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年代に応じたフッ素応用の濃度の違い—科学的根拠と臨床現場からの視点

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2025年5月18日

年代に応じたフッ素応用の濃度の違い—科学的根拠と臨床現場からの視点

(院長の徒然ブログ)

はじめに


虫歯の予防において、フッ素(フッ化物)は最も効果的な手段の一つとして長年にわたり語られてきました。

しかし、その適正な濃度と使用方法については、明確に定められたガイドラインと最新の科学的エビデンスに基づいた指標が必要です。
フッ素の過剰曝露による歯のフッ素症や潜在的な副作用についての記事を時折見かけますが、各年齢層に最適な濃度設定と用法について、論文や公的機関が研究結果や指標を出しています。

本コラムでは、厚生労働省や日本歯科医師会の推奨内容、国際的な研究データを紹介しながら、年代別に適したフッ素応用の具体例とその根拠について詳細に解説します。

フッ素の科学的背景と安全性

①フッ素の虫歯予防作用と安全性(リスク)
フッ素はエナメル質中にフルオロアパタイトを形成し、再石灰化を促進します。

酸による脱灰を阻止し、歯の耐酸性を高めるため、虫歯予防には欠かせない成分です。

しかし、過剰摂取は副作用を引き起こします。特に、乳幼児期に大量のフッ素を摂取すると、フッ素症(エナメル質の白斑や点状変色)が生じる可能性があります。

したがって、適切な濃度と使用量の指導が不可欠です。


②厚生労働省と歯科医師会によるガイドライン

まずは公的機関が推奨する濃度を確認してみましょう。

⚫︎乳幼児(0~6歳)では

フッ素含有歯磨き剤の濃度は1000ppm以下(多くの場合1000ppm未満)、使い方は米粒大程度の少量に限定し、歯磨き指導を徹底しましょう。


⚫︎小児(6歳以上)や成人では


一般には1000〜1500ppmの歯磨き剤を推奨しています。高濃度の製剤を使用する場合は医師の指導のもと限定的に使用しましょう。
これらは、過剰曝露によるフッ素中毒や歯のフッ素症リスクを未然に防ぐための安全策として設定されています。

研究に基づくエビデンスと推奨濃度

①乳歯の予防効果と安全性
あくまで研究データとしてですが、2018年のコクランレビュー(Cochrane Oral Health Group)によると、1500ppmのフッ化物を含む歯磨き粉は、乳歯の虫歯予防に効果的であると示されました(Thompson et al., 2018)。

ただし、当然他のリスクもあるため、乳幼児への使用については慎重を要し、使用法の厳守と保護者の指導が重要です。


②小児・青年期のデータ
研究データの種類別比較としてRichardsらの2016に行われた研究をご紹介いたします。1000〜1250ppmの歯磨き粉に関する複数のランダム化比較試験において、無添加や低濃度の歯磨き粉と比べて、虫歯発生数が有意に減少したことが報告されています。
また比較研究例としてはMcDonaldらが行った研究では、1450ppmと1500ppmの歯磨き粉の比較で、両者に差はほとんどなかったものの、どちらも無添加と比べて虫歯予防に有意な効果を示したと報告しています。

③成人・高齢者の効果
成人や高齢者では、1000〜1250ppmのフッ化物を含む歯磨き粉が推奨され、実際に臨床試験や疫学研究においても、長期的な虫歯予防に効果的であることが証明されています(2014のADAの研究より)。

また、高濃度のフッ素製剤(2000ppm以上)は、場面や個人のリスクに応じて限定的に利用されることが多いです。

臨床現場における具体例と注意点

では実際に使用する場合は、指標と研究データどちらを患者さんにお勧めするべきでしょうか?

早速説明します。

①子供への適正な濃度の選択と指導
臨床現場では、子供には特にフッ素濃度と使用量について厳格な指導が必要です。

日本歯科医師会の指針では、0~6歳の子供に対しては、1000ppm以下のフッ素含有歯磨き粉を米粒大の少量で使用させることが推奨されています(日本歯科医師会, 2020)。

これは、フッ素症のリスクを最小限に抑え、安全に虫歯予防を促すためです。
クリニックでの指導例としては、親に対して「歯磨き粉を米粒大にし、なるべく子供の手に持たせて自己管理させる」「夜のみ使用し、フッ素含有歯磨き粉を過剰に使わない」などがあります。

さらに、虫歯予防としてエビデンスの高いシーラントや、子供のうちからの習慣づけとして定期的なフロスの併用も推奨されます。

②成人と高齢者のケース
成人では、虫歯リスクに応じて濃度を調整します。

一般の成人では、1000~1500ppmの歯磨き粉を日常的に使用し、フッ素塗布も併用することで予防効果が向上します(American Dental Association, 2014)。

