2026年2月15日

(院長の徒然コラム)

はじめに
現代社会において、私たちは常に多忙な生活を送っています。
その中で、私たちの心身の健康を支える最も重要な要素の一つが「睡眠」であることは、誰もが認識していることでしょう。
しかし、その睡眠中にひっそりと、そして知らず知らずのうちに私たちの歯や顎に深刻なダメージを与えている可能性がある「歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム、Sleep Bruxism: SB)」という現象について、皆様はご存知でしょうか?
「歯ぎしりは単なる癖」と軽んじられがちですが、実はその背後にはストレスや睡眠の質の低下といった複雑な要因が絡み合っていることが、近年の研究によって次々と明らかになっています。
特に、睡眠とストレスの相互作用が、歯ぎしりの発生や重症度に大きく影響を与えるという事実は、私たちの歯科医療におけるアプローチを大きく変えつつあります。
今回のコラムでは、日本大学松戸歯学部の山川雄一郎先生の論文「Effect of Altered Sleep Duration on Sleep Bruxism」(Cureus, 2025年10月23日掲載)を主軸に、睡眠時ブラキシズムと睡眠の質、ストレスとの深い関係性について、研究データを踏まえながら深く掘り下げていきます。
皆さんの歯と全身の健康を守るための新たな視点と具体的な対策について、詳細に解説してまいりますので、どうぞ最後までご覧ください。
睡眠時ブラキシズム(SB)の多面性:単なる癖ではないその実態
まず、「睡眠時ブラキシズム(SB)」とは、睡眠中に無意識のうちに行われる咀嚼筋(あごを動かす筋肉)の活動の総称です。
具体的には、歯を強く食いしばる「クレンチング」、上下の歯をゴリゴリとすり合わせる「グラインディング」、そして下顎を特定の位置に固定する「タッピング(カチカチと歯を打ち鳴らす)」などが含まれます。
日中に意識して行う「覚醒時ブラキシズム」とは異なり、本人が気づかないうちに起こるため、その発見や管理が難しい点が睡眠時ブラキシズムの大きな特徴です。
なぜSBは問題視されるのか?その多様な影響
SBは、単なる迷惑な習慣以上の深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
その影響は、歯や顎にとどまらず、全身の健康や生活の質(QOL)にまで及びます。
①歯への深刻なダメージ
睡眠時ブラキシズムの最も直接的な影響は、歯そのものへの過度な負担です。
長期間にわたる睡眠時ブラキシズムは、エナメル質(歯の表面の硬い層)の摩耗を引き起こし、象牙質(エナメル質の下の比較的軟らかい層)が露出することで、知覚過敏のリスクを高めます。
さらに、マイクロクラック(微細なひび割れ)や歯の破折、詰め物や被せ物、インプラントなどの補綴物の破損・脱離、さらには歯根破折に至るケースも珍しくありません。
これらのダメージは、結果的に複雑で高額な歯科治療を必要とすることが多く、患者さんの経済的・時間的負担も大きくなります。
②顎関節症の発症・悪化
咀嚼筋の過剰な活動は、顎関節(こめかみの前あたりにある関節)に炎症や変形を引き起こし、顎関節症の原因となります。
顎の痛み、口が大きく開けられない開口障害、顎を動かす際の「カクカク」といったクリック音や「ジャリジャリ」といったクレピタス音などが主な症状です。
重症化すると、食事や会話といった日常動作にも支障をきたし、QOLを著しく低下させます。
③咀嚼筋や周囲組織への影響
咀嚼筋は睡眠時ブラキシズムによって常に緊張し、疲労が蓄積されます。
これが顔面痛、特に側頭部や頬の痛みの原因となり、緊張型頭痛を誘発することもあります。
また、歯周組織(歯を支える骨や歯ぐき)にも過剰な力が加わるため、歯周病の進行を加速させる可能性も指摘されています。
④睡眠の質の低下と全身への影響
睡眠時ブラキシズムは、睡眠中の覚醒反応(マイクロアローザル)と密接に関連しているため、睡眠の分断を引き起こし、睡眠の質を低下させます。
その結果、日中の眠気、集中力の低下、疲労感、イライラ感など、全身の倦怠感や精神的な不調に繋がることもあります。
また、ベッドパートナーの睡眠を妨げる騒音源となることも少なくありません。
