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歯の白い斑点(ホワイトスポット)を消そう:Icon®を用いたエナメルマイクロアブレーション治療

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2025年11月21日

歯の白い斑点(ホワイトスポット)を消そう:Icon®を用いたエナメルマイクロアブレーション治療

(院長の徒然ブログ)

はじめに

歯面に現れる白色の斑点、いわゆるホワイトスポットは、多くの患者さんが気にする審美的問題の一つです。

エナメルの脱灰による白濁や歯の発育異常、フッ素症や矯正治療後にできた白斑など、多彩な原因が存在します。

特に初期むし歯や、歯のエナメル質の微細な構造変化は、自覚症状が乏しく気づいたら出来ていて気になってしまっているという方も少なくありません。

従来はエナメルスポットを含む深層の虫歯やエナメル質の変色には、(経過観察しないケースでは)当該部のエナメル質の除去や充填、ラミネートベニアなどの侵襲的治療が必要でした。

一方、近年の低侵襲な技術革新により、エナメルの表層を削らずに白斑を改善する方法が模索されてきました。

その代表例の一つが、Icon®(アイコン)を用いたエナメルマイクロアブレーションに類似する治療法です。

本コラムでは、エナメルスポットについての解説と、その治療選択肢としてのIcon®の原理とエビデンス、臨床的適応と注意点について詳述します。

白斑・ホワイトスポットの定義

歯のエナメル質における表層の脱灰による微細な孔洞や、不規則な屈折によって白く見える局所的な変色部が白斑やホワイトスポットです。

本来エナメル質は均一にエナメル小柱という構造体が整列していますが、この緻密な構造不均一となり、正常歯質と比較して明らかに光の屈折や散乱が増加し、一見目立ちます。

原因の分類

①初期虫歯(エナメル質表層下脱灰)

乳歯・永久歯ともに、プラーク中の酸産生菌による酸でのエナメル質の脱灰がおもな原因です。

歯面のpH低下と脱灰が繰り返されると、微細な孔洞が形成され、反射光の散乱で白濁として見えるのです。

②フッ素症・過剰フッ素摂取

小児期の過剰フッ化物摂取により、エナメル質の発育異常が起きることがあります。

この場合、小さな点状の変色や白濁が見られることがあります。

ただし、日本では飲料水にフッ素が含まれていないため、症例は多くありません。

③歯の発育異常(先天性遺伝なども含む)

遺伝的なエナメル質形成不全や、胎児・新生児期の内因性要因が原因となることもあります。

エナメル質の硬度や微細構造の乱れにより白斑が生じることがあります。

④矯正装置後の白斑(矯正関連ホワイトスポット)

