2025年10月27日

(院長の徒然コラム)

はじめに
皆さんは歯が白くなりたいという願望はありますか?
歯科医師が施術するホワイトニングと、ホワイトニングサロンなどで行えるセルフホワイトニングには、いくつかの大きな違いがあります。
それらは、使用する薬剤の種類と濃度、施術プロセスの安全性と効果、そして施術前後のケアとフォローアップにおいて明確な差があるのです。
これらの違いは、それぞれの方法の結果や持続性にも影響を与えます。今回のコラムではそれぞれの違いやエビデンスについて詳しく見ていきます。
1. 薬剤の種類と濃度
歯科医院のホワイトニング
歯科医師が使用するホワイトニング剤は、一般的に過酸化水素(Hydrogen Peroxide)や過酸化尿素(Carbamide Peroxide)を主成分としています。
これらの薬剤は漂白作用が強力であり、歯のエナメル質やエナメル質の下にある象牙質に浸透して着色を分解します。
歯科医院では、高濃度のホワイトニング剤(例えば、過酸化水素30%以上)が使用されることが多く、そのために短時間で効果的な結果が得られるのが特徴です。この高濃度の薬剤は、歯科医師の監督下でのみ安全に使用できると法律でされています。
セルフホワイトニング
セルフホワイトニングの場合、酸化チタンを主成分とし、歯の表面の汚れを取るために、ポリリン酸やメタリン酸といった成分が含まれています。
安全性が比較的高い一方で、結果が現れるまでに時間がかかり、その効果も歯科施術ほど強くありません。
2. 施術プロセスの安全性
歯科医院のホワイトニング
歯科医師は、患者の口腔内の状態を事前に評価し、適切な施術方法を決定します。(例えば歯周病などで歯肉が腫れている場合は、薬剤が歯に触れない部分ができてしまうので、すぐにはホワイトニングができません。また、虫歯があれば薬剤がしみてしまうので、事前に大きな虫歯は治療したのちに行います。)
歯や歯肉の健康状態を確認した上でホワイトニングを行うため、施術による副作用やトラブルのリスクを最小限に抑えられます。また、施術中にホワイトニング剤が歯肉などの組織に触れないよう、歯科医師によって保護が行われるため、安全性が高いです。
セルフホワイトニング
一般的に、セルフホワイトニングでは専門家の評価が得られず、個々の状況に応じた評価やケアが難しいです。しかし薬剤自体の刺激は低いため、万が一薬剤が歯肉に接触することがあっても、歯肉への影響は少ないのが特徴です。
3. 効果と持続性
歯科医院のホワイトニング
高濃度の薬剤を使用するため、短期間で明らかな効果が得られるのが特徴です。それに加えて、専門的な機器(例えば、光照射装置)を使用することで、薬剤の活性化を促し、漂白効果を最大化します。
このため、数回の施術で目に見えるほど白くなることが多いです。また、専門的なケアにより効果が長持ちしやすいです。
セルフホワイトニング
基本的に漂白というよりも清掃や表面の着色除去を目的とした薬剤を使用しているため、効果が出るまでの時間が長い…というより元よりは白くなりません。
また、結果の持続性も歯科医師による施術に比べて短いことが多く、特に飲食物や日常のライフスタイルによって元の色に戻るケースも少なくありません。
ですが、ホワイトニングサロンによっては回数無制限などを謳っているところが多いので、何回もできるというのが特徴です。
4. 施術前後のケアとアフターフォロー
歯科医院のホワイトニング
施術前には徹底したクリーニングが行われ、汚れや歯石の除去を通じてホワイトニング剤の効果を高めます。
また、施術後は歯科医師は知覚過敏や副作用を最小限に抑えるためのアフターケアを提供します。
例えば、フッ素塗布や知覚過敏を軽減するための薬剤の塗布が行われます。さらに、歯科医師はホワイトニングがもたらす結果を評価し、必要に応じて追加の施術やメンテナンスの計画を立てます。
定期的なフォローアップにより、理想的な白さを維持できるよう、適宜調整を行います。
セルフホワイトニング