睡眠時ブラキシズムの病態生理学:中枢神経系の関与
かつて睡眠時ブラキシズムは、咬み合わせの不適合や歯並びの悪さといった「末梢神経系の問題」が主な原因と考えられていました。
しかし、現在では、脳の活動や自律神経系の働きが関与する「中枢性の問題」であるという見方が有力です。
特に、睡眠中の覚醒反応(マイクロアローザル)と睡眠時ブラキシズムの発生が強く関連していることが、多くの研究で示唆されています。
マイクロアローザルとは、睡眠中に短時間(通常3秒以上)覚醒状態に移行する現象で、脳波上で確認されます。
このマイクロアローザル中に、一時的に心拍数や呼吸数が増加し、咀嚼筋の活動も活性化することが知られています。
睡眠時ブラキシズムの正確な有病率は年代や診断基準によって異なりますが、成人における有病率は約8〜31%とされており、決して稀な現象ではありません 。
しかし、本人が気づかないことが多いため、適切な診断と治療に結びついていないケースも多いのが現状です。
睡眠の質とストレス:睡眠時ブラキシズムを巡る複雑な背景
睡眠時ブラキシズムのメカニズムは完全に解明されていませんが、多くの研究がそのリスク因子として、カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙、不安、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、そして心理的ストレスなどを挙げています。
特に、「睡眠の質」と「ストレス」は、睡眠時ブラキシズムの発生に深く関わる中核的な要因として注目されています。
睡眠の質が睡眠時ブラキシズムに与える影響
睡眠は単に体を休めるだけでなく、心身の回復、記憶の定着、ホルモンバランスの調整、免疫機能の維持など、生命活動に不可欠な役割を担っています。
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠(N1、N2、N3ステージ)から構成され、特に深いノンレム睡眠であるN3ステージは、身体の修復や成長ホルモンの分泌に重要な役割を果たします。
睡眠の質の低下は、日中の眠気、集中力の低下、気分の落ち込み、身体的な不調など、様々な問題を引き起こします。
睡眠時ブラキシズムにおいても睡眠の質の評価は非常に重要ですが、これまでの研究では、睡眠時ブラキシズムと睡眠の質の関連性について一貫した見解が得られていませんでした。
一部の研究では、睡眠時ブラキシズムと自己申告の慢性ストレスや睡眠の質との間に有意な相関がないと報告されている一方で 、別の研究では、睡眠時ブラキシズムが口腔関連QOLの低下や睡眠の質低下と関連していると示唆されています。
これらの矛盾する結果は、主観的な評価のみに依存していたり、客観的な睡眠指標の欠如が原因である可能性が指摘されていました。
ストレスと睡眠時ブラキシズムの強い関連性
心理的ストレスは、睡眠時ブラキシズムの強力な誘発因子の一つとして広く認識されています。
ストレスを感じると、私たちの体は交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上昇し、筋肉が緊張しやすくなります。
この全身的な緊張反応が、睡眠中の無意識の咀嚼筋活動、すなわち睡眠時ブラキシズムに繋がると考えられています。
ストレスはまた、睡眠の質を低下させる直接的な原因にもなります。
不安や心配事が頭から離れず、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目覚めたりすることは、誰しも経験があるでしょう。
このような睡眠の質の低下は、睡眠時ブラキシズムをさらに悪化させるという悪循環を生み出す可能性があります。
ストレスが痛覚閾値や体性感覚に影響を与えることも示されており、歯科領域においては、睡眠制限が口腔顔面領域の体性感覚(触圧覚、温冷覚、痛覚など)に影響を与えることも示されています。
これらは、ストレスがSBの発現メカニズムに直接的・間接的に関与する可能性を示しているのです。
「睡眠の深さ」と「歯ぎしり」の意外な関係
このような背景の中、「Effect of Altered Sleep Duration on Sleep Bruxism(睡眠時間の変化が睡眠時ブラキシズムに与える影響)」という論文研究では、睡眠時ブラキシズムと睡眠の質の関係性について、客観的なデータに基づいて調べました。
