2025年6月11日

(院長の徒然コラム)

はじめに
近年、歯科治療の世界でさまざまな新しい材料や技術が登場し、患者さんの治療選択肢は拡大しています。
その一つとして注目されたのが、「ドックベストセメント」です。一部の歯科医師や治療法の広告では、「感染を自発的に殺菌し、神経を残せる」といったように強調され、期待を抱いた患者さんもいるかもしれません。
しかし、実際のところ、ドックベストセメントの有効性は科学的根拠の面で議論があります。
なぜなら、その殺菌作用の仕組みや成分については明らかになっているものの、エビデンスとして臨床的に証明されているわけではないからです。
このコラムでは、ドックベストセメントの成分と殺菌メカニズム、そしてそれに基づく効果について詳しく解説し、現状の科学的評価を整理して、科学的根拠に基づき正しい情報をお届けします。
ドックベストセメントとは何か?
ドックベストセメントは、歯科において神経に近い感染や虫歯の進行を管理するための歯科材料です。
特に、「歯髄を保存できる」という特長が謳われることもあり、伝統的な根管治療を避けて歯髄を温存したい患者にとって一定の魅力があります。
この材料には、抗菌作用や組織修復促進のための成分が配合されており、虫歯や感染の進行を止め、歯髄の自己修復を促すことを目的としています。
ただし、こうした効果には科学的な裏付けが十分なのか、臨床試験やエビデンスに基づく評価が必要です。
(※私はドックベストセメントが役に立たないセメントとは微塵も思っていません。
誇張して情報を伝える歯科医師が多過ぎると思っております。)
ドックベストセメントの成分
それでは早速何が含まれているのか、用途も含めて見ていきましょう。主な成分一覧は以下の通りです。
⚫︎主な成分表
酸化亜鉛:73%
酸化マグネシウム:6%
ビスマス:5%
シリカ:4%
酸化鉄:3%
銅:2%
塩化銀:1%
これらが練り合わせて製品になっています。
成分の役割と作用
各成分の役割について詳しく見ていきましょう。
①酸化亜鉛(73%)
抗菌性や硬化剤として働き、材料の乾燥と硬化を促進します。
②酸化マグネシウム(6%)
補強材、やわらかさや耐久性を向上させるために使われます。
③ビスマス(5%)
X線画像上での可視化材、要するにレントゲンに映るようにするために入れられています。
④シリカ(4%)
充填材や増量剤として、材料の機械的性質の向上に貢献します。
⑤酸化鉄(3%)
抗菌性をもたらす役割があります。
⑥銅(2%)
最も重要な抗菌成分。銅イオン(Cu²⁺)は、菌の細胞膜への攻撃や酵素の阻害を通じて殺菌作用を示します。
⑦塩化銀(1%)
これも銀イオン(Ag⁺)の放出による殺菌作用を担います。一部の抗菌歯科材料に使用され、広範囲の微生物に対して効果的です。
これらの成分は、硬化後に歯の修復をさせながら、抗菌作用も同時に期待できる設計となっています。
銅イオン、塩化銀、そして酸化鉄の殺菌メカニズム
⚫︎銅イオン(Cu²⁺)の作用
銅イオンは、昔から抗菌・抗真菌作用のある金属イオンとして知られています。銅イオンは細菌や真菌の細胞に接触し以下のような作用をもたらします。
①細胞膜の破壊
銅イオンは菌の細胞膜に直接結合し、膜の破壊や透過性の障害を引き起こすことができます。
②酵素の阻害
代謝に必要な酵素と結合し、その働きを妨げます。
③酸化に伴うフリーラジカル発生
フリーラジカルを発生させ、細胞のDNAやタンパク質を傷つけます。
これらの作用により、銅イオンは微生物を死滅させると考えられています。
⚫︎塩化銀(AgCl)の作用
銀イオン(Ag⁺)は、抗菌作用において非常に広範囲に効果があります。
①細菌の酵素やタンパク質と結合
酵素やタンパク質を阻害することで正常な代謝を邪魔します。
②細胞膜の損傷
膜の構造を乱し、細胞内外の物質の流出させて殺菌します。
③DNAの損傷
