2026年1月15日

(受付さんの備忘録)

はじめに
歯医者さんに入った瞬間、何とも言えない独特の匂いが鼻をつくことが多いですよね。多くの人が「消毒くさい」と感じて苦手意識を持つあの匂い。
実はその正体には、複数の要因が絡んでいます。
今回のコラムでは、あの匂いがどうして生じるのか、どのような成分が関わっているのか、さらに匂いを軽減するための対策について、わかりやすく解説します。
歯医者の匂いの正体
歯科医院の匂いは様々な成分が混ざり合ってできています。主に以下のようなものが原因となります。
1. ユージノール(オイゲノール)
ユージノールは、歯科において非常に重要な成分です。
これは、被せ物をつける際に使用されるセメントや治療中の仮の蓋に使うセメントに含まれています。
ユージノールはスパイスであるクローブから抽出される成分で、特有の甘いスパイズ香が特徴です。
消炎作用や鎮痛作用もあり、虫歯の痛みを和らげるためにもよく用いられます。
2. ホルムクレゾール
ホルムクレゾールは、根管治療で使用される薬剤の一つです。
強い匂いがあり、最近では使用が減少していますが、未だに根菅治療に用いている病院もあります。
(当院では使用をしておりません。ホルムクレゾール(FC)は、発がん性を持つホルムアルデヒドを含み、毒性が高いために使用しないことにしております。)
3. 消毒剤
アルコールや次亜塩素酸など、治療器具や手を消毒する際に使われる薬剤も匂いの原因です。
これらは揮発性が高く、強い刺激臭を持つため、匂いに敏感な方には嫌悪感を与えることがあります。
4. 歯科材料
歯科治療に用いるレジンやそのモノマー類も匂いの要因です。
特に未反応のモノマー(メチルメタクリレートなど)は、化学的なニオイを発することがあり、治療直後に特に強く感じられることがあります。
仮歯とか作成直後に匂いがするのは、これですね。
5. 金属や器具の匂い
治療器具の金属自体や、器具の消毒に使われる薬剤の残留などから生じる匂いも存在します。また、ラテックス手袋や滅菌袋の素材臭も無視できません。
6. 治療からくる人体由来の匂い
唾液や血液、さらには虫歯からの分泌物など、治療中に生じるにおいも影響します。
これらは空気中に微細な粒子として漂い、独特な「病院の匂い」を出してしまいます。
これを防ぐには、院内換気や吸引システムしかありません。
7. 空気の滞留と心理的要因
医院内の換気が不十分な場合、様々な匂いがこもりやすくなります。
このような状況では、匂いがより強く感じられることがあります。また、過去の痛みや恐怖の記憶と結びついて匂いに対する強い嫌悪感を引き起こすこともあります。
なぜ匂いを嫌うのか
人によって嗅覚の鋭さや感受性が異なるため、同じ匂いでも感じ方には個人差があります。
また、アレルギーを持つ方や特定の化学物質に敏感な方には、特に強い不快感を与えることがあります。
そして何より、「匂い」はトラウマを引き起こすことがあるということです。
過去に歯医者での痛い体験や怖い印象が強い場合、その匂いがトラウマとなり、嗅ぐだけで不安を引き起こすことがあります。
匂いは記憶と深く結びついているため、過去の体験が影響を与えやすいのです。
歯医者の匂いは「不潔」のサインか?それとも「清潔」の証?誤解されやすい「匂い」
多くの人が「歯医者の匂い」は清潔でない、または不快なものと考えがちですが、実は逆の場合も多いです。
消毒や衛生管理のために使われる薬剤の匂いは、むしろ清潔であるための証明とも言えます。
つまり、「匂い=危険」ではなく、「匂い=安全対策」と捉えることができるのです。
とはいえ「トラウマ」を引き起こしたりする匂いは嫌なものですよね。
医院での匂い対策
歯科医院では、患者さんが匂いを快適に感じられるようにさまざまな対策を行っています。以下に例を紹介しますね。
1. 換気の改善
医院内の空気を新鮮なものに入れ替えるため、外気を取り入れるシステムを採用する医院が増えています。
これにより、滞留している匂いを軽減し、快適な空間を維持します。