セルフホワイトニングでは施術後のケアが限られており、多くの場合、使用者自身が知識に基づいてアフターケアを行う必要があります。
例えば、市販の知覚過敏用歯磨き粉の利用や、特定の飲食物を避けることで、自ら結果を管理します。歯科医師の関与がないため、効果を最大限に引き出すための適切なケアは、使用者の感覚に依存します。
5. 経済的側面と選択の自由
費用対効果
歯科医院でのホワイトニングは歯科医院以外でのセルフホワイトニングに比べて初期費用が高い場合が多いですが、その分、即効性があり効果が持続するため、長期的には経済的に見合ったものになることもあります。
セルフホワイトニングは初期費用が抑えられるものの、継続して使用する必要があることから、効果を維持するためには追加の費用がかかる可能性があります。
効果から言えば、費用対効果は高いとは言えないでしょう。
個人のライフスタイルに合う選択
セルフホワイトニングは、自宅で手軽に好きなタイミングで行える便利さが魅力ですが、即効性や結果の確実性を求める場合には、歯科医院での施術が適しています。
また、専門家の意見を基に安全な方法を選ぶことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
もしあなたが、具体的に白くなりたい目安があるのであれば、専門家に質問できる歯科医院でのホワイトニングはおすすめです。
6. 歯科でのホワイトニングの効果と安全性のエビデンス
ここまでの説明で、歯医者で使う薬剤が、歯医者以外で行う薬剤より強いと聞いて、逆に不安を抱く人もいるかもしれません。
ここではそういった不安を解消するためのエビデンスを紹介します。
①オフィスホワイトニングに使う高濃度過酸化水素の漂白効果と安全性
Kwon氏とWertz 氏が2015年に発表した論文では、歯科医院で行われるホワイトニングに関する臨床試験の結果を分析しています。
彼らは、過酸化水素濃度20%以上の施術は、平均して約1〜2シェードの色調改善が認められ、短期間で明らかな効果を得られると報告しています。
ただし、安全性については高濃度薬剤は歯のエナメル質や歯肉に刺激を与える可能性があるため、専門家の管理下で適切な保護措置を講じる必要があります。
もちろんそういった副作用に対してもエビデンスがあり、2010年のHaywood氏の研究では、適切な治療手順を遵守した場合、治療中の副作用や知覚過敏は比較的軽度であり、管理可能とされています。
②歯科で受けられるホームホワイトニングのエビデンス
歯科で行えるオフィスホワイトニング以外のホワイトニング、ホームホワイトニングについてのエビデンスです。
Joiner 氏が2006年に発表した論文では、低濃度の過酸化物を用いたホームホワイトニングは、長期的な色調改善をもたらすとともに、安全性も高いと指摘しています。
ただし、効果の発現には数週間から数ヶ月を要し、特に歯の色の変化は個人差が大きいことも明らかになっています。
一方、セルフホワイトニング製品の中には過酸化水素濃度が低いため、即効性に欠けるものの安全性は高いです。
ただし、患者さん自身で使うため、製品の使い方次第で効果が不均一になるケースも報告されています。
行う際はしっかりと方法を聞いて遵守するようにしてください。
7. 終わりに
歯科医師が施術するホワイトニングとセルフホワイトニングは、目的や期待する結果、使用者のライフスタイルによって選択が異なります。歯科医師による施術は、高濃度の薬剤と専門的なケアにより、短期間で大きな効果を得られ、安全性が高いというメリットがあります。
一方、セルフホワイトニングは比較的低コストで手軽に始められるものの、医療ホワイトニングと同様の効果を得ることはできません。
具体的な選択をする際には、事前に歯や口腔内の健康状態の評価を受け、専門家のアドバイスを参考にすることが推奨されます。
それぞれの方法の利点と欠点を理解した上で、自分が望む白さに辿り着くために、最適な方法を選ぶことが、健康的で美しい歯を維持するための最良のアプローチです。
もし本来の歯よりも白い歯を手に入れたいと思われる場合は是非ご相談ください。
