2025年1月14日
(院長の徒然ブログ)
皆さんは歯の神経を、歯科治療でとったことはありますか?
歯の神経をとった後は、歯の根っこにお薬を充填し、そこに土台を建てて、被せをします。
今回はその歯の土台に使う材料の種類、特に金属の「メタルコア」と繊維・樹脂でできた「ファイバーコアの違いと、それぞれのメリット・デメリットについて説明していきます。
はじめに
歯科治療において、根管治療後の歯の補強は非常に重要です。
特に、歯の構造が大きく損なわれた場合、コア築造が必要になります。
コアは、クラウン(被せ物)を支えるための基盤となる部分であり、主にファイバーコアとメタルコアの2種類があります。まずはこれら2つのコアの概要について説明します。
ファイバーコアとは
ファイバーコアは、主にガラスファイバーや炭素ファイバーを使用して作られたコアです。
これらの材料は、軽量でありながら高い強度を持ち、歯の自然な弾性に近い特性を持っています。
ファイバーコアは、通常、樹脂で固定され、歯の内部に埋め込まれます。
メタルコアとは
メタルコアは、金属(銀合金や稀に金合金)で作られたコアです。
メタルコアは、強度が高く、耐久性に優れていますが、金属特有の重さや硬さがあるため、歯の自然な動きに対してはやや不利な面があります。
ファイバーコアのメリット
①弾性特性
ファイバーコアは、歯の自然な弾性に近い特性を持っているため、咬合力を適度に歯全体に分散させることができます。(弾性が均一でないと、力が一部に集中して、歯が折れやすい)これにより、歯根の破折リスクが低減します。
②審美性
ファイバーコアは、透明感があり、歯の色に合わせやすいため、審美的な面でも優れています。
特に前歯など、見える部分に使用する際には大きな利点です。
またメタルコアで時々起こるメタルタトゥーのような色素沈着もありません。
③接着性
ファイバーコアは、歯牙・樹脂と良好に接着するため、コアと歯の結合が強固になります。
これにより、コアの脱落リスクが低下します。
近年はセメント技術の向上により更に強固になっています。
ファイバーコアのデメリット
①強度の限界
ファイバーコアは、メタルコアに比べて強度が劣るため、特に大きな咬合力がかかる部位には不向きな場合があります。
②技術的な要求
ファイバーコアの適切な配置や接着には、専門的な技術が必要です。
技術者の経験やスキルによって結果が左右されることがあります。
③強度の限界
ファイバーコアは、樹脂を含むため、歯茎より下の部分に埋め込むと、歯茎から滲出液を吸い、適合が悪くなったり接着が甘くなります。
滅多にないですが、歯茎の下までコアを入れて残そうとする症例では、使用を控えた方が良いです。
メタルコアのメリット
①高い強度
メタルコアは非常に強固で、咬合力に対して優れた耐久性を持っています。特に奥歯など、強い咬合力がかかる部位に適しています。
②安定性
メタルコアは、長期間にわたって安定した性能を発揮します。
金属の特性により、変形や劣化が少ないため、材料そのものが壊れたりすることが少ないです。
③コスト
一般的に、メタルコアはファイバーコアよりも安価であるため、経済的な選択肢としてあがります。
メタルコアのデメリット
①審美性の欠如
メタルコアは金属製であるため、特に前歯に使用すると、色が透けて見た目が悪くなることがあります。
審美的な要件が高い場合には不向きです。
②硬さと歯根への影響
メタルコアは硬いため、咬合力が直接歯根に伝わりやすく、さらに弾性が歯と異なるために圧力が分散しにくく、歯根破折のリスクが高まることがあります。
③アレルギーの可能性
一部の患者は金属アレルギーを持っているため、メタルコアの使用が適さない場合があります。
④金属色の着色
メタルコアを長期にわたって装着していると、土台となっている歯や歯茎の部分に、金属の色が沈着することがあります。
これを「ブラックマージン」や「メタルタトゥー」と呼び、審美面に影響を与えてしまいます。
終わりに
ファイバーコアとメタルコアは、それぞれ異なる特性と利点を持っています。
ファイバーコアは、自然な弾性や審美性に優れ、特に前歯などの見える部分に適しています。
一方、メタルコアは材料自体の高い強度と水を吸わないなど安定性を持ち、土台そのものに強い負荷がかかる部位に適しています。
治療計画を立てる際には、患者の口腔内の状態、咬合力、審美的要件、経済的な要因などを考慮し、最適なコアの選択を行うことが重要です。
歯科医院では、患者さんのニーズを聞き、最も適した治療法を提案致します。
このように、ファイバーコアとメタルコアの選択は、患者の個々の状況に応じて慎重に行う必要があります。
どちらの選択肢にもメリットとデメリットがあるため、治療についての疑問点等ございましたら、お気軽にお尋ねください。