2. 空気清浄機・活性炭フィルター
医院には、化学物質や粒子を取り除くための空気清浄機が設置されている場合があります。
特にHEPAフィルターを搭載したものは、有害な微細物質を除去する効果が期待されます。
(当院も搭載済みです。)
3. 低臭・無臭の材料への切替
最近では、匂いの少ない材料や消毒薬の使用を選択する医院も増えてきています。
これにより、匂いの発生を根本的に抑えることが可能になります。
4. マスキング(別の香りで和らげる)
患者さんが感じる匂いを和らげるために、柔らかい香りを持つアロマやディフューザーを用いる方法もあります。
ただし、香りの好みには個人差があるため、強すぎない香りが選ばれます。
5. 定期的な清掃・消毒
医院内を清潔に保つために、定期的な清掃や消毒が徹底されています。これにより、滞留臭の発生を防ぎます。
(もちろん逆に消毒の匂いはつきます。)
患者さんができる具体的な工夫
患者さん自身が匂いに対してできる工夫もあります。以下のポイントを参考にしてみてください。
1. 受診前の準備
歯医者に行く前に、強い香水や濃い化粧品を控えてください。これによって医院側のマスキングが効きやすくなり、より快適に感じられるでしょう。
あまり強い香水をつけると鼻が慣れてしまい、アロマの効果が落ちてしまいます。
2. 予約時に伝える
「匂いに敏感」といったことを事前に伝えると、医院側も配慮してくれることがあります。
例えば、換気を強めたり、匂いの少ない部屋に案内してもらえるかもしれません。
3. 深呼吸や気をそらす
待合室で気分が悪くなった場合、外の空気を吸ったり、深呼吸をすることで気分をリフレッシュできます。
また、好きな音楽を用意し、イヤフォンで聴くことで気をそらすのも有効です。
4. 知識を持つ
匂いの原因や医院の対策について事前に知識を持つことで、心理的な不安を軽減できる場合もあります。
知識を身につけて柔らかい気持ちで匂いを克服しましょう
忘れてはいけないのは、ユージノールが持つ特有の香りは、実はスパイスで有名なクローブの香りに由来することです。
カレーの香りを感じる際のスパイスとしてお馴染みであり、身近な存在でもあるわけです。そのため、歯医者の匂いも「少し身近な香りだ」と思うことで、心の緊張が和らぐことがあるかもしれません。
匂いがもたらす印象を変えることで、歯科医院に対する恐怖心や不安感を少しずつ解消できる場合もあります。
「歯医者は嫌な匂い」という固定概念から解放されるために、匂いのポジティブな側面を考えてみましょう。
例えば、歯科の治療には多くの消毒作業が含まれます。消毒液の匂いは、患者さんを守るための努力の表れであることを理解することで、「匂い=不安」から「匂い=安全」と認識できるかもしれません。
また、周りの人と歯科医院での体験について話し合うことで、自分だけではないことを知ることができ、少し安心感が得られるかもしれません。友達や家族に「歯医者の匂いが苦手」と話すことで、共感を得られることが多いです。
終わりに
歯科医院の匂いは、ユージノールやホルムクレゾールなどの薬剤、消毒薬、歯科材料、患者由来のにおいが混ざり合ったものです。
それらの多くは「安全で清潔」を保つためのものですが、心理的な要因や個人差により、不快感を引き起こすことが多いのが事実です。
最近では、医院側で匂い対策を行うところも増えてきており、患者さん自身も匂いに対して少し工夫をすることで快適に過ごすことができるでしょう。
「歯医者の匂い」を少しでも和らげるために、対策を考え、柔軟に捉える心を持つことが重要です。
当院では、ディフューザーや空気清浄機を用いて歯医者の匂いの対策をしていますので、安心して受診してください。
これからも、歯医者に対する印象を少しでも良くするために、一緒に努力して参ります。
健康な歯を手に入れるための第一歩は、安心して歯医者に行くことです。
そのために、あなたの気持ちを大切にし、匂いを柔らかく受け止めていただけると嬉しいです。
