2024年11月02日
(院長徒然ブログ)
ラミネートベニアは新しい技術ではない
皆さんは「ラミネートベニア」が最近始まった治療だと思っていませんか?
実はラミネートベニアの概念が生まれたのは1930年代、つまり戦前なんです。
当初は、歯の表面に薄いセラミックや樹脂を貼り付ける方法が試みられましたが、技術的に安定せず普及しませんでした。
普及し始めたのは約40年前!(それでも結構昔)つまり1980年代に入ってからなんです。
この発展には1960年代に開発されたあるセラミック材料のおかげで、普及していったのです
その名を「ポーセレン」といいます。
日本では「長石系セラミック」とも呼ばれるこのセラミックの実用で、ラミネートベニアが再評価されるようになりました。
さらにこの30年のセラミック技術の発展は、さらに凄まじいものがありました。
日本も含めた先進国の技術者たちは新しいセラミックの開発を恐ろしい速度で発展を遂げました。
一方で、日本の歯学界はその速度についていけず、自費のセラミック治療で先進国に遅れをとることになります。
先日ご紹介したe.maxというセラミックも、開発されたのはもう20年も前です。
しかし日本では、近年になってようやく普及しているセラミックとなってしまっています。
日本はセラミックの「開発」には世界を先んじていましたが、「使用•普及」には後進国なのです。
現在(とはいっても世界では30年前に始まっていることですが)ようやく日本でもCAD/CAM技術の導入により、ラミネートベニアの製作は機械で削り出す方式にシフトしています。
様変わりするラミネートベニアの基礎材料事情に、「ポーセレン」はどうなっていくんでしょうか。
日本でラミネートベニアに使われているセラミックの分類
では、現在使われているセラミックの種類について解説します。
①長石系セラミック(ポーセレン)
まず最初は、普及のきっかけとなったポーセレンです。
その名の通り長石、リューサイトを主成分とするセラミックです。
特徴としては、「歯の自然にマッチする色調と透明度を出せる」という利点と、「脆い」という致命的な欠点を持ちます。
それでも、これまでの日本では、ラミネートベニアの材料として活躍したり、金属の裏打ちに貼り付けて使用する(これを考えたのは日本人)など、硬い材料に貼り付ける形で、強度不足分を使用する方法で補ってきたのです。
②ガラス系セラミック(e.maxなど)
二ケイ酸リチウムガラスセラミックとも呼ばれ、二ケイ酸リチウムを主原料とし、その粉末と有機セラミック相のマトリックスから構成されています。
現在最も主流なセラミックで、この30年に長石系セラミックを発展させて作られただけあって、ポーセレンに勝る透過率と、ポーセレンに負けない色調再現性(特にe.max)、そしてポーセレンの倍の曲げ強さを誇ります。
そのため、ポーセレンに代わって現在最もラミネートベニアに使われています。
③ジルコニア
酸化ジルコニウム (ZrO2)を主成分とするセラミックで、名前は皆さん聞いたことあると思います。ジルコニアは、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれ、高強度、耐摩耗性で知られます。
ジルコニアは、フルマウスレストレーションやより専門的な修復物の作成によく使用されます。
一番の特徴である曲げ強度はなんとポーセレンの10倍以上で、約1000MPaから1300MPaと、強度が強いため、薄いラミネートベニアにも使えるのです。
機械的性質から見るポーセレン
機械的数値からポーセレンを見てみると、ポーセレンの欠点は浮き彫りになります。
圧縮強さ249MPaと脆く、噛み合わせる部分にポーセレンを伸ばすと、壊れてしまいやすいです。
ピッカース硬さは430Hvで歯より硬く、歯と擦り合わせすれば天然歯が傷つくので、注意が必要です。
1番大事なのはが曲げ強さ80から100MPaし無いことで、ガラス系セラミックの1/3未満、ジルコニアの1/10未満ということです。
今後ラミネートベニアのベースセラミックとして主流にしていくメリットは、あまり無いのかもしれません。
本来ポーセレンの特徴と言えば、色調再現性でしたが、技術の進歩とともに他のセラミックに追いつかれていると言って良いでしょう。
どうしても細やかな色調を出したいかつポーセレンを絶対使うということであれば、強度の高いセラミックの裏打ちの元で使っていくことになりそうです。
いかがでしたか?
時代の流れとともに廃れていく材料は出てきます。
我々歯科医師にできるのは、そういった時代の流れに沿って学び、より良い補綴物を患者さんに提供していくことなので、今後もしっかりと歩みを止めないで参ります。