2024年11月23日
(院長徒然ブログ)
ライオン株式会社から論文発表
皆さんはライオンという会社をご存知ですか?
実はライオン株式会社さんは、ライオン歯科衛生研究所と共同で、お口の中に関する様々な実態調査をされているんです。
そして、2024年10月12日に国際歯科研究学会(IADR)と国際歯科研究学会米国部会(AADOCR)の科学雑誌「Journal of Dental Research」に新たな論文を発表されました。
そのタイトルは、「Oral microbiota development in the first 60 months: A longitudinal study」です。
新たにわかったこと
この研究では、大人の口腔内に定着している細菌種と同様のコロニー(細菌叢と呼びます)に、子供がどのくらいで大人と同じ細菌を持っていくのかを分析した研究となります。
その結果、生後1週間で大人と同じ細菌の3割が定着、生後9ヶ月で50%以上が定着、一歳半で75%を超えて定着、3歳で9割が定着して、5歳には大人とほぼ変わらなくなってしまうということが判明いたしました。
そして、一歳半までに爆発的に口腔内の細菌の種類は増えますが、そこまでに検出されるようになった菌の種類に、Neisseria属やHaemophilus属といった虫歯予防や歯周病予防に関係する菌が定着するということがわかったのです。
これらの結果からどういうことが言えるのかを解説していきますね。
口腔内の細菌叢とはなんなのか
口腔内の細菌叢(こうくうないのさいきんそう)は、口の中に存在するさまざまな微生物の集まりを指します。これには、細菌、真菌、ウイルスなどが含まれ、特に細菌が主な構成要素です。口腔内の細菌叢は、食べ物の残りかすや唾液、口腔内の環境によって影響を受けます。
口腔内の細菌叢の役割
口腔内の細菌の分布、割合を含めた細菌の種類のことを「口腔細菌叢(オーラルフローラ)」と呼びます。
口腔内にも善玉菌、悪玉菌が存在し、この種類や割合によって様々な病気の掛かりやすさや以下のような役割の力が変わってきます。
いくつか箇条書きで口腔細菌叢の役割を書きますね。
①消化の助け
一部の細菌は、酵素により食物の分解を助け、栄養素の吸収を促進します。
②免疫機能
口腔内の細菌叢は、病原菌の侵入を防ぐバリアとして機能し、免疫をサポートします。
「菌を持って菌を制する」という感じで、病原菌が侵入しても、すでに土着の菌がいては満足に増殖できないというわけです。
③pHの調整
一部の細菌は酸を生成し、口腔内のpHを調整することで、他の微生物の成長を抑制します。
唾液の緩衝能とも密接に関係します。
口腔内最近叢の定着と変化
口腔内細菌叢の定着と変化は、個人の生活習慣や食事、口腔衛生の状態によって変化しますが、一度定着すると、比較的安定した状態を保つことが多いです。
これは、特定の細菌が他の細菌と相互作用しながらバランスを保つためです。
例えば、ある細菌が優勢になっても、別の細菌がその増殖を抑制し、次第に元々の細菌の割合に戻っていくという感じです。
虫歯菌や歯周病菌の感染経路
もう一つ大事なことを説明しなければなりません。
虫歯菌や歯周病菌は一般的に大人の口腔内、特に唾液や歯垢にいますが、生まれた時からいるわけではないんです。
(一部の歯周病菌は元々います。別のコラムにて書きましたが、胎盤や卵膜からも歯周病菌が発見されていますしね。)
生まれた後で家族や友人との接触を通じて感染することが一般的なんです。
個人的には接触感染で、例えば親がスプーンで口移ししたり、大人の唾が飛んだ物、例えばおもちゃを介して子供に唾液を移すことで、感染することがあります。
歯周病菌であるFusobacterium nucleatumなどは、生後6ヶ月から1歳半になることから検出され始めるので、口腔細菌叢を整えるためにも、口臭予防のためにもしっかり乳歯を磨いてあげてください。
成人にも虫歯菌が居ない、非常に少ない人が存在する
ごく稀に歯を磨かなくても、虫歯をならない人がいます。
生まれつきの歯質の強さや唾液の成分の問題も大きく関与するのですが、虫歯の原因となるミュータンス菌などに感染しておらず、全くいないか、口腔細菌叢で抑えられ、数が少ないかということも考えられます。
今まで説明したことをまとめて、結論に繋げられます。
結論:3歳付近まで気をつけて虫歯・歯周病に成りにくい子にしてあげる
いかがでしたか?
今回説明した内容からわかってくると思いますが、3歳で9割以上定着するので、もしそれまでに虫歯菌に一切感染させず、歯周病菌をしっかり減らして口腔細菌叢を形成させれば、虫歯や歯周病に掛からない子供さんになってくれるかもしてないのです。
今後の研究でさらなる展望が開かれると思います。
是非子育てに今日の情報を役立ててみてください。