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NCCL(非う蝕性歯茎分歯質欠損)について:虫歯じゃないのに歯に穴が空いた

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2025年2月21日

NCCL(非う蝕性歯茎分歯質欠損)について:虫歯じゃないのに歯に穴が空いた

(院長の徒然ブログ)

はじめに

皆さんは、虫歯でもないのに歯の穴が空いたことや欠けたことはありますか?

実は歯質を脅かすのは虫歯だけではないのです。

今回は、NCCL(非う蝕性歯茎分歯質欠損)についてコラムで解説しようと思います。

虫歯以外の一例としてNCCLについてぜひ知ってみてください。

NCCLとは?

虫歯がないのに歯頸部の歯質が減っている状態というのは、我々からすると日常臨床においてよく見かける状態です。

この状態はNCCL(noncariouscervical lesion: 非う蝕性歯頸部歯質欠損)と呼ばれています。

特に歯の根本が欠けたり、歯茎部がくさび状に減ったり、皿状に摩耗したりしやすいです。なぜこういった部位の歯質が、減っていくのか解説していきます。

NCCLの定義

実はNCCLには学術団体によって定められた明確な定義が存在しません。

「CEJ(Cemento-Enamel Junction)付近に生じたう蝕が原因でない歯質欠損」

といったかなりざっくりとした定義が用いられることが多いのです。そのためドクターによって解釈が異なり、様々な見解が乱立しています。

通常、NCCLの大部分は象牙質の欠損で、エナメル質は含まれていても歯の根本の境界部のごく一部です。

この位置の歯質が減るためには、歯肉退縮が先行して起きて、象牙質が露出しているケースがほとんどです。

NCCLの発生部位

NCCLはCEJ(セメントエナメルジャンクション)付近に発生する象牙質が主体の歯質欠損です。

CEJとはセメント質とエナメル質が接する境界で、萌出直後の歯肉退縮がない状態では、上皮付着と結合組織付着の境界と一致しています。

WSD(くさび状欠損)とは違うの?

一部の歯科関係者にはNCCLよりもくさび状欠損もしくはWSD(Wedge-shaped defect)という名称の方が馴染み深いと考える人が多いかもしれません。

しかし、NCCLはくさび状欠損(歯冠側壁と歯肉側壁のなす角が鋭角で最深部に明確な角があるもの)だけではなく、皿状(歯冠側壁と歯肉側壁のなす角が鈍角で最深部に明確な角がないもの)や、それらの中間的な形態を示すものも存在します。

そのため、「くさび状欠損」のような特定の形態に限定する名称は、総称として適切ではありません。

NCCLは形態を問わない包括的な名称なのです。

NCCLの疫学と病因

⚫︎疫学

有病率は46.7%で、約半数の方が罹患していらっしゃいます。

年齢の上昇とともに有病率と重篤度が上昇する傾向にあります。

歯の唇側や頬側に好発し、犬歯、小白歯、第一大白歯に良く見られ、犬歯以外の前歯や第二大臼歯にはあまり見られません。

⚫︎病因

①酸蝕

口腔内細菌が産生する以外の酸による歯質の損壊。食品や胃液の逆流などが理由として挙げられる。

②摩耗

歯以外の異物との接触による歯質の物理的欠損のことです。歯磨き時の歯磨き粉の研磨作用による摩耗もこれに相当します。

③アブフラクション

咬合力が原因と考えられる歯頸部歯質の喪失のことです。歯ぎしりや食いしばりもこれに該当します。

つまり、NCCLは物理・化学的原因によって、歯頸部歯質が喪失した状態ということになります。以前はそれぞれの要因によって特徴的な形態(例:アブフラクションはくさび状)になると推測されていましたが、現在では形態からの病因診断の価値は低いと考えられています。

NCCLについての誤解

NCCLの原因は、20世紀中頃までは摩耗と酸によるものと考えられてきました。

1984年になり、咬合力によって歯頸部の歯質が崩壊するという仮説を提唱されましたが、あまり定着せず、1991年に「咬合力による歯頸部歯質が喪失する」という仮説に「アブフラクション」という名前がつけられたのをキッカケに、ようやく周知されるようになっていったのです。

1990年代後半から最近までは、この「アブフラクション」が教科書にも取り上げられるようになりました。

しかし、実は当時のアブフラクションに関する科学的・臨床的根拠は弱く、エビデンスの無いものだったのです。

21世紀になり科学的な検証が進みましたが、「アブフラクション」の普及度にも関わらず否定的な結果が蓄積されました。

それらの結果を受けて、メジャーな学術団体が2010年代後半からアブフラクションに関して否定的な見解を出すようになりました。

つまり、最近まで盛んに言われていた「アブフラクション」は、根拠薄弱な仮説であり、現代では科学的にはアブフラクションは否定されているのです。

今でも最近の研究データを見ていない歯科医師の中には、アブフラクションについて肯定している方がいらっしゃるほどです。

「えらい博士が言ったから真実だ」という誤解が広まった典型例ですね。

そもそも「アブフラクション」は1990年代ではしっかりと科学的・臨床的に検証されていませんでした。

アブフラクションの説明によく使われる「LeeとEakleの図」というものがあるんですが、あくまで想像図であり、実際にそういった現象が起きることは未だに確認されていません。

