2026年1月31日

(院長の徒然コラム)

はじめに
歯の治療において、インレーは重要な役割を果たします。日本では「金属インレー」がよく使用され、特に保険適用の金銀パラジウム合金が代表的です。
一方で、最近では審美性や耐久性を求める声から「セラミックインレー」の需要も増えています。本コラムでは、金属インレーとセラミックインレーの比較を行い、それぞれの寿命、再治療リスク、材料特性、アレルギー、費用について具体的な数値や研究データを元に解説します。
インレーの種類と材料特性
①金属インレー(金銀パラジウム合金、銀パラジウム合金)
⚫︎特徴
保険適用で安価です。負荷に強く丈夫で、加工が容易です。
しかし、審美性が低く、見た目が金属色であるため見た目が気になる方には不向きです。
また、金属アレルギーの可能性がある。
②セラミックインレー(例:リチウムジシリケート、ジルコニア)
⚫︎特徴
自然な歯に近い色合いで、かつ透明感もあります。
接着技術が進歩し、耐久性と咬合力に優れた材料が増加しました。
とはいえ力の掛け方によっては、割れやすい場合があるため、設計・使用条件によってリスクが変わります。
寿命(生存率/故障率)の比較
以下は複数の系統的レビューや長期研究からの統計データから抜粋しました。
①金属インレー
⚫︎年間再治療率: 1〜4%
⚫︎5年生存率:約85〜95%
⚫︎10年生存率:約80〜90%の範囲
⚫︎経年劣化
補綴物本体の破損というよりも、二次齲蝕や摩耗、適合不良がもたらす再治療が主な問題となります。
②セラミックインレー
⚫︎年間再治療率: 0.5〜2.0%
⚫︎5年生存率:90〜98%
⚫︎10年生存率:約85〜95%
⚫︎経年劣化
齲蝕はあまり起こらず、破折や接着不良のリスクでのトラブルが主である。特に咬合負荷の強い場合は注意が必要です。
二次齲蝕リスクの比較
二次齲蝕とは、補綴物の辺縁部から新たに発生するむし歯です。
今度はこの数値を比較してみましょう。
①金属インレー
⚫︎発生頻度:年間約1〜3%(条件により変動)
⚫︎長期リスク
10年経過後に10〜30%で二次むし歯に至ることがある。
②セラミックインレー
⚫︎発生頻度:年間約0.5〜1%で、優れた接着でリスクをコントロール可能です
⚫︎長期リスク
金属インレーと同等かそれ以下のレベルだといます。
日本と海外のデータでの比較ではありますが、約17倍メタルインレーの方が虫歯になりやすいと言う先生もいます。
破折・脱離リスク
①金属インレー
割れにくく、高い耐久性がある。一般的に咬合力に対する耐性は強いです。
②セラミックインレー
セラミックインレーは特に強い咬合力を受けた場合に破損するリスクが高いです。
論文によっては、5年以内の破折率は約3%〜5%の報告があり、長期(10年)の生存率に影響を及ぼすことがあります。
よって、強い力が加わる部位や大きな修復では施術後の観察が特に重要です。(とはいえジルコニアなどのセラミックでは、強度が高いためこの限りではない。)
見た目と審美性
①金属インレー
⚫︎審美性:明らかに金属色であり、前歯や見える部位には不向きです。
例え前装部を白い樹脂で覆っても、透明感がないため見た目は劣ります。
⚫︎金属アレルギー:*医療用金属に対するアレルギーの可能性があり、特にパラジウムに敏感な方は注意が必要です。
②セラミックインレー
⚫︎審美性:自然の歯の色に近く、透明感があり、審美的には非常に優れた選択肢です。
前歯部に安心して使用できます。
⚫︎長期的な色合い:色あせや変色が少ないため、審美性を維持しやすいです。具体的なデータとして、色合いの安定性は抜群で、5年以上使用しても変化が起きにくいとされています。
費用と保険の扱い
①金属インレー
⚫︎費用:保険適用の場合、患者の自己負担は3割で、通常約3000〜5,000円程度(条件によります。)
⚫︎コストの観点:費用対効果の面で見た場合、長期間の治療成績とコストを考慮すれば、経済的には選ばれやすい治療です。
②セラミックインレー
⚫︎費用:多くの場合、保険が適用されず、自己負担は5万〜15万程度です(使用する材料や提供するクリニックにより異なる)。
当院では6万円リチウムジシリケート製のセラミックインレーを装着しています。
⚫︎コストの観点:一見高額に感じるが、審美性や長期的な安定性を求める場合は選択されることが増えています。
金属インレーの組成の違い(日本と海外)
金属インレーに使用される材料の組成は、日本と海外で顕著に異なります。
以下では、これらの違いとその理由を整理します。
①日本の金属インレーの組成(例:金銀パラジウム合金)
⚫︎主要成分
銀(Ag): 40%〜60%
パラジウム(Pd): 10%〜20%
銅(Cu): 10%〜30%
亜鉛(Zn)、スズ(Sn): 微量含有
⚫︎特徴
日本では、金銀パラジウム合金が広く使用されており、現行の保険制度に適応しています。
そのため、コスト面から多くの患者にとって取り入れやすい選択肢です。
②海外の金属インレーの組成(主に金合金)
⚫︎主要成分
金(Au): 20%〜80%
パラジウム(Pd): 少量か無含有
銀(Ag)や銅(Cu): 少なめの場合が多い
⚫︎特徴
海外では、特にアメリカや欧州で使用される補綴材料にはパラジウムを含まない金合金が多く見られます。(ドイツではパラジウム禁止であり、北欧では妊婦などにはメタルインレー自体を禁止している国まであります。)
これは主に以下の理由に基づいています。
メタルインレーが日本と海外で組成の違いがある理由
①安全性と体への影響
パラジウムは金属アレルギーを引き起こす可能性があり、特に口腔内での影響が懸念されています。
パラジウムに対するアレルギー反応(接触性皮膚炎など)は一部の患者で観察されており、アメリカや欧州ではこうした健康リスクを考慮して、パラジウムを含まない合金の使用が推奨されることが多いです。
②保険制度の違い
日本では保険適用インレーで金銀パラジウム合金を多く使用していますが、アメリカや欧州の保険制度は異なり、自由診療が主流となることが多いです。
これにより、欧米では患者は高価ではあるが生体適合性に優れた材料を選択しやすくなっています。
終わりに
ここまで金属インレーとセラミックインレーの比較を行ってきました。
金属インレーは保険適用で安価、耐久性が高く、長期的な生存率も高いものの、審美性とアレルギーリスクが問題となります。
一方でセラミックインレーは自然な見た目と優れた耐久性が魅力ですが、破折リスクと高コストが考慮事項です。
どちらを選ぶべきかは、患者さん自身の状況や希望に応じて慎重に判断しましょう。
各選択肢の長所と短所を理解し、歯科医と十分に相談することが重要です。
個人の口腔内の状態、生活スタイル、治療に対する価値観を考慮し、選択肢を検討することが、最良の結果を得るために不可欠です。
しかし1番忘れてはいけない事はどちらを選ぶにせよ、メンテナンスやセルフケアをしっかりしなければ、虫歯を防ぐことはできないということです。
どちらを入れたとしても、定期検診を受け、自分の歯をしっかり守る意識を大事にしてください。
