2024年11月28日
え?野菜で虫歯予防?
こんにちは、皆さんは野菜を多く摂っていらっしゃいますか?
野菜は体に良いというイメージがありますが、最近の研究で、野菜に含まれる「硝酸塩」が虫歯予防に役に立つことが分かってきたのでご紹介いたします。
どんな研究だったの?
野菜が虫歯予防に役立つという発表は、今年の8月1日に東北大学大学院歯学研究科准教授の鷲尾純平が責任著者の論文「Effects of nitrate and nitrite on plaque pH decrease and nitrite-producing and -degrading activities of plaque」で、「Caries Research」という雑誌にて紹介されました。
お口の中にいるミュータンス菌(虫歯の原因菌)などは、糖を栄養に酸を産生して歯を溶かしますが、野菜に含まれる硝酸塩がその酸の産生を抑制することを発見したのです。
方法としては、今回の研究では口腔内の細菌に対して硝酸塩から亜硝酸塩が産生される能力や、硝酸塩存在下で亜硝酸塩がどれだけ分解されるかを測定して、細菌の酸産生抑制がどういう条件で行われるかを明らかにしていったのです。
(18名の患者さんから採取したプラークを培養して、そこに硝酸塩と亜酸塩を加えて、 細菌の酸産生によるpH低下 を計測し、さらに糖(グルコース)を加えた後の酸産生によるpH低下 も計測して、亜磆酸産生がどれだけ活発に行われているか、亜硝酸塩がどれだけ分解されてしまっているかを調べています)
どうして野菜が虫歯予防になるの?
硝酸塩は、体内で代謝される過程や口腔常在細菌によって亜硝酸塩に変換されます。
唾液腺によって再分泌されたり、口腔常在細菌により産生された亜硝酸塩が、他の口腔細菌の酸産生を抑制し、虫歯などの口腔疾患を予防します。
しかし単に亜硝酸塩があるだけではダメなのです。
実験結果から説明します。
細菌に硝酸塩を加えると、酸産生によるpH低下を抑制し、糖存在下であっても酸産生によるpH低下もきちんと抑制しました。
また、グルコース存在下では、プラーク中の亜硝酸塩産生が約3.3倍に促進されました。
しかし、グルコースが無い条件で細菌に亜硝酸塩を加えると酸産生によるpH低下は抑制してくれたのですが、グルコースを加えた状態では酸産生によるpH低下は抑制しませんでした。
また、グルコース存在下では、亜硝酸塩分解活性が一応促進されたものの、亜硝酸塩の産生と比べて圧倒的に劣っていました。
つまり、亜硝酸塩だけではダメで、ちゃんと野菜を取って硝酸塩を補給しないと、亜硝酸塩の分解に細菌が躍起にならず、酸が産生されてしまうということです。
また、硝酸塩の濃度が上がるほど亜硝酸塩の産生は促進されることもわかっています。
今までの研究で、亜硝酸塩には抗菌作用や血管拡張作用がわかっており、口腔疾患や循環器疾患の予防に貢献しています。
(脳や心臓などの循環器疾患の予防にもなるのです。)
過剰産生だとメトヘモグロビン血症のリスクもありますが、通常摂取では起きません。
また、野菜から摂取した硝酸塩は、腸内で吸収されたあと、血管内に入り、その一部は再び唾液を作る際(唾液は血液から作られます)、濃縮されて口腔内に戻っていきます。
こうして一度摂取された硝酸塩は循環して虫歯予防に役立っていくのです。
また、亜硝酸塩の産生能力は若い人ほど活発だということも示唆されました。
野菜嫌いの若年層壮年層の方、虫歯予防のためにも野菜をしっかり摂ってみませんか?
硝酸塩が多く含まれる野菜は?
それではこの研究結果を早速我々の日々の健康増進に役立てるために、硝酸塩を多く含む野菜をご紹介しましょう。
硝酸塩は特に葉物野菜に多く含まれており、ほうれん草、春菊、サラダ菜、チンゲンサ菜、パクチーなどに多く含まれます。
因みに「硝酸塩は体内で還元されて亜硝酸塩に変化すると、メトヘモグロビン血症や発ガン性物質(特に胃がんに関与)であるニトロソアミンの生成に関与するリスクがある」ということが一部で指摘されました。
しかし、エビデンスが不確かな上に、逆を証明する研究データもあり、野菜から摂る亜硝酸塩のがんリスクは低いという見方もあります。
それどころか硝酸塩・亜硝酸塩が,実は三大疾病および生活習慣病の予防に貢献していることが明らかになっていますので、無理に控えたりすることはせず、適切に食べてちゃんと虫歯も三大疾病も生活習慣病も予防していきましょう!