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光免疫療法(アルミノックス治療)という第5の口腔癌治療:口腔がん治療における新たなる一歩

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2025年12月02日

光免疫療法(アルミノックス治療)という第5の口腔癌治療:口腔がん治療における新たなる一歩

(院長の徒然コラム)

はじめに

こんばんは。歯科コラムのお時間です。

皆さんは口腔がんという言葉を聞いたことがありますか?

口腔がんは、口の中、例えば舌、歯茎、唇、頬の内側、口蓋などに発生するがんの一種です。

主なリスク因子には、喫煙、過度のアルコール摂取、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、口腔内の慢性的な刺激(例:不適切な義歯や他の補綴物など)などがあります。

症状としては、口内の潰瘍、しこり、持続する喉の痛み、口内の異常な色や腫れ、嚥下困難などが見られ、早期発見が重要で、従来の治療法には外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法などがあります。

(前癌病変なども歯科医師には周知されており、定期的な口腔検診で見つかることも多いのです。)

日本における口腔がんの罹患数は著しく増加しており、2000年の約9,500人から2020年には約22,000人に達しています。

これに伴い、口腔がんの治療法も進化を遂げてきました。中でも、光免疫療法(アルミノックス治療)は、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法に続く「第5のがん治療」として注目されています。

光免疫療法とは

光免疫療法は、がん細胞の増殖に関与するたんぱく質であるEGFRに結合するセツキシマブという抗体に、光感受性物質IR700を組み合わせた薬剤アキャルックス(楽天メディカルが開発した世界初の光免疫療法もといアルミノックス治療に用いられる抗悪性腫瘍剤のことです)を使用します。

がん細胞にこの薬剤を点滴投与した後、専用のレーザー照射装置を用いて近赤外光を照射し、がん細胞の細胞膜を破壊します。

この治療法は、従来の手術や放射線治療に代わる新たな選択肢として、多くの患者にとって希望となり得ます。

2021年には日本で保険適用となり、以降全国の医療機関で導入が進んでいます。

今年の11/13に金大附属病院で行われた口腔癌手術もその一例であり、同病院で行われた光免疫療法は、石川県内で初めて実施されました。

この治療法は、負担が少なく、侵襲性が低いという特徴があります。

光免疫療法の患者への利点

光免疫療法の最大の利点は、侵襲性が低く、メスを使わずにがん細胞をピンポイントで破壊することができる点です。

例えば、金大附属病院で治療を受けた80代の女性は、進行した舌がんに対して光免疫療法を選択しました。

従来ならば10時間以上かかる外科手術や再建手術に伴う体への負担を、この治療では大幅に軽減する可能性があります。

治療の流れは、まず点滴で薬剤を体内に投与し、次にがん細胞にレーザー光を照射する形で進行します。

この新しい治療法により、従来の手術や放射線治療では治らなかったり、組織を切除しなければならない患者に新たな希望を与えることができるかもしれないのです。

光免疫療法の応用可能性と今後の展望

光免疫療法は現在頭頸部がんに特化していますが、理論的には他の臓器にも適用可能です。

食道がんや子宮頚がん、肝転移を有するがんなどに対する治験も進行中であり、さらなる応用が期待されています。

そのためには、EGFR以外にも特異的に結合する新たな薬剤の開発や、より焦点距離を短くするデバイスの改良が必要です。

既にCD25というタンパク質に特異的に結合する薬剤が開発され、肝転移を有する固形がんに対する光免疫療法の治験が進められています。

このような新薬の開発は、光免疫療法の適応疾患を広げる上で重要な役割を果たすでしょう。

光免疫療法の選択基準

光免疫療法は、現在のところ切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対してのみ使用可能ですが、化学治療や放射線療法等の標準的な治療が可能な場合にはそちらが優先されています。

