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舌圧の基準値は?:舌圧低下で全身に影響すること:超高齢社会の健康長寿戦略

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2026年5月21日

舌圧の基準値は?:舌圧低下で全身に影響すること:超高齢社会の健康長寿戦略

(院長の徒然コラム)

はじめに:歯科医療が担う新しい役割:形態から機能へ

歯科医療は、大きな転換点を迎えています。かつて歯科医院の主な役割は、むし歯を削り、欠損した歯を補うという、いわば「形態の修復」にありました。

しかし、日本が世界に先駆けて超高齢社会に突入した今、歯科医療に求められるのは、口腔の機能を維持し、それを通じて全身の健康を守るという「機能の管理」です。

その指標の一つとして、今世界中の歯科臨床家や研究者が注目しているのが「舌圧」です。

舌は、私たちの口の中に存在する最大の筋肉組織です。

「食べる」「話す」「呼吸する」という、生命維持に直結する全ての動作において、舌は主役を演じています。

この舌が発揮する圧力、すなわち舌圧を客観的に数値化することで、私たちは患者様の全身に何が起きているのか、あるいは将来どのようなリスクが待ち受けているのかを、高い精度で予測できるようになりました。

今回のコラムでは、舌圧という指標が持つ無限の可能性を詳しく解き明かしていきます。

まずは、舌の運動機能の根幹をなす生理学的なメカニズムから、話を進めてまいりましょう。

第1章:舌尖アンカー理論:飲み込みを支える「錨」の役割

舌の運動機能を理解する上で、まず私たちが知っておかなければならないのが「舌尖アンカー(Tongue Anchoring)」という概念です。

これは、補綴歯科治療の成功において極めて重要な鍵を握る理論です。

私たちが食物を飲み込む(嚥下する)際、舌は一見、自由に動いているように見えます。

しかし、そこには精密な仕組みが存在します。

嚥下の瞬間、舌の先端(舌尖)は上顎の前歯の裏側、いわゆるS状隆起付近にしっかりと押し当てられ、固定されます。

この固定された状態が、船を止める「錨(アンカー)」のような役割を果たすため、これを舌尖アンカーと呼びます。

このアンカーがしっかりと打ち込まれることで初めて、舌の後半部分が力強く波打ち、食塊を喉の方へと送り出すための強力な陽圧を発生させることができます。

これを「搾送運動(さくそううんどう)」と呼びます。

広島大学の吉川氏らの研究によれば、このアンカーが機能するためには、口腔内の環境が整っていることが不可欠です。

例えば、歯を失ったまま放置されている患者様や、適合の悪い義歯を使用している患者様では、舌尖を固定するための「支点」が失われてしまいます。

その結果、飲み込みの瞬間に舌が泳いでしまい、食塊を喉へ送り出す力が分散されてしまうのです。

これは、重い荷物を持ち上げる時に足場が安定していないのと同じ状態です。

歯科医師が行う義歯(入れ歯)の調整は、単に「噛める」ようにするだけでなく、この「舌尖アンカー」を打ちやすくするための環境づくりでもあります。

義歯の口蓋部分(上あごに接する部分)の厚みや形態を微調整し、舌圧測定器でその場で効果を確認する。

このような「機能を数値で評価する補綴(ほてつ)治療」こそが、これからの歯科医療に求められる専門性なのです。

第2章:舌圧と栄養状態:生命を維持する「容量反応関係」

舌圧は、単なる口の力の指標ではありません。

それは、その人の栄養状態そのものを映し出す鏡です。

2025年に尾関氏らが行った歯科外来を受診する高齢者を対象とした大規模な調査では、舌圧の数値と、低栄養のリスク評価ツール(MNA-SF)のスコアとの間に、明確な「容量反応関係」があることが証明されました。

容量反応関係とは、一方が悪くなれば、それに比例してもう一方も段階的に悪くなるという密接な関係のことです。

具体的には、舌圧が低下すればするほど、低栄養に陥るリスクが一段階ずつ確実に上がっていくのです。

ここで注目すべきは、この関係が、年齢や性別、さらには「現在、歯が何本残っているか」といった他の要因を排除してもなお、独立して成立しているという点です。

つまり、たとえ歯が二十本以上揃っていて何でも食べられるように見える患者様であっても、舌圧という「機能」が低下していれば、その方はすでに低栄養の入り口に立っている可能性があるのです。

