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口腔健康の新たな時代を拓く:プロバイオティクスがもたらす革新:L8020とロイテリ菌

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2026年2月06日

口腔健康の新たな時代を拓く:プロバイオティクスがもたらす革新:L8020とロイテリ菌

(院長の徒然コラム)

はじめに:見過ごされがちな「オーラルフローラ」と未来の健康

昨今、テレビのコマーシャルで、良く乳酸菌という言葉が出てきます。

私たちの体には、腸内だけでなく口腔内にも多種多様な微生物が共生しています。

これを「オーラルフローラ」と呼びますが、この微生物叢のバランスが、全身の健康、特に消化器系や免疫系に深く関わっていることが近年、科学的に明らかになってきました。

虫歯や歯周病といった口腔疾患は、かつては単なる歯の問題と捉えられがちでしたが、現在では心臓病、糖尿病、認知症など、様々な全身疾患との関連が指摘され、その予防と管理の重要性は、かつてないほど高まっています。

このような背景の中、口腔内環境を健康に保つための新たなアプローチとして、プロバイオティクス(Probiotics)への期待が世界中で高まっています。

プロバイオティクスとは、「生きた微生物が、適切な量で摂取された場合に、宿主に健康上の利益をもたらすもの」と定義されます。

腸内環境の改善に用いられることが一般的でしたが、近年では口腔内の健康維持においてもその可能性が追求されています。

今回のコラムでは、口腔プロバイオティクスの二大巨頭ともいえる二つの主要な乳酸菌株、Lactobacillus reuteri DSM 17938/ATCC PTA 5289(以下、L. reuteri複合株)とL8020乳酸菌に焦点を当て、最新の研究データや具体的な乳酸菌株の発見話などを紐解きながら、口腔プロバイオティクスが私たちの口腔健康、ひいては全身の健康にもたらす革新的な可能性について、深く掘り下げていきますね。

それぞれの菌株が持つ独自の特徴、作用メカニズム、臨床的エビデンス、そして社会への実装状況を比較検討することで、この分野の広がりと奥深さをしっかり皆様に説明してまいります。

第一章:口腔内の微生物叢:健康の基盤としてのオーラルフローラ

私たちの口腔内は、人間が地球上で最も複雑な生態系の一つを体内に持っている場所と言えます。

ここに生息する微生物の種類は700〜800種とも言われ、その構成は個人差が大きく、また時間とともに変化します。

この複雑な微生物叢が「オーラルフローラ」であり、そのバランスは口腔健康の要です。

オーラルフローラは、腸内フローラと多くの共通点を持っています。

健康な状態では、口腔内には「善玉菌」と呼ばれる有益な微生物と、「悪玉菌」と呼ばれる病原性の微生物、そしてそのどちらでもない「日和見菌」が共生し、微妙なバランスを保っています。

しかし、食生活の乱れ、不適切な口腔ケア、ストレス、加齢、特定の疾患などが原因でこのバランスが崩れると、悪玉菌が優勢となり、虫歯や歯周病といった口腔疾患のリスクが高まります。

口腔内の主要な悪玉菌としてよく知られているのが、虫歯の原因菌であるミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)です。

この菌が糖を代謝して酸を産生し、歯のエナメル質を溶かすことで虫歯が進行します。

一方、歯周病の主要な原因菌群としては、Porphyromonas gingivalis、Tannerella forsythia、Prevotella intermedia、そしてスピロヘータの一種であるTreponema denticolaなどが挙げられます。

これらの菌は、単独ではなく互いに(迷惑なことに)協力し合って歯肉や歯周組織に炎症を引き起こし、最終的には歯を支える骨の吸収へと繋がり、歯の喪失に至ります。

これらのうち3つの菌は「レッドコンプレックス」とも呼ばれ、特に病原性が高いとされています。(当医院のコラムを読まれている方にはお馴染みの顔ぶれですね。)

また、口腔カンジダ症の原因となるCandida属のような日和見感染真菌も、免疫力の低下や微生物叢のバランス崩壊時に病気を引き起こす可能性があります。

こうした悪玉菌の活動は、単に口腔内の問題にとどまりません。

口腔内で発生した炎症性物質や細菌が血流に乗って全身に広がることで、全身性炎症を引き起こし、動脈硬化、糖尿病の悪化、誤嚥性肺炎、さらには認知症との関連も示唆されており、オーラルフローラの健康維持が全身の健康寿命延伸に不可欠であるという認識が広がっています。