DNAを損傷することで物質の複製や修復を妨げ、菌の増殖を止めます。
銀イオンは抗菌耐性を持つ菌にも有効で、多くの医療現場で利用されています。
結構銀イオンスプレーとか見ますよね。
⚫︎酸化鉄の殺菌性
酸化鉄は殺菌性との関連性があまり言われていませんが、一部の研究では、酸化鉄の抗菌性や微生物制御に関する可能性が示唆されています。
①酸化によるフリーラジカル発生
酸化鉄は、酸化反応を促進し、周囲の環境に反応性の高いフリーラジカルを生成することがあります。
これにより、微生物の細胞膜やDNAの損傷を誘発します。
②鉄イオンの放出
酸化鉄が分解・反応することで微量のFe²⁺やFe³⁺が放出されると、これらの鉄イオンが菌体内に取り込まれ、酵素の阻害を誘発し、抗菌作用を発揮する可能性も考えられています。
ただし、他の2つに比べて酸化鉄の抗菌性についての科学的根拠はまだ低いです。
セメントの効果の科学的評価と臨床での現状
①理論的な効果
これらの成分により、ドックベストセメントは、
感染の広がりを抑える殺菌作用
歯髄や歯髍の自己修復促進
再石灰化の促進
といった効果が期待されます。
②実際の臨床エビデンスと課題
しかしながら、多くの歯科専門家や日本歯科保存学会の見解では、これらの効果について「十分な臨床証拠は存在しない」と指摘しています。
大規模な臨床試験や系統的な研究の不足しておりエビデンスが低いのは事実ですし、科学的根拠は乏しく効果の持続性や再生の頻度についてのデータ不足です。
また臨床効果のばらつきも報告されています。
(一部のホームページでは、他のドクターは使い方がダメなんだーという感じの文章も見受けられますが、そういう問題じゃありません。
科学的根拠を示せての「医療」です)
そのため、ドックベストセメントはあくまで補助的な治療法の一つとして位置付けられています。
ドックベストセメント反対派の医療従事者へ:鉄イオンの殺菌性への誤解
まず言っておくと、私はドックベストセメント推進派でも反対派でもありません。
ただ根拠なく肯定も否定するのもいかがなものかと思います。
よく「ドックセメント反対派」の方が思ってる鉄イオンの殺菌性能への誤解を解いておきます。
良く医療従事者から「埋めてあるセメントなんて酸素に触れない!酸化反応による殺菌反応なんて嘘だ!」という言葉を聞きます。
はっきり言ってこの質問は非常に良い質問であり、誤解をしっかり解いておく必要がある質問でもあります。
まず鉄イオン(Fe²⁺やFe³⁺)は、その殺菌メカニズムにおいても、酸素の有無に左右される部分と左右されない部分の両方を持つんです。
①酸素依存の反応
酸素が存在する場合、鉄イオンはFenton反応やハイドロキシルラジカルの生成により、強い酸化反応を誘導し、フリーラジカルをポンポン出します。
そのため、酸素環境下では、鉄イオンは非常に効果的な殺菌剤となります。
でも実際充填されたセメントでこれは望めません。そういう意味では反対派の意見は確かに一見筋が通ってるように見えます。
②酸素非依存の反応
一方、嫌気性条件でも、鉄イオンは菌の内外において、酸化還元反応や酵素の結合を通じて有害な影響を与えることも可能です。
特に、鉄イオンは、菌のタンパク質やDNAに直接作用し、酸素の有無に左右されずに作用できると考えられています。
つまり、酸素が無くても一定の殺菌作用は、鉄イオンは起こせるのです。
ドックベストセメント反対派の医療従事者へ:金属イオンの濃度薄すぎて殺菌作用なんて見込めるのか?
はい、これも良くドックベストセメント反対派が仰る意見です。
ドックベストセメントの殺菌成分濃度を見てみると
銅:2%
塩化銀:1%
とあります。
これらを材料の全体中の濃度として捉えると、およそ2%および1%の配合比です。
これで果たして効くのかと主張する先生も確かにいらっしゃいます。
⚫︎実際に銅イオンと鉄イオンの殺菌に必要な濃度は?
