2024年12月13日
(院長の徒然ブログ)
はじめに
虫歯は、私たちの生活において非常に一般的な口腔内の感染症です。
おそらく多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
ですが、その影響は単なる口腔内の不快感にとどまらず、時には命に関わる深刻な事態を引き起こすことがあります。
今回のコラムでは、虫歯が原因で亡くなった歴史上の人物や、虫歯が引き起こす合併症について詳しく見ていきましょう。
歴史上の人物と虫歯
歴史を振り返ると、虫歯が原因で亡くなった著名な人物がいくつかいます。
例えば、アメリカの第26代大統領セオドア・ルーズベルトは、晩年に虫歯や歯周病に悩まされていました。
彼は虫歯が悪化し、最終的には心臓病を引き起こす要因となったとされています。
虫歯を放置したため、口腔内の菌が全身に回ってしまい合併症を引き起こすという、口腔内の健康が全身の健康に与える影響を示す一例です。
また、19世紀のイギリスの作家チャールズ・ディケンズも、虫歯による健康問題に悩まされていました。
彼の作品には、当時の歯科医療の未発達さや、虫歯がもたらす苦痛が描かれています。
虫歯が引き起こす合併症は、彼の健康を蝕み、最終的には彼の死に影響を与えたと言われています。
日本人の虫歯が原因で死に至った例を紹介しましょう。
日本人で虫歯が原因で亡くなったとされる有名人には、新撰組の2番隊組長で有名な永倉新八などがいます。
永倉は、長期間放置した2本の虫歯を抜去した後に感染症を起こし、敗血症で亡くなりました。
新撰組として幕末を駆け抜けた勇士も、放置した虫歯には勝てなかったのです。
江戸時代の徳川幕府将軍、徳川家茂も、虫歯が遠因となり亡くなりました。
12歳で史上最年少の将軍となり、優れた統率力と指導力、かつ思いやりのある将来を期待された人物でした。
しかし、甘い物が大好きで、食べ過ぎてビタミンB1が不足し、脚気にかかり心不全で亡くなりました。
本来脚気は、当時食べられていた玄米や穀物を食べれば、治る可能性は高かったのですが、実は家茂は虫歯によって食べられず、体力も回復せず、満足に食事ができなかったため、病状は悪化していったと言われています。
江戸時代には虫歯が死因の上位であったと言わてており、満足に歯科治療が受けられない時代では、一旦虫歯が悪化すると死に至るケースも少なくなかったのです。
虫歯と合併症
虫歯は、ミュータンス菌などの口腔内の細菌感染によって引き起こされる病気です。
虫歯が進行すると、歯の神経や骨などの周囲組織に感染が広がり、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
以下に、虫歯が引き起こす主な合併症とそのリスクについて詳しく説明します。
①敗血症
虫歯が進行すると、感染が血流に入り込み、敗血症を引き起こすことがあります。
顎には太い大きな血管が通っており、虫歯により細菌が骨まで到達し、そこから血管に入り込むことがあるのです。
敗血症は、全身に感染が広がる危険な状態であり、早期の治療がなければ致命的になることがあります。
特に、糖尿病免疫力が低下している人や高齢者は、虫歯からの感染によって敗血症にかかるリスクが高まります。
しかもそういった免疫力の低下した方は虫歯が骨に波及する速度も早いのです。
②心筋梗塞
口腔内の感染は、心臓にも影響を及ぼすことがあります。
虫歯や歯周病によって引き起こされる炎症は、血管に影響を与え、動脈硬化を進行させる要因となります。
これにより、心筋梗塞のリスクが高まることが研究で示されています。
特に、心疾患の既往歴がある人は、虫歯や歯周病の治療を怠ることで心筋梗塞のリスクが増加する可能性があります。
③脳梗塞
虫歯や歯周病による炎症は、脳にも影響を及ぼすことがあります。
前述の通り、口腔内の細菌が血流に乗ってしまうと、細菌が脳に到達して、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
特に、高血圧や糖尿病などのリスク因子を持つ人は、虫歯による感染が脳梗塞の引き金になることがあります。
虫歯の影響を軽視しない
虫歯は、単なる口腔内の問題として軽視されがちですが、その影響は全身の健康に及ぶことがあります。
残念ながら今の日本では、虫歯を軽視する人が多く、歯の穴が空いたり、詰め物が外れてもそのままにするケースが多々見受けられます。
虫歯が進行し合併症を引き起こすと、命に関わる事態に発展する可能性があります。
したがって、今後の日本の歯科医療を改革し、定期的な歯科検診や適切な口腔ケア、そして虫歯や歯周病を放置させないという取り組みがが重要なのです。
終わりに
虫歯は、私たちの健康に深刻な影響を与える可能性がある病気です。
歴史上の人物たちが虫歯によって健康を害し、最終的には命を落とすこともあったことからも、その危険性は明らかです。
虫歯が引き起こす合併症、特に敗血症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを理解し、早めの口腔内疾患の治療と予防を行うことが重要です。
口腔内の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながります。
定期的な歯科受診を怠らず、虫歯の早期発見・治療を心がけましょう。