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キシリトールを「普通」に摂取しても心臓発作、脳卒中、死亡のリスクは2倍になりません?2026年最新研究で普通の量を再検証

キシリトールを「普通」に摂取しても心臓発作、脳卒中、死亡のリスクは2倍になりません?2026年最新研究で普通の量を再検証|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

2024年11月05日

キシリトールを「普通」に摂取しても心臓発作、脳卒中、死亡のリスクは2倍になりません?2026年最新研究で普通の量を再検証

(院長の徒然コラム)

はじめに

2024年11月、私はこのコラムを書きました。

きっかけは、キシリトールをめぐって「心臓発作、脳卒中、死亡のリスクが約2倍になる可能性がある」というニュースが広がったことでした。

当時の記事で私が一番気になったのは、「キシリトール」という言葉だけが独り歩きし、普段ガムなどでキシリトールを使っている健常者まで、同じリスクがあるかのように受け取られてしまうことでした。

実際、元の記事でも私は最初に「そもそも『多く摂取』ってどのくらい?」と問い、健康な成人10人へキシリトール30gを一度に摂取させた介入研究を中心に、「これは虫歯予防目的で通常使う量と同じ条件なのか?」という話をしています。

あれから約2年が経過しました。

2024年の原著に対してはその後さまざまな議論があり、2026年8月26日にはEuropean Society of Cardiology(ESC)から、一般人口17,710人を長期間追跡した新しいデータも発表されました。

ですから、この人気記事を2024年の文章のまま残すのではなく、2026年現在の情報を加えて全面的に読み直すことにしました。

ただし、最初に結論を書いておきます。

2026年9月現在も、「健常者がキシリトールを普通の量で摂取すると、心臓発作、脳卒中、死亡のリスクが2倍になる」と示した研究はありません。

一方で、

「キシリトールと心血管リスクについては何も心配する必要がない」

と断言できる状況でもありません。

2026年の新しいデータによって、血中キシリトール濃度が高い人ほどMACEが多いという関連そのものは、2024年より無視しにくくなりました。

この二つを分けて考える必要があります。

まず「普通に摂取する」の“普通”とは何でしょうか

この問題を考えるうえで、一番最初に整理しなければならないのが量です。

キシリトールガムを食後に1粒噛むこと。

1日に何回かに分けて、合計5~6g程度のキシリトールを使用すること。

低糖質のお菓子やアイスクリームから10g、20g、30g単位で摂ること。

粉末キシリトールを砂糖の代わりに使用し、一度に数十g摂ること。

そして30gを水に溶かし、一度に飲むこと。

全部「キシリトールを摂取した」には違いありません。

しかし、人体への曝露としては同じではありません。

2025年のキシリトールガムに関するシステマティックレビューでは、歯科的な効果を期待する用量として、1日5~6g程度を3回以上に分ける使用法が整理されています。これは「心血管的に5~6gなら絶対安全」という意味ではなく、あくまで歯科領域で研究されてきた代表的な使用条件です。

今回の記事でいう「普通の歯科的な使用」は、主にこのような少量・分割使用を想定しています。

2024年の研究で、健常者には実際に何をしたのでしょうか

ここが元記事の中心です。

2024年にEuropean Heart Journalへ掲載されたWitkowskiらの研究には、観察コホート、血小板実験、動物実験など複数の研究パートがあります。

その中で、実際に健康な人へキシリトールを摂取させた介入研究では、健康な成人10人が対象になりました。

参加者は30gのキシリトールを水に溶かした飲料を摂取し、摂取前後の血中キシリトール濃度と血小板反応が調べられました。2024年論文に掲載されたキシリトール介入部分の生物学的な被験者数は10人です。