例えば、歯周病菌由来のリポ多糖(LPS)は、歯周組織の炎症を惹起するだけでなく、全身に循環することで、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、動脈硬化などの病態を誘発または増悪させることが報告されています。

さらに最近では、歯周病菌由来LPSが脳内に蓄積するアミロイドβを促進し、認知症やアルツハイマー病の進行に関与するエビデンスも示されています。(以前のコラムで説明しましたね。)

このように、口腔内の健康状態は、まさに全身の健康を映し出す鏡であり、その管理は現代医療における重要な課題となっています。

第二章:口腔プロバイオティクス:新たな予防の境地を開く概念と作用メカニズム

「プロバイオティクス」という概念は、元来、腸内環境の改善を目的として発展してきました。

しかし、腸内フローラと多くの共通点を持つオーラルフローラにも、同様のアプローチが有効であるという考え方から、「口腔プロバイオティクス」の研究が活発化しています。

口腔プロバイオティクスは、虫歯や歯周病の病態において、以下のような多角的なメカニズムで効果を発揮すると考えられています。

①病原菌の生育抑制

プロバイオティクス菌が産生する抗菌物質(バクテリオシン、有機酸など)や過酸化水素が、病原菌の増殖を直接的に阻害します。

これらの物質は、病原菌の細胞膜を損傷したり、代謝経路を阻害したりすることで、その活動を停止させます。

②競合的排除

プロバイオティクス菌が、病原菌と同じスペースや栄養源を奪い合うことで、病原菌の定着を物理的に妨げます。

また、口腔内の表面(歯や粘膜)への接着部位を占有したり、病原菌のバイオフィルム形成を阻害したりすることで、病原菌の増殖拠点を奪います。

共凝集(Co-aggregation)能力もその一つで、プロバイオティクス菌が病原菌と凝集し、共に口腔内から排出されることで病原菌数を減らす効果も期待されます。

③免疫調節作用

プロバイオティクス菌が宿主の免疫応答を調節し、炎症反応を抑制したり、病原菌に対する防御力を高めたりします。

例えば、炎症性サイトカインの産生を抑制したり、抗菌ペプチドの産生を誘導したりすることで、口腔内の恒常性を維持します。

④環境の改変

口腔内のpHバランスを健康な状態に保ち、特定の病原菌が活動しにくい環境を作り出します。

例えば、乳酸菌は乳酸を産生しますが、口腔内のpHを適度に低下させることで、酸に弱い病原菌の増殖を抑制したり、逆に酸耐性のある虫歯菌の活動を阻害する作用も期待されます。

⑤酵素活性の調節

特定の病原菌が産生する、歯周組織の破壊に関わる酵素(例:コラゲナーゼ)の活性をプロバイオティクスが間接的に抑制する可能性も示唆されています。

このような多角的な作用メカニズムを通じて、口腔プロバイオティクスは、従来の物理的・化学的な口腔ケアだけでは不十分だった、根本的な微生物叢のバランス改善という観点から、口腔疾患の予防と治療に貢献しようとしています。

第3章:L. reuteri複合株 (DSM 17938/ATCC PTA 5289) の紹介:多角的な口腔健康への貢献

Lactobacillus reuteri(以下、L. reuteri)複合株(DSM 17938とATCC PTA 5289)は、世界的に広く研究され、多くの製品に利用されている口腔プロバイオティクスです。

特に、虫歯や歯周病、そしてカンジダ症といった広範な口腔疾患への効果が期待されています。

①学童を対象とした研究実施:虫歯予防の可能性:プラーク酸産生能と菌数への影響

Lactobacillus reuteri DSM 17938とATCC PTA 5289の学童における口腔健康指標への影響を無作為化臨床パイロット試験が行われた研究があります。

12歳から18歳の青少年を対象に、L. reuteri複合株が虫歯リスク因子に与える影響を検証したものです。

この研究では、プロバイオティクス摂取群でS. mutansの増加がより穏やかである傾向が見られ、唾液pHの増加傾向、プラーク、歯肉炎、出血の各指標において改善傾向が見られました。