 矯正器具付着部のプラーク滞留が原因で起こります。

ブラケットなどの清掃困難部に局所的なプラーク蓄積が起こり、表層脱灰が生じます。

発症要因とリスクファクター

ホワイトスポットの発症にはさまざまな要因が関与しています。

これらの要因を理解し、リスクをコントロールすることが予防と治療において重要です。

①口腔衛生の不良とプラーク蓄積

最も一般的なリスク因子は口腔衛生の不良です。

プラーク内の酸産生菌(主にミュータンス菌)は、糖質摂取とともに酸を産生し、エナメル表層のpHを酸性にします。

その結果、エナメル表面の微細な孔洞が形成され、脱灰がおこります。

特に夜間や糖分を摂取後には脱灰のリスクが高まってしまいます。

②糖質摂取と食習慣

高頻度・高甘味度の糖質摂取は、口腔内の酸産生を促進し、脱灰と再石灰化のバランスを崩してしまいます。

特に間食や夜間の飲料摂取は、脱灰リスクを上昇させてしまいます。

③フッ素の過剰摂取・欠乏

フッ素はエナメルの脱灰抑制と促進に寄与しますが、過剰の場合はフッ素沈着(フルオロシス)を引き起こします。

一方、フッ素不足は、歯の抵抗性を低下させて脱灰しやすくなってしまいます。

④歯質の遺伝的素因

エナメル質の微細構造は遺伝的背景によって異なります。

形成不良やエナメル質形成異常症(例:遺伝性エナメル質形成不全)は、基礎的な歯質の脆弱性とともにホワイトスポットのリスクを高めてしまいます。

⑤歯の発育過程の異常

胎児や幼少期におけるエナメル質の形成不良や胎内感染・薬剤曝露による発育異常も原因となります。

⑥矯正治療後の局所要因

ブラケットやワイヤーなどの矯正装置による局所的プラーク滞留とそのプラークによる酸性環境の形成により、局所的な脱灰が生じやすくなります。

特にブラケット周囲の歯面の清掃不良がホワイトスポットの発現リスクを高めることが2018年のLópezらの研究で言われています。

⚫︎リスクファクターについてのまとめ

これらのリスク要因を把握し、患者教育や口腔衛生指導を徹底することが、エナメルスポットの予防と早期治療につながります。

後天的なものについては、適切な口腔ケアが脱灰を防ぎ、ホワイトスポットの発症予防に最も有効な手段です。

診断と評価

エナメルスポットの適切な診断と評価は、治療方針を決定する上で不可欠です。

画像診断や肉眼では判断しにくい微細構造の異常も正確に把握し、原因と範囲を見極める必要があります。

①視診と触診

最も基本的な診断手法は肉眼的観察です。白斑は光の屈折や散乱により、色調は乳白色や淡黄色(エナメル質が薄い場合は奥の象牙質の色が出てくるため)を呈します。

境界は比較的明瞭で、歯の色調や透明感、表面の状態(ツヤや摩耗)も合わせて観察します。

触診は必要に応じて行いますが、ほとんどの場合肉眼所見だけで初期の白斑を識別可能です。

②口腔環境と脱灰の程度評価

酸やプラークの蓄積が原因の場合、口腔内のpH評価や口腔の衛生状態も評価するケースがあります。

歯の粗造感や清掃状態、歯肉の健康状態を併せて調査し、再発リスクを見極めます。

③その他画像診断など

⚫︎X線診断

初期むし歯やエナメル質の薄化はX線画像で判別が難しいことが多いです。

とはいえ、進行度や隣接構造の影響を評価できます。

⚫︎ダイアモンド反射法(ダイアグノデント:DIAGNOdent)

頑固な白斑や茶褐色まで進行したう蝕の検出に有用ですが、白斑の浅部と深部の判別は難しいという側面を持っています。

とはいえ「虫歯を見逃さず発見する」という点では優秀な機械です。

ドイツのKaVo社が作ってモリタが販売したことで購入された先生も多いですよね。

⚫︎光学コヒーレンス断層撮影(OCT):** エナメルの微細構造を非侵襲的に評価でき、脱灰の深さと範囲を正確に測定できる点で有望だが、普及やコストの面で制限がある。

中国地方で言うと、岡山大学が2020年に虫歯診断に応用して、話題になりましたね。

④微細構造の評価と診断の留意点

ホワイトスポットの診断においては、脱灰の深さや範囲の把握が特に重要です。

浅い脱灰(エナメル表層のみ)には、低侵襲な再石灰化やIcon®療法が適用できる一方、深部まで進行した場合には他の治療法を検討しなければなりません。

特に先天的の場合は、白斑が象牙質境界まで達するということも、ままあるのです。

⑤病因診断と治療計画の立案

最終的に、診査結果をもとに原因に即した治療計画を立案します。

初期脱灰の場合には早期の治療と予防指導を行い、進行が認められる場合には適切な修復や予防策を併用します。

ホワイトスポットに対する治療法

①保存的・非侵襲的治療

生活習慣・口腔衛生改善はもちろん最優先です。

フッ化物配合歯磨剤、うがい、糖摂取制限、定期フッ化物塗布など、再石灰化や酸による侵食をまずは極力対処します。

再石灰化療法としてナノハイドロキシアパタイト含有ペースト、CPP-ACP(MIペースト)、高濃度フッ化物、最近であればCAPシステムを利用した塗布による再石灰化促進も有効です。

