2025年6月22日
はじめに
歯科治療において、正確な型取りは治療の成否を左右する重要な工程です。
従来はシリコーンやアルジネートなどの型取り材を使用して、患者の口腔内の形状を詳細に写し取り、それにより様々な技工物を作ってきました。
しかし、これら従来の方法には患者の不快感や誤差のリスク、作業効率の問題が伴っていました。そんな中、近年主流になって来ているのが「光学印象」技術です。
光学印象技術の概要と歴史
光学印象は、高性能なデジタル光学スキャナーを使用して、口腔内の詳細な三次元(3D)データを取得する方法です。
研究開発の段階からを経て、2010年代以降に臨床での普及が進み、多くの先進歯科医院で導入例が増えています。
その歴史は短いながらも、技術革新とともに、より高速かつ高精度なスキャナが市場に登場し、従来の型取り法に取って代わりつつあります。
その背景にはCADCAM技術の発展も関与しています。
光学印象技術の臨床的意義とメリット
まず、患者さんの快適さが大きく向上します。
従来の型取りは粘性の高い印象材を口に含むため、不快感や嘔吐反射を引き起こしやすく、特に小児や高齢者には負担となることが少なくありません。
一方、光学スキャナーは口腔内に差し込むだけでリアルタイムに画像を取得できるため、短時間かつ無痛で済みます。
更にスキャナーの先端も小型化が進んできているので、より快適のなっていっています。
次に、精度の向上です。
従来法では、型取り材の収縮や変形、吐き出し時の誤差などが適合性に影響していました。
ところが、デジタル光学スキャナーはこれらの問題を解消し、高度な解像度で口腔内の微細な構造物まで正確にキャプチャします。
また、効率性も改善され、治療の短縮や複合的なデータ共有も容易です。データはデジタル化されているため、CAD/CAMシステムとの連携がスムーズに行え、補綴物やインプラントの設計・製作が迅速化します。
信頼性とエビデンス
科学的臨床研究も光学印象の有用性を裏付けています。2014の研究では、デジタルとアナログの印象の比較において、歯冠の適合精度において有意な差はなく、光学印象の信頼性の高さを示しました。
さらにGermane 氏が2017に発表した研究では、CAD/CAM冠の長期的な適合性も良好であることが確認されています。
日本歯科医学会のガイドライン(2022)も、デジタル印象の導入を推奨しており、患者満足度や治療効率の観点からも、今後益々普及が期待されています。
未来の展望と課題
今後はAIと連携した画像解析や、より高速・高精度なスキャナーの登場により、さらに便利で精密な診断・治療が実現する見込みです。
一方で、現状では導入コストや操作性などコストが課題であり、すべての診療所が即座に採用できるわけではありません。
終わりに
光学印象は、患者さんの負担を軽減し、高い精度と効率を実現する革新的な技術です。
今後の技術進歩やコストの低減により、ますます普及が進むことが予想されます。
従来の型取り法に変わる画期的な選択肢として、どんどん色んな歯科医院で導入は進むでしょう。