2024年12月06日
(院長の徒然ブログ)
はじめに
歯科治療において、金属は非常に重要な役割を果たしています。
歯の修復や補綴、矯正治療やインプラントなど、さまざまな場面で使用される金属には、それぞれ特性や用途があります。
今回のコラムでは、歯医者で一般的に使用される金属について詳しく解説します。
金銀パラジウム合金
特性
金銀パラジウム合金は、科学的に安定しており、比較的酸などに対して耐性があります。
構造物自体は長期間にわたって安定した状態を保つことができます。
また、この合金は高い機械的強度を持ち、咀嚼力に耐えることができるため、歯科用の修復物や補綴物に適しています。
パラジウムは嵩増しと強度向上の目的で入れられており、性能としては金合金には劣ります。
アレルギー反応も金合金に比べると引き起こすリスクが高くなります。
ただ合金は比較的容易に加工でき、精密な形状を作ることが可能です。
よって、長い間保険診療の最前線で使われてきた金属でした。
ただ色調は金属的な色合いを持ち、審美的な要件が求められる場合には、現在は避けられる傾向があります。
用途
いわゆる保険診療の「銀歯」とはこの金属が一番多いです。
金銀パラジウム合金は、歯のクラウンやブリッジの製作に広く使用されています。強度と耐久性が求められるため、非常に適しています。
また詰め物においても、インレーやオンレーとして使用されることが多かった金属です。
アマルガム
特性
まずはコラムで挙がったこともあるアマルガムです。
アマルガムは、主に無機水銀と他の金属(銀、スズ、銅など)を混ぜた合金です。
水銀が他の金属と反応して硬化するため、扱いやすく、強度も高いのが特徴です。アマルガムは、耐久性があり、摩耗にも強いのですが、歯に接着しているわけでは無いのと、無機水銀の環境面と操作中の人体に影響を懸念して、最近では使われません。(保険診療からも外されました)
用途
主に虫歯の詰め物治療に使用されます。特に奥歯など、咬合力がかかる部位に適しています。アマルガムは、長期間にわたって安定した性能を発揮するため、保険適用の治療法としても広く用いられてきました。
コンポジットレジンの普及とともに日本では廃れていっています。
アマルガムは除去時に、無機水銀が遊離するので注意が必要です。
金合金
特性
金合金は、金(Au)を主成分とし、他の金属(パラジウム、銀、銅など)を加えた合金です。金は生体適合性が高く、腐食に強い特性を持っていますし、強度もあります。
また、柔軟性があり、加工が容易です。
用途
金合金は、主に自費診療のクラウンやブリッジ、インレーなどの補綴物に使用されます。
今現在、審美性が求められる前歯の使用は、ほぼ推奨されていませんが、長期間の耐久性が必要な奥歯の治療などに適しています。
金合金は、適合性がいいため虫歯になりにくく、アレルギー反応が少ないため、患者にとっても安心です。
ステンレス鋼
特性
ステンレス鋼は、鉄にクロムやニッケルを加えた合金で、耐食性や強度に優れています。
軽量でありながら、非常に強い特性を持っています。また、加工が容易で、さまざまな形状に成形できます。
炭素の配合率によって硬さや柔軟さを調節できる、便利な金属でもあります。
用途
主に矯正治療に使用されるワイヤーやブラケット、または歯科器具に用いられます。
よく歯科医師が持ってる器具はステンレス製が多いです。
ステンレス鋼は、耐久性が高く、長期間使用することができるため、矯正装置の材料として使われています。
最近は目立たない樹脂のブラケットもあるのですが、強度面からまだ金属ブラケットを使う先生は多いです。
チタン
特性
チタンは、軽量でありながら非常に強度が高く、耐腐食性にも優れています。
生体適合性が高く、体内に埋め込んだり粘膜に接触する部分に使用しても拒絶反応が少ないため、医療分野での使用が広がっています。
用途
主にインプラント治療に使用されます。チタン製のインプラントは、顎骨と結合しやすく、長期間にわたって安定した支持を提供します。
また、チタンは強度にも優れているうえに軽く、自費診療の金属床の入れ歯にも使用されます。
ニッケル・チタン合金(NiTi)
特性
ニッケル・チタン合金は、形状記憶合金として知られています。
温度によって形状を変える特性があり、柔軟性と強度を兼ね備えています。
特に、弾性が高く、変形しても元の形に戻る特性があります。
用途
主に矯正治療におけるワイヤーやアーチワイヤーに使用されます。また、歯の根の治療の際、根管を治療する器具にも使われたりします。
ニッケル・チタン合金は、力をかけた際に柔軟に変形するため、特に矯正治療では徐々に歯を移動させることができるため、患者にとっても有用なな治療が可能となるのです。
銀合金
特性
銀合金は、銀を主成分とし、他の金属(銅、スズなど)を加えた合金です。
銀は抗菌性があり、腐食にもある程度耐えられる特性を持っています。また、加工が容易です。
用途
主に小さな修復やインレー、オンレーなどに使用されます。昔は歯の土台としても使われていました。
コバルトクロム合金
特性
コバルトクロム合金は、口腔内の湿潤環境や酸性条件に対して非常に優れた耐食性を持っています。これにより、長期間にわたって安定した性能を発揮します。また高い強度と硬度を持ち、義歯の構造物をしっかり支えます。
合金は比較的加工しやすく、精密な形状に仕上げることが可能です。これにより、患者の口腔に合わせたカスタマイズが容易になります。
用途
コバルトクロム合金は主に義歯分野で使われます。
自費診療の入れ歯の金属床で使われたり、保険診療の入れ歯のフレームやバネ部分で使われたりします。
終わりに
歯科治療において使用される金属は、それぞれ異なる特性と用途を持っています。
これらの金属は、患者の健康と快適さを考慮しながら、最適な治療を提供するために欠かせない材料です。
今後も新しい材料や技術が開発されることで、歯科治療の幅はどんどん広がっていきます。
また新しい情報がありましたら積極的にお伝えいたします。