尾関氏らの研究では、低栄養状態を予測するための重要なカットオフ値として「21.3キロパスカル(kPa)」という数値を導き出しました。

臨床現場において、患者様の舌圧がこの数値を下回った場合、私たちは単に口の中を見るだけでなく、「最近、食欲が落ちていませんか?」「体重が減っていませんか?」といった、全身の栄養状態に踏み込んだカウンセリングを行う必要があります。

歯科医院が「栄養管理のゲートキーパー」として機能するためにも舌圧を適正にチェックしてあげる必要があるのです。

第3章:サルコペニアと口腔機能:全身の筋肉は連動している

舌は全身の筋肉の一部です。

したがって、全身の筋肉が衰える「サルコペニア」は、必ず舌にも現れます。

しかし、舌圧の興味深い点は、それが高齢者だけの問題ではないということです。

桝井氏らや畑田氏らによる、18歳から64歳までの健常成人を対象とした広範な調査では、舌圧と運動機能の関連性を証明しています。

この調査によれば、若い世代であっても、舌圧は「握力」や「下腿周囲長(ふくらはぎの太さ)」と有意に相関しています。

つまり、全身の身体活動が活発で、骨格筋が維持されている人は舌の力も強く、逆に運動不足などで筋肉量が減少している人は、若くても舌の力が弱くなっているのです。

特に、全身の筋肉量の指標である「ふくらはぎの太さ」と舌圧が相関するという可能性は、歯科のスクリーニングでの検診のあり方を変える可能性を秘めています。

患者様のふくらはぎをチェックする(指輪っかテストなど)ことで、口腔機能の低下を予測し、早期に介入を行う。

逆に、歯科で舌圧の低下を見つけることで、全身のサルコペニアを早期発見し、適切な運動指導や内科への紹介へと繋げる。

舌圧は、歯科と医科を繋ぐ強力なハブ(拠点)としての役割を担ってくるかもしれません。

さらに、神﨑氏らの研究では、首周りの筋肉(舌骨上筋群)の強さと舌圧が密接に関係していることも示されました。

仰向けに寝た状態で頭を自力で持ち上げ続ける「頭部挙上能力」が低い人は、例外なく舌圧も低く、その多くが重度の低栄養リスクを抱えています。

首を支える力と、飲み込むための舌の力。

これらは解剖学的にも機能的にも一体であり、私たちは口腔という狭い範囲だけでなく、頭頸部から全身へと続く一つのユニットとして患者様を診る必要があるのです。

第4章:性差と年代がもたらす舌圧の多様性

舌圧を臨床で評価する際、私たちは「誰と比較するか」を慎重に判断しなければなりません。畑田氏らの大規模調査によれば、舌圧には明確な性差が存在します。

一般的に、男性の舌圧平均値は女性よりも有意に高いことが分かっています。

男性が約40キロパスカル前後であるのに対し、女性は35から37キロパスカル程度が平均的な数値となります。

これは、全身の筋量に男女差があるのと同様の現象です。

したがって、女性の患者様を診断する際には、男性の基準をそのまま当てはめるのではなく、性別に応じた適切な評価基準を用いることが重要です。

また、以前は「年齢とともに舌圧は一律に低下する」と考えられていましたが、最近の研究では、必ずしもそうではないことが示唆されています。

健康な状態を維持している高齢者においては、舌圧の低下は極めて緩やかであり、80代になっても高い数値を維持している方は少なくありません。

一方で、18歳から64歳の健常成人の約14〜45%が、すでに基準値である30キロパスカルを下回っているという驚くべき報告もあります。

これは、現代の軟らかい食事習慣(軟食化)や、会話機会の減少が、全世代的な口腔機能の脆弱化を招いている可能性を示しています。

歯科医院を訪れる全ての世代に対して舌圧測定を行い、その方のライフステージに応じた「マイ舌圧」を把握しておくことは、生涯にわたる健康管理の出発点となるはずです。

第5章:睡眠時無呼吸症(OSA)と舌の筋力:夜の健康を守る力

舌圧が関与するのは、起きている時の活動だけではありません。

私たちが無意識に眠っている時の生命維持にも、舌の筋力は深く関わっています。その代表的な疾患が、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)です。

かつて、睡眠時無呼吸の原因は、主に「肥満」による気道の圧迫だと考えられてきました。

しかし、山本氏らによる研究などでは、肥満がない(BMIが正常範囲内)にもかかわらず無呼吸を来している患者様や、高齢の無呼吸患者様において、有意に舌圧が低下していることが判明したのです。

