2024年12月08日
(院長の徒然ブログ)
皆さんのお口の中にホクロはありますか?
もしくはカフェオレのような薄い色の斑模様はありますか?
実は口腔内の粘膜にも、色素が沈着することがあります。
口腔内の健康は、全身の健康と密接に関連しており、特に口腔粘膜の色素沈着は、さまざまな疾患や状態を示す重要なサインとなることがあります。
本コラムでは、口腔粘膜の色素沈着に関連するいくつかの疾患について詳しく説明し、それぞれの特徴や関連性を探ります。
Addison病
Addison病は、指定難病の一つで副腎皮質機能不全によって引き起こされる内分泌疾患で、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下する病気です。
この病気では、コルチゾールやアルドステロン、アンドロゲンといったホルモンの分泌が減少します。
主に成人にみられ、一方先天性のものは主に小児期に発症がみられます。
Addison病の患者では、皮膚や口腔粘膜に色素沈着が見られることがあります。
特に、口腔内の粘膜が暗褐色に変色すること(カフェオレ斑)があり、これはメラニンの過剰生成によるものです。この色素沈着は、患者のストレスや病状の進行に伴って変化することがあります。
他の色素沈着部位としては皮膚、肘や膝などの関節部、爪床などが挙げられます。
Peutz-Jeghers症候群
Peutz-Jeghers症候群(ポイツ・ジェガーズ症候群、ポイツ・イエーガース症候群)は、遺伝性の疾患で、食道を除く全消化管にポリープができることが特徴です。
この症候群の患者は、口腔内に青黒い色素斑点が現れることがあります。これらの色素沈着は、特に唇や頬の内側に見られ、メラニンの蓄積によって引き起こされます。
この蓄積は乳児期から見られ、口唇、口腔、指尖部などに1~5mmほどの色素斑ができます。
第19番染色体の異常と言われていますが、正確な機序は不明で、日本での患者数は約600~2400人です。
Peutz-Jeghers症候群は、がんのリスクが高まるため、早期の診断と定期的なフォローアップが重要です。ただ、完治する治療法は確立されていません。
McCune-Albright症候群
McCune-Albright症候群(マックキューンオルブライト症候群)は、骨や内分泌系に影響を与える遺伝性疾患で、特に皮膚に色素斑点(カフェオレ斑)が現れることが特徴です。
また、10歳以下の小児期に発症し、出生後早期に症状が出現することも多く、進行性の病気です。
他の主症状としては線維性骨異形成症、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症があります。
この症候群の患者では、口腔粘膜にも色素沈着が見られることがあります。
色素斑点は、通常、茶色や黒色で、皮膚の他の部位にも広がることがあります。
McCune-Albright症候群は、ホルモンの不均衡を引き起こすことがあり、これが口腔内の色素沈着に寄与していると考えられています。
神経線維腫症I型(von Recklinghausen病)
神経線維腫症I型(NF1)は、指定難病であり神経系に影響を与える遺伝性疾患で、皮膚にカフェオレ斑や神経線維腫が現れることが特徴です。その他にも骨、眼、神経系などに様々な病変を生じ、神経の神経線維腫やびまん性神経線維腫(2つ合わせて叢状神経線維腫)がみられることで見た目の問題で悩まされる方が多いです。
患者数は意外と多く3000人に1人と言われており、日本だけでも4万人いると言われています。
この病気の患者では、口腔内にも色素沈着が見られることがあります。
特に、口腔粘膜における色素沈着は、メラニンの蓄積によるもので、これが口腔内の健康に影響を与えることがあります。
ですのでNF1の患者は、定期的な歯科検診が推奨されます。
発見者の名前を取って、フォン・レックリックハウゼン病と呼ぶこともあります。
色素性母斑
色素性母斑は、皮膚や粘膜にメラニンが異常に蓄積することによって形成される良性の腫瘍です。
要するにただのホクロです。
口腔内にも色素性母斑が現れることがあり、これが色素沈着の原因となります。
色素性母斑は通常無害ですが、形状や大きさの変化が見られた場合は、ドクターによる評価が必要です。
口腔内の色素性母斑は、見た目に影響を与えることがあるため、患者にとって心理的な負担となることもあります。
基本的に無害なのですが、急速に大きくなったり、周囲に滲むように広がったり、隆起や潰瘍、硬結を伴った場合は要注意です。
悪性黒色腫
悪性黒色腫は、メラニンを生成する細胞であるメラノサイトから発生する悪性腫瘍です。
口腔内に悪性黒色腫が発生することは稀ですが、他の病変から悪性黒色腫になることもあります。
悪性黒色腫は進行が早く、早期発見が重要です。
口腔内の色素沈着が悪性黒色腫によるものである場合、通常は不規則な形状や色の変化が見られます。
口腔内の異常を感じた場合は、すぐに診察を受けましょう。
終わりに
口腔粘膜の色素沈着は、さまざまな疾患や状態を示す重要なサインです。
Addison病、Peutz-Jeghers症候群、McCune-Albright症候群、神経線維腫症I型、色素性母斑、悪性黒色腫など、色素沈着の原因となる疾患は多岐にわたります。
これらの疾患は、早期発見と適切な治療、対応が重要であり、定期的な歯科検診や専門医の診察を受けることが推奨されます。
口腔内の健康を維持するためには、異常を早期に発見し、適切な対処を行うことが大切なのです。