統計的有意差には達しなかったものの、小児・青少年期におけるL. reuteri複合株の虫歯予防への貢献が期待される結果となりました。

さらに、この結果を後押しするのがLactobacillus reuteri (DSM 17938 and ATCC PTA 5289)を含むドロップが矯正患者のプラーク酸産生能と他の虫歯関連変数に与える影響を調べたら研究です。

矯正治療中の患者は、ブラケットやワイヤーといった装置が口腔内に存在するため、プラークが溜まりやすく、虫歯のリスクが非常に高い集団です。

この研究では、若年成人矯正患者28名を対象に、L. reuteri複合株を含むドロップを3週間投与した結果、介入3週間後にプラークpHの低下が有意に抑制され、プラークの酸産生能が減少したことが示されました。

プラークpHの維持は、歯のエナメル質の脱灰を防ぎ、再石灰化を促進するために極めて重要であり、この結果はL. reuteri複合株が患者の虫歯予防に有効である可能性を強く示唆しています。

特筆すべきは、唾液中のS. mutansと乳酸菌数に有意な変化は見られなかったものの、qPCR解析により、L. reuteri複合株が歯垢バイオフィルムに定着する能力があることが確認された点です。

これは、唾液中の菌数変化だけではプロバイオティクスの効果を完全に評価できないこと、そしてバイオフィルム内での局所的な作用が重要であることを示唆しています。

また、プラセボ群では唾液中のS. mutansや乳酸菌数が増加傾向を示したのに対し、プロバイオティクス群では安定していたことから、菌数増加の抑制効果が示唆されています。

②カンジダ症に対する抗真菌作用:日和見感染症の予防

L. reuteri複合株の注目すべきもう一つの特徴は、口腔内のカンジダ菌に対する抗真菌作用です。

Lactobacillus reuteriが口腔カンジダ菌に抗真菌作用を持つかどうかin vitro研究が行われたのですが、L. reuteriDSM17938とATCC PTA 5289の両株が、口腔内で最も一般的な6種類のカンジダ菌種に対し、抗真菌効果を持つことが示されました。

具体的には、両L. reuteri株はカンジダ菌と共凝集する能力を持ち、特にC. albicansとC. parapsilosisの増殖をほぼ完全に阻害したという結果が出たのです。

このメカニズムには、L. reuteriが産生する過酸化水素と乳酸による酸性環境(pH 3.6程度)が関与していることが示唆されています。

過酸化水素は強力な酸化剤として作用してpHを下げ、カンジダ菌の細胞膜の機能を阻害し、細胞内のプロトンポンプATPase (アデノシン三リン酸加水分解酵素)の活性を高めて成長を阻害することで、カンジダ菌の増殖を抑制します。

ただし、興味深いことに、C. kruseiに対しては増殖阻害効果が見られませんでした。

これは、C. kruseiが酸性環境への耐性が高く、乳酸菌が産生する酸を中和するメカニズムを持つ可能性が示唆されています。

この結果は、プロバイオティクスの効果が菌株特異的であるだけでなく、病原菌種特異的でもあることを明確に示しており、口腔プロバイオティクスの選定において、ターゲットとなる病原菌の種類を考慮することの重要性を示しました。

口腔カンジダ症は、免疫機能が低下した高齢者や、ステロイド使用者、義歯装着者などに多く見られる日和見感染症です。

以前もL. reuteri複合株が虚弱な高齢者の口腔カンジダ負荷を減少させることが報告されています。

抗真菌薬への耐性菌の出現が問題となる中で、L. reuteri複合株のようなプロバイオティクスは、代替的または補助的なカンジダ症管理戦略として、大きな期待が寄せられます。

③L. reuteri複合株の口腔内での動態と定着性

注意しなければならないことは、L. reuteri複合株の口腔内での定着は一時的であり、摂取中止後には徐々に消失していく傾向があります。

これは、プロバイオティクスの効果を維持するためには、継続的な摂取が不可欠であることを示唆しています。

先ほどお話しした矯正患者の研究でも、qPCR解析で歯垢バイオフィルムへの定着が確認されましたが、口腔内の微生物数全体に有意な影響を与えるわけではなく、あくまで「一時的にバイオフィルムに存在し、プラークの酸産生能を抑制する」という局所的な効果が示唆されています。

