2026年1月11日

(院長の徒然コラム)

はじめに
あけましておめでとうございます。
皆さんは「口唇ヘルペス」という言葉を耳にしたことはありますか?
私達の多くが一度は罹患したことのある、実はとても一般的な病気です。
原因は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)というウイルスで、このウイルスは幼少期に感染し、神経に潜伏してしまいますが、ストレスや体調不良で再発します。
(三叉神経の神経節に潜み、普段は免疫システムによって活動が抑えられています。)
今回のコラムでは、口唇ヘルペスについて詳しく、わかりやすく解説していきます。
口唇ヘルペスとは
まず口唇ヘルペスの特徴は、小さな水ぶくれができやすいことです。
最初の頃は、唇や周囲にチクチクとした違和感やヒリヒリ感が出現します。
その後、水ぶくれができて、破れると痛みを伴います。この状態は通常、1〜2週間で回復しますが、初感染の場合は発熱やリンパ腺の腫れを伴うこともあります。
どうやって感染するの?
口唇ヘルペスは非常に感染力が強いです。
水ぶくれが破れた時にウイルスが周囲に広がるため、粘膜接触や共用の食器、タオルを通じて感染することがあります。
特に子どもや免疫力が低下している人にとっては注意が必要です。
症状の経過の流れと潜伏期間
ヘルペスウイルスは感染すると、最初の症状が出るまで数日かかることがあります。
以下に段階を解説していきますね。
①前触れ期(感染後1〜2日間)
唇や周囲にチクチク感やヒリヒリ感がする。
②水ぶくれ形成(感染後1〜3日間)
小さな水ぶくれがいくつか群状で出現する。
③破れて潰瘍(感染後1〜3日間)
水ぶくれ後に刺激や症状経過で水疱が破れ、痛みが増す。
④かさぶた形成(感染後1〜2週間)
かさぶたになり、最終的に治癒します。
診断方法
口唇ヘルペスは、視診での診断がほとんどです。
症状(水ぶくれ、赤み、痛み、かゆみ)を確認し、既往歴や前兆(ピリピリ感など)から診断します。
どうしても特定できない場合に以下の診断法も用いることがあります。
⚫︎PCR検査
綿棒で水疱内や潰瘍部を拭い、ポリメラーゼ連鎖反応によりサンプルを培養・検査感度・特異度が高く、ウイルスの存在が分かります。
⚫︎ヘルペス抗原検査((イムノクロマト法)
これも水疱から綿棒で浸出液を採取し、専用キットでウイルス抗原を検出します。
10分〜15分程度で結果が出る迅速な方法で、診断精度も高いです。
歯科での口唇ヘルペスの治療法
口唇ヘルペスに対する治療は、早期に行うほど効果的です。
①抗ウイルス薬の外用
ヘルペス部に直接軟膏薬を塗る方法です。
⚫︎アシクロビル(商品名:ゾビラックス軟膏、アクチビア軟膏): DNAポリメラーゼ阻害
⚫︎ ビダラビン(商品名:アラセナA軟膏、ビダラビン軟膏):DNAポリメラーゼ阻害
※両者の違い
アシクロビルは感染細胞内でリン酸化されます。
その構造が、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)という核酸構成成分に似ているので、ウイルスがDNA合成の際にアシクロビルを間違えて取り込むことで効果を発揮します。
ビダラビンはDNAポリメラーゼを阻害しますが、正常細胞内でもリン酸化してしまいます。
ゾビラックス軟膏はヘルぺスのみが適応ですが、アラセナ軟膏は単純疱疹と帯状疱疹が適応となっています。
またアシクロビルに耐性のあるウイルスにビダラビンが有効なケースが多いです。
ただし、ビダラビンは塗布部の非感染細胞にまで影響を及ぼす(粘膜皮膚へのダメージが多少ある。)ので、選択性という意味ではアシクロビルに軍配が上がりますね。
②抗ウイルス薬の内服
内服薬を飲んで、体内ウイルスの数を減らす方法です。
⚫︎バラシクロビル(商品名:バルトレックス錠)
→ DNAポリメラーゼ阻害
⚫︎ファムシクロビル(商品名:ファムビル錠)
(ペンシクロビルはファムシクロビルの前駆体:プロドラッグ)
→ DNAポリメラーゼ阻害
⚫︎アシクロビル(商品名:ゾビラックス錠)
→ DNAポリメラーゼ阻害
③支持療法
そもそも免疫が落ちてる場合が多いので、健康維持のために栄養のある食事を心がけましょう。
口唇ヘルペスの予防法
