2025年6月23日

はじめに
口腔乾燥(ドライマウス)は、多くの成人や高齢者に見られる症状であり、慢性的な乾燥感や口臭、嚥下障害などさまざまな問題を引き起こします。近年の研究では、口腔乾燥が口腔内だけでなく全身の健康に悪影響を及ぼす可能性も指摘されており、適切なケアと予防が求められています。本コラムでは、口腔乾燥の原因、症状、そして効果的な予防策や治療法について、お話します。

1. 口腔乾燥とは何か?
口腔乾燥は、唾液の分泌量が低下し、口腔内が十分に潤滑されなくなる状態です。唾液は口腔清掃や抗菌作用に加え、食べ物の嚥下や味覚の維持、歯の再石灰化にも重要な役割を果たしています。唾液異常により、口腔内環境の悪化や歯周病、むし歯のリスクが増加します。
2. 口腔乾燥の原因
2.1 加齢
加齢に伴う唾液腺の機能低下や薬剤使用の増加により、唾液分泌量は自然と低下します。
2.2 薬剤の副作用
抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、高血圧薬などは唾液分泌を抑制する副作用があります。特に高齢者では複数の薬剤服用が一般的で、口腔乾燥のリスクを高めています。
2.3 全身疾患
糖尿病、シェーグレン症候群、HIV/AIDSなどの疾患も唾液分泌低下を誘発します。
2.4 ライフスタイル・環境
喫煙、過度のアルコール摂取、口呼吸なども唾液分泌を妨げる要因です。
3. 口腔乾燥の症状と影響
乾いた口腔感や常に口の中に不快感
口臭の悪化
味覚障害
嚥下困難
舌や口腔粘膜の痛みやひび割れ
長期的には歯周病やむし歯の発生率増加
4. 口腔乾燥の健康リスク
4.1 歯科疾患のリスク増大
唾液の抗菌作用やう蝕コントロールの役割が低下し、むし歯や歯周病の原因となるプラークの蓄積が増えます。
4.2 口腔感染症のリスク
カンジダ症や口腔粘膜の感染症が起こりやすくなります。特に高齢者や免疫低下者に注意が必要です。
4.3 全身疾患への影響
口腔内の慢性的な炎症は、糖尿病や心血管疾患のリスク増大とも関連しています。
5. 口腔乾燥の予防とケア法
5.1 薬剤の見直し
医師に相談し、必要に応じて薬の調整や代替薬の提案を受けることが重要です。
5.2 口腔内の水分補給
定期的な水分摂取が唾液の粘度を保ちます。糖分やカフェインの摂り過ぎは避けましょう。
5.3 唾液刺激法
ガムや無糖キャンディーを噛むことで唾液腺を刺激できます。特にキシリトール入りの製品は虫歯予防にも効果的です。
5.4 咀嚼運動や口腔ケア
口腔マッサージや適切なブラッシングが唾液腺の血流を促進します。
5.5 口腔保湿剤の使用
発売されているスプレーやゲル状の保湿剤を活用しましょう。特に就寝前の使用が効果的です。
5.6 生活習慣の改善
禁煙、節酒、口呼吸の改善、定期的な歯科受診が予防に役立ちます。
6. まとめ
口腔乾燥は、多くの人にとって長期にわたる不快な症状となるだけでなく、口腔内の健康や全身疾患のリスクも高める重大な問題です。原因は加齢や薬剤、疾患など多岐にわたり、それぞれの状況に合わせた対策が必要です。歯科医師や医療従事者と連携し、日常的なケアと適切な治療を行うことで、口腔から全身の健康を守りましょう。