第4章:L8020乳酸菌の革新:日本からの「スーパー乳酸菌」と多様なエビデンス

次に、日本の広島大学から発見を発表されたL8020乳酸菌の軌跡を見ていきましょう。

①L8020乳酸菌の発見と命名

L8020乳酸菌の物語は、広島大学の二川浩樹教授が2000年頃に始めた研究に端を発します。

教授は虫歯に罹患したことのない健康な子どもの唾液から乳酸菌を分離し、その中から特にミュータンスレンサ球菌、歯周病菌、そしてカンジダ菌といった口腔内の主要な病原微生物に対し、強い生育抑制効果を示す画期的な菌株を発見しました。

この菌株はLactobacillus rhamnosus KO3株と名付けられました。

その後、このKO3株は、日本歯科医師会が推進する「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020運動」にちなんで、L8020乳酸菌と命名されました。

この名前には、この菌が健康長寿社会における口腔健康の維持に貢献するという強いメッセージが込められています。

②L8020乳酸菌の強力な抗菌メカニズム

L8020乳酸菌の最も注目すべき特徴は、その強力かつ特異的な抗菌作用です。

DNAマイクロアレイ解析によって、L8020乳酸菌がバクテリオシンKog1およびKog2という2種類の抗菌性ペプチドを産生することが明らかにされました。

Kog1は48個、Kog2は41個のアミノ酸から構成されており、これらはミュータンスレンサ球菌、歯周病菌、そしてカンジダ菌に対し、非常に高い抗菌性を示します。

特にKog1については詳細な解析が行われ、その抗菌活性の鍵となるのは、22番目から44番目のアミノ酸残基が形成するα-ヘリックス構造であることが判明しました。

試験管実験では、Kog1が口腔病原菌の細胞内に速やかに集積し、わずか3分で細胞に到達し、5分で細胞を破壊するという、極めて迅速かつ強力な作用機序を持つことが示されています。

この直接的かつ強力な病原菌細胞破壊メカニズムは、L8020乳酸菌の広範な抗菌効果を裏付けるものなのです。

③広範なヒト臨床試験とエビデンス:高リスク集団での有用性

L8020乳酸菌の効果は、複数のヒト臨床試験によって検証され、その信頼性が確立されつつあります。

二川教授らが行った実験では、L8020乳酸菌を用いて発酵させたヨーグルト(「8020ヨーグルト」)を摂取した結果、被験者の口腔内におけるミュータンスレンサ球菌の保菌数が80%以上、主要な4種類の歯周病原菌(P. gingivalis、T. forsythia、P. intermedia、T. denticola)の保菌数も40〜90%減少することが示されました。

これらの結果は、L8020乳酸菌が口腔内の善玉菌と悪玉菌のバランスを劇的に改善する能力を持つことを強く示しており、虫歯と歯周病の両方に対する包括的なアプローチの可能性を示しています。

これらの成果に基づき、L8020乳酸菌は「機能性表示食品」としても承認され、その科学的根拠が公的に認められています。

特に注目すべきは、知的障害を持つ方の歯周病原菌に対しての乳酸菌L8020株の影響を調べた無作為化臨床試験です。

知的障害を持つ方は、一般的な障害のない方と比較して口腔衛生状態が悪く、歯肉炎の有病率が高いことが知られています。

これは、認知能力や身体的障害、介護者の知識や協力体制、基礎疾患など、様々な要因によって適切な口腔ケアが困難であるためです。

この研究では、知的障害を持つ外来患者41名を対象に、L8020ヨーグルト摂取群とプラセボ群に分け、12週間の介入を行いました。

その結果、L8020ヨーグルト摂取群では、歯周病との関連が特に強いTannerella forsythiaの相対量がプラセボ群と比較して有意に低いことが確認されました。