高齢者においては、口腔乾燥や歯周病の進行、さらに義歯の使用に伴うリスクもあるため、やはり1000ppm前後で、やさしい歯磨きを推奨します。

③高濃度フッ素の使用について
高濃度のフッ化物(2000ppm以上)の製剤は、むし歯リスクが極めて高い患者や、再発性の虫歯患者に限定されます。

これらは、必ず歯科医師の監督のもと、定期的に濃度や使用量を適切に管理しながら使う必要があります。
具体的には、フッ素の高濃度ジェルや塗布剤の適用後、安全に作用させるために一定期間の間隔を空けることも推奨されています。

日本の臨床現場では、特にリスクの高い患者に対し、高濃度フッ素製剤を用いることで、再発を抑制できるケースがあり得ます。

研究データのエビデンス

①研究とガイドラインの現状と課題
最新のエビデンスによると、1500ppmのフッ化物を含む歯磨き粉は、乳歯・永久歯ともに虫歯予防に有効であると確証されています(Thompson et al., 2018)。

特に、乳幼児にはリスクを考慮しながら、しかし十分な予防効果をもたらすために濃度管理が必要です。
一方、従来の市販品の多くは1000〜1500ppmに設定されており、これ以上の高濃度製剤は、歯科医院等の管理下でのみ使用されるようになっています。

歯科医師や保健指導者の役割は、患者の年齢やリスクに応じて最適な濃度や頻度を提案し、副作用のリスクを回避することにあります。

さらに介入した虫歯予防を


個別の虫歯リスクを知り予防推進
遺伝的背景や生活習慣、口腔の状態に合わせて、最適なフッ素濃度や適用回数を決定できる個別化歯科予防が今後大事なテーマとなるでしょう。

例えば唾液検査などのより、常在菌や唾液のpHからカリエスを分析して、虫歯予防に役立てることも有効です。
新規材料と技術の導入
ナノテクノロジーを利用したフッ素リリース型素材や、長時間持続可能なコーティング剤の開発により、より少ないフッ化物濃度でも高い効果を得ることが可能になる見込みです。

例えば、歯面の持続的なフッ素供給や再石灰化を促す新素材は、今後の虫歯予防の重要な武器となるでしょう。

また、バクテリアセラピーなどで、常在菌からのリスクをコントロールするという試みも有用です。
安全性の徹底と教育普及
今後?フッ素の過剰曝露リスクを最小化しながら最大の予防効果を得るために、ガイドラインの見直しや規制の強化も進んでくるでしょう。

また、一般市民や保護者に対して、科学的根拠に基づく正しい情報を伝える教育活動の拡充も現在進行形で行われています。

④歯科医療機関が更なる口腔疾患予防の賦活化を!

科学と臨床の現場は日進月歩で進化しています。エビデンスに基づいた安全なフッ素濃度の設定と、その適切な運用を徹底することは、今後も虫歯予防の礎となるでしょう。何よりも、「適正な濃度」「適切な使用法」「リスク評価」の三つの柱を守ることが、口腔の健康維持において最も重要です。
歯科医療機関では、最新の知識を持ち、患者それぞれの状況にあった予防計画を策定し、指導を行っています。

一方で、患者や保護者にも正しい知識をお渡しして、適切にケアを進めてもらうことで、患者さんの長期的な口腔健康を維持できるのです。

終わりに

今回は、年代に応じたフッ素応用の違いについて、科学的根拠と臨床の実例を交えながら解説しました。

ポイントを整理すると以下の通りです。
乳幼児には、安全性を最優先し、濃度は1000ppm以下、「米粒大」の少量使用を徹底。推奨も国内外のガイドラインに準じています。
子供・成人には、1000〜1500ppmで十分な虫歯予防効果が期待できることが、エビデンスにより示されています。
高濃度フッ素は、リスクの高い患者や専門的な管理下でのみ使用すべきであり、安全性確保のために医師の指示に従う必要があります。
今後は個別化予防や新素材の導入により、より安全で効果的な虫歯予防が期待される。一方、規制や教育の充実も重要です。

医療従事者も患者さんも正しい知識と適切なツールの使用によって、私たちは口腔の健康を維持し、虫歯や歯周病の予防に最大の効果を発揮できます。

科学的根拠と臨床経験を土台に、今後も我々は進化し続ける歯科医療の最前線に立ち、患者さんの健康長寿に寄与していきたいと思います。

何かご不明な点がございましたらいつでもお尋ねください。

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