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プレコンセプションケアの重要性(歯周病と早産)

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2024年11月15日

プレコンセプションケアの重要性(歯周病と早産)

(院長の徒然ブログ)

プレコンセプションケアとは

プレコンセプションケアとは、妊娠する前からしっかりケアを行い、健康に妊娠しようという考えのことをいいます。

世界保健機関(WHO)や虫歯予防のエビデンス研究で有名なアメリカ疾病管理予防センター(CDC)でもプレコンセプションケアを提唱されています。

妊娠後の早産と歯周病は関連性が深いことがわかっており、歯周病に罹患している人は罹患していない人に比べ、「7倍」も早産リスクがあるのです。

意外かもしれませんが、早産のリスクになると言われる高齢出産やアルコールの摂取、喫煙、更には産科器官の感染症等と比較しても、圧倒的に歯周病は早期低体重児出産のリスクが高いんです。だからこそ妊娠前から口腔内のケアをしっかり行っておく必要があるのです。

そしてこれを読んでいる男性の方!

奥さんだけでなく、旦那さんの口腔ケアも関係するので、大事なんですよ!

そもそも早産とは何?

早産とは、妊娠37週未満で出産することを指します。(28週未満だと超早産)

通常、出産は40週程度で行われますが、早産の場合、赤ちゃんが十分に成長する前に生まれてしまいます。

早産になる確率は5%ではありますが、この確率は現代と過去を比べても、ほとんど変わりありません。

つまり医学が進歩しても早産リスクは減らせていないのです。

早産と低出生体重児

出生時に2500g未満の赤ちゃんを低出生体重児といいます。

早産で生まれた赤ちゃんの多くは低出生体重児(低体重児)です。

故に早産児は出生時に成長が十分でないため疾病リスクや、将来的に特定の疾病リスクが高いことが分かっています。

このように早産というのは赤ちゃんの健康に様々なリスクをもたらすことがあるのです。

歯周病が原因で早産になるメカニズム

まず言われているのは、妊娠中期以降の女性ホルモン増加により、歯周病菌が増えやすくなることが原因です。

歯周病菌が増えると歯肉に晴れが起こり、体はそれに対抗しようと炎症物質(炎症性サイトカイン)を産生します。

血中のサイトカインが増えると、子宮の収縮が誘発されるので、早産になりやすいというメカニズムです。

そして最近もう一つメカニズムが分かってきました。

なんと早産や流産患者の胎盤や卵膜から歯周病菌の菌の塊が発見されており、脂盤や卵膜に感染が起こっていることが提唱されています。

この感染による炎症から陣痛が誘発され、早産を引き起こすことが示唆されました。

ですので、妊娠初期でも歯周病により早産や流産を引き起こすリスクがあるのです。

つまり、「妊娠してから歯科を受診する」のではなく、「妊娠する前から出産まで、歯科受診やケアをすること非常に重要」だということが言えるのです。

早産の原因となる感染症は「尿路感染症」だけでしたが、是非「歯周病」も警戒していただければと思います。

早産の原因

早産の原因は多岐にわたりますが、以下に記載していきます。

①子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)

最も主な原因で、早産全体の8割を占めているといわれています。

早産の原因としては一番多く、膣から子宮に細菌が入って起こります。

膣外の常在菌や病原菌が原因となり、膣内の善玉菌と悪玉菌のフローラ(細菌叢)が崩れてしまい、感染することで子宮内に炎症を起こします。

この炎症が原因で、陣痛の誘発や子宮の収縮、破水、子宮頚部熱化(子宮の入り口が柔らかくなること)、破水など様々なトラブルを引き起こし、早産リスクが上がっていくのです。

通常膣内は常在細菌である乳酸菌の一種によって弱酸性に維持されており、そのため感染リスクを低く保っているのです。

しかし、何らかの原因で乳酸菌が減少すると膣の酸性度が低下し、他の常在細菌が増殖しやすくなってしまうんです。

これらの菌が子宮頸管内に入り子宮頸管炎になると、先程お話しした子宮頚部熱化が進行します。

また、子宮内まで炎症がいけば胎児を包んでいる卵膜に感染し、絨毛膜羊膜炎を起こして子宮収縮を誘発したり、破水を惹起します。

先ほど紹介した新しいメカニズムだと、歯周病菌が常在菌を脅かす可能性もあるので、やはり注意が必要です。

②子宮頸管無力症

妊娠中は子宮頚管(子供が出てくる管)は閉じています。

しかしそこを閉めている筋肉が緩んでしまうことで、流産や早産を引き起こすことがあります。

妊娠の中期以降に起こることが多く原因はまだ解明されていません。

③全身性炎症

歯周病が原因となる早産は主にここに含まれます。

全身性炎症とは局所感染や外傷などで、身体のどこかに炎症が起き、炎症性サイトカインなどが産生されて、それらが血液循環に乗ってしまい全身に移行して反応を起こすことです。

歯周病のせいで産生された炎症性サイトカインが、肝硬変や糖尿病などの全身性疾患を悪化させることが分かっています。

妊婦においても歯周病などの局所感染によって炎症性サイトカインが産生され、子宮収縮が惹起される恐れがあるのです。

④その他妊娠の合併症

妊娠高血圧症候群や糖尿病などの合併症がある場合、早産のリスクが高まります。

先程お伝えしたとおり、その糖尿病を悪化させるリスクがある歯周病は、事前に治療しておいたほうが安全です。


⑤多胎妊娠や加齢

双子や三つ子などの多胎妊娠は、早産のリスクを増加させます。

高齢出産も妊娠高血圧症候群や子宮筋腫などの合併症が増加し、これによって子宮内胎児発育不全や早産のリスクが高まります。 

また高齢だと糖尿病を合併しやすいのもリスクの一つです。(糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病のリスク上昇)

もちろんこれらは他の要素と違って、避けられない要素ではあります。
⑥生活習慣

歯周病に比べれば、小さい要素ではあるのですが、喫煙やアルコールの摂取、栄養不足などの不健康な生活習慣も早産のリスクを高める要因です。
⑦ストレス

精神的なストレスや身体的なストレスも、早産を引き起こす可能性があります。

ストレスが続くと交感神経優位となり、血管が収縮しやすくなります。

 それにより、慢性的な子宮収縮や子宮への血流悪化を起こし、早産のリスクが上がってしまいます。

終わりに

いかがでしたか?

歯周病と早産の関わり合いはまだわかってない部分もあり、これからもメカニズムが解明されていくでしょう。

確かなことは、妊娠前と妊娠中、そして出産まで、極力身体に炎症が無い方がいいということです。

妊娠中はもちろんですが、これから妊娠する方も、是非歯で定期的な歯周病予防をしていくこと強くお勧めいたします。

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