2024年10月21日
(院長の徒然ブログ)
⚫︎まずセラミック治療を受けている方に思うこと
おはようございます。
ブランデンタルクリニック院長の溝口です。
今回は、色々と思うところがあり、筆(?)を取りました。
それは何かというと、「患者さんにセラミックの知識が足りていない!」ということです。
いきなり失礼かもしれませんが、せっかく高い金額を払ってるのに、着色加工(ステイン法)がなされていなかったり、「昔セラミックを入れてもらったの!」と仰っている患者さんのお口の中に入っていたものが、ハイブリッドセラミックだったり(ハイブリッドセラミックは分類上絶対にセラミックに入れてはいけません。)、歯科医院によってセラミックへの考え方(ハイブリッドセラミックについては考え方云々の話ですらないですが…)が違うようです。
今回はそんな広島市の歯科業界に少しでも一石を投じることになればいいと思います。
⚫︎ハイブリッドセラミックはセラミックじゃない!
まずは以前CADCAM冠の記事でも書いたのですが、「セラミック」という言葉の説明です。
何言ってんだと思われるかもしれませんが、セラミックは正確な材料名ではないのです。(正しくはざっくりとした分類すぎるのです。)
例えるならば、杉材木建築の建物に対して、「この建物は何で出来ているんですか?」という質問に、「この建物は植物で出来ています。」と答えているようなもんです。
セラミックの定義は
「無機物質(金属イオンとの化合物含む)から作られる材料で、焼成や化学的なプロセスを経て硬化したもの」です。
つまり歯科でよく使われるレジン(樹脂であり有機物)を含むハイブリッドセラミックは、名称にセラミックとついていますが、セラミックではありません!
普段私たちがよく目にするガラスや陶器もセラミックです。
歯科で使うセラミックには色んなものがあり、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、フリース(K2O、Na2Oなど)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、リチウムモノシリケート(Li2・SiO2)、リチウムジシリケート(Li2・2SiO2)などがあります。
それぞれのセラミックに耐久性、硬さ、脆性、靭性、透過性、加工しやすさに特徴があるため組み合わせて最適な歯科用セラミックを作り出すのです。
リチウムジシリケートなどは日本の東芝で開発され、日本の歯科研究者が耐久テスト研究の論文を出したのは記憶に新しいです。
この材料について語り始めたら止まらなくなっちゃうので、それは別コラムでお話ししますね。
皆さんのお口の中にあるセラミックは何で作られていますか?
答えられる方は素晴らしいです👏👏
⚫︎セラミックの値段を加工法を指示して調整しましょう!!
さあ本題です。
突然ですが、あなたの口の中にあるセラミックは、つけた時から色はついていますか?
セラミック治療の特徴として、保険治療の追随を許さない審美性があります。
その審美性の一端を担うのが、セラミックへワザと行う着色です。
本物の歯は均一ではなく、一般的に根本の方の色が暗く、先端に行くほど明るいのが通常です。
セラミックにもこういった着色を施さないと、色が浮いてしまい、出っ歯に見えたり偽物の歯と素人目でもわかってしまいます。
この着色方法をどこまで求めるかによって、セラミックの値段は変わってくるのです。
まず着色法について説明しますね。
①単一色(ブロックを削り出しただけでなんの着色もしない)
まず最初に無着色です。1番の利点は安いこと!
削り出して磨く工程のみなので、早い分安いです。
もし奥歯に入れるのであれば、それほど見た目を必要としない場合も多いです。
そういう時は単色のセラミックを入れて費用を抑える選択肢もありだと思います。
なお、前歯に入れた場合は…
綺麗ですね。でも「本物の歯」に見えますか?
これ以上は患者さんの好みなので、是非以下の着色法も検討してみてください。
②ステイン法
予め患者さんの他の歯の色調を写真などで撮っておき、それを参考にセラミックの表面部分に着色していく方法です。
セラミックの表面を適切に処理し、色素が定着しやすい状態にしたうえで、特殊な色素(ステイン)をセラミックの表面に塗布します。
その後、色素を定着させるために、セラミックを高温で焼成します。
これにより、色素がセラミックの内部に浸透し、色調が再現されるだけでなく耐久性も向上します。
陶芸をやっている方なら「釉薬(ゆうやく)」のようなものだとお考えください。
お手軽(ではないのですが)な着色法で、多くの方にご満足いただける着色法です。
前歯で本物の歯に見せたいならば、ステイン法は最低でも選びたいところです。
(当院ではステイン法はサービスで、単一色とお値段変えていません。)
③レイヤリング法
色調の違うセラミックを薄く積層(レイヤー)重ねていく方法です。
ステイン法のさらに上をいく技術です。
見た目の再現としては最高峰のものです。
最初にベースとなる層を作り、その後、色や透明度を調整しながら、必要な層を追加していきます。
そして各層を焼成して硬化していきます。
こうして透明感や奥行きのある色調を再現するだけでなく、セラミックの耐久性も向上します。
まるで何度も鉄を折り返して鍛える刀鍛冶のようです。
手間暇かかる分高額です。
あなたのお口の中のセラミックの着色法は何ですか?
答えられたら自分の拍手です👏👏
⚫︎結びに…
以上のように、どこまで求めるかによって着色法を選択して貰えば、価格は抑えることができるケースもあります。
できればこういった情報を広島の皆さんで拡散してあげてください。
自費診療は保険診療と違って、病院の言い値です。
ただ単純に「セラミック!」ではなく、何も優れているセラミックを入れて、歯の着色加工法は何なのか?そもそも加工してあるのか?というのを、是非患者さんにも興味を持ってもらいたいのです。
当院では「被せ物だけでも」3つのセラミック製品を使い分け、着色加工でも3種類から選んでいただきます。
加えて無着色とステイン法で価格を変えていません。(せっかくセラミックを入れるんだから、着色はサービスです。)
歯医者の言いなりではなく、自分のニーズに合ったセラミックを患者さんが選択できる時代がくることを切に願います。