2024年10月31日
(院長の徒然ブログ)
口臭に関するトピックス
おはようございます。コラムのお時間です。
2024年8月に全国の10代から30代の男女を対象に、ネットアンケートを実施したそうです。
そのお題とは、「恋人にするなら『歯並びが悪い人』と『口臭が気になる人』のどちらを選ぶか」だったそうです。
結果、2/3の人が「歯並びが悪い人」と回答…つまり多くの人が「口臭が気になる人」の方が嫌だという回答だったそうです。
基本的に口臭の8割は口の中に原因があるとされています。
今日はそんな気になる口臭の原因と、改善法について説明をしていこうと思います。
口臭の原因
①口腔内の雑菌
口腔内には多くの細菌が存在し、特に食べかすやプラークが残ると、これらの細菌が分解して、原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC:Volatile Sulfur Compounds)である硫化水素(H2S)やメチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルサルファイド[(CH3)2S]などを産生します。
特に口臭の原因となりやすいのが、硫化水素とメチルメルカプタンであり、9割型口臭の原因はこの二つです。
これらの硫黄化合物は、口腔内の嫌気性菌(酸素のない状況で増殖しやすい菌)が、口腔内のタンパク質やアミノ酸を餌にして作ってしまうのです。
②歯周病による臭い
先ほどの①に関連しますが、歯茎が腫れると歯と歯茎の間に歯周ポケットと呼ばれる隙間ができます。
その隙間は酸素が届かず、嫌気性菌にとって絶好の活動場所となり、どんどん細菌が増殖することで口臭が悪化します。
③虫歯や不良補綴物による臭い
同じくこれも①に関連した原因です。
虫歯の穴や不良補綴物の隙間、もしくはそれが原因で生じた歯周ポケットに菌が付着し、嫌気性菌の絶好の繁殖場所となります。
また、歯の表面に汚れがどんどん積層していくと、下層の細菌は酸素が届かない環境になるので、これも絶好の嫌気性菌繁殖場所となります。
④舌苔による匂い
これに関しては、また詳しくコラム書きますね。
舌苔は、舌の上に白く薄い汚れのようになっているものです。
この中には、口臭の原因となる細菌やカビの一種やタンパク質を多く含んでいます。
これもまた①と同様にVSCなどが産生されて口臭の原因となるのです。
特に口腔乾燥時や体調不良で免疫が下がった時などは舌苔が厚くなりやすいです。
⑤刺激臭のする食べ物
ニラ、ニンニクや玉ねぎなど匂い強い食べ物は、胃から臭いが上がるだけでなく、消化過程で揮発性の成分が血流に入り、肺を通じて呼気に現れます。
⑥口腔内の乾燥
唾液のコラムで説明した通り、唾液は口腔内の細菌を洗い流す役割とともに免疫グロブリンえお含みます。
よって、口が乾くと唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなります。
⑦全身的な要因
全身疾患が元となる口臭の原因としては糖尿病、尿毒症、肝硬変、肝癌、腎臓病(トリメチルアミン尿症など)などがあります。
肝性昏睡・肝硬変のように脂肪酸・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドと口腔由来の口臭と類似したにおいもあれば、例えば糖尿病のケトン体による甘いアセトン臭だったり、尿毒症や腎臓病のジメチルアミン・トリメチルアミンのように特徴的な臭いのものもあります。
口臭の対策
①毎日の定期的なセルフケア
毎日の定期的な食後の口腔清掃を行い、補助器具(フロスや歯間ブラシ)を使って、食べかすやプラークを取り除くことが大事です。
舌も軽く磨くことで、舌の表面に付着した細菌を減らすことができます。
(舌は磨きすぎると傷つくので注意)
②水分補給・保湿ジェルの使用
十分な水分を摂取することで、口腔内の乾燥を防ぎ、唾液の分泌を促進します。
特に、口が乾きやすい環境では意識的に水を含むことが大切です。
加齢とともに、唾液の分泌は落ちるので、保湿ジェルの併用も有効ですよ。
③定期的な口腔内のプロフェッショナルクリーニング
歯科医院で定期的な検診とクリーニングを行い、歯周病や虫歯の治療もしっかり行いましょう。
不良補綴物のやりかえも大事なことです。
④バクテリアセラピー
乳酸菌などを使い、口腔内の悪玉菌を善玉菌に置き換えるように、オーラルフローラ(口腔細菌叢)を整えてあげるのも有効な手段です。
毎日続ける必要がありますが、消化器官全体に作用するので、全身健康の改善にの有効です。
⑤食事内容の調整
ニラ、ニンニクや玉ねぎなどの口臭を引き起こす食材を控えることや、食後の清掃や飲水することで口腔内を清潔に保つことが効果的です。
⑥口臭対策製品の使用
マウスウォッシュや口臭対策のガムなどを利用することで、一時的に口臭を抑えることができます。
ただし、根本的な解決にはならないため、他の対策と併用することが重要です。
終わりに
近年(というか2024年)口臭の原因となる細菌は、複数種が共生することで、口臭原因物質産生力が増悪することがわかってきました。
歯周病関連菌であるFusobacterium nucleatum(F. nucleatum)が、最もメチルメルカプタンを産生する力を持っているのですが、口腔常在細菌のStreptococcus gordonii(S. gordonii)と共生すると、メチルメルカプタンの産生量が増加する、「口臭増強機構」があることが分かりました。
(簡単にいうとSg菌の産生物質がメチルメルカプタンを産生するメチオニン代謝経路の触媒になります。)
口臭は多くの要因によって引き起こされますが、一番の原因である細菌を、適切な口腔ケアや善玉菌の力によって改善してみましょう。
是非口臭対策に興味のある方はお問い合わせください。