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2025年度学校保健統計調査が示す子どもの口腔健康の実態:むし歯・歯肉炎・歯列の課題

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2026年2月25日

2025年度学校保健統計調査が示す子どもの口腔健康の実態:むし歯・歯肉炎・歯列の課題

(院長の徒然コラム)

はじめに

今年も広島県のホームページに2025年度学校保健統計調査のデータ(全国・男女計)が掲載されました。

この調査は幼稚園から高等学校に至るまで、子どもたちの口腔健康の現状を克明に映し出しています。

この貴重な統計情報からは、単なる「むし歯が多い」「少ない」といった表面的な結果だけでなく、年齢とともに変化する口腔内の状況、そして見過ごされがちな潜在的な課題が浮かび上がってきます。

今回のコラムでは、これらの数値を詳細に分析し、子どもたちの健康な成長を支えるための具体的な考察と提言を行ってみます。

1. むし歯(う歯)の被患率とその年齢別推移:小学校期に急増し、高校で再び高まる傾向

まず、最も注目される「むし歯(う歯)」の状況から見ていきましょう。

①小学校期のむし歯の急増と「未処置歯」の深刻さ

幼稚園5歳児のむし歯被患率19.44%に対し、小学校に入ると一気に数値が上昇し、小学校全体では30.83%に達します。

特に小学校低学年から中学年にかけての増加が顕著で、6歳で24.41%、7歳で30.70%、8歳で36.12%、9歳で36.82%とピークを迎えます。

この時期は乳歯から永久歯への生え変わりが本格化し、口腔内の環境が大きく変化する時期です。

生えたての永久歯はエナメル質が未成熟でむし歯になりやすく、また歯並びが複雑になることで歯磨きが難しくなるために既存の乳歯も虫歯になりやすいことが一因と考えられます。

さらに深刻なのは、「未処置歯のある者」の割合です。幼稚園5歳で12.46%だったものが、小学校6歳で15.24%、7歳で16.83%、8歳で18.43%と、「処置が完了した者」の割合を上回る時期がある点です(例:小学校6歳では完了者9.16%に対し未処置歯15.24%)。

これは、学校健診などでむし歯が指摘されても、治療に繋がっていない、あるいは治療が途中で中断されている子どもが多数存在することを示唆しています。

放置されたむし歯は進行しやすく、痛みや感染のリスクを高めるだけでなく、永久歯の成長にも悪影響を及ぼしかねません。

②中学校での一時的減少と高等学校での再増加

小学校高学年(10歳29.99%、11歳24.56%)でむし歯被患率が減少傾向に転じ、中学校全体では25.23%とさらに低下します。

これは、永久歯列が完成し、齲蝕だった乳歯も生え代わることと、セルフケアの意識が高まることや、保健指導の効果などが考えられます。

しかし、高等学校に入ると再びむし歯の被患率が増加し、全体で32.77%に。特に高校17歳では36.91%と、小学校のピーク時とほぼ同水準にまで達しています。

高校生になると、受験勉強や部活動などで生活が不規則になりがちで、間食が増えたり、口腔ケアがおろそかになったりすることが原因として考えられます。

(そもそも日本の子供は、この時期が1番歯医者離れします。)

③永久歯の1人当たり平均むし歯(う歯)等数に見る実態

中学校と高等学校のデータでは、「永久歯の1人当り平均むし歯(う歯)等数」も示されています。

中学校全体では、一人当たり平均0.47本のむし歯が存在し、そのうち0.17本が未処置歯であることが明確に示されています。これは、中学入学時点で既に永久歯のむし歯を抱え、しかもその約36%が治療されていない状況にあることを意味します。この「未処置歯」の存在は、むし歯の早期発見・早期治療の重要性を再認識させるものです。

2. 歯肉の状態:小学生が最も注意すべき「歯肉炎」のピーク

むし歯と同様に、口腔内の健康状態を示す重要な指標が「歯肉の状態」です。

①小学校高学年でピークを迎える歯肉炎

歯肉の疾病・異常の被患率は、幼稚園5歳では2.38%と低いものの、小学校に入ると顕著に増加します。小学校全体では6.98%に達し、特に小学校高学年の9歳で7.16%、10歳で8.61%、11歳で7.80%と、この時期に最も高い割合を示します。

これは、むし歯の増加傾向とは異なる特徴であり、小学生の口腔ケアにおける重要な課題と言えるでしょう。

小学生の歯肉炎の主な原因としては、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期において、歯並びが不規則になり歯ブラシが届きにくくなること、また、自分で歯磨きをするようになるものの、まだ十分なブラッシングスキルが身についていないことなどが挙げられます。