この研究では、28名の健康な成人(男性15名、女性13名、平均年齢30±3歳)を対象に、5日間にわたる厳密な実験手順を実施しました。
参加者には、以下の異なる睡眠条件を課しました
①ベースライン睡眠(BS):普段通りの睡眠。
②睡眠不足(SD):一晩中覚醒した状態を維持する。
③回復睡眠1(RS1):SD後の最初の夜の睡眠。
④回復睡眠2(RS2):SD後の2日目の夜の睡眠。
この実験期間中、参加者はポータブル筋電計(EMG)を用いてSBイベントを客観的に測定しました。
EMGは、側頭筋の活動を継続的に記録し、設定された閾値を超える筋活動をSBイベントとしてカウントします。
同時に、Sleep Profiler™という睡眠評価デバイスを用いて、総睡眠時間、睡眠効率、各睡眠段階(REM、N1、N2、N3)に費やした時間の割合、マイクロアローザル指数などの睡眠パラメーターを詳細に記録しました。
さらに、主観的な評価として、エプワース眠気尺度(ESS)、ストレス数値評価尺度(SNRS-11)、世界保健機関QOL尺度(WHO-5)も測定し、眠気、ストレス、ウェルビーイングの状態を把握しました。
論文研究での発見
論文研究では、睡眠時ブラキシズムと睡眠、ストレスの関係について、これまでの研究では得られなかった客観的で重要な知見をもたらしました。
①睡眠不足後の回復睡眠(RS1)で睡眠時ブラキシズムイベントが大幅に減少
驚くべきことに、SD後の最初の回復睡眠(RS1)期間中、SBイベントの頻度はベースライン睡眠(BS)および2日目の回復睡眠(RS2)と比較して、統計的に有意に低い値を示しました。
つまりこれは、睡眠不足によって睡眠時ブラキシズムが増加するという一般的な予想に反する結果であり、SBのメカニズムに関する新たな視点を示したのです。
②RS1期間中に深い睡眠(N3)が増加し、睡眠の質が顕著に向上
SBイベントの減少と並行して、RS1期間中には総睡眠時間と睡眠効率がBSと比較して有意に高まりました。
さらに重要な点として、深いノンレム睡眠であるN3ステージに費やした時間の割合がRS1で有意に増加し、一方でN2ステージの割合は減少しました。
マイクロアローザル指数(睡眠中の微小な覚醒回数を示す指標)もRS1で有意に低く、これは睡眠の分断が減少したことを示唆しています。
③睡眠不足(SD)がストレスと眠気を著しく増加させ、ウェルビーイングを低下
当然ながら、SD後には眠気(ESS)とストレス(SNRS-11)が著しく増加し、ウェルビーイング(WHO-5)が有意に低下しました。
これは、睡眠不足が心身に大きな負担を与えることを再確認する結果です。
研究結果が示唆するメカニズム
これらの結果は、「睡眠不足が直接的にSBイベントを増加させる」という単純な関係ではないことを示唆しています。
むしろ、睡眠不足に続く「回復睡眠」において、体は失われた深い睡眠を補償しようと働き(リバウンド現象)、その結果としてN3ステージが増加し、睡眠の構造が一時的に改善されたと考えられます。
この深い睡眠の増加とマイクロアローザルの減少が、ストレスレベルの低下と相まって、SBイベントの抑制につながった可能性が高いと考察されています。
つまり、睡眠時ブラキシズムの発生は、睡眠の質の低下だけでなく、特に「睡眠構造の変化」、中でも「深い睡眠の割合」が重要な要素である可能性を示しているのです。
SBイベントがマイクロアローザルと強く関連しているという既存の知見と組み合わせると、深い睡眠の増加がマイクロアローザルを抑制し、結果的に咀嚼筋の過剰な活動も減少させた、というメカニズムが考えられます。
SD後のストレスレベルの低下も、この効果を補強したと推測されます。
この研究は、睡眠時ブラキシズムが単なる歯や顎の問題ではなく、睡眠の質、特に睡眠構造の変化やストレスといった、より広範な生理学的・心理学的要因と密接に関連していることを、客観的なデータで裏付けるものと言えるでしょう。
歯ぎしり管理への新たなアプローチ:生活習慣とストレスケアの重要性
論文研究の成果は、従来の睡眠時ブラキシズム治療に加えて、睡眠の質とストレス管理*いう、これまで以上に包括的な視点を取り入れることの重要性を示唆しています。
①従来のSB治療とその限界