効果は浅い脱灰で良好あり、週単位〜数月の継続が必要となります。

クリーニングとホワイトニング前処置として着色やプラークを除去し、白斑の評価を行うこともあります。

漂白は色調改善を助けますが、白斑を悪化させる場合があります。(かえって目立つようになるケースあり)

②中等度:微小侵襲的治療

今回のコラムの主役はIcon®「低粘性レジン浸潤法(resin infiltration technique)です。

 後述しますが適応はエナメル内の浅〜中等度脱灰、境界明瞭な白斑、矯正後の白斑などです。

治療成績としては短期〜中期で高い審美改善率(多くで70–90%改善報告)が見られますが、深部病変や広範囲は効果が限定的です。

 メリットは歯質の非削除、即時効果、低侵襲であり、デメリットとしては色調安定性は長期観察必要なことと、再処置が必要になるケースもあるということです。

もう一つの方法としてはマイクロアブレーション(酸+研磨)があります。

表層の着色や浅い白斑に対して適応で、酸と研磨剤で表層を物理的に除去し、色調改善を図る方法です。

メリットは単純で即時効果が出る点であり、デメリットとしては僅かですがエナメル質削除があり、過度の除去で象牙質に近づくリスクがあるということです。

③侵襲的修復治療(中〜深層、審美要求が高い場合)

コンポジットレジンによる充填を行い部分修復するケースもあります。

 適応としてはエナメル質欠損や深部の変色、形態補正が必要な場合です。

適切な接着操作、色調選択、境界の目立たない形成を行い、充填していきます。

 メリットは適応範囲広く、審美回復良好であることでしょう。デメリットは健全歯質の切削を要する場合があることです。

範囲が広範囲のときはラミネートベニア(セラミック)も有効です。

適応としては広範囲の着色・形態異常、長期的な審美安定を求める成人に対してです。

メリットとしては色調安定性・耐久性高いことで、デメリットとしては処置は不可逆であり自費診療のためコストが高くつくことです。

そして脱灰範囲が広範で、欠損や重大な構造損失がある場合は最終手段として被せ物(クラウン)が選択されることも稀にですがあります。

Icon®を用いたエナメル修復の原理と成分

次に、Icon®治療のメカニズムとその成分について詳述します。

①Icon®治療の原理

Icon®は、エナメルの浅層から中等度の脱灰部位に浸透させることで、微細孔洞や屈折差を減少させ、視覚的改善と同時にエナメル質を補強します。

従来の表面コーティングや充填治療と異なり、削ることなく浸透させる点が特徴です。

②Icon®の成分解説(医療従事者向け)

Icon®の主成分は、特殊な低粘度のビニルレジン系樹脂と溶媒から構成されています。それに重合開始剤(光重合用)が含まれます。

具体的には以下の要素が含まれます。

⚫︎ビニルレジン系樹脂(ビニルビニル・アクリレート系)

この成分は、微細孔洞や脱灰部分のエナメル質の内部に浸透し、硬化後に透明なレジンネットを形成します。

これにより、歯の光学的性質が回復し、白斑の目立ちにくさや反射性が改善されます。

⚫︎溶媒(エタノールや高浸透性有機溶媒)

これらはレジンの浸透性を高め、エナメル質の微細構造にスムーズに浸透させる役割を果たします。

⚫︎重合開始剤(カンファーキノン)

