2024年10月30日
(院長の徒然ブログ)
e.maxというセラミック
こんにちは、以前にもお話しした通り、セラミック治療と言っても、歯科において現在使われているセラミックは沢山あります。
何でもかんでも「ジルコニア」という方もいらっしゃいますが、はっきり言うとジルコニアが適さない症例というのもあります。
今回は当院でも取り扱ってるe.max(IPS e.maxプレス)という製品について説明していきます。
e.max(イーマックス)は、歯科用の高強度セラミック材料で、特に審美歯科において広く使用されているセラミック材料です。
まずはe.maxの成分と特性について詳しく説明しますね。
e.maxの成分から見える特徴
e.maxはスイス生まれ(現在はリヒテンシュタイン侯国)のivoclar社製の高強度セラミックです。
主にリチウムジシリケート(二ケイ酸リチウム)から構成されています。
私のコラムを読まれている方ならご存知かと思いますが、元となるリチウムシリケートはそもそも日本で開発され、リチウムジシリケートも日本人の研究者がこぞって物性を研究してきています。
この材料は、リチウム、シリコン、酸素を含む化合物で、非常に高い強度と美しい透明感を兼ね備えているんです。
e.maxの物性
まず曲げ強さは470MPaと1000MPa以上を誇るジルコニアの半分以下です。
人工ダイアモンドと言われるジルコニアに比べると強度が格段に落ちてしまいます。
でも十分な強度を持っているんですよ。
熱膨張係数は10.5×10⁻⁶/℃であり、コンポジットレジン(CR)が16.8〜96.4×10-6/℃なのに比べて断然低く、天然の歯近いです。
モース硬度は7で天然歯とほぼ同じであり、コンポジットレジンのように溶出性もないので、口の中に成分が溶け出すこともほぼ無いです。
e.maxの特徴
①高強度
e.maxの圧縮強度はジルコニアに比べれば低いものの、十分に高く通常のセラミックよりも耐久性があります。
ですので、噛む力が掛かる奥歯にも適用できるんです。
②自然な審美性
e.maxは、「自然な透明性」「自然な歯の色」という項目では随一の性能を誇ります。
自然な歯の色調や透明感を再現することができるため、審美にこだわりたい方には最適です。
色調のバリエーションも豊富で、患者のニーズに応じた色合わせが可能なんです。
ジルコニアとかは、実は硬すぎてステイン法などで色が乗りにくいという欠点があるんですが、e.maxはしっかりステインが定着し、素晴らしい色調再現を行えます。
③加工しやすい
e.maxはCAD/CAM技術に対応したブロックがあるため、機械で削り出して精密に加工することができます。
故に容易に患者さんのお口に合わせたオーダーメイドの補綴物を作成することができます。
④アレルギーが少ない
e.maxは生体親和性が高く、アレルギー反応を引き起こすリスクが低いため、比較的安全に口腔内で使用できる材料なのです。
⑤摩耗しにくい
e.maxは、耐摩耗性にも優れており、長期間にわたって使用しても擦り切れたとしない特性を持ちます。
⑥適合が安定して維持される
先ほども書きましたが、e.maxの熱膨張係数は、天然歯と近い値を持っているため、歯と補綴物の間での熱的なストレスが少なく、破損や脱離が起こりにくいんです。
⑦反対の噛み合わせの歯(対合歯)に優しい。
天然歯のモース硬度は約7なのですが、e.maxのモース硬度も7なのです。
つまり噛み合っても反対の歯と同じくらいの硬さで丁度いいということなのです。
(ジルコニアは8〜8.5で対合歯を摩耗させるため嫌う先生もいるほどです)
使用する補綴物
e.maxは、クラウン(被せ物)、ブリッジダミーの歯を含む橋渡しをする被せ物)、インレー(詰め物)、ラミネートベニア(上の前歯に貼り付けるシェル)など、さまざまな補綴物に使用されます。
特に前歯や負担がそこまで掛からない審美的な修復において、その特性が活かされます。
いかがでしたか?
e.maxは高い強度と美しい審美性を兼ね備えた優れた材料です。
是非セラミック治療の際はご検討いただければと思います。
これからはセラミック治療は選ぶ時代です。
自分の歯に合ったセラミック治療をしていきましょう。