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セプトカイン配合注カートリッジ(アルチカイン)の薬物動態、安全性について

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2025年4月06日

セプトカイン配合注カートリッジ(アルチカイン)の薬物動態、安全性について

(院長の徒然コラム)

はじめに

こんばんは、以前書いた歯科治療において、セプトカイン配合注カートリッジの導入についてお話ししました。今回はその続きです。

患者の痛みを軽減するために麻酔薬は欠かせない存在です。

数多くの麻酔薬が使用されていますが、その中でもアルチカインは昨今特に注目されています。

アルチカインは、局所麻酔薬の一種であり、欧米では歯科治療において広く使用されています。

今回のコラムでは、アルチカインの薬物動態、安全性、リドカインとの比較、副作用、効果について詳しく解説します。

なお歯科業界関係者の方は、2025年の日本歯科麻酔学会誌に樋口仁准教授の論文が掲載されていますので、併せて読まれることをおすすめします。

アルチカインの歴史

アルチカイン(Articaine)は、アミド型局所麻酔薬であり、1970年代に開発されました。

薬物の分子構造にチオフェン環(C4H4S)を含む局所麻酔薬で、脂溶性の高い薬です。

(因みにリドカインはベンゼン環)

岡山大学からの推薦もあり、2024年9月24日に厚生労働省により製造販売承認され、11月20日薬価収載されました。

1969年にドイツにおいてラッシングによって最初に合成された歴史の深い麻酔薬で、2024年3月時点で、欧米等を含む93の国又は地域で承認されています。

2000年にはアドレナリン添加型の製品が海外で販売開始されています。

欧米でも主に歯科治療において使用され、特に歯の抜歯や根管治療、歯周治療などで幅広く使われています。

セプトカイン配合注の中の成分

メインの有効成分としてアルチカイン塩酸塩と血管収縮薬のアドレナリン酒石酸水素塩が含まれており、添加剤としてピロ亜硫酸ナトリウムとpH調節剤、浸透圧調整(血液と同じ浸透圧)の塩化ナトリウムが含まれています。

アルチカインの薬物動態

それではアルチカインの薬物動態について説明いたします。

吸収

アルチカインは、局所投与後に迅速に吸収されます。特に、歯科治療においては、局所麻酔薬が直接神経に作用するため、効果が早く現れます。

分布

投与されたアルチカインの一部は血液中に分布し、脳や心臓、肝臓などの重要な臓器にも到達しますので全身への影響も考慮する必要があります。(もちろんあくまで一部ですが、伝達麻酔の際はご留意ください)

代謝

アルチカインは、血中のカルボキシエステラーゼにより非活性代謝物であるアルチカイン酸に代謝されるます。また肝臓でも代謝され、肝ミクロソームにおいてもシトクロムP450により同じくアルチカイン酸に代謝されます。

アルチカイン酸は無毒性であり、体外に排泄されます。代謝速度は個人差があり、肝機能への影響には念のため配慮が必要です。

排泄

アルチカインの代謝産物であるアルチカイン酸は、主に尿中に排泄されます。

腎機能が低下している患者では、排泄が遅れる可能性があるため、注意が必要です。

実験では1〜3カートリッジ分(1.7ml〜5.1ml)を口腔粘膜下に注射すると、24時間後までに投与量の53〜57%がアルチカイン及びアルチカイン酸として尿中に排泄され、うち95%がアルチカイン酸、2%がアルチカインとして排泄されました。

作用機序

アルチカイン塩酸塩は、アミド型局所麻酔薬であり、神経細胞の細胞膜のナトリウムチャネルと結合してブロックし(ここはリドカインと同様ですね)、神経における活動電位の伝導を可逆的に抑制し、神経伝達を遮断します。

血管収縮薬であるアドレナリンにより、毛細血管は収縮して血管を介したアルチカインの吸収を抑制し、アルチカインを貯留しやすくすることで局所麻酔による麻酔作用時間を延長させる効果があります。この辺りは従来のオーラ注と同様ですね。

アルチカインの安全性

アルチカインは、一般的に安全性が高いとされていますが、使用に際しては以下の点に注意が必要です。

アレルギー反応

アルチカインに対するアレルギー反応は稀ですが、過敏症のある患者には注意が必要です。

特に、アミド型麻酔薬に対するアレルギー歴がある場合は、使用禁忌ですのでご注意ください。

心血管系への影響

アルチカインというより、セプトカイン配合注にはアドレナリンが添加されています。

アドレナリンは心血管系に影響を与える可能性がありますので、高用量での使用や、静脈内投与が行われた場合には、心拍数の変動や血圧の低下が見られることがあります。

中枢神経系への影響

滅多にあることではありませんが、局所麻酔中毒は起こす可能性があります。

過剰投与や誤って血管内に注入した場合、中枢神経系に影響を及ぼすことがあります。局所麻酔中毒に陥ると痙攣や意識障害などが引き起こされます。

リドカインとの比較

アミド型局所麻酔薬

アルチカインとリドカインは、どちらもアミド型局所麻酔薬です。

当然アミド型麻酔薬にアレルギーのある患者さんには「どちらも使えません」。

解離定数

局所麻酔薬は溶液の中で塩基型とイオン型の平衡状態で存在しています。

局所麻酔薬には固有の解離定数(Ka)があり、ある一定のpH下では、塩基型とイオン型が一定の比で存在しています。

pKa(解離定数の常用対数)は塩基型とイオン型の局所麻酔薬が等しくなるときのpHを意味し、神経細胞膜を通過するのは、水素イオンと解離した状態の,脂溶性の高い塩基型だけなのです。