空腹時の血中キシリトール濃度中央値は約0.30µMでしたが、摂取30分後には約312µMまで上昇しました。

約1,000倍です。

その後は急速に低下し、4時間後には約1.87µM、6時間後には約0.67µMとなり、血中半減期は約13分と推定されています。

同じ10人について、摂取前と30分後の血小板を調べると、ADPやTRAP6という刺激に対する血小板の凝集反応が増強しました。

これは重要な結果です。

しかし、ここで何を調べた研究だったのかを正確に分ける必要があります。

この10人に心筋梗塞が起きたか。

脳卒中が起きたか。

死亡が増えたか。

それを数年間追跡した研究ではありません。

30gのキシリトールを摂取した直後に、血中濃度と血小板の刺激反応がどう変化するかを調べた研究です。

したがって、この介入研究そのものから、

「健康な人がキシリトールを食べると、心臓発作、脳卒中、死亡が2倍になる」

という結論を出すことはできません。

健常者10人という母数は、やはり小さい

ここは2024年の記事で問題にした点を、現在もそのまま無効にはできないと思います。

2024年論文の健康成人への直接介入は10人です。

血小板反応の急性変化を探す探索的な研究としては意味があります。

しかし、健常者全体へ長期的な心血管リスクを一般化するには、当然ながら小さな集団です。

さらに、この介入研究は参加者を「healthy volunteers」として実施しており、現在の試験登録を見ると、糖尿病、重大な慢性疾患、抗血小板薬使用などは除外条件になっています。つまり、研究者が健康状態を全く確認していなかったわけではありません。

一方で、10人を血圧、脂質、家族歴、肥満度、その他の心血管リスク背景ごとに十分層別化し、

「どのリスクを持つ人で血小板反応が強かったのか」

まで一般化できる規模・設計でもありません。

ここは、1,157人や2,149人を対象とした別の観察コホートに行われた多変量解析と混同してはいけません。

健常者へ30gを直接飲ませた介入研究は10人。

血中キシリトール濃度と3年間のMACEとの関連を調べた観察研究は別の大規模コホート。

別の研究パートです。

30gはキシリトールガム何粒分でしょうか

元記事では、歯科専用ガム1粒1.3gを基準に、30gは約24粒と書きました。

現在あらためて商品情報を確認すると、製品によってかなり差があります。

ロッテの代表的な商品では14粒当たりキシリトール7.0g、つまり1粒約0.5gです。一方、株式会社オーラルケアの歯科専用キシリトールガムでは1粒1.3gとされています。

したがって30gは、製品によって単純計算でおよそ23~60粒分です。

普通にキシリトールガムを1~2粒噛む状況とは、量としてかなり違います。

もちろん、ガムと水溶液では摂取速度も異なります。

30gを短時間で一度に飲むことと、1日数回に分けてガムを噛むことを、同じ曝露条件として扱うことはできません。

(というか原著者もしていません。勝手に騒いだメディアやYoutuberが主に誤った主張を行いました。)

ただし「30gなんて現実には絶対に摂らない」も正しくありません

ここは2024年の記事から、少し説明を追加したいところです。

原著者らは30gについて、単に「ガムを何十粒も食べる量」として設定したわけではありません。

旧記事でもお話しした通り原著では、キシリトールで甘味付けされたアイスクリーム1パイント、焼き菓子、複数の菓子などで起こり得る食事曝露に相当すると説明しています。

キシリトールはガムだけではなく、砂糖代替甘味料として食品にも使われます。

ですから、

30gは通常の歯科用ガムを再現した量ではない。

しかし同時に、

食品として大量のキシリトールを使用する場面まで含めれば、完全な非現実量とも言い切れない。

この二つを同時に理解するのが公平だと思います。

(くどい様ですが原著者は初めからそう言っています。メディアやYoutuberが間違った解釈を行いました。)

30gと下痢についても、少し言い方を整理します

キシリトールは糖アルコールです。

一度に大量に摂取すると、未吸収のキシリトールによる浸透圧作用などから、腹部膨満、軟便、下痢といった消化器症状を起こすことがあります。

これは昔から知られている性質です。

2025年のキシリトール研究への反論でも、30~35gを超える一括摂取では既知の下剤作用が問題になり得ると指摘されています。

ただし、ここは分けて書きます。

2024年の健康成人10人が実際に下痢や脱水を起こしたことが、原著の主要結果として示されたわけではありません。

(まあ例え下痢になっても、記載するわけありませんが)

