2025年4月04日

(院長の徒然コラム)

はじめに
皆さんはスポーツを何かされていますか?
スポーツは健康を促進し、楽しさを提供する素晴らしい活動ですが、同時に怪我のリスクも伴います。
特に、接触の多いスポーツでは、口腔内の怪我が発生しやすく、歯や顎に対して深刻なダメージを負うことが時折あります。
そこで、スポーツマウスピース(マウスガード)によりそういったダメージを防ぎ、予防することの重要性が高まっています。
今回のコラムでは、スポーツマウスピースの定義、その有用性、歯医者で作るメリット、適用されるスポーツやトレーニング、そして作成や使用する際の注意点について詳しく解説します。
スポーツマウスピースとは
スポーツマウスピースは、主に接触スポーツや激しい運動、強く食いしばって力を出す運動を行う際に使用される口腔内装置です。
一般的には、衝撃を吸収し柔軟性のある材料で作られ、歯や顎を保護する役割を果たします。
スポーツマウスピースは、歯の外傷を防ぐだけでなく、顎関節への衝撃を吸収し、口腔内の怪我を軽減することができます。
市販のものもありますが、歯科医院で作成するカスタムメイドのスポーツマウスピースが最も効果的です。
スポーツマウスピースの有用性
それではスポーツマウスピースの有用性について項目に分けて説明していきます。
①歯の保護
例えばラグビーでのタックルや球技など、スポーツ中に衝撃を受けた際、マウスピースが歯を守ります。
特に、前歯は衝撃に弱く、破折や歯牙脱臼のリスクが高いです。
②顎関節の保護
力を発揮させようとする時、人はとても強い力で噛み締めます。
それにより、普段の何倍もの咬合力が加わり、顎関節に負担をかけてしまいます。
スポーツマウスピースは、顎関節(TMJ)への衝撃を吸収し、顎の痛みや不快感を軽減します。
これにより、外傷による顎関節症のリスクを低下させることができます。
③口腔内の怪我防止
スポーツ中は、口腔内の柔らかい組織が歯などに強くぶつかり、軟組織が傷を負うケースがあります。
スポーツマウスピースは、口腔内の柔らかい組織(舌や頬)を保護し、外部からの衝撃による切り傷や打撲を防ぎます。
④パフォーマンス向上
スポーツマウスピースをつけることで、上下の接触面積が増え、力を入れやすくなります。それによりパフォーマンスを向上させる可能性があることが示されています。
また、顎の位置を正しく保つことで、呼吸や体のバランスが改善されることがあります。
実際ゴルフのドラコン競技では、スポーツマウスピースをつけると飛距離が飛躍的に伸びてしまうため、禁止されるまでになっています。
スポーツマウスピースを歯医者で作るメリット
歯医者で作成するカスタムメイドのスポーツマウスピースには、いくつかの重要なメリットがあります。
①フィット感の向上
歯科医師が個々の口腔内の形状に基づいて作成するため、フィット感が非常に良くなります。
市販のマウスピースは一般的なサイズで作られているため、個々の歯並びや顎の形状に合わないことが多く、運動中にずれたり外れたりするリスクがあります。それだと力の負荷が偏在し、一部の歯に応力集中してしまうことがあります。
カスタムメイドのマウスピースは、しっかりとしたフィット感を提供し、快適に使用できるため、力の偏在が起こりにくく、歯牙も守れますし、均一に噛み合わさることでパフォーマンスを向上させることができます。
②耐久性
歯医者で作成されるマウスピースは、市販のものより耐久性の高い材料で作られています。
これにより、長期間使用することができ、頻繁に交換する必要がありません。
市販のマウスピースは、劣化が早く、使用中に破損することがあるため、コストパフォーマンスが悪くなることがあります。
③個別のニーズに対応
歯科医師は、患者の口腔内の状態や特定のニーズに応じて、最適なマウスピースを設計します。
