2025年11月19日


はじめに
自分の歯を白くするために、歯科医院で作ったマウスピースを使って自宅で行う「ホームホワイトニング」は、安全で効果的な方法のひとつです。
しかし、ホワイトニング薬剤の「濃度が高ければより白くなる」と誤解している方が時々いらっしゃいます。ここでは、正しい知識と注意点をわかりやすく説明します。
1. ホームホワイトニングで使う薬剤とは?
一般的にホームホワイトニングで使われるのは過酸化尿素や過酸化水素を含む薬剤です。
多くの歯科医院では、過酸化水素換算でおおむね10%程度に相当する濃度の製剤を用いることが多いです(製剤や国の規制により異なります)。
2. 濃度が高いほど白くなる?
結論から言うと、「速さ」は上がるが「到達する白さの限界」は同じです。
要するに重要なポイントは、薬剤の濃度が高いと「白くなるまでの時間(速度)」は速くなる傾向があるものの、最終的に達成できる「白さの限界(最大効果)」はほぼ同じであることが多い、という点です。
複数の臨床研究やレビューでも、低濃度(家庭用)と中濃度(家庭用)と高濃度(オフィス用)で最終的な色調変化に大きな差がないことが示されています。
つまり、急いで高濃度を使って短期間で白くしようとしても、時間をかけて低濃度で行う方法と最終的な明度に大きな差は出ない場合が多いのです。
3. 濃度が高いリスク――知覚過敏や軟組織の刺激
濃度が高い薬剤は、歯や歯周組織に対する刺激性が増します。
代表的な副作用は知覚過敏(冷たいものがしみるなど)で、濃度と知覚過敏の発生率や重症度は相関することが報告されています。
また、歯肉(歯ぐき)や口唇などの軟組織に薬剤が接触すると、炎症や痛みを起こすことがあります。
これらの副作用は患者さんの快適さや継続性に影響し、適切な管理が必要です。
4. 安全に、効果的に行うためのポイント
①事前の歯科受診を必ず行う
むし歯や歯周病がある場合は先に治療する必要があります。詰め物・被せ物の色は変わらないため説明が必要です。
②歯科で適切なマウスピースを作る
密閉性の高いトレーは薬剤の無駄や歯肉への接触を減らします。
③指示どおりの濃度と時間を守る
歯科医師の処方・説明に従いましょう。自己判断で高濃度製剤や長時間の使用を行うことは避けてください。
④痛みや違和感が出たら早めに相談を
知覚過敏が出た場合、使用頻度の減少、使用時間の短縮、あるいは中止といった対応が有効です。フッ化物塗布や知覚過敏用の薬剤で症状を軽減できます。
⑤無闇に高濃度のホワイトニング剤を要求しない
「もっと高濃度のホワイトニング剤を使ってくれ」という声をあげる患者さんも時折いらっしゃいます。
もちろん、例えば1週間後に晴れの舞台を控えているなどの効果を急ぐ事情があるなら、濃度をあげることも考慮した方がいいでしょう。
もし急いでないのに要求する方は、少し考えてみてください。
「あなたは大して痛くもない症状の際に副作用覚悟で強力な痛み止めを飲みますか?」
⑥継続的なケア
ホワイトニング後も色戻り(後戻り)はあり得ます。定期的なクリーニングや色のメンテナンスを歯科医と相談しましょう。
終わりに
「濃度が高ければより白くなる」というのは速度という意味では部分的に正しいですが、最終的な白さの限界は同等であることが多いのです。
ホワイトニング剤の濃度は上がれば知覚過敏や軟組織刺激など副作用のリスクを上げることになります。
安全で満足のいくホワイトニングのためには、歯科医師の指導を守り、適切な濃度と使用方法で行うことが大切なのです。
ホワイトニングは見た目の改善だけでなく、生活の満足度を上げる治療です。疑問や心配があれば、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。
患者さんの背景に応じて医院でお一人ずつ最適な方法をご提案します。