したがって、

「血小板反応が増えたのは、下痢や脱水のせいだ」

と結論づけることもできません。

大量キシリトールで消化器症状が起こり得るという一般論と、2024年介入研究で観察された血小板反応は分けて考えるべきです。

キシリトールを摂りすぎるとなぜお腹がゆるくなるのかについては、当院の「キシリトールを摂り過ぎると下痢になるのはなぜ?」の記事でも詳しく解説しています。

血小板が反応したこと自体は無視できません

では、「30gは多いから、この介入研究は全部無意味なのか」というと、そうではありません。

2024年原著では、キシリトールだけを加えれば血小板が勝手に凝集した、という単純な結果ではありません。

ADP、TRAP6、トロンビンなどの刺激が存在するときに、キシリトールによって刺激依存性の血小板反応が増強することが示されました。

健康成人10人への30g摂取でも、摂取30分後の血小板はADPやTRAP6への反応性が高くなりました。

だから、

「キシリトールには血小板への作用など一切ない」

と断定することもできません。

ただし、血小板反応の増強と、実際に心筋梗塞、脳卒中、死亡が増えることの間には距離があります。

その距離を埋めるには、通常量を摂取する人を対象とした、より大規模で長期的な研究が必要です。

2024年の「約2倍」は、健常者10人の30g介入試験から出た数字ではありません

ここは報道を読むうえで非常に重要です。

「約2倍」という数字の元になったのは、健康成人10人に30gを飲ませた介入試験ではありません。

2024年原著では、発見コホート1,157人、検証コホート2,149人の空腹時血液サンプルが解析されました。

検証コホートで血中キシリトール濃度の高い群と低い群を比較すると、未調整のMACEハザード比は1.81でした。

年齢、性別、喫煙、糖尿病、血圧、脂質、hsCRPなどを調整すると、最高三分位対最低三分位の調整後ハザード比は1.57、95%信頼区間1.12~2.21でした。腎機能を加えた解析でも関連は残っています。

つまり、

「健常者10人が30gを飲んだら心筋梗塞・脳卒中・死亡が約2倍になった」

という研究ではありません。

全く違う二つの研究パートが、ニュースの中で一つのストーリーとして受け取られやすくなったのです。

さらに大事なのは、空腹時血中キシリトール濃度=摂取量ではないこと

キシリトールは、外から食べたときだけ人体に存在する物質ではありません。

糖アルコール、ポリオールの一つで、人の体内でも糖代謝の過程で作られます。

ESCの2026年公式発表でも、キシリトールはグルコース代謝の副産物として人体内に自然に存在すると明記されています。

さらに2024年原著者自身が、30g摂取後の血中キシリトール濃度が数時間でほぼ基準値近くまで戻ることから、12時間以上絶食した観察コホートの血中キシリトール濃度は、最近食べた量ではなく内因性の産生量・血中レベルの違いを主として反映している可能性が高いと考察しています。

ですから、

「血中キシリトールが高い」

から、

「キシリトールをたくさん食べた」

へ直接置き換えることはできません。

そして2026年8月、一般人口17,710人でも関連が示されました

ここからが今回の新しい情報です。

2026年8月26日、ESCは、Canadian Longitudinal Study on Aging(CLSA)とEPIC-Norfolkという二つの前向き観察コホートを解析した結果を発表しました。