①銅イオン(Cu²⁺)の殺菌濃度
研究や臨床使用例では、銅イオンの濃度は一般的に数ppm程度から数十ppmが最も効果的な範囲とされています。
具体的には、10ppm〜100ppm程度の濃度で、持続的な殺菌作用が期待できると研究では報告されています。
もちろん短期間の殺菌作用だけ見ると、より高濃度の銅イオンで得られることもあります。
②鉄イオン(Fe²⁺ やFe³⁺)の殺菌濃度
鉄イオンは、その反応性やFenton反応を生じさせるためには、数ppm〜十数ppmの濃度が必要とされることがあります。
ただし、鉄イオンの濃度だけで単純に殺菌効果を得るのは前述の通りエビデンス不足で、pHや酸素(O₂)の有無も作用に影響します。
⚫︎ドックベストセメントの殺菌成分濃度
実際の製品においては
銅の濃度は約2% → これは20,000ppmに相当します。
塩化銀も含まれているため、銀イオンも高濃度という点で効果的な殺菌作用をもたらす可能性は十分に考えられます。
したがって、「理論的には」十分な殺菌作用を発揮できる濃度と考えられます。
ただし、イオンの放出や持続性については別問題です。
硬化したセメントからどの程度の濃度で放出されるかは、しっかり研究する必要があると思いますよ。
⚫︎現実的な見解
配合されたイオン濃度は高いため、一時的な殺菌効果は十分期待できます。
しかし、イオンの持続的な放出や環境中の条件によって、その殺菌抵抗性や効果の持続時間は変化します。
濃度だけを見れば、殺菌作用に十分な濃度(高濃度)を含んでいると考えられますが「十分な濃度」が抗菌作用の臨床的な効果に直結するわけではなく、イオン放出の持続性や環境条件も重要であることを理解しておく必要があります。
行き過ぎたドックベストセメント肯定派の医療従事者へ:永続的な殺菌作用!?
実際に皆さん、ドックベストセメントで検索してみればわかると思いますが、「殺菌作用が永続的」と書いているホームページがいくつかあります。
これ大嘘です。
確かに従来の3MIX-MP法よりは格段に長く持続的です。
しかし説明した通り、殺菌のほとんどは金属イオンの酸化反応に依存したものです。
①抗菌成分の効果は時間とともに減少するのが一般的
多くの抗菌成分は、作用後に徐々に効果が薄れることが普通です。
特に、イオン放出型の抗菌成分(銀イオンや銅イオンなど)は、一定時間内は効果的ですが、その後は徐々に減少し、完全に持続的に殺菌できるわけではありません。
②材料内部のイオン放出は持続的に行われ難い
ドックベストセメントは無機充填材ですが、配合成分のイオン(銅や銀)が長期にわたり徐々に放出され続けることは、技術的に非常に難しいと考えられています。
一度硬化した材料からは、イオンの持続的な放出は確かに行われますが限定的です。
③感染や細菌の再侵入リスクは常に存在
歯科治療では、削除した虫歯や感染の可能性は根絶されても、その環境や再感染のリスクは残ります。
時間とともに抗菌作用が完全に持続することは、科学的に証明されていませんし、ハッキリ言って現行不可能です。
④科学的なエビデンスがない
現在のエビデンスや臨床研究では、長期間(数年)にわたる殺菌効果の持続性に関する信頼できる報告は存在していません。
ほとんどの経験や研究結果は、「一定期間の抗菌効果はあるが、永続的ではない」というものです。
したがって、「ドックベストセメントの殺菌作用が永続的に続く」という主張は、科学的根拠に基づくものとは考えられません。
そのような説明は過大な誇張や誤解を招く表現ですので、言っちゃってる医療従事者の方は速やかにやめましょう。
行き過ぎたドックベストセメント肯定派の医療従事者へ:これは最新の治療!?
