2024年11月04日
(院長の徒然ブログ)
セラモーションというセラミック
こんにちは、前回のガラス系セラミックの雄:e.maxのお話はどうでしたか?
今回は同じガラス系セラミック
(二ケイ酸リチウム別名「リチウムジシリケート」が主成分のガラスセラミックで、長石系セラミック(ポーセレン)の発展型のセラミック種です。)
であるドイツ生まれのすごいやつ!
Dentaurum社製のセラモーションプレスを紹介していこうと思います。
セラモーションプレスは、歯科加圧成形用セラミックスの一つで、非常に審美性、特にe.maxを超える透明感を持つ優れたセラミックスです。
まずはセラモーションプレスの成分と特性について詳細を説明いたします。
セラモーションプレスの成分から見える特徴
セラモーションプレスはドイツ生まれのDentaurum製の高強度セラミックで、日本では白水貿易社さんが取り扱っています。
主成分はリチウムジシリケート(二ケイ酸リチウム)から構成されています。
というかこのリチウムジシリケートがほとんどで、あとは一部に顔料と他セラミックを含むという、THEガラス系セラミックという特徴を持ちます。
これらの材料を高温で軟化し、加圧しながら鋳型に押し固めたブロックを削り出して、補綴物を作っていくのです。
私のセラミック関連のコラムを読んだ方ならご存知かもしれませんが、
この材料は、カメレオン特性とも言うべき周りの色と良く調和し、周囲の歯に馴染んできてます。リチウム、シリコン、酸素を含む化合物のためにジルコニアほどでないにしろ高い強度と、ジルコニアを超える美しい透明感を出してくれます。
また、化学的に安定しているのも特徴で、ジルコニアと同程度の耐酸性を示してくれます。
セラモーションプレスの物性
曲げ強さは450MPaと、e.maxの470MPaには一歩劣り、ジルコニアの1000MPa以上には大きく劣ります。
それでも、昔のポーセレンと比較すれば、4倍強の強度を誇ります。
そのため、被せなどにも対応できる高強度セラミックとなっています。
熱膨張係数は10.25×10⁻⁶/℃であり、実はe.max より僅かに象牙質の熱膨張係数に近いです。
因みにエナメル質が11.4×10-6/℃で、象牙質が8.3×10-6/℃であり、コンポジットレジン(CR)が物によりますが16.8〜96.4×10-6/℃です。
モース硬度は7で天然歯とほぼ同じであり、溶解量も25μmと口腔内での安定性は非常に高いです。
セラモーションプレスの特徴
①高い強度を誇る
セラモーションプレスの圧縮強さはジルコニアに勝てません。
しかし十分にセラミックとして高い強度を誇るので、咬合力をちゃんと負担でき、奥歯にも使用可能です。
②自然な審美性+白さ
e.maxは、を説明する際、「自然な透明性」「自然な歯の色」と説明しました。
セラモーションは、e.maxに比べて、若干黄色のといいますか自然観が抑えられており、代わりに純粋な白さが強くなっています。
つまり、象牙質の色や自然な歯を表現したければe.max、透明性溢れる白さを表現したい(ポーセレンの色に近いですね)場合はセラモーションプレスを選択するという形になってきます。
このように自然な色調に透明感を上げた歯を表現できるため、審美的な患者さんのニーズに応えてくれるセラミックなのです。
なお、同社から色調を整えるためのツールも販売されており、ステイン法でも患者さんのニーズにしっかり応え、見分けがつかないほど綺麗な歯を作成可能となります。
(もちろん歯科技工士さんの腕前によりますが)
③加工が容易
セラモーションプレスはCAD/CAM技術に対応したブロックが2種類販売されており、2ブロックを重ねて削り出すことも可能です。
LT(クラウン、ブリッジ用)とHT(インレー用)に分かれており、用途にあったブロックを使用して作成していきます。
特にLTのブロックの色調バリエーションは多数で、大抵のVITAシェードガイド(下写真)に対応可能です。
④アレルギーが起きにくい
ガラス系セラミック全般に言えることですが、セラモーションプレスも生体親和性が高く、アレルギー反応が起こるリスクは著しく低いです。
⑤耐摩耗性
セラミックプレスは歯と同程度の硬さのため、耐摩耗性にも優れており、長期間にわたって使用していただけます。
⑥適合が安定して維持される
セラモーションプレスの熱膨張係数は、10.25×10-6/℃とエナメル質にも近く、象牙質の値とも離れていないので、口腔内の温度変化で、補綴物と歯の境界面でのストレスは最小限となっています。
そのため補綴物の破損や脱離のリスクは抑えられています。
⑦反対の噛み合わせの歯(対合歯)に優しい。
天然歯のモース硬度は約7なのですが、セラモーションプレスのモース硬度も7なのです。
要するに天然歯同士で咬合している時とほぼ変わりはないということなのです。
(ジルコニアは8〜8.5で対合歯を摩耗させるため嫌う先生もいるほどです)
使用する補綴物
セラモーションプレスは、クラウン(被せ物)、第二小臼歯までのブリッジ(ダミーの歯を含む橋渡しをする被せ物)、インレー(詰め物)、ラミネートベニア(上の前歯に貼り付けるシェル)など、さまざまな補綴物に使用されます。
特に審美性が必要とされる前歯や負担がそこまで掛からない補綴物を制作する際に、その特性が活きます。
いかがでしたか?
セラモーションプレスは高い強度と透明感、バリエーションのある色調を兼ね備えた材料なんです。
是非セラミック治療の際は、ご検討いただければと思います。
これからはセラミック治療は選ぶ時代です。
自分の歯に合ったセラミック治療をしていきましょう。