合計17,710人です。

CLSAでは、血中キシリトール濃度が最も高い四分位群は、最も低い四分位群と比べて、6年間のMACEリスクが57%高い結果でした。

EPIC-Norfolkでは、30年間の追跡で18%高い結果でした。

MACEは、死亡、心筋梗塞、脳卒中をまとめた複合評価項目です。

中間の四分位まで含めると、血中キシリトール濃度が高くなるほどイベント率も高くなる傾向が示されたとESCは報告しています。

これは重要な新しい情報です。

血中キシリトール高値と心血管イベントとの関連は、2024年より無視しにくくなったと私は考えます。

ただし、2026年研究も「健常者に普通量を飲ませた試験」ではありません

今回の記事では、ここを一番混同しないようにしたいと思います。

ESCの17,710人研究は大規模です。

しかし、キシリトールガムを1日何粒食べてもらったという介入研究ではありません。

二つの前向き観察コホートです。

測定されたのは血中キシリトール濃度です。

ESC自身も、これはobservational workであり、観察研究では因果関係を推論することは難しいと明記しています。

しかも「general population」、一般人口という言葉と、「健康な人だけ」という言葉も同じではありません。

2026年研究が補強したのは、

一般人口においても、血中キシリトール高値とMACEとの関連が見られる

という部分です。

一方で、

健常者がキシリトール5g程度を日常的に摂取した結果、MACEが増える

ことを直接証明した研究ではありません。

ここは、2024年から変わっていません。

57%高い、18%高い――それでも「普通に摂取すると2倍」ではありません

2026年の新しい研究を見ても、タイトルを変えない理由がここにあります。

CLSAは57%高値。

EPIC-Norfolkは18%高値です。

2倍ではありません。

しかも比較されたのは、

「キシリトールをたくさん食べた人」と「少なく食べた人」

ではなく、

「血中キシリトール濃度が最も高い四分位」と「最も低い四分位」

です。

さらに57%や18%はMACEという複合評価項目の相対的な比較です。

「キシリトールガムを食べた人の脳卒中が57%増えた」

という意味ではありません。

「心筋梗塞が57%増えた」

でもありません。

「死亡が57%増えた」

でもありません。

研究結果を患者さんへ伝えるときには、この違いは省略してはいけないと思います。

2024年に私が問題にしたポイントを、2026年の情報で整理すると

2024年の記事の中心だった、

「健常者が普通に摂取した場合まで、心臓発作・脳卒中・死亡が2倍と考えてよいのか」

という問いについては、2026年になっても答えは「そこまでは示されていない」です。

2024年論文で健常者へ直接キシリトールを摂取させたデータは10人の30g介入でした。これは今も事実です。

30g一括摂取と、歯科で使う5~6g程度の分割摂取は同じ条件ではありません。

これも変わりません。

そして、その10人を背景リスク別に十分比較し、長期的な心筋梗塞・脳卒中・死亡を調べた介入試験ではありません。

これも変わりません。

一方で2026年には、一般人口17,710人でも血中キシリトール高値とMACEとの関連が示されました。

これは新しく加わった重要な情報です。

したがって2026年版では、

「キシリトールの心血管リスクなんて全く気にする必要はない」

とは書きません。

しかし同時に、

「健常者が普通にキシリトールを摂取するとMACEが2倍になる」

とも書きません。

「5gなら絶対安全」とまでは言わないようにします

元の記事では、

「虫歯予防のために使われるキシリトールなんて、せいぜい5g程度。それで健康被害が出ることはまずありません」

とかなり強く書きました。

2026年版では、ここだけ少し慎重な言葉に変えます。

現在のエビデンスから言えるのは、

通常の歯科的な少量使用によって心筋梗塞、脳卒中、死亡が増えることは証明されていない

ということです。

一方で、

「5g以下なら心血管リスクは絶対にゼロ」

という安全閾値を決めた長期的なMACE試験もありません。

ちなみに現在のNCT04731363の試験登録には、30gキシリトールだけでなく5gキシリトールの介入群も登録されています。しかし、2024年European Heart Journal論文で今回の「リスク2倍」報道と一緒に取り上げられた健康成人介入データは、10人への30g負荷です。5g群の存在と、2024年論文の30gデータを混ぜて論じるべきではありません。