有名な光重合開始剤ですね。また補助的にアミン系還元剤(ジエチルアミノベンゾイル誘導体など)が微量添加され、効率的な光重合を促進されています。

以上により、エナメルの微細孔や屈折差を埋めることで光の散乱を抑え、光学的に目立ちにくくさせるとともに、脱灰の進行を抑制・遅延する効果もあります。

③ICON®の浸透・硬化メカニズム

Icon®の処置は、まず酸性溶液(エッチング)を用いてエナメル表面の微細孔を一時的に開き、脱灰部分の微細構造を露出させます。

その後、レジン材料(Icon® Resin Infiltrant)を塗布し、毛細管現象を利用して微細孔洞へ浸透させます。

最後に光重合によって硬化させると、レジンの網目構造がエナメル質の孔洞や格子構造と置換され、屈折率差を補正します。

これにより、白斑の見た目だけでなく、エナメル質の補強や耐酸性も向上し、その後の脱灰のリスクを低減させます。

Icon®治療の適応と禁忌

①適応症

⚫︎浅度の白斑(エナメル表層の脱灰)  

⚫︎矯正治療後の白斑(特に浅い層)  

⚫︎フッ素症による軽度~中等度の白濁  

⚫︎初期むし歯の治療選択肢として

②禁忌・注意点

⚫︎深部まで進行したう蝕や、象牙質まで達した変色・欠損の場合は適応外です。

⚫︎進行性の高いう蝕や、歯の破折、表面の破損が大きい場合は他の修復療法を検討した方が良いです。

⚫︎酸処理による過敏症や、エナメルの微細構造破壊が深部まで予想される場合は注意が必要です。

⚫︎患者の口腔衛生状態や協力度も考慮して治療する必要があります。

まとめとエビデンス

Icon®は、「低粘性レジン浸潤法(resin infiltration technique)」として、浅い白斑や脱灰歯質の非侵襲的改善に効果的であると、多くの臨床研究が示しています。

特に、白斑の改善率は80〜90%以上と高く、見た目の自然さも評価されています。

ただし、深部の変色や構造破損には適用できないため、診断と適応判断は慎重に行う必要があります。

また、Icon®の治療は、一度に完結することも多い反面、数年にわたる長期のフォローアップ研究も盛んに行われており、安定した結果が得られています。

これらのエビデンスは、浅い白斑に対する非侵襲的治療法として、臨床現場での有用性と安全性を裏付けるものです。

今後の課題としては、より深度の脱灰や広範囲の白斑に対しても、もっと有効性を検証する必要があり、さらなる臨床研究の蓄積が期待されます。

今後の展望

ホワイトスポットは、審美的な問題だけでなく、初期のむし歯やエナメル質の異常を示すサインでもあります。

これらの白斑の正確な診断と適切な治療選択は、長期的な口腔健康にとって非常に重要です。

Icon®療法は、非侵襲的かつ高い審美効果を発揮し、浅層の脱灰に対しての治療法として大きな成功を収めています。

臨床研究においても、自然な見た目の改善と脱灰の進行抑制に有効性が証明されており、従来の侵襲的治療を避けたい患者や若年者にとって理想的な選択となりつつあります。

しかしながら、その効果は範囲や深さに依存するため、すべての白斑に適用できるわけではありません。

特に深部の着色や破損、進行したむし歯には適応外です。このため、診断と治療計画の立案には専門的な見極めと長期観察が必要です。

今後の展望としては、より深部までの脱灰や広範囲な変色に対する治療技術の進歩と、光学診断ツールの改良により、診断精度と治療の精密性が飛躍的に向上すると期待されます。

また、新しい成分や材料の開発も進んでおり、より効率的で持続性の高い治療法が登場する可能性があります。

おわりに

エナメルスポットの予防と改善には、基本的な口腔衛生の徹底と適切な診断・治療が不可欠です。

Icon®をはじめとする低侵襲療法は、成人・若年者問わず、患者の審美的な満足度を高めるとともに、歯質の保全にも寄与します。

今後も最新の研究動向に注目し、適切な臨床における治療の発展に目を向けてみてください。

当院ではアイコン®️によるホワイトスポット治療を30000円(自費治療)で行っております。

治療について何か疑問がございましたら、お気軽にお尋ねください。

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