2024年10月30日
(院長の徒然ブログ)
コンポジットレジンは劣化する
こんにちは、今日も昼休憩でコラムを書いていきます。
CR(コンポジットレジン)は、セラミック粒子と合成樹脂を混和して作られています。
皆さんもプラスチック製品を身の回りで使っていると思いますが、合成樹脂は比較的柔らかいのです。
そのため、硬いものを噛むと割れたり欠けたりすることがあります。
もっとも出来るだけそうならないようにするため、フィラーというセラミック成分を含んだものを混ぜ合わせて強度を保っているのですが、材質の劣化が進むと、そのセラミック成分と合成樹脂成分が剥がれてくるのです。
そうなってくると、詰め物が割れたり、外れたりしやすくなってしまいます
では、どういった時に詰め物が劣化してしまうのでしょうか。
論文データを踏まえて説明してみますね。
水につけていると劣化
意外保険診療で使われるCRは吸水が多くて、たった1週間でも1mg/㎠以上吸収するデータが多いんですよ。
特に、詰め物をしたばっかりで磨いてもらったばっかりのCRは多く水を吸っちゃう傾向にあるので、後日さらに磨いてもらうと良いですね。
ただ、口腔内は常に湿潤しており全く吸わないようにはならないので、劣化自体を止める手段はありません。
※以下歯科業界の方向け
現在主流である有機複合フィラーCRは、確かに物性も研磨性も優れているのですが、研究において吸水性と溶出性においては、実は無機質フィラーCRに劣ってしまいます。
水に溶け出して劣化
口腔内にあるCRは、周りが唾液でいっぱいです。
つまり水溶液に付けられているようなものなので、成分が溶け出していくということが分かっています。
ただ、ちゃんと歯医者さんが材料を光で固めて仕上げで磨いて入れ歯、溶け出し(溶出)を抑えることができます。
※以下歯科業界の人向け
かつて米国の科学雑誌Environmental Health PerspectivesにてCRから環境ホルモンの溶出が懸念されてはいましたが、現在では材料の変更とともに、硬化技術により溶出量自体は減っています。
CRの表面研磨を適正に行えば、表面の未重合モノマーおよび低分子化合物が除去されるので、著しく溶出量を低下できるというデータがあります。
温度変化で劣化
これも難しいところですね。
熱いものや冷たいものを食べないわけにも行かないですからね。
データによると、37℃で水に付けたCRよりも60℃での湯につけたCRの方が、早く劣化してしまったそうです。
基本的に耐熱樹脂でもあるんですが、お口の中はある意味身体の中で一番、1日何回も温度変化に晒される場所なので、劣化も促進するというわけですね。
アルコールで劣化
アルコールが一部のプラスチックを溶かすという話は、聞いたことがあると思います。
CRに使っている樹脂はアルコールにも基本的に強いんですが、長期間つける(毎日お酒飲むとか)と樹脂成分が溶出して劣化してしまいます。
酸性・アルカリ性で劣化
お口の中って実は酸が沢山使われます。
食物にも酸、ばい菌から酸ととっても過酷です。
乳酸に蟻酸に酢酸にプロピオン酸などなど、挙げていけばキリがありません。
酸というのはプラスチックに対して、溶解させ膨張させ亀裂を生じさせ、樹脂の加水分解を促進して劣化を加速させます。
おまけにフィラーの種類によっては、さあ大変!
アルカリ土類金属由来のフィラーは溶けちゃいます。
じゃあアルカリ性はどうでしょうか?
答えはこれまた劣化促進して、フィラーが樹脂部分から脱落して、面が粗造になったり亀裂が入ったりします。
それでも最近の複合型フィラーでは劣化の程度は少なくなっています。
ここまで読んだ方ならピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ホワイトニング材」でも劣化します。
(ちゃんとした歯科医院ならばホワイトニング前に説明があったと思います)
ですので、オフィスホワイトニングなど高濃度の薬品を使う場合は、ホワイトニング後にCRを埋め直すと、色直しも出来て一石二鳥ですよ。
劣化因子は繰り返せば繰り返すほど劣化が進行する
今まであげた劣化の条件なんですが、これらは繰り返せば繰り返すほど、どんどん劣化が進んでいきます。
どこかで劣化終わり!とはならないんですよね。
なので、いずれ埋めなおしする必要は出てきます。
これは歯医者の腕がどんなに良くても、いずれ必ず起こります。
因みに一般的に持ちは3年ほどとなっており、メンテナンス時に整えたりしていれば、もう少し長く持つこともあります。
終わりに
いかがでしたか?
保険診療の白い詰め物って、実は埋めて終わりじゃないんです。
埋めた瞬間からある意味劣化が始まってしまうので、しっかりとメンテナンス時に歯医者さんでチェックしてもらいましょう。
CR(コンポジットレジン)のことでも何かご質問があれば、お気軽にお尋ねください。
※以下歯科関係者向け
レジンマトリックス面や界面相の劣化はコンポジットレジンの圧縮強さに大きく影響を及ぼしてしまいます。
コンポジットレジンの耐久向上には両相の耐久性向上が不可欠なため、未重合層を防ぐための光照射の徹底と研磨が必要不可欠です。