2025年2月07日

(院長の徒然ブログ)

口腔機能発達不全症とは
皆さんは口腔機能発達不全症という言葉を聞いたことがありますか?
「食べる機能」「話す機能」「その他の機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態を「口腔機能発達不全症」と呼びます。
近年、この口腔機能の問題に対し、歯科で診断・治療が可能であることが世間でも認識され始めています。
そして、令和6年の厚生労働省の通達でも、口腔機能に関係する項目の説明があり、非常に注目され始めているのです。
口腔機能発達(歯の萌出前)
口腔機能の発達は、生まれた瞬間から急速に行われます。
出産前は母体から栄養を得ていますが、出産後は自分の力でミルクを吸い栄養摂取を行わなければなりません。
⚫︎授乳・哺乳時の注意点
体の向きと顔の向きが同じ方向を向いていることを確認してください。
水平に寝かせるのではなく、少し頭のほうが高くなるように角度をつけると良いです。
⚫︎離乳食開始
しっかりと唇を閉じて口腔内に食物を取り込む練習や、咬む練習を勧めていってください。
その際は、咬むことだけを問題にするのではなく、子どもの体の成長と酵素の関係も照らし合わせて、その月齢に合わせ、消化吸収できるものを与えるようにしてください。
⚫︎離乳食の進め方
①0ヶ月〜:「母乳、ミルク」
糖質を消化する消化酵素(ラクターゼ)を持っています。
②5ヶ月〜:「おかゆ」
でんぷんを消化する酵素(アミラーゼ)が増え、唾液の分泌が増えます。
③6ヶ月〜:「豆腐、卵黄」
タンパク質を消化する消化酵素(ペプシン)が出始めます
④8ヶ月〜:バター、白身魚、赤身魚、鶏肉
脂肪を消化する消化酵素(膵リパーゼ)が出始めます。
⑤10ヶ月〜:「青魚、豚肉、植物油」
肝臓から胆汁酸が出始めて、さらに脂肪を消化しやすくなります。
⑥1歳〜:「軟飯、ご飯」
膵臓からもアミラーゼを分泌できるようになり、すべての消化酵素が分泌されるるようになりますが、まだ消化の力は弱いです。
⑦4歳:「何でも」
膵臓が完成し、大人並みに消化できるようになります。
口腔機能発達(乳歯列)
この頃になると、「お口ぽかん」(口唇閉鎖不全)に気がつき始める保護者が多くなります。
この時期は、多感な時期なので遊びながらできるトレーニングを案内します。
また、指しゃぶり、舌突出癖など、癖による咬合の異常については癖の除去を促すことが一般的です。
しかし、無理に行うと代替えの癖(爪かみなど)が起こってしまうことも多いです。
ですので、本人が納得できる年齢までゆっくりと向き合うことが大切です。
併せて、うつぶせ寝や本人の咬む癖(偏咬など)を生じているようであれば、是非歯医者さんに相談してください。
噛む位置の中心や正中を意識させることで改善が見られることがあります。
口腔機能発達(混合歯列期)
前歯交換期に脱落した歯の部分に、舌を入れて遊ぶ「舌突出癖」が生じることがあります。
この時期は、嚥下時の舌位の指導、口唇閉鎖トレーニングを積極的に行う時期です。
トレーニングを継続して行うためには、お子さん本人がその必要性を理解し、ご家族が協力態勢を整えることが重要です。
当院では皆様に、夕食後すぐにその場でトレーニングを行うように指導し、習慣化するようにお願いしております。
子どもに「ちゃんと咬む」とはどういうことか尋ねると「30回噛む」と答えます。
しかしちゃんと咬むとは回数のことではなく、咬むための筋肉がしっかりと働いているということなのです。
そのために正しい嚥下時の舌位、普段から口唇を閉じる指導を行なっていきます。
また、お口ぽかんの子どもは舌が下にある低位舌であることが多く、さらに乳児型嚥下の残存も見られやすいです。
これにより口腔内の力のバランスが崩れ、口腔機能に問題を起こしやすくなるのです。
このような問題は、爪咬みや口唇癖、弄舌癖などの口腔習癖のある患児にも共通して見られます。
終わりに
口腔機能発達不全症は、いつから始まるのかはわかりにくいです。
それまで特に問題になる歯列や咬合ではなかったものが、たとえばストレスから爪咬みや弄舌癖が始まることがあります。
それにより形態だけではなく機能に問題を生じる場合も多いのです。
永久歯に生え変わったからといって安心せず、虫歯予防や歯周病予防とともに、定期的な口腔機能の確認も歯医者で診てもらうようにしましょう。