さらに、調査対象の4つの歯周病原菌全てにおいて、プラセボ群と比較してL8020ヨーグルト摂取後に相対量の減少傾向が見られました。

この結果は、口腔ケアが困難な高リスク集団におけるL8020乳酸菌の有効性を示しており、その社会的な意義は極めて大きいと言えます。

④炎症抑制と全身への影響の可能性:LPS不活性化という画期的なメカニズム

L8020乳酸菌の最も画期的な機能の一つは、その炎症抑制作用、特にLPS不活性化能力です。

L8020乳酸菌が産生するKog1が歯周病菌由来のリポ多糖(LPS)を不活性化する能力を持つことが指摘されています。

LPSは、歯周組織の炎症を惹起するだけでなく、全身に循環することで、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、動脈硬化、さらには認知症といった全身疾患の誘発や増悪に関与することが知られています。

試験管内実験では、Kog1がLPSを不活性化することで、歯肉細胞やマクロファージからの炎症性サイトカイン(例えばTNF-α)の産生が抑制されることが示されています。

このメカニズムは、L8020乳酸菌が単に口腔内の病原菌を減らすだけでなく、口腔から全身へと波及する炎症性経路を遮断するという、極めて重要な役割を果たす可能性を示唆しています。

LPS不活性化による全身性炎症抑制効果は、動脈硬化や糖尿病の悪化を抑制し、ひいては認知症予防にも貢献し得る連鎖的な健康効果を持つことを意味します。

L8020乳酸菌は、口腔プロバイオティクスとしてだけでなく、全身の健康維持に貢献し得る潜在能力を秘めた画期的な菌株と言えるでしょう。

⑤多様な製品展開と社会実装:研究成果の社会還元

L8020乳酸菌の発見とその科学的エビデンスの蓄積は、多様な製品開発へと繋がり、研究成果の社会還元を強力に推進しています。

生きた菌を摂取するヨーグルトが最も効果的と考えられていますが、現代のライフスタイルに合わせて、様々な形態の製品が登場しています。

以下はその例です。

⚫︎ヨーグルト

L8020乳酸菌を最も効果的に摂取できる形態の一つであり、日常的な食生活に自然に取り入れやすい製品です。

⚫︎タブレット・サプリメント

会議中や移動中など、ヨーグルトを摂取しにくいシーンでも手軽にL8020乳酸菌を補給できます。

⚫︎歯磨剤・マウスウォッシュ

L8020乳酸菌の代謝物を利用した製品で、日々の口腔ケアに組み込むことで、より効果的な悪玉菌対策が期待されます。

⚫︎チョコレート

お菓子感覚で摂取できるため、特に子供やお年寄りなど、抵抗感なくプロバイオティクスを取り入れたい場合に有効です。

これらの多様な製品展開は、それぞれの生活シーンやニーズに合わせて選択できるため、L8020乳酸菌をより多くの人々が継続的に摂取し、口腔健康維持に役立てることを可能にしています。

L8020乳酸菌の社会的な認知度向上にも注目すべき点があります。

2016年にはフジテレビの人気番組「ホンマでっか!?TV」で紹介され、放送後にはYahoo!検索ワードランキングで1位を獲得するなど、大きな反響を呼びました。

また、広島大学で取得された特許を基に、三井物産との連携によるライセンスビジネスも展開されており、研究成果が社会に広く還元される好例となっています。

第5章:L. reuteri複合株とL8020乳酸菌の包括的な比較分析:多様なアプローチ

ここまで、L. reuteri複合株とL8020乳酸菌という二つの代表的な口腔プロバイオティクスについて詳細に見てきました。

ここで両者の特徴を包括的に比較し、その類似点と相違点を明確にすることで、それぞれの菌株の独自性と、口腔健康における役割の多様性を理解していきましょう。

①共通点:

どちらの菌株も乳酸菌であり、口腔内の微生物叢を改善し、虫歯菌や歯周病菌の活動を抑制する可能性を持ちます。

またどちらも口腔プロバイオティクスとして、口腔健康指標の改善に寄与します。

そして両者とも効果を最大限に引き出すためには、継続的な摂取が重要であると考えられます。

②相違点と補完性:

両菌株の最も顕著な相違点は、その菌株のタイプと作用メカニズムの主体の違いにあります。

L8020乳酸菌はLactobacillus rhamnosusに属する単一株であり、その強力な抗菌作用は、バクテリオシンKog1/Kog2という特定の抗菌性ペプチドの産生によってもたらされる側面が強いです。(もちろん一般的なプロバイオティクス菌のメカニズムもあると思われます。)