さらに、間食の増加や口腔内の乾燥なども影響している可能性があります。

しっかりと小学生の間は仕上げ磨きを徹底してあげましょう。

②中学校・高等学校での著しい減少

中学校に入ると歯肉炎の被患率は大きく減少し、中学校全体で3.75%。特に14歳では2.56%まで低下します。

高等学校ではさらに減少し、全体で1.28%、17歳では1.21%と非常に低い水準になります。

この減少は、永久歯列が確立し、歯並びが整うこと、そして思春期に入り身だしなみや口腔衛生への意識が高まることが背景にあると考えられます。

しかし、見方を変えれば、小学生期に適切なケアを行えば、歯肉炎は十分に予防・改善できる症状であるとも言えるでしょう。

3. 歯列・咬合、顎関節、歯垢の状態:多様な口腔問題とその傾向

むし歯や歯肉炎以外にも、口腔内の健康には様々な要素が関わっています。

①歯列・咬合の継続的な課題

歯列・咬合の異常は、幼稚園5歳で4.97%から始まり、小学校全体で5.54%、中学校全体で5.73%と、どの年齢層でも約5%前後の子どもたちに見られます。

高校生になると4.52%とやや減少しますが、これは成長とともに自然に改善するケースや、早期に矯正治療が行われるケースが含まれるためと考えられます。

歯並びや噛み合わせの問題は、見た目だけでなく、咀嚼機能、発音、清掃性にも影響を与え、将来のむし歯や歯周病リスクを高める可能性があります。

早期に相談し、適切な時期に専門医による診断と治療計画を立てることが重要です。

②顎関節の問題と高校生での増加傾向

顎関節の疾病・異常は全体的に低い割合ですが、幼稚園5歳で0.06%、小学校全体で0.12%、中学校全体で0.28%と年齢とともに徐々に増加し、高等学校では全体で0.47%と最も高くなります。

特に高校17歳では0.51%と、他の年代と比べてわずかながらも増加傾向が見られます。これは、成長に伴う顎関節の変化に加え、学業や人間関係などによる精神的ストレス、食生活の変化、スマートフォンやゲームの長時間利用による姿勢の悪化などが、顎関節に負担をかけている可能性が示唆されます。

③歯垢の状態と口腔衛生習慣

歯垢の状態のデータは、子どもたちの口腔衛生習慣を間接的に示しています。

幼稚園5歳で0.99%と低い数値ですが、小学校全体で3.25%、中学校全体で4.05%と増加します。

これは、自分で歯磨きをするようになる過程で、まだ十分に歯垢が除去できていない子どもがいることを示唆します。

高校生では3.58%とやや減少しますが、基本的な歯磨き習慣の確立は、むし歯や歯肉炎予防の基礎中の基礎であり、どの年代においても継続的な指導が不可欠です。

4. 総括!総合的な考察

この2025年度学校保健統計調査のデータは、子どもたちの口腔健康が単一の問題ではなく、年齢や成長段階に応じて多様な課題を抱えていることを明確に示しています。

⚫︎幼稚園・小学校低学年

乳歯のむし歯予防と「未処置歯」の治療完了、そして歯肉炎の兆候に早期に気づくことが重要です。保護者による仕上げ磨きと正しい歯磨き習慣の導入が不可欠です。

⚫︎小学校高学年

永久歯のむし歯予防、特に「未処置歯」をなくすための治療促進が喫緊の課題です。

歯肉炎がピークを迎えるため、正しいブラッシングスキルの習得と定期的なチェックが求められます。

子供の仕上げ磨きは継続してあげてください。

⚫︎中学生・高校生

むし歯の再増加に注意し、忙しい生活の中でも口腔ケアを継続できるような意識付けが必要です。

顎関節のトラブルにも目を向け、多感な時期の精神的なストレスマネジメントを含めた全身の健康管理が重要となります。

学校健診だけでなく、かかりつけ歯科医による年数回の定期健診と、フッ素塗布などの予防処置を習慣化することが、生涯にわたる口腔健康の基盤を築きます。

学校、家庭、歯科医院、行政が密接に連携し、子どもたちの口腔健康に関する情報を共有し、一体となって支援していく体制を構築することが、最も効果的な解決策となるでしょう。

子どもたちの口腔健康は、彼らの学力、身体能力、そして将来の生活の質(QOL)に深く影響します。

2025年度学校保健統計調査が提示する数値を真摯に受け止め、今日から具体的な行動へと繋げることで、全ての子どもたちが健康で輝かしい未来を築けるよう、社会全体で取り組んでいくことが求められています。

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