2024年11月17日
(院長の徒然ブログ)
歯科偶発症とは
皆さんは治療中の気分が悪くなったことはありますか?
ある人は麻酔時に、ある人は歯を抜く最中に、ある人は、治療後にとても気分が悪くなったことがあるかもしれません。
そういう経験がある方は疑問に思うかもしれません。
「あれは一体なんだったんだろう」と。
今回は、そんな歯科治療中に起こりうる数多くの歯科偶発症の中でも「神経原性ショック」について説明していきます。
神経原性ショックとは
神経原性ショックとは、血管の収縮に関わる交感神経の働きが低下することによって、局部の血管が拡張して血圧が下がり、脳の血流がいかなくなりショック状態になることです。
脳貧血 、疼痛性ショックと呼ばれるものもこれにあたり、歯医者にとって不名誉なことに「デンタルショック」とも呼ばれてしまっています。
迷走神経という自律神経の束が発症の起点になっていることから、血管迷走神経反射とも言われます。
迷走神経の緊張で意識消失した場合を、血管迷走神経性失神(vasovagalsyncope)という医学用語が特に使われます。
この血管迷走神経性失神こそ、歯科でも医科でも患者さんが意識を失ったとき、最も頻度が高い症状であるからこそ、患者さんの状態が以上の際に最も疑うべき病態であると言えるのです。
一般的に原因としては、歯科治療に対する不安や恐怖心などの感情で緊張しているところに、麻酔などで行われる針の刺し入れなどの痛みが加わることによって、迷走神経緊張状態になって発症します。
症状の発現と進行は早く、気分不良の訴えがあってまもなく「顔面蒼白」、「冷汗」、「嘔気」、「周囲への無関心」、「意識消失」などが起こります。
バイタルサインとしては、「血圧低下」、「徐脈」があり、稀に重症な場合は心停止することもあります。
神経原性ショックの時の処置
それでは「神経原性ショック」の際の処置についてお話しいたします。
処置としては、体位を水平位にし両足を挙上させて、足にある血流を脳や心臓の方に戻してあげます。
一昔前だとトレンデレンブルク体位を推奨する時代もありましたが、現在は脳圧が高くなるのと、腹部臓器による胸腔圧迫が問題となるため、現在は推奨されていません。
そして酸素ボンベをちゃんと置いている歯科医院(ブランデンタルクリニックにもあります)では、酸素吸入を1分間に4〜6ℓで開始していきます。
この時点で、大抵の神経性ショックは回復いたします。
それでもなお症状が継続する場合に限り、副交感神経遮断薬である硫酸アトロピンを0.25〜0.5mg静脈注射を行います。
静脈注射がすぐにできない場合は、0.5mgを筋肉注射してください。
低血圧が持続する場合は、硫酸アトロピン製剤とともに昇圧薬を静脈注射します。
こちらも速やかに静脈注射できなければ、筋肉注射を行ってください。
意識が戻ったら
もしあなたがショック状態から容易に回復した場合でも、すぐには絶対に動かないでください。
回復傾向としては良好な場合がほとんどなんですが、転倒による事故や怪我などの危険性があります。
しっかりとまずは休みましょう。
当日は治療を再開することは推奨されませんので、ストレスや痛みなどの刺激を緩和した上で、日を改めて行っていくことが大切です。
万が一ご気分が悪くなったら、ブランデンタルクリニックでは、すぐに生体モニターをつけて状況を分析、対処いたします。
もし治療中に気分が悪くなられた方は、お気軽に申し出てください。