今後、患者の病状と全身状態に応じて既存の治療を含む最適な選択肢を提案することが求められます。

光免疫療法の利点は、特に侵襲性が低く、治療後の回復が早い点にあります。

しかし、他の治療法に比べて根治性が低いとの指摘もあり、患者の生活の質(QOL)を考慮した治療選択が重要です。

「生きてなんぼ」という考えも大切ですが、患者がその人らしく豊かな時間を過ごせるために、最適な治療を常に考慮し続けることが求められています。

光免疫療法と他の治療法(外科手術、放射線治療、化学療法)の比較

①侵襲性

⚫︎光免疫療法

侵襲性が低く、メスを使わないため患者への負担が少ない。表面または局所的ながん細胞に直接作用する。

⚫︎外科手術

体に大きな切開を必要とし、体への負担が大きい。感染、出血、合併症のリスクがある。

⚫︎放射線治療

高い精度でがん細胞を照射できるが、周辺の正常組織にも影響を及ぼす可能性がある。

治療中および治療後に副作用が見られることがある。

⚫︎化学療法

全身に影響を及ぼすため、体全体への負担が大きい。副作用(吐き気、脱毛、免疫力の低下など)が多い。

②治療効果

⚫︎光免疫療法

特定のがん細胞に特化しており、照射によって高い局所効果が期待できる。

しかし、根治性は従来の治療法と比較して低いとされる。

⚫︎外科手術

がんの切除が可能な場合、根治が期待できるため、特に早期がんにおいて高い治療効果がある。

⚫︎放射線治療

局所的ながんに対しては効果的であり、高い治療効果が期待されるが、再発のリスクも存在すり。

⚫︎化学療法

全身に効果をもたらすため、転移がある場合でも有効であるが、完全に治癒するケースは少ない。

③副作用

⚫︎光免疫療法

副作用は比較的軽微で、光線過敏症などが主な懸念。ただし、初期の治療ケアが必要となる。

⚫︎外科手術

手術後の回復期間が長く、感染や痛み、機能障害などのリスクが存在する。

⚫︎放射線治療

照射部位に応じた皮膚の炎症、疲労感、嚥下・食事に関する問題が発生することがある。

⚫︎化学療法

吐き気、脱毛、免疫力の低下などが一般的な副作用で、治療が進むにつれて副作用が蓄積される傾向がある。

④治療の適応

⚫︎光免疫療法

切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに特化している。今後の薬剤開発により他のがんへの適用が期待される。

⚫︎外科手術

初期段階のがんに対しては最も効果的で、がんの大きさや発生地点によって適応が異なる。

⚫︎放射線治療

局所的にがんを制御するため、多くのがんに適用されるが、治療歴に応じた選択が必要になることもある。

⚫︎化学療法

転移のあるがんや再発が見込まれる場合に適用され、他の治療法との併用が一般的。

光免疫療法の主な副作用

①痛みと腫れ

患者の多くがレーザー光を当てた当日や翌日に痛みを感じることがありますが、通常は数日以内に回復します。

また、レーザー光照射部位が腫れることがあり、特に頸動脈に腫瘍が浸潤している場合は治療選択が制限されることがあります。

②光線過敏症

光免疫療法に使用する薬剤は光に反応するため、治療後約1週間は直射日光を遮った部屋で過ごす必要があります。

退院後も4週間ほどは日光に当たらないようにするなどの光曝露対策が必要という意見もあります。

光免疫療法における有害事象

いくつか薬剤性の有害事象やレーザー照射による有害事象が報告されています。 

アキャルックス®(セッキシマブを含む薬剤)に関連する薬剤の副作用としては、以下が挙げられます

①薬剤過敏反応

インフュージョンリアクション(投与に伴う過敏反応)に留意する必要があります。

②レーザー照射による副作用

⚫︎疼痛

約66%で疼痛関連事象が見られ、通常数日以内に回復します。

⚫︎浮腫

約55%で浮腫が発生し、これに対して緊急処置が必要な重篤なものは7.6%程度です。

浮腫は舌、咽頭、喉頭など様々な部位に現れる可能性があり、レーザー照射部位とは直接の関連がないことが多いです。

浮腫は術当日から翌日にかけて発生することが多いため、この期間中は気道管理が重要です。気管内挿管を行いながら一晩の気道管理を行うか、必要に応じて予防的な気管切開術を施行することが推奨されています。

患者さんの声と医療現場の反響

光免疫療法を受けた患者からは、新しい治療法による希望や安心感が高まったとの声が多く聞かれています。

また、副作用が少なく手術後の痛みも、従来より早く引くため、好意的な意見が多いです。

医療従事者も、患者にとっての最適な治療を提供するために日々努力しており、光免疫療法の導入は医療現場に新たな選択肢をもたらしました。

この治療法がもたらす可能性は、単に新たな治療法を選ぶことにとどまらず、患者一人ひとりの生き方や生活の質にまで影響を及ぼしています。

新治療の未来に向けての展望

今後、光免疫療法はさらに発展し、より多くの患者に恩恵をもたらすことが期待されています。

研究の進展により、新しい標的や薬剤が開発されていくことで、光免疫療法の適応範囲が広がることでしょう。

また、国際共同の臨床試験が進んでいることもあり、他の臓器における応用の可能性が大いに期待されます。

デバイスの改良や新薬の開発が進むことで、がん治療の選択肢はますます広がり、患者にとっての利便性や治療効果の向上が図られるでしょう。

医療従事者と研究者が協力し合い、新しい治療法を確立することで、より多くの患者が光免疫療法の恩恵を受けられる時代が来ることを願っています。

おわりに

光免疫療法は、口腔がんやその他のがんに対する新たな治療法として大きな可能性を秘めています。

治療の進展や新たな薬剤の開発によって、この革新的な治療法がさらなる成果を上げ、多くの患者にとっての希望となることが期待されます。

医療現場での情報共有や、患者ひとりひとりに最適な治療を提案する努力が今後も求められるでしょう。

この新しい治療法の展望は、がん治療における希望の光であり、多くの患者の未来を明るく照らす可能性を秘めています。

今後の治療の発展に注目していきましょう。

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