2024年10月06日
(院長の徒然コラム)
皆さんは、歯医者にて治療を受ける際、「保険診療でも白い被せができますよ」と説明を受けたことはないでしょう
私自身、昔小臼歯(前から4番目、5番目の永久歯)に白い歯が保険にて認められた際、とても驚いた記憶があります。
そこからCAD/CAM冠の保険適用範囲は、2020年9月の保険改定により、条件付きではありますが、第一大臼歯(前から6番目の歯)で認められるようになり、2024年6月の診療報酬改定により、ついに全ての大臼歯において、条件付きではありますが、CAD/CAM冠が保険適用となりました。
よって、今患者さんは白い被せ物を保険でも受けられ、自費診療を含めて「どれだけ白い被せ物の質を追い求めていくかという時代になっているのです。
⚫️そもそもCADCAM冠とは何なのか?
CADCAM冠とはComputer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略でコンピュータ上で読込、設計、制作を行っていくことです。
従来通り柔らかい材料を型とり器に盛り、それによって型を取って作成する模型を読み込んで作るパターンと、光レーザーによって読み込んだ歯の情報により作成する光学印象によって作るパターンがあります。
当院では両方ともできるため、患者様の状況や、求められる技工物の精度によって選択していきます。
⚫️CADCAM冠のメリット・デメリット
メリット
①保健が適応可能なため安価
②従来の金属冠に比べ、見た目に優れる。
③作製時はブロックから削りだされるため、技工士の負担が軽減される
④金属アレルギーの心配がない
⑤歯に近い硬さなので、噛み合う反対側の歯を痛めにくい
デメリット
①セラミックに比べると、見た目が劣り透明感が不足している
②セラミックに比べると、丈夫さ硬さに大きく劣る。
③樹脂の成分が多いため、着色物(コーヒー、タバコなど)によって色が染まりやすい。
⚫️CADCAM冠ってセラミックなの?
結論から言うとセラミックではありません。
「ハイブリッドセラミック」です。
セラミックの定義は、「非金属元素からなる無機質固体材料、または人為的に処理して製造された非金属無機質固体材」です。
CADCAM冠にはレジン…すなわち樹脂成分が含まれており、無機成分ではなく有機成分が含まれているため、セラミックではありません。
あくまでセラミックの粉末と樹脂を混ぜ合わせてできたブロックを削り出していくものなのです。
その組成はメーカーによって微妙に異なります。
例えばGCの製品でいえば、シリカと呼ばれる無機質粉末にバリウムガラスといった無機質フィラー加え、樹脂を隙間に埋めていったブロックで出来上がっています。
松風製品であれば、シリカ粉末は共通ですが、微粒子ケイ素、ジルコニウムシリケートといった無機質フィラーを樹脂で繋いでいるブロックを使用しています。
いずれにせよ60%以上はセラミックの成分でできていますが、繋ぎの部分は樹脂であるため、ブロックや冠自体はセラミックとは言えないのです。
⚫️それでも…
確かに物性ではセラミック冠に劣るCADCAM冠ではありますが、白い被せ物が保険で認められたことは、非常に喜ぶべきことです。
上記の強度の問題から、ブリッジ(欠損部をダミーの歯に置き換え、3本以上の歯を繋ぐ被せ物)はまだ保険適応ではありませんが、いずれ強度の問題が改善されれば、CADCAMブリッジが保険適応される時代も来るかもしれませんね。