例えば、特定のスポーツやトレーニングに合わせた保護が提供されるため、より効果的な防護が可能です。
また、顎関節症や歯ぎしりの問題を抱える患者には、特別な設計が施されることもあります。
また、スポーツマウスピースの色などもオーダーメイドできます。
④専門的なアドバイス
歯科医師から直接アドバイスを受けることで、スポーツマウスピースの使用方法やメンテナンスについての知識を得ることができます。
これにより、マウスピースの効果を最大限に引き出すことができ、口腔内の健康を維持するためのサポートが得られます。
⑤筋力を発揮しやすい設計
スポーツマウスピースの厚さや噛み合わせを調整することで、最も力のパフォーマンスが向上する咬合高径でマウスピースの厚さを設計できます。
これにより、市販のスポーツマウスピースよりも機能の高いものができるのです。
以上のように、スポーツマウスピースを歯医者で作成することには多くのメリットがあります。特に、フィット感や耐久性、個別のニーズへの対応が重要な要素となります。
これらの利点を考慮し、スポーツを行う際には、ぜひ歯医者で相談してカスタムメイドのスポーツマウスピースを作成することをお勧めします。
スポーツマウスピース作成や使用の際に注意すべきポイント
スポーツマウスピースは、口腔内の保護に非常に効果的ですが、作成や使用に際して注意すべきポイントもいくつか存在します。
注意点を理解し、適切に対処することで、マウスピースの効果を最大限に引き出すことができます。
①歯科医師と相談してニーズを伝える
マウスピースを作成する前に、必ず歯科医師と相談することが重要です。
まず何の目的(何のスポーツなのか)なのかをしっかり伝えたり、自分の口腔内の状態や特定のニーズを伝えたりすることで、最適なマウスピースを作成することができます。
また、既存の歯の問題や顎関節症などがある場合は、それに応じた設計が必要です。
②虫歯や歯周病を作成して作る
スポーツマウスピースを作る前に、虫歯や歯周疾患などの疾病は、治療しておく必要があります。
例えばせっかくスポーツマウスピースを作っても、歯の補綴物を変えてしまっては装着できなくなります。
また、スポーツマウスピースがいくら歯への負担を分散させるといっても、そもそも歯の土台が駄目になってしまう歯周病は、しっかり治さなければいけません。
③適切な材料の選択
マウスピースはさまざまな材料で作成されますが、耐久性や快適性を考慮して選ぶことが重要です。
歯科医師に相談し、自分に合った材料や材料の厚みを選ぶことで、より効果的な保護が得られます。
④定期的なチェックを受ける
マウスピースは使用するうちに摩耗や変形が生じることがあります。
定期的に歯科医院でチェックを受け、必要に応じて交換や調整を行うことが大切です。特に、成長期の子どもや若者は、顎の成長に伴いマウスピースのサイズや形状が変わることがあるため、定期的な確認が必要です。
⑤清潔な状態を保つ
マウスピースは口腔内に直接装着するため、清潔に保つことが重要です。
使用後は水で洗い、定期的に専用の洗浄剤を使用して清掃することをお勧めします。
また、直射日光や高温の場所に放置しないよう注意しましょう。
そういう場所に放置すると、変形、劣化、破損などを起こします。
⑥使用上の注意
スポーツ中は、マウスピースを正しく装着することが重要です。
装着が不十分だと、効果が薄れるだけでなく、逆に怪我の原因となることがあります。運動前に必ず装着を確認し、外れないように注意しましょう。
また、後述致しますがスポーツの種類によってはスポーツマウスピースがふ必要の場合もあります。
その点についても質問がございましたらどうぞお尋ねください。
スポーツマウスピースをつけた方がいいスポーツやトレーニング
スポーツマウスピースは、特に接触の多いスポーツや激しい運動を行う際に、口腔内の保護に非常に重要な役割を果たします。