その塩基型が細胞内に取り込まれ、水素イオンと結合して再びイオン型となり、イオン型の局所麻酔薬がNaチャネルに結合してブロックし、麻酔効果を発揮するのです。

この解離定数がアルチカインとリドカインの解離定数がアルチカインは7.8、リドカインは7.9と非常に近いのです。

効果の持続時間について

アルチカインは、リドカインよりも効果の持続時間が長いとされています。

実験結果ではアルチカイン製剤の効果は約223分±77分持続しています。

一般的にリドカインは作用発現時間が80〜120分です(アドレナリン添加すると120〜180分)。

明らかにアルチカイン製剤の方が長いといえます。

浸透性について

アルチカインは、リドカインよりも浸透性が高いとされており、骨や軟組織への浸透が良好です。

これはアルチカインの構造にチオフェン環があり、それにより脂溶性が向上しているため細胞膜を通過しやすい点と、一般的なリドカイン塩酸塩の濃度である2%よりも高い4%アルチカイン塩酸塩が配合されている点により高い浸透性を実現していると考えられます。

これにより、特に歯科治療においては、より効果的な麻酔が可能となります。

副作用の発現について

アルチカインは、リドカインに比べて副作用の発現が少ないという意見もあります。

ただしもちろん個人差があるため、注意が必要です。

アルチカインの副作用

アルチカインの副作用は、一般的には軽度であり、以下のようなものがあります。

念のため外国の添付文書や報告などから記載していきます。

痛み(8-13%)、頭痛(4%程度)、シリンジ内への血液吸引(3.2%)、腫脹(2.7%)、開口障害(1.6%)、顔面浮腫(1%)、感染症(1%)、歯肉炎(1%)、感覚異常(1%)、動悸(1%)、耳の痛み・中耳炎(1%)咳(1%)

以上のようなものが報告されています。

もちろん、あくまでそういう報告があったというだけで、全部が全部因果関係があったというエビデンスがあるわけではありません。

※神経障害への懸念※

過去の一部の報告では、アルチカイン製剤は他の局所麻酔薬と比較して神経障害の出現しやすい可能性が懸念されています。

報告されている神経障害発症例の多くは、下顎孔伝達麻酔が実施されていて、発現部位は舌に多いとされています。

その原因として考えられるのは、アルチカイン製剤のアルチカイン濃度は4%と他の歯科用局所麻酔薬製剤と比べ高く,神経毒性を起こしやすいためと考えられています。

アルチカインの特徴

アルチカインは、局所麻酔薬として非常に効果的であり、以下のような特徴があります。

持続的な効果

前述のリドカインとの比較でも述べた通り、アルチカインは、効果の持続時間が長いため、長時間の治療にも適しています。

これにより、患者に局所麻酔薬を打ち直す回数も減ってきます。

広い安全域

 アルチカインは、非常に安全域が広い局所麻酔薬です。前述の薬物動態の項目で述べた通り、約90%が血中の非特異的エステラーゼで迅速に代謝されます。(半減期はなんと20分)

これはリドカインなどの他のアミド型局所麻酔薬が主に肝臓で代謝されるのに対し、血中で代謝されるためです。

それゆえに、肝機能が低下している高齢者や肝障害患者などに対して、日本で使用されているリドカイン製剤,プロピトカイン製剤およびメピバカイン製剤よりも有用であると考えらられています。

つまり、局所麻酔薬の反復使用を行う場合、全身への負荷は他の局所麻酔薬と比べると穏やかであると言えるのです。

高い安全性

副作用という意味でも、リドカインと同様に安全性の高い局所麻酔薬と言えます。

有害事象の発生率は極めて少なく、その有害事象も薬剤との因果関係が皆無なものが殆どです。

局所麻酔中毒への懸念が低い

前述の通り、アルチカインは他のアミド型局所麻酔薬と異なり血中の非特異的エステラーゼですみやかに代謝されアルチカイン酸になることから、血中に局所麻酔成分が貯留しにくく、局所麻酔中毒の危険性も低いと考えられます。

海外の論文での信用性が高い

日本では導入されたばかりで、論文も少ない(というか殆ど岡山大学からの論文のみ)ですが、海外ではシステマティック・レビューも報告されているので、信用のある局所麻酔薬であると言えます。

また、局所麻酔の成功率(局所麻酔薬の追加投与の必要性)がリドカインより有意に高いという報告もあります。抜歯だけでなく抜髄に対しての有用性もリドカインより上という評価もされています。

導入を一考する価値は十分にあると考えます。

終わりに

いかがでしたか?

以前もお話ししましたが、新しい風というのはどんどん学習して、有用であるならば取り入れることが我々開業医の使命です。

今後もコラムを通じて学んだことをどんどんアウトプットして参ります。

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