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口腔ケアによる感染予防はインフルエンザにも!世界のライオンの研究

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2025年12月02日

口腔ケアによる感染予防はインフルエンザにも!世界のライオンの研究

(院長の徒然コラム)

はじめに

今年もインフルエンザが流行する季節になって参りました。

インフルエンザウイルスは毎年季節性の流行を引き起こし、多くの人々に影響を与えています。

口腔内はインフルエンザウイルスの侵入経路になっており、適切な口腔ケアが感染症のリスクを減少させる一助となります。

今回株式会社ライオンが発表した研究は、「歯磨きが唾液の抗インフルエンザウイルス活性を高めること(インフルエンザウイルスに抵抗する力が増すこと)を示しています。

この研究は、2025年7月19日に英国歯科医師会が発行する科学雑誌『BDJ Open』に掲載されました。

今回のコラムではこの論文の紹介と、口腔ケアが感染予防に役立っていることについて説明していきたいと思います。

株式会社ライオンの研究

株式会社ライオンが発表した研究では、歯磨きが唾液の抗インフルエンザウイルス活性を顕著に向上させることが示されました。

この研究は、複数(16名)の参加者を対象に行われ、歯磨き前後の唾液サンプルを比較して評価されました。

研究の結果、歯磨き後5分間の唾液抗ウイルス活性が有意に増加したことが確認され、特に初期の抗ウイルス活性が低い個人(要するにインフルエンザウイルスへの抵抗力が本来弱い人)では顕著な改善が見られました。

研究の方法としては、参加者が歯磨きを行う前に唾液と口腔内を洗浄した水を採取し、その後歯磨きを行い、再度唾液と口腔洗浄水を採取して抗ウイルス活性を測定しました。

(5分後及び1時間後にそれぞれ採取)

そしてそれらの試料の抗ウイルス活性を解析していきました。

その結果、歯磨き後5分間、唾液中のインフルエンザウイルス感染能が90%も減少したことがわかりました。

(インフルエンザに抵抗の弱い人は顕著に抵抗性が増加しましたが、インフルエンザへの抵抗が高い人では、顕著な変化はありませんでした。)

この研究において、特に注目すべきは、歯磨きが単純に口腔内の細菌量を減少させるだけでなく、結果として唾液の抗ウイルス機能が向上する可能性が示唆された点です。

(口腔内の細菌量の減少が唾液の抗ウイルス活性を向上させていることが示唆されました…ということです。)

口腔ケアの役割

口腔内は、インフルエンザウイルスを含むさまざまな病原体が侵入する経路となってしまっています。その口腔内は、粘膜で覆われており、常に唾液によって潤されています。

唾液には、ペリクルと呼ばれる物理的なバリアだけでなく、免疫的な防御能も持っており、抗ウイルス活性を持つ成分が豊富に含まれています。

たとえば、分泌型IgAやリゾチームなど、唾液中の成分はウイルスや細菌に対抗する働きがあります。

これにより、口腔環境が清潔に保たれることで、ウイルス感染のリスクを減少させる効果が期待されます。

歯磨きの効果

今回の研究で歯磨きによって唾液の抗インフルエンザウイルス活性が有意に向上することが示されています。

特に、歯磨き後の5分間において、唾液の抗ウイルス活性が増加し、口腔内の細菌量の減少に関連していることがわかりました。

これにより、唾液の免疫機能が強化され、インフルエンザウイルスに対する防御が強化されると考えられます。

適切な口腔ケアを行うことで、ウイルス感染症に対する自然免疫を高めることができるのです。

今回はインフルエンザウイルスに関してでしたが、細菌数を減らすということは他の感染症にも十分効果がある可能性が示唆されています。

定期的な口腔衛生習慣の重要性

定期的な口腔衛生習慣は、インフルエンザをはじめとする感染症の予防において重要です。

歯磨きだけでなく、フロスやうがいなどの習慣も併せて行うことが効果的です。

また、定期的に歯科医院での口腔内のチェックを受けることは、口腔内の疾病を早期に発見し、口腔の健康を保つのに役立ちます。

虫歯や歯周病予防だけじゃない

多くの方が、口腔ケアは主に虫歯や歯周病の予防に限られると考えていますが、実際には全身の健康にも深く関わっています。

口腔内の健康状態を維持することで、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクを軽減することができます。

これにより、特に冬季に流行するインフルエンザの感染を防ぐための一環として、口腔ケアの重要性をぜひ理解していただきたいと思います。

患者さんへのアドバイス

皆さんも感染症を防ぐために以下のポイントを意識していただき、口腔ケアを日常生活に取り入れていただくことをお勧めします。

①毎食後の歯磨き

毎食後に丁寧に歯磨きを行い、食べかすや細菌を取り除くことが大切です。

②フロスなどの清掃補助器具の使用

歯磨きだけでは取りきれない隙間の汚れを取り除くために、フロスや歯間ブラシの使用をお勧めします。

③うがいの習慣

特に外出から帰った時や食事の後に、口腔内を清潔に保つために、うがいをする習慣を身に付けた方が良いです。

市販のうがい薬を使用すると、さらに効果的です。

家に帰ってからうがいをするのも良いですが、そもそも細菌を持ち込まないように、外出先でうがいをするのも効果的です。

④定期的な歯科検診

予防的歯科治療を受けることで、虫歯や歯周病の予防だけでなく、全体的な口腔健康の維持にも役立ちます。

3ヶ月に1回は専門家による口腔内チェックを受けるようにしましょう。

⑤栄養管理

バランスの取れた食事は、口腔内の健康にも寄与します。

特に、ビタミンやミネラルを含む食品を摂取することで、唾液の品質を向上させ、口腔内の健康を支える効果があります。

⑥水分補給

十分な水分を摂取することも唾液の分泌を促進し、口腔環境を保つのに重要です。

おまけの考察

今回の論文に面白い考察があったので紹介しておきます。

歯磨き粉に含まれる成分、特に界面活性剤であるSDS(ラウリル硫酸ナトリウム)は、直接的にウイルスを不活化する効果があることが報告されています。

この研究で使用した歯磨き粉にどの程度含まれているかは明らかではありませんが、歯磨き粉の成分が唾液の抗ウイルス活性に影響を与えている可能性も考えられますが、論文にはこうも綴られていました。

歯磨き粉の成分がどんどん希釈されて、SDSの濃度はかなり薄い…という内容です。

過去の論文には、歯磨き粉の界面活性剤のウイルス不活の有用性を説明したものもありましたが、もしかすると効果は限定的なのかもしれませんね。

終わりに

新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症が日常生活に影響を及ぼす今、口腔ケアの重要性はますます高まっています。

ライオンが発表した研究からも分かる通り、歯磨きが唾液の抗ウイルス活性を向上させ、インフルエンザなどの感染症から身体を守る手助けとなることが示されています。

私たちの身体の健康は口腔の状態と密接に関連しています。

一見すると小さなことかもしれませんが、日頃の口腔ケアを怠らず実践することが、ひいてはインフルエンザやさまざまな感染症の予防につながります。

一人一人が口腔ケアの意義がより深く理解し、健康を維持するための努力をしていきましょう。

ぜひ、定期的な歯磨きと口腔衛生を日常生活にしっかり取り入れて、感染症のリスクを最小限に抑え、健康な毎日を送りましょう。

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