たまに患者さんから「ドックベストセメントって最新の治療なんでしょ!?⚫︎⚫︎医院で聞きました。」という質問を受けます。
それは間違いです。
ドックベストセメントは、新しい材料や技術として登場したわけではなく、実は古くから存在している歯科材料の一つです。
⚫︎伝統的な歯科材料の流れを汲む
酸化亜鉛やカルシウム系のセメントは、長年にわたり歯科治療で用いられてきました。
ドックベストセメントという名前や特定の組成を持つ材料は、実は1980年代(約40年前)に開発され、その後、歯髄保存や最小限侵襲治療の分野で再評価されたんです
⚫︎最新治療だと誤解された理由
インターネットや広告で「最新の治療法」や「革命的な材料」として紹介されることもありますが、実際には歴史のある材料を新しい使い方やコンセプトで紹介しているに過ぎません。
あくまでも従来の歯髄保存治療の枠組みから、より「生体に優しい・感染制御に有効」とした新たなアプローチとして再注目され、成分の微細な調整や使用方法の変化により、「新しい治療」として紹介されてしまったのでしょう。
ドックベストセメントは、古くから存在していた材料であり、”新しい治療”というよりは、伝統的な材料に対して新しいコンセプトや応用を加えたもの
です。
したがって、「最新治療」という表現には誤解を招く場合もあるため、正確には「歴史的な素材を現代風に見直したもの」と理解したほうがよいですよ。
行き過ぎたドックベストセメント肯定派の医療従事者へ:歯を削らずに治療できる!?
はい、これをそのまま言っちゃってる歯科医療従事者は本当に罪深いですね。
「歯の削除量が減るかもしれない。」「もしかしたら歯の歯髄を温存できるかもしれない。」なら分かります。
これを本気で思って、説明していらっしゃる先生は、今一度説明を見直した方がいいと思います。
何故なら、「フリーラジカルの浸透深度」について理解されてないと考えられるからです。
前述の通り、金属イオンの放出→フリーラジカル浸透がこのセメントの殺菌成分浸透の肝です。
虫歯の層なんて当たり前ですが、厚みがあります。一度ここで金属イオンの浸透範囲と作用機序をおさらいしましょう。
ちゃんと「根拠あっての医療」です。
①イオンの浸透の仕組み
⚫︎硬化後の材料からのイオン放出
ドックベストセメントは硬化しても、一定の割合で銅イオンや銀イオンを徐々に放出します。
この放出されたイオンが周囲の歯髄腔や感染した組織に浸透します。
⚫︎浸透距離・深さ
イオンは比較的微細な粒子とともに拡散しやすいですが、その深さには限界があります。
特に、硬化したセメントの中や周囲に密閉された状態では、浸透は限定的です。
②浸透を左右する要因
⚫︎材料の透過性
セメントの密着性や硬さ、微細な孔の有無によりイオンの拡散範囲は変わります。
⚫︎感染の程度と場所:深い虫歯や感染巣の場合、イオンの浸透は制限されてしまいます。
③実際の臨床上の浸透可能性
一般的に、イオンは一定範囲に浸透すると考えられますが、その範囲は数十μmから数百μm程度に制限されることが多いです。
深部組織や歯髄の奥深くまで完全に到達するわけではないのが現実です。
そのため、深い虫歯の菌や感染巣の完全な殺菌には不十分であり、「歯を削らずに治療できる夢のセメント」ではありません。
もしこれを説明しちゃってる先生がいたら、「あなたの医院ではホワイトニングも無限の深度で出来るんですか?」と問いかけたくなります。
フリーラジカルの力を万能に考えすぎです。
④浸透を促進するための工夫・条件
さて、前向きな話をしましょう。少しでもセメントの殺菌効果を高めるにはどうしたらいいのでしょう。
⚫︎適切な前処理
可能な限りの感染部分の除去や洗浄を十分に行うことで、イオンの浸透を最大化できます。
⚫︎材料の適切な配置
隙間や空気を残さずセメントで密閉し、イオンの拡散を妨げない工夫が必要です。
⚫︎時間の経過
長期間放置しておくことで、徐々にイオンが拡散し、深部まで届く可能性が高まる場合もあります。もちろん一定の深さには届かないのであしからず…
⑤結論として、ちゃんと可及的に削って虫歯除去しましょう