ここではスポーツマウスピースをつけた方が良いスポーツやトレーニングについて詳しく解説します。
①接触スポーツ
誤解がないようにお伝えしますが、スポーツマウスピースの主たる目的は、あくまで「口腔内の組織の保護」です。
アメリカンフットボールやラグビー、バスケットボール、サッカーなどは、選手同士の接触が頻繁に発生するため、口腔内の怪我のリスクが高いスポーツです。
これらのスポーツでは、タックルや衝突が多く、顎や歯に直接的な衝撃が加わることがあります。
スポーツマウスピースを装着することで、歯の破損や顎関節へのダメージを防ぐことができます。
ちなみに当院でスポーツマウスピースを作る患者さんの中で、一番多いスポーツはバスケットボールです。
②格闘技
ボクシングや空手、柔道などの格闘技では、相手との接触が避けられないため、マウスピースの使用が必須です。
これらのスポーツでは、パンチやキックによる直接的な衝撃が顎に加わることが多く、マウスピースが顎関節や歯を保護します。また、顎関節症の予防とともに、瞬間的なインパクトの力の発揮にも寄与します。
③トレーニング
特にウェイトトレーニングやコンタクトトレーニングでは、顎にかかる負担が大きくなることがあります。
スポーツマウスピースを装着することで、顎関節への負担を軽減し、トレーニングの効果を最大限に引き出すことができます。
また、顎をしっかりと固定することで、トレーニング中のパフォーマンス向上にもつながります。
実験や論文から言えるスポーツマウスピースに対する誤解
まず皆さんにお伝えしておかなければならないのは、スポーツマウスピースの目的は、歯の保護、口腔内の組織の保護、顎関節の保護の三本柱が主だということです。
運動のパフォーマンス向上については、少し誤解があります。
実験や論文データから言えるスポーツマウスピースのパフォーマンス向上は「動的な能力向上」なのです。
わかりにくいと思うので以下で上昇する能力を列挙します。
①咀嚼筋や頸部や脊柱管付近の筋活動電位の上昇
咀嚼筋を中心に、頸部の筋群の活動電位が上昇するため、咬合力自体も上昇します。
同時に上半身、特に頸部付近の筋肉は、力が入りやすくなります。
一方で下半身の筋肉の活動電位は上昇しません。
②活動時の動体視力向上
スポーツマウスピースを装着しても、中枢系の反射は向上したりはしません。
しかし、頸性動眼反射が向上するため運動時の動体視力が向上します。
これは、後頸筋群の活動電位が上昇するためと考えられます。
③交感神経の亢進
スポーツマウスピースを装着することで交感神経が亢進します。
慣れていないうちは副交感神経も同時に活発になってしまいますが、装着することに慣れてくると交感神経のみが亢進し、アドレナリンが分泌され、体が戦闘モードになります。
スポーツマウスピースが苦手とする分野、スポーツとは?
①体の「制止」が苦手になる
スポーツマウスピースをつけると、一部の筋肉の活動電位が上がります。
つまり活発になり、筋肉が動きやすくなるんです。
ということは、筋肉を制止して「動かない」という動作については、すこぶる苦手になってしまいます。
あくまでも、一瞬の力を出したり、強い力を出すという運動について有用なのです。
②苦手になるスポーツ
ここまで解説すれば、自ずとスポーツマウスピースをつけない方がいいスポーツも分かってくるはずです。
アーチェリー、弓道なんかは制止していないと的なんて狙えません。
無課金おじさんで有名になった「射撃」についても、同様のことが言えるでしょう。
このようなスポーツでは、逆効果になってしまうのです。
終わりに
いかがでしたか?
スポーツマウスピースは、ちゃんと用途を理解して使用すれば、皆さんのスポーツやトレーニングをより安全に、効率的に行えるものです。
是非しっかりとスポーツマウスピースの「口腔内組織の保護」と「動的筋力の向上」を理解して、より一層スポーツを安全に楽しんでみてください。