これは何を意味しているのでしょうか。

睡眠中、私たちの全身の筋肉はリラックスしますが、舌の筋肉も例外ではありません。

舌の筋力が低下していると、睡眠中に舌が重力に従って喉の奥へと沈み込み(舌根沈下)、気道を塞いでしまいます。

特に日本人は欧米人に比べて顎が小さいため、わずかな舌の筋力低下が致命的な空気の通り道の閉塞を招きやすいのです。

歯科が睡眠時無呼吸の治療に関わる際、多くの場合、下顎を前方に固定するマウスピース(OA)を作製します。

しかし、山本氏らの研究は、それに加えて「舌を鍛えるトレーニング」が有効である可能性を示唆しています。

舌の筋力を底上げすることで、睡眠中の舌の沈下を最小限に抑え、気道の開存性を高める。

これは、歯科にできる新しい睡眠医療の形です。

第6章:発話障害と舌圧:コミュニケーションを支える力

舌は、音を作り出す「構音(こうおん)」の主役でもあります。

神経や筋肉の病気によって舌の動きが悪くなると、言葉が不明瞭になる「発話障害(ディサースリア)」が引き起こされます。

この発話障害の病態理解においても、舌圧は欠かせない指標です。

私たちが言葉を発する時、舌が発揮している圧力は、実は最大舌圧のわずか10〜20%程度に過ぎません。

非常に小さな力で言葉を操っているのです。

しかし、だからといって舌の筋力がいらないわけではありません。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの進行性の病気では、まず最大舌圧が劇的に低下します。

最大舌圧という「貯金」が減ってくると、日常の会話という「わずかな出費」であっても、舌にとっては大きな負担となります。

その結果、話し始めは明瞭でも、会話を続けるうちに舌が疲れてしまい、急速に言葉がもつれるようになるのです。

新潟医療福祉大学の田村氏らの研究では、音響分析を用いることで、舌の筋力低下が言葉の「スピーディーな移動」を妨げていることを明らかにしました。

舌圧を継続的に測定することは、患者様のコミュニケーション能力の将来を予測し、早期に適切な支援ツールを導入するための重要な判断材料となります。

第7章:急性期医療における救世主:舌圧による予後予測の力

歯科医療の重要性は、今や歯科医院の外、特に生命の危機と隣り合わせの「急性期病院」の現場でも強く認識されるようになっています。

これまでは、救急搬送された患者様や手術直後の患者様に対して、歯科が関与する余地は少ないと考えられてきました。

しかし、心臓外科手術や重症肺炎などの急性期疾患で入院した患者様は、手術の侵襲や安静、あるいは気管挿管の影響などにより、急激に飲み込みの機能(嚥下機能)が低下することがあります。

これを「急性期嚥下障害」と呼びます。

神戸の小松氏らは、こうした患者様が入院した直後の「舌圧」を測定することで、その後の回復のプロセスを予測できることを明らかにしました。

研究によれば、入院初期の舌圧が高い数値を示している患者様ほど、退院までに「経口摂取レベル(FOIS)」が劇的に改善し、口から安全に食事が摂れるようになる確率が高いことが分かりました。

これは、舌圧が高いことが、いわば「機能の貯金(機能的リザーブ)」として働いているためです。

大きな手術という嵐が過ぎ去った後、元の生活に戻るためのエネルギーを、舌の筋肉の中に蓄えていたと言えるでしょう。

逆に、入院当初から舌圧が極端に低い患者様は、筋肉の貯金が乏しいため、リハビリテーションを行っても回復に時間がかかり、結果として入院期間が長期化したり、低栄養が悪化したりする傾向にあります。

急性期病棟において、歯科衛生士や言語聴覚士がベッドサイドで1分足らずの舌圧測定を行う。

その数値一つで、医師や栄養士が今後のリハビリ計画や栄養補給ルートを科学的に判断できる。

これは、急性期医療における歯科の重要な貢献の形なのです。

第8章:ユニークな研究と臨床介入:「おっとっと」が教える口腔機能

舌圧が低いことが判明した際、私たちは患者様にどのように説明し、どのように動機づけを行えばよいのでしょうか。

学術的な数値を並べるだけでは、患者様の心はなかなか動きません。

そこで登場するのが、内田らによるユニークな研究成果です。

内田氏らは、誰もが知る市販のスナック菓子「おっとっと」を舌と上顎だけで押しつぶすために必要な圧力を、精密な実験で測定しました。

その結果、形状によらず、この菓子を粉々に潰すには「約20キロパスカル(kPa)」という一定の圧力が必要であることが判明しました。

この「20キロパスカル」という数値には、非常に深い意味があります。

一般的に、70歳以上の高齢者において、口腔機能が維持されているかどうかの重要な目安の一つが、この20キロパスカル前後とされているからです。

歯科医院で「あなたの舌圧は現在18キロパスカルです」と伝えるよりも、「今、あなたの舌の力はお菓子を一つ潰すのにも苦労するレベルまで低下しています。このままでは大好きな食事が摂れなくなるかもしれませんよ」と説明する方が、患者様の実感として深く刺さります。