イオンは材料から一定範囲に浸透しますが、深い虫歯の奥深くまでの完全浸透は難しいため、深部までの完璧な殺菌は期待できないと考えるべきです。
ドックベストセメントの殺菌効果は、主に硬化表面付近や浅めの感染範囲に対して有効なのです。
深部の感染や菌の完全除去には、補足的な治療や追加の処置も必要となることをしっかり認識しておく必要があります。
ドックベストセメントの適応症とメリット
ドックベストセメントの適応症とメリットについてご説明いたします。
⚫︎適応症
・虫歯による歯髄の炎症や感染が中等度の症例
・歯髄の一部を除去した後、神経を保存したい場合
・症状がなく神経が死んでいない大きな虫歯
・ダメ元でも歯髄保存を最優先としたい患者さんの治療選択肢として行う場合
・根管治療に抵抗がある場合や、まず保存を試みたい場合
⚫︎メリット
・神経を保存できる可能性が上がるため、歯髄の機能をできるだけ維持できる
・治療時間が比較的短く、痛みや不快感が少ない
・歯髄まで削らないため低侵襲な治療法
・歯の構造をできるだけ削らずに済むため、歯の強度保持につながる
・神経を保存できることで歯の感覚や反応が維持されやすい
ドックベストセメントが適応でないケース
①強いズキズキする痛みがある場合
数日前から激しい痛みがあり眠れない状況では、神経の炎症(歯髄炎)によるもので、根管治療を行うことで痛みは軽減されます。
痛みを我慢して神経を残そうとすると、後に神経への感染のリスクが高まり、治療の必要性が増します。そのため、ドックベストセメントの適用はお勧めできません。
②神経がすでに死んでいる場合
神経が死んでいるとは、神経が腐敗した状態です。こうしたケースでは、神経の殺菌や除去を伴う根管治療が適切です。
ドックベストセメントによる神経の保存は難しいですが、既に根管治療済みの歯の場合は、再発防止に効果的です。
③虫歯が歯茎の下にまで進行している場合
虫歯が歯茎の下深くまで進んでいると、セメントを密封して充填することができず、適用は不適切です。症状の程度により異なりますが、一般的には推奨されません。
④強い刺激反応がある場合
水や空気に対して痛みを感じたり、痛みで飲食や会話が困難な場合、すでに神経に菌が感染し、歯髄炎を起こしている可能性があります。
このケースでは、後の根管治療が必要となることが多いです。ただし、これが知覚過敏によるものであれば、別の治療や対処法が可能です。
⑤歯が割れている場合
縦方向に根まで裂けてしまっていると、歯の保存が難しいです。一方で、欠けただけで神経に影響していない場合は、ドックベストセメントの適用が可能です。
⑥表層だけの着色や小さな虫歯の場合
表面のみにとどまる虫歯は、セメントを詰めるためのスペースが確保できません。削らずに自然治癒や再石灰化を促す方法(フッ素活用やMIペースト等)が推奨されます。
これらの条件に該当する場合は、他の適切な診断と治療法の選択が必要です。
終わりに
いかがでしたか?
ドックベストセメントについて少しまとめると、
①成分の役割は明確
銅や塩化銀は殺菌作用をもたらし、抗菌性を高めるために配合されている。
②酸化鉄の役割と限界
酸化鉄は抗菌作用を示す可能性があり、鉄イオンの放出を通じて微生物の抑制に寄与することが示唆されているが、その効果は限定的であり、科学的根拠はまだ不十分である。
③機序は理解されているが証拠不足
効果の持続やイオンの放出濃度、再生性については未解明の部分が多い。
④科学的裏付けの不足
現時点では、エビデンスに基づく標準治療として確立されているわけではない。
以上のようになります。
最後にこれを読んでくださった患者さんにお願いですが、情報を正しく理解をして、夢のような治療を謳う広告には過度な期待を持たず、他の確実な治療法と併用または選択肢として検討してください。
残念ながら、ドックベストセメントのような「自費治療」は夢のような治療として、歯医者で紹介されたり、メディアが面白おかしく無責任に紹介してしまいます。
今後も科学は絶えず進歩しています。
新しい証拠や臨床データが得られることで、今後の評価も変わる可能性があります。
そのため、我々歯科医師や患者さんは、最新の情報と科学的根拠に基づいた判断を行うことが重要です。