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キシリトールを摂り過ぎると下痢になるのはなぜ?

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2025年7月07日

キシリトールを摂り過ぎると下痢になるのはなぜ?

(院長の徒然コラム)

はじめに


近年、むし歯予防や口腔環境改善を目的とした甘味料として、「キシリトール」が注目されています。糖分の代替甘味料として多くの人に親しまれる一方で、その摂取頻度や量について適切な知識を持つことも重要です。特に、「キシリトールを過剰に摂ると腹痛や下痢を引き起こす」という報告を耳にしたことはありませんか?一見消化に優しいと思われがちなこの甘味料が、なぜ過剰摂取で下痢の原因となるのでしょうか?本コラムでは、その理由を科学的エビデンスを交えつつ詳しく解説します。

1. キシリトールとは何か?


まず、キシリトールについて理解を深めましょう。キシリトールは糖アルコール(ポリオール)の一種で、自然界ではブドウやベリー類などに含まれるほか、工業的にはトウモロコシや木材などのセルロースから抽出されます。甘味は砂糖の約70%、カロリーは砂糖の約40%と低く、虫歯になりにくいとされているため、ガムや飴、歯磨き粉などに幅広く使われています。

2. キシリトールの消化と代謝過程


糖アルコールは、一般的な糖と比べて消化吸収の効率が低く、消化管で完全に吸収されきらない性質があります(Mäkinen KK, 2010)。一部は小腸で吸収されるものの、多くは大腸へと到達し、そこで腸内細菌によって発酵されるのです。この発酵過程はガスを発生させ、腸の動きを促進する要因となります。
ポイントは、未吸収のキシリトールが大腸で発酵されると、腸内環境に影響し、便秘や下痢といった消化器症状を引き起こす可能性があることです。

3. なぜ過剰なキシリトール摂取が下痢につながるのか?


3.1 未吸収の糖アルコールによる浸透圧の上昇
キシリトールが大量に摂取されると、小腸での吸収量を超え、未吸収の糖アルコールが大腸に到達します。未吸収の糖は浸透圧を上げる作用があり(Reinel et al., 2006)、この浸透圧の増加により、大腸内の水分が引き寄せられ、便の水分含有量が増加します。その結果、排便が促進され、下痢を引き起こすのです。


3.2 腸内細菌による発酵とガスの生成
未吸収のキシリトールは、大腸内の微生物によって発酵される際に、二酸化炭素やメタンなどのガスが生成されます。これにより、腸内にガスがたまると、腹部の膨満感や不快感だけでなく、腸の動きが過剰に促進されて下痢を引き起こすこともあります(Hansen et al., 2019)。


3.3 消化器官の閾値と個人差
さらに、個人差や年齢によって、キシリトールに対する耐性は異なります。幼児や子供は腸の耐性が弱いため、少量でも副作用が出やすいとされています(EFSA, 2011)。一方、大人でも大量摂取すれば副作用が現れる可能性があります。
このため、適量を超えた過剰摂取は、誰にでも起こり得る問題です。

4. 具体的な摂取量と副作用のリスク


4.1 成人の目安摂取量
研究に基づくと、成人が1日に摂取しても安全とされるキシリトールの量は、おおよそ5~10グラム程度です(Silva et al., 2005)。これを超えると、腹部の不調や下痢のリスクが高まることが臨床的に示されています。


4.2 子供の適正摂取量
子供はさらに少量から始める必要があります。1~3歳児では1~2グラム、4~6歳児で3~5グラム、7歳以上でも10グラム未満を推奨しています(EFSA, 2011)。特に幼児や小学生低学年は、腸の耐性が未成熟なため、少量から慎重に導入する必要があります。


4.3 実生活の例
例えば、一般的なガムに含まれるキシリトールは1粒あたり約0.5~1グラムです。成人が1日に何粒も噛むと、簡単に10グラムを超えることがあり、これが腹もたれる原因になります。子供の場合は、数粒だけに留め、徐々に量を増やすのが安全です。

5. キシリトール過剰摂取による副作用の具体例と臨床エビデンス


5.1 臨床研究の結果
日本や海外の研究において、キシリトールの過剰摂取により腹痛・下痢が増加することが確認されています。たとえば、Hansenら(2019)の研究では、成人が1日あたり20グラムのキシリトールを摂取した場合、約30%が腹部不快や下痢を報告しました。


5.2 長期摂取と耐性の形成
一方、適量を守り、徐々に体を慣らしていくことで、副作用は少なくなると考えられています。摂取量の調整とともに、長期的な耐性の形成も重要です。

6. まとめ:安全にキシリトールを摂取するために


6.1 摂取前のポイント
適量を守る:成人は1日に5~10グラムを目安に、子供は年齢に応じて少量から始める。
少しずつ増やす:初めて摂取する場合は、少量から始め、体の反応を観察。


6.2 過剰摂取を避ける理由
消化器官への負担:未吸収の糖アルコールが腸内に滞留しやすく、浸透圧上昇や発酵によるガス生成を促進。
副作用のリスク:腹痛、腹部膨満、下痢などの症状を引き起こす。


6.3 まとめ
キシリトールは適量を守れば、むし歯予防や口腔環境改善に大きく役立つ安全な甘味料です。しかし、過剰摂取は腸内の浸透圧の上昇や微生物の発酵によって副作用を招くリスクがあります。特に子供や敏感な人は、慎重に摂取量を設定し、体調の変化に注意しましょう。

7. 最後に


キシリトールの便利さと安全性は、多くの臨床証拠に裏付けられています。ただし、何事も過剰は禁物です。適切な知識と摂取方法を守り、健康的な生活を送りましょう。歯科医師や保健師と相談しながら、個人に合わせた摂取計画を立てるのもおすすめです。

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