2025年6月30日

歯を失ったとき、多くの方が気になるのが「入れ歯でちゃんと噛めるのか?」という点です。噛めることは、食事や会話の快適さ、さらには口腔の健康維持にとって非常に重要です。今回は最新の研究や臨床例を踏まえながら、入れ歯の噛む力やその実現可能性について詳しく解説します。
入れ歯の種類と特徴
まず、入れ歯には大きく分けて「部分入れ歯」と「総入れ歯」があります。
部分入れ歯は歯が部分的に残っている場合に使用され、金属やプラスチックのバネで残存歯に固定します。

一方、総入れ歯は全ての歯を失った場合に用いるもので、顎の粘膜に吸着させて保持します。

入れ歯の素材や設計によって、噛む力や装着感は大きく異なります。最新の技術では、より快適で噛みやすい入れ歯の開発が進んでいますが、実際の噛む力は天然の歯やインプラントと比べて制限されることが一般的です。
入れ歯の噛む力に関するエビデンス
科学的な研究によると、通常の入れ歯の噛む力は、天然歯の約10%〜20%程度と報告されています。例えば、天然の歯の平均噛む力が平均250〜300ニュートン(N)であるのに対し、入れ歯の場合は20〜50N程度と測定されています。
入れ歯と天然歯の咬合力の差は、入れ歯の構造や吸着力の違いに起因します。天然歯は歯根と顎の骨にしっかり固定されているため高い力を発揮できますが、入れ歯は粘膜と吸着やバネに頼っているため、噛む力に限界があります。
噛みやすくなるための工夫とポイント
しかしながら、適切な調整や補修によって、入れ歯の噛みやすさや快適さは大きく改善されます。具体的には、
定期的な調整:口腔内の変化に合わせて入れ歯の調整を行うことで、しっかりと吸着し、食べ物を噛み砕きやすくなります。
材料の選択:柔軟性の高い素材や、最新の技術を用いた設計により、噛む力と耐久性を向上させることが可能です。
また金属(チタン)の床などを選択することによって入れ歯の分厚さを軽減できます。
噛み合わせの改善:噛み合わせのバランスを整えることで、食事中の違和感を減らし、噛む力を最大限に生かすことができます。
補綴の併用:インプラントや橋の併用により、入れ歯の安定性と噛む力を増やす方法もあります。
これらの工夫によって、特に部分入れ歯では天然歯に近い噛み心地を得ることも可能です。
実際の食事や満足度の調査結果
多くの患者さんは「入れ歯でも十分に噛める」と感じています。ただし、その満足度は個人差も大きいです。日本臨床歯科医学会の調査(2020年)によると、入れ歯使用者の約70%が「日常の食事は問題ない」と回答しています。一方で、「硬いものや生ものは不安」という声もあります。
また、臼歯部にインプラントを併用したバネではなく被せるタイプの入れ歯は、噛む力を大幅に向上させることも可能です。患者さんのニーズや状態に応じて、最適な補綴方法を選択することが重要です。
まとめ
入れ歯でも噛める可能性は十分にある
結論として、入れ歯は適切な調整や選択によって、十分に噛むことが可能です。ただし、天然歯やインプラントと比べると、噛む力や効率は制限されるため、硬いものや非常に粘りのある食べ物は避けた方が良い場合もあります。
「噛む力が心配」「食事に満足できない」と感じている方は、歯科医師と相談し、自分に合った義歯の調整や併用方法を見つけることが大切です。最新の技術や科学的エビデンスに基づいたケアを受けることで、入れ歯生活もより快適に過ごせるでしょう。