じた歯周治療は不可欠です。
また、アライナー使用時の適切な衛生管理指導も重要です。
歯磨きやフロス、 歯間ブラシの使用などを徹底することで、歯垢の蓄積や炎症の進行を防ぎます。
アライナーの装着時間やフィット状態の確認も定期的に行い、口腔内の健康を維持しながら矯正を進めることが望ましいです。
アライナー治療と治療中の口腔内環境の質向上
患者の満足度や生活の質(QOL)の観点からも、アライナーは高く評価されています。
従来の金属ブラケットと比較し、痛みや口腔内の摩擦・傷害が少なく、会話や食事にも支障をきたしにくいとされています。
また、装着時の見た目向上から、精神的・社会的な面でも生活の質の向上に寄与しています。
一方で、アライナーの不適切な使用や自己管理の甘さから、治療の遅れや歯周組織への悪影響も指摘されています。
そのため、医療従事者は患者への十分な教育と治療計画の適切な監督が必要となっています。
終わりに
アライナーは、口腔衛生の維持と歯周健康の管理に優れた役割を果たしながら、審美性と快適性を兼ね備えた矯正治療法として最盛期を迎えているといっても過言ではありません。
ただし、すべての患者に適応できるわけではなく、個々の口腔状態やリスクファクターに基づいた適切な評価とケアが不可欠です。
今後の研究では、アライナーの生物学的安全性、長期的な歯周組織への影響、そして高度なデジタル技術を活用した治療計画の最適化など、多角的な視点からのエビデンス蓄積が期待されます。
我々も、患者さんのニーズと予後を考慮しつつ、最も適した矯正法を選択・指導していきたいと思います。