今後、5gなど通常使用に近い条件の結果が査読論文として詳しく発表されれば、この問題を考えるうえで非常に重要なデータになると思います。

24gを5週間摂取した別のヒト試験もあります

別条件のヒト研究として、Bordierらのランダム化比較試験があります。

肥満があるものの血糖値は正常な42人を3群へ分け、キシリトール群では24g/日を5週間摂取しました。

その結果、血管機能、腹部脂肪、糖代謝、肝機能、腎機能などに統計学的に有意な悪化は認められませんでした。

ただし、これも心筋梗塞、脳卒中、死亡を主要評価項目とした長期安全性試験ではありません。

「24gでも絶対に安全」と証明する研究ではなく、

30g一括摂取30分後の血小板反応だけで、あらゆる摂取条件を説明することもできない

という参考データとして見るのが妥当でしょう。

研究者間の反論、再反論、長期高用量使用の歴史、血小板実験や動物実験をさらに詳しく読みたい方は、当院の「キシリトールは本当に脳梗塞を起こすのか|『リスク2倍』報道と17,710人のESC 2026新データを読み直す」で詳しく整理しています。

では、毎日キシリトールガムを噛んでいる人はやめるべきでしょうか

2026年9月現在、通常の歯科的な範囲でキシリトールガムを使用しているすべての人へ、一律に中止を勧める根拠はありません。

一方で、

「キシリトールは歯にいいのだから、多ければ多いほどいい」

という話でもありません。

歯科でのキシリトールは補助的な選択肢です。

キシリトールガムそのものについても、2025年のシステマティックレビューでは、ミュータンス連鎖球菌やプラークについて有利な結果が多く報告されていますが、う蝕予防効果は研究条件によってばらつきがあります。

フッ化物配合歯磨剤、糖の摂取頻度の管理、ブラッシング、歯間清掃、定期的な歯科管理が基本です。

キシリトールを大量に摂取することそのものが歯科予防の目的ではありません。

キシリトールの虫歯予防の仕組みや使い方については、「キシリトールは虫歯菌を疲れさせる?虫歯予防の仕組み・効果・安全な使い方」で詳しく説明しています。

歯磨剤や洗口剤まで避ける必要はありません

食品として数g~数十gを飲み込むことと、歯磨剤や洗口剤を通常どおり使用することも同じ曝露ではありません。

2025年の原著者側の回答でも、少なくとも口に含んで吐き出す「swish and spit」形式の口腔ケア製品については、飲み込む量がごく少ないため心血管リスクの観点から安全である可能性が高い、としています。

ですから、「キシリトール」という文字が成分欄にあるだけで歯磨剤や洗口剤まで全て避ける必要がある、という根拠は現在ありません。

粉末キシリトールや大量の低糖質食品は、ガム数粒とは分けて考えます

一方、キシリトール粉末を砂糖と同じように使い、一度に20g、30g、あるいはそれ以上摂取する場合は話が違います。

2024年研究の30g負荷に近い曝露になり得るからです。

心血管安全性について未解決のシグナルがある以上、健康目的で数十gのキシリトールを積極的に摂ることを勧める理由はありません。

これは、

「キシリトールは危険だから食べるな」

という意味ではありません。

ガム1~2粒と、甘味料として数十g使うことを同じ“普通の摂取”にしない

ということです。

2024年の報道は「全部間違い」だったわけでもありません

元記事では、当時の報道をかなり強い言葉で批判しました。

2026年になった現在は、少し整理して書きます。

2024年研究は重要な安全性シグナルを提示しました。

血小板への作用を示す結果もありました。

そして2026年には、一般人口17,710人でも血中キシリトール高値とMACEとの関連が示されました。

ですから、この問題を報道すること自体が間違いだったとは思いません。

問題になるのは、

「血中キシリトール濃度が高かった」

という結果を、

「キシリトールを大量摂取した」

へ変換し、

さらに、

「普通にキシリトールガムを食べる人」

へ変換し、

最後に、

「だから心筋梗塞・脳卒中・死亡が2倍になる」

と受け取らせてしまうことです。

2026年の新しい研究を加えても、この変換は成立しません。

2026年ESC研究も、摂取量を操作した健常者への通常量介入試験ではなく、血中キシリトール濃度を見た観察研究だからです。

結論|2026年になって警戒材料は増えた。でもタイトルの問いへの答えは変わりません

2024年にこのコラムを書いた当時より、キシリトールと心血管リスクとの関連を警戒する材料は増えました。

一般人口17,710人を対象とした2026年の新しい解析で、血中キシリトール濃度が高い群では、CLSAでMACEが57%、EPIC-Norfolkで18%高いという関連が示されました。