再発を防ぐためには、日常生活の中でできる対策をいくつか取り入れることが非常に重要です。ここではその予防のポイントを説明します。
これらのポイントを心がけて、ヘルペスが再発しにくい生活を目指しましょう。
①ストレス管理
ストレスは多くの疾病の原因であり、口唇ヘルペスの再発もその一つです。
リラックスする時間を作る、趣味を楽しむ、友人と過ごすなど、自分を癒す方法を見つけることが大切です。
また、運動やヨガ、瞑想などのストレス解消法を取り入れると良いでしょう。
②睡眠と栄養
十分な睡眠と栄養の摂取は、免疫力を高め再発を防ぐために欠かせません。
毎日規則正しい生活を心がけ、栄養バランスの取れた食事を摂ることが重要です。
特に、ビタミンCやビタミンE、亜鉛を含む食品は免疫力を向上させるので意識して取り入れましょう。
③UV対策
日焼けは口唇ヘルペスの再発を引き起こす要因の一つです。
特に夏場などの日差しの強い時期は、UVカット効果のあるクリームを使うことをおすすめします。
外出時には帽子やサングラスで顔を保護し、日焼け防止に努めましょう。
④体調管理
風邪やインフルエンザのような感染症にかかると、ヘルペスが再発しやすくなります。
冷えや体力の低下に注意し、体調を整えることが大切です。
手洗いうがいを徹底し、必要に応じてワクチン接種を検討しましょう。
感染症後なども免疫力が落ちているので注意が必要です。
⑤感染予防
口唇ヘルペスは非常に感染力が強い病気です。
感染を防ぐためには、口唇ヘルペスが出ているときは粘膜接触や食器の共用を避け、直接接触を控えることが重要です。
また、症状が出ていない時でも感染している可能性がありますので、無症状の時でも注意が必要です。
⑥抗ウイルス薬の長期投与
免疫不全などで再発が頻繁に起こる方は、医師と相談のうえ、抗ウイルス薬の長期的な抑制療法を考慮することもあります。
これにより、再発頻度を減少させることが期待できるため、医療機関と十分に相談してみてください。
口腔内のケアを忘れずに
口唇ヘルペスが発症した際には、口腔内も気をつけましょう。特に、潰瘍がある状態での口腔ケアは工夫が必要です。
ヘルペスがあると口の中が痛むため、普通の歯磨きが辛い場合があります。
やさしいブラシや柔らかい口腔ケア用具を使って、優しく磨きましょう。
過度な刺激を避けるため、刺激の強い歯磨き粉は避けるといいでしょう。
ヘルペスと気づかずやってしまいがちなこと
口唇ヘルペスを口内炎と勘違いして、アフタゾロンなどの口内炎用のステロイド軟膏を塗ってらっしゃる方が続出しています。
ヘルペスの症状が出ているときにステロイド系の薬を使用することは避けてください。感染を悪化させる恐れがあります。
よくある質問(Q&A形式)
Q1: ヘルペスがあるときはどのくらいの段階で治療を受けることが推奨されますか?
A1:一般的には、本格的な水ぶくれが出来始めたら、できるだけ早く医療機関へ行くことが推奨されます。
治療を早く開始することで、症状の軽減や治癒が早まることが多いです。
Q2: ステロイドクリームを使っても大丈夫ですか?
A2:ヘルペスが発症している場合、ステロイドは使用しないでください。
ステロイド系の薬は、局所の免疫を下げウイルスの増殖を助けてしまう可能性があるため、逆に症状を悪化させることがあります。
Q3: 再発を頻繁に繰り返すけれど、どうしたら良い?
A3:再発が頻発する場合は、医師に相談して抗ウイルス薬の長期的な使用を検討することが有効です。
また、ストレス管理や生活習慣の見直しも重要です。生活習慣を見直して予防を実践していきましょう。
終わりに
口唇ヘルペスは、多くの人が経験する一般的な病気ですが、正しい知識と対策を知っていれば、症状の管理や再発の予防は十分に可能です。
万が一症状が現れた場合には早めの対処がカギとなります。ストレスや体調を整え、免疫を高める生活を心がけ、再発のリスクを可能な限り低く抑えていきましょう。
そして症状が出た際には、自己判断せずに医療機関へ相談することが大切です。
最後に繰り返しますが、ヘルペス感染時には「口唇ヘルペス感染時は、口内炎と思ってステロイドを使用しないように」ということを必ず覚えておいてください。自己判断での治療は避け、適切な医療機関を受診してください。