これまで、SBの治療法としては、主に以下のような対症療法が用いられてきました。
⚫︎ナイトガード(スプリント)
就寝時に口腔内に装着する装置で、歯への過度な負担を防ぎ、歯の摩耗や顎関節へのダメージを軽減します。これは歯の保護には非常に有効ですが、睡眠時ブラキシズムそのものを根本的に止める効果はありません 。
⚫︎薬物療法
症状に応じて、筋弛緩剤や抗不安薬などが処方されることもありますが、副作用のリスクや根本的な解決には繋がりにくいという課題があります。
⚫︎ボツリヌス毒素注射
咀嚼筋の過活動を抑制するために、ボトックス注射が用いられることもあります。
一時的な効果は期待できますが、対症療法であり、やはり根本原因へのアプローチとは異なります。
⚫︎咬み合わせの調整
かつては、咬み合わせの不適合が睡眠時ブラキシズムの原因と考えられ、歯を削るなどの調整が行われることもありましたが、現在では咬み合わせがSBの直接的な原因であるというエビデンスは乏しく、むしろ睡眠時ブラキシズムによって咬み合わせが変化するという見方が主流です。
これらの治療法は、症状の緩和や歯の保護には寄与しますが、睡眠時ブラキシズムの根本的な原因、すなわち睡眠構造の乱れやストレスレベルに直接アプローチするものではありませんでした。
睡眠とストレスを考慮したホリスティック(包括的)なアプローチ
睡眠時ブラキシズムの管理において、ライフスタイルの改善、特に「睡眠スケジュールの見直し」と「ストレス軽減」こそが極めて重要なのです。
これは、歯科医師が患者さんに対して、よりパーソナライズされた治療計画を立案する上で、非常に価値のある情報となります。
①睡眠の質の向上と睡眠構造の改善
⚫︎規則正しい睡眠習慣の確立
毎日同じ時間に就寝・起床し、体内時計を整えることが、質の良い睡眠を促進する基本です。
特に、SD後の回復睡眠でN3ステージが増加したように、十分な睡眠時間を確保することで、深い睡眠を回復し、睡眠構造を正常に近づけることができます。
⚫︎最適な寝室環境の整備
暗く、静かで、適切な温度(一般的に18〜22℃)に保たれた寝室は、良質な睡眠のために不可欠です。
遮光カーテンの使用、耳栓やアイマスクの活用、寝具の清潔保持なども効果的です。
⚫︎就寝前のリラックス習慣
就寝前には、カフェインやアルコールの摂取を控え、スマートフォンやパソコンなどのブルーライトを発するデバイスの使用を避けるべきです(ブルーライトはメラトニン分泌を抑制し、睡眠を妨げます)。
温かいお風呂にゆっくり浸かる、軽いストレッチやヨガを行う、瞑想や深呼吸をする、穏やかな音楽を聴くなど、心身をリラックスさせる習慣を取り入れましょう。
⚫︎睡眠負債の解消
慢性的な睡眠不足は、睡眠時ブラキシズムのリスクを高める可能性があります。
週末に寝溜めをするだけでなく、日々の睡眠時間を確保することが重要です。
②効果的なストレス管理
⚫︎ストレス源の特定と対処
日常生活におけるストレスの原因を具体的に特定し、可能な限りそれらに対処したり、ストレスへの反応を変えたりすることが重要です。
職場の人間関係、家庭内の問題、経済的な不安など、ストレスの源は多岐にわたります。
⚫︎リラクゼーション技法の導入
深呼吸、漸進的筋弛緩法、瞑想、ヨガ、マインドフルネスなどは、ストレスホルモンを抑制し、リラックス効果を高めるのに有効です。
これらの技法を日常生活に定期的に取り入れることで、ストレス耐性を高めることができます。
⚫︎定期的な運動習慣
適度な有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)は、ストレスを解消し、精神的な健康を向上させるだけでなく、睡眠の質を高める効果もあります。
ただし、就寝直前の激しい運動は、かえって睡眠を妨げる可能性があるため避けましょう。
⚫︎趣味や社会活動を通じたストレス解消
仕事や義務から離れ、自分の好きなことに没頭する時間を持つことや、友人や家族との交流を深めることは、ストレス解消に非常に効果的です。
⚫︎専門家によるカウンセリング
ストレスが慢性化し、自分だけでは対処が難しいと感じる場合は、心理カウンセラーや精神科医などの専門家に相談することも、有効な選択肢です。
歯科医師と多職種連携によるトータルケア
睡眠時ブラキシズムの治療と管理は、単独で行うのではなく、歯科医師を中心とした多職種連携が極めて重要です。