このバクテリオシンは病原菌の細胞膜を直接破壊するという強力な作用機序を持ち、ミュータンス菌、歯周病菌、カンジダ菌に対し広範な効果を発揮します。

(そもそもが口腔内から発見された菌で、口腔プロバイオティクスのために見つけ出された菌です。)

先ほどもお話ししましたが、Kog1が病原菌細胞内に3分で到達し、5分で細胞を破壊するという迅速な作用が確認されており、その特異性と効率性が際立っています。

さらに、LPS不活性化という抗炎症メカニズムは、L8020乳酸菌が単なる口腔病原菌の抑制にとどまらず、全身性炎症の軽減を介して全身の健康にまで影響を及ぼしうる可能性を示唆しています。

特に、口腔ケアが困難な高リスク集団においても歯周病原菌の有意な減少を達成している点は、その効果の強さを物語っています。

まだまだ発見されてから年月が経ってないので研究データが少ないですが、これからどんどん蓄積していくでしょう。

対して、L. reuteri複合株はL. reuteriという別の乳酸菌種に属し、DSM 17938とATCC PTA 5289という感じで複数株の組み合わせで用いられる製品が多いです。

その作用は、共凝集?過酸化水素産生、酸産生によるpH低下、そして病原菌との競合的排除といった、より一般的なプロバイオティクス菌に共通するメカニズムが主体であると考えられます。

そもそもL. reuteriは1980年代に発見され、臨床試験が200以上も積み重ねられた、歴史の深いエビデンスがしっかりした菌です。

また、口腔内のプロバイオティクスを目指して発見された菌というよりは、全身の健康を目指して発見された側面が強いため、口腔内に対しての研究だけでなく、全身への影響についての研究データが山ほど蓄積されています。

口腔内に関しても、口腔内の酸性環境を緩和し、脱灰リスクを低減したり、C. albicansやC. parapsilosisといったカンジダ菌に対する強力な抗真菌作用も確認されてたりと、病原菌種との特異的な作用をすることも示されています。

これらの違いは、両菌株が口腔プロバイオティクスとして異なる「得意分野」を持っている可能性を示唆しています。

L8020乳酸菌は、特に歯周病原菌の抑制とLPSによる全身性炎症の軽減において広範かつ強力な効果を発揮し、様々な病原菌とカンジダ菌をターゲットとします。

対して、L. reuteri複合株は虫歯予防におけるプラーク酸産生能の抑制や、カンジダ症の管理において効果を示す他、全身の健康増進に影響することが証明されています。

もしかしたら将来的には、これらの異なる菌を適切に組み合わせることで、より広範な口腔疾患の予防と治療に効果を発揮する「複合プロバイオティクス」の開発…なんてことも起こりうるかもしれませんね。

(両方が互いに潰し合わず共存できれば…ですが)

おわりに:口腔健康から拓く健康長寿社会

口腔プロバイオティクスの研究は、まだ発展途上の分野ではありますが、L. reuteri複合株やL8020乳酸菌のような特定の菌株が持つ、口腔内悪玉菌の抑制、炎症反応の緩和といった明確な効果が、科学的エビデンスによって裏付けられつつあります。

プロバイオティクスは、従来のブラッシングやフッ化物応用といった物理的・化学的アプローチに加え、微生物学的な観点から口腔健康を管理するという、新たな予防歯科医療の道を拓くものです。

今後、さらなる大規模な臨床試験、ゲノム解析技術を駆使した作用機序の詳細な解明、そして個別化医療への展開が進むことで、口腔プロバイオティクスの真のポテンシャルが引き出され、より効果的で、個々人のニーズに合わせた予防戦略が確立されるでしょう。

口腔プロバイオティクスは、虫歯や歯周病の予防に貢献するだけでなく、口腔と全身の健康の連関を解き明かし、オーラルフレイル対策や誤嚥性肺炎予防、さらにはLPS不活性化による全身性炎症性疾患の管理を通じて、健康長寿社会の実現に向けた重要な鍵となる可能性を秘めています。

私たちの「オーラルフローラ」を大切に育むことが、未来の健康を形作る一歩となるでしょう。

歯科医療は、単に歯を治すだけでなく、全身の健康を守り育むための「入口」としての役割を、プロバイオティクスという革新的な予防手段を使って、より強く担っていくことになるはずです。

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