これは軽視すべきではありません。

一方で、その研究は健常者へ普通量のキシリトールを摂取させた介入試験ではありません。

2024年論文で、健康な人へ実際にキシリトールを摂取させた介入データは、10人への30g一括負荷でした。

その研究で測ったのは、主として血中濃度と急性の血小板反応です。

心筋梗塞、脳卒中、死亡が2倍になったわけではありません。

そして30gは、現在のガムで換算すればおよそ23~60粒分に相当します。

通常の歯科的な少量・分割使用とは条件が違います。

さらに観察研究で測られた空腹時血中キシリトール濃度は、最近食べた量そのものではなく、内因性キシリトールを含む代謝状態を反映している可能性があります。

だから私は、2026年9月現在も、

「キシリトールを『普通』に摂取すると、心臓発作、脳卒中、死亡のリスクが2倍になる」

とは考えません。

しかし、

「だからキシリトールの心血管安全性について、今後もう調べる必要はない」

とも考えません。

通常量と大量摂取を分ける。

摂取量と血中濃度を分ける。

血小板反応と実際の心血管イベントを分ける。

観察研究の「関連」と、介入研究で証明する「因果関係」を分ける。

そのうえで、新しい研究が出れば説明を更新する。

2026年現在、この問題について患者さんへ伝えるなら、これが一番正確な距離感だと考えています。

参考文献

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  2. European Society of Cardiology. Xylitol may increase the risk of cardiovascular events. ESC Press Release. 26 August 2026.
  3. Witkowski M. The association of Xylitol and incident cardiovascular events: the CLSA and EPIC-Norfolk cohort studies. ESC Congress 2026.
  4. Valentine GC, Söderling E, Milgrom P. Oral health benefits and safety of xylitol and potential cardiovascular risk: questioning the validity of the model of Witkowski et al. European Heart Journal. 2025;46:2705–2706. doi:10.1093/eurheartj/ehaf058.
  5. Witkowski M, Hazen SL. Xylitol and cardiovascular risks. European Heart Journal. 2025;46:2707–2708. doi:10.1093/eurheartj/ehaf059.
  6. Wölnerhanssen BK, Meyer-Gerspach AC, Arduini A, et al. Sweeteners: erythritol, xylitol and cardiovascular risk—friend or foe? Cardiovascular Research. 2025;121:1319–1329. doi:10.1093/cvr/cvaf091.
  7. Bordier V, Teysseire F, Drewe J, et al. Effects of a 5-week intake of erythritol and xylitol on vascular function, abdominal fat and glucose tolerance in humans with obesity: a pilot trial. BMJ Nutrition, Prevention & Health. 2023;6:e000764. doi:10.1136/bmjnph-2023-000764.
  8. Söderling E, Pienihäkkinen K. Specific effects of xylitol chewing gum on mutans streptococci levels, plaque accumulation and caries occurrence: a systematic review. BMC Oral Health. 2025;25:1275. doi:10.1186/s12903-025-06602-1.
  9. ClinicalTrials.gov. NCT04731363. Consumption of Oral Artificial Sweeteners on Platelet Aggregation and Polyol Excretion (COSETTE).
  10. 株式会社ロッテ. キシリトールガム商品情報.
  11. 株式会社オーラルケア. CNNにて報じられたキシリトールの安全性について.

※本稿は2026年9月1日現在に公開・確認できる査読論文、ClinicalTrials.gov、ESC Congress 2026公式情報および製品情報をもとに全面改稿しています。2026年ESCデータは現時点では学会発表・公式プレスリリースが中心です。査読済み全文論文や通常量に近い介入試験が今後公表された場合には、内容を再検討し更新します。

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