歯科医師は、睡眠時ブラキシズムによって生じた歯や顎への物理的なダメージを診断し、ナイトガードの作成や補綴物の修復といった対症療法ではありますが直接的な治療を提供します。
しかし、今回の研究で示されたように、睡眠時ブラキシズムの背景に「睡眠の質」や「ストレス」が深く関わっていることを理解すれば、歯科医師は患者さんに対して、以下のような多角的なアプローチを提案できるようになります。
⚫︎詳細な問診と生活習慣のヒアリング
患者さんの睡眠時ブラキシズムの症状だけでなく、睡眠習慣、ストレスレベル、日中の眠気、全身疾患の有無などを詳しく聞くことで、睡眠時ブラキシズムの根本原因を探ります。
ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)やエプワース眠気尺度(ESS)などを用いて、睡眠の質や眠気を客観的に評価することも有効です。
⚫︎睡眠専門医への連携
重度の睡眠時無呼吸症候群や不眠症など、睡眠時ブラキシズムの根底に重篤な睡眠障害が疑われる場合は、睡眠専門医への紹介を積極的に行います。
睡眠専門医は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)などを通じて、睡眠障害を正確に診断し、適切な治療法(CPAP療法、薬物療法など)を提供します。
睡眠時ブラキシズムはN2ステージで最も多く発生するとされていますが、睡眠障害の改善が睡眠時ブラキシズムの軽減に繋がる可能性があります。
⚫︎心療内科・精神科医への連携
慢性的なストレスや不安、うつ病などが睡眠時ブラキシズムの主要な原因であると判断される場合、心療内科や精神科医への紹介も考慮されます。SNRS-11やWHO-5などを用いた評価は、ストレスやウェルビーイングの状態を把握し、連携の必要性を判断する上で役立ちます。
⚫︎生活習慣指導とセルフケアの推進
歯科医師からも、睡眠衛生の改善やストレス軽減のための具体的な生活習慣アドバイスを提供できます。
例えば、就寝前のスクリーンタイムの制限、規則正しい食生活、適度な運動などです。
患者さん自身が積極的にセルフケアに取り組むことで、治療効果の向上と再発防止に繋がります。
⚫︎定期的なフォローアップ
睡眠時ブラキシズムの管理は長期的な視点が必要です。
ナイトガードの調整、歯や顎の状態のチェックに加え、患者さんの睡眠やストレスレベルの変化についても定期的に評価し、必要に応じて治療計画を見直します。
このように、歯科医師は単に歯を診るだけでなく、患者さんの全身の健康状態、特に睡眠やストレスレベルにも目を向けることで、より効果的な睡眠時ブラキシズム管理が可能になり、患者さんのQOL向上に貢献できます。
終わりに:歯と心の健康を守るために
「歯ぎしり」は、多くの人が経験しながらも、その本当の恐ろしさや、根本的な原因が理解されていないことがあります。
しかし、今回の論文研究は、睡眠不足がSBイベントに影響を与え、特に「深い睡眠の確保」が睡眠時ブラキシズムの頻度を減少させる可能性を示唆する画期的なものです。
そして、その背景にはストレスレベルの変動が深く関わっていることが改めて浮き彫りになりました。
この知見は、私たち歯科医療従事者だけでなく、睡眠時ブラキシズムに悩むすべての人々にとって重要なメッセージとなります。
歯ぎしりは、単なる歯の問題ではなく、ストレスや睡眠の質、特に睡眠構造と密接に関連する全身的な問題として捉える必要があります。
また睡眠の質向上とストレス管理が鍵であり、ナイトガードなどの対症療法に加え、規則正しい睡眠、快適な寝室環境、リラクゼーション、適度な運動など、生活習慣の見直しが歯ぎしり軽減に繋がる重要な要素です。
深い睡眠を増やすことで、睡眠時ブラキシズムの原因となるマイクロアローザルを抑制し、ストレスレベルを管理することが、睡眠時ブラキシズムの長期的な改善に繋がる可能性があります。
あなたの歯の健康は、日々の睡眠、そして心の状態と深く結びついています。
今日から「質の良い睡眠」と「上手にストレスと向き合うこと」を意識し、笑顔あふれる健康な毎日を送るための一歩を踏み出してみませんか。
歯科医院では、皆さんの歯の健康、ひいては全身の健康を守るための最適なアドバイスを提供できます。お気軽にご相談ください。