今後の時代もそうですが、十分に検証されることなく広まった「専門家の意見」というものには、十分注意せねばなりません。

NCCLの主たる原因

では「アブフラクション」が根拠薄弱であるならば、何がNCCLの原因かという話になります。

「アブフラクション」が広まるつれて、「摩耗」が軽視されるようになりました。

1990年代の歯科医師には、「ブラッシングがNCCLの原因なんて時代遅れ」と主張するドクターもいました。

しかし、現在アブフラクションへの評価が一変した今、NCCLの原因が明らかになってきました。実はアブフラクション登場以前から、摩耗の根拠が一番揃っており、現在では主たる原因は「摩耗」が一番だと言われています。

研磨剤による「摩耗」

「摩耗」と言っても歯ブラシのみで歯質が喪失した研究はありません。

NCCLの再現には研磨剤を含む歯磨剤によるものが大きかったのです。

硬い歯ブラシは歯磨剤による象牙質の摩耗を大きくしますが、歯ブラシ単独では歯質はそこまで喪失しません。

歯磨剤中の研磨剤が主原因で、歯ブラシは修飾因子ということになります。

NCCLには知覚過敏症状が伴うことが多いですが、研磨剤無配合や柔らかい研磨剤入りの歯磨剤へ変更することで知覚過敏症状が改善することもままあります。

この原因として研磨剤が象牙細管の封鎖を妨げたり、封鎖を剥がしてしまうことが考えられます。

研磨剤が入っていないと着色しやすくなるなどのデメリットはありますが、こういった歯磨剤の使用を検討してみるのもいいでしょう。

歯ブラシの毛先の挙動は、歯の形状や歯肉の形態や歯の位置に影響されるため、摩耗による歯質欠損はくさび状だけでなく、皿状やそれらの中間形といった多様な形態になります。

歯ブラシの動きが機械で定型化された実験と比べ、臨床的にはブラッシング方法の個人差は大きいため、もっと多様な形態になってしまうのです。

NCCLの患者さんへのアプローチ

①歯質の喪失が起きていることを認識してもらう

ほとんどの患者さんは歯質の喪失に気づいていません。

多くの場合自覚症状がなければ、危機感もありません。

まずは「あなたの歯が減っている」と伝えることから始めなくてはいけません。

そのためには口腔内写真や鏡で直接見てもらって、歯が日々の習慣により擦り減っており、元通りに戻ることはなく、今すぐにその習慣を変える必要があることをと伝えなければなりません。

危機感を煽るわけではありませんが、指導の最初に、患者さん自身の歯が減っていることに興味を持っていただき、指導を受ける気持ちになっていただく必要があるのです。

②使用している歯科衛生用品のチェック

例えば極細毛など柔らかいブラシだと、磨けている感覚が少ないので、逆にゴシゴシ時間をかけて磨く傾向があります。

また下顎前歯の健康な歯間乳頭がある部位に、サイズに合っていない歯間ブラシを使用することで歯肉退縮からのNCCLが起きていることもあります。

どんな道具をどの部位に使用しているのか、歯科衛生用品のチェックが重要です。

そして、患者さんの口腔内に適した器具を指導してあげる必要があるのです。

③歯ブラシの動かし方をチェック

NCCLがある患者さんの多くは歯ブラシを大きく動かす傾向があります。

強い圧で歯に押し付けるだけで歯はそこまで減りませんが、大きく動かすことで歯ブラシは隣接面に入らず、膨らんでいる豊隆部のみを擦ることになり、力が一部に集中してしまいます。

結果、NCCLが起こりやすくなるのです。

ストローク幅をチェックし、ブラシが隣接面に入るようにしっかり当て、小さく動かしてもらうように指導します。

④縦磨きを指導しよう

ブラッシング習慣というのはなかなか変わりません。歯質の摩耗による喪失が著しい場合は、歯ブラシを縦にして上下に動かし、主に隣接面を擦る縦磨きに変えるように指導します。

縦磨きだと歯部の豊隆部だけが擦れるリスクを減らせます。また、歯周病リスクが高い場合、隣接面にも毛先が届くので、歯周病リスクを減らす効果も期待できます。

隣接面にも毛先が届くので、そのリスクを減らす効果もあります。

⑤NCCLが起きている部位から磨いてもらおう

歯磨きは無意識に行なっていることが多く、最初に磨き始める部位に一番長い時間をかけ、後半になると時間が短くなり適当に磨いてしまう傾向があります。

NCCLのところから、意識的に縦磨きを行い、時間が長くなりすぎないよう注意深く磨くようにするのも効果的です。

⑥歯磨剤は研磨剤フリーにする

先ほどもお伝えしましたが、歯ブラシだけではNCCLは起こりません。

歯磨剤が関与することで喪失が起こります。歯磨剤を研磨剤フリーのジェルタイプに変えてもらうか、柔らかい研磨剤のタイプに変えてもらうかするのも効果的です。

またNCCLが起こっているということは、象牙質が露出していることがほとんどです。

エナメル質よりも象牙質の方がう蝕の進行が早いので、フッ化物の選択は必須です。

研磨剤フリーかつ高濃度のフッ化物を含む歯磨剤を使用し、ブラッシング後は洗口を2回までにするよう指導します。

が早いので、フッ化物の選択は必須です。

研磨剤フリーの1450ppmF歯磨剤を使用し、ブラッシンはなるべく洗口しないよう指導します。

⑦改善が難しければ早めに樹脂で埋める

ブラッシングはほとんどが習慣づいてしまっている癖なので、なかなか改善が難しいです。進行すれば歯の神経をとってしまうことになるかもかもしれません。

小さな喪失なら経過観察も可能ですが、大きく喪失している部位に対しては、早期の充填を検討すべきです。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

約半数の方が抱えるNCCLですが、歯磨き習慣の改善により進行度が変わってきます。

是非一度歯医者さんで磨き方などをチェックしてもらってください。

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