特別な高価な器具がなくても、身近な食品を使って「自分の力が足りているか」を日々チェックできる。

内田氏らの研究は、歯科医院で行う精密な検査と、患者様が自宅で行うセルフチェックとの間の架け橋となるかもしれません。

「おっとっとが潰せなくなったら、すぐに相談に来てくださいね」という合言葉は、オーラルフレイルの早期発見に向けた、日本で最も分かりやすい健康教育と言えるでしょう。

第9章:補綴歯科治療との融合:形が機能を引き出す

舌圧を向上させるアプローチは、トレーニングだけではありません。

歯科が得意とする「補綴(ほてつ)」、すなわち義歯などの装置によって機能を直接的に引き出すことが可能です。

この分野の第一人者である吉川氏らは、舌圧を補綴治療の設計に組み込むことの重要性を説いています。

前述している「舌尖アンカー」を確立させるためには、義歯の設計が全てを決めます。

例えば、舌が痩せてしまっている患者様に対して、従来の教科書通りの義歯を作ると、舌と義歯の間に大きな隙間ができてしまい、アンカーを打つことができません。

そこで、義歯の口蓋部分(上顎に接する部分)をあえて厚く作り、舌との距離を近づける「舌接触補助」という設計を用います。

吉川氏らの手法では、義歯の試作段階(ワックスデンチャー)で、患者様の舌圧を測定します。

その場で口蓋部分にワックスを盛り、舌が届きやすい最適な厚みを探っていくのです。適切な形態が見つかった瞬間、舌圧の数値は劇的に改善し、患者様はその場で「あ、飲み込みやすい」「しゃべりやすくなった」という実感を得られます。

これは、義歯を単なる「噛む道具」から、舌を支える「運動補助装置」へと進化させる発想です。

歯を治すことで舌の機能を引き出し、その結果として栄養状態が改善し、全身の筋力が戻っていく。

歯科医師が行う義歯の一削り、一盛りには、それほどの力があるのです。

第10章:「マイ舌圧」を生涯の指標に

これまでの解説してきたを総合すると、私たちが目指すべき歯科医療の未来図が見えてきます。

それは、全てのライフステージにおいて、患者様もしくは若い世代も含めて主治医が患者様自身の「舌圧」を把握し、管理している社会です。

畑田氏らの研究が示した通り、18歳から64歳までの若い世代であっても、舌圧は全身の健康状態と密接にリンクしています。

したがって、舌圧測定は高齢者への「介護予防」としてだけでなく、全世代への「健康増進」の指標として活用されるべきです。

(例えば健康診断に舌圧測定を加えるようになどです。)

20代や30代の健康な時期に測定した舌圧を、その方の「生涯のベストスコア」として記録しておく。

その後、40代、50代と年齢を重ねる中で数値に変化がないか、定期的な検診で追跡していく。

もし数値が低下し始めたら、それは全身の運動不足や栄養の偏り、あるいは睡眠の質の低下を示唆する早期警戒信号(アラート)となります。

2022年の診療報酬改定により、50代以上の方に対して口腔機能低下症の検査が広く普及し始めました。

これは国が「口腔機能の管理が、将来の医療費抑制に不可欠である」と認めた証です。

私たち歯科医療従事者は、この制度を最大限に活用し、患者様に「自分の舌圧を知ること」の価値を伝え続けていかなければなりません。

第11章:舌圧から始まる多職種連携:歯科が連携のハブになるように

舌圧という共通言語は、歯科と他職種の連携を劇的にスムーズにします。

内科医に対して「この患者様は舌圧が著しく低いので、低栄養の精密検査をお願いします」と伝える。

あるいはケアマネジャーに対して「舌の力が戻ってきたので、食事の形態を一段階上げても大丈夫です」と提言する。

神﨑氏らの研究が示したように、首の筋肉と舌の筋肉は連動しています。

したがって、理学療法士が全身の筋力トレーニングを行い、歯科が口腔の環境を整えることで、相乗効果が生まれます。

舌圧計が表示する液晶の数字は、患者様の心身の状態を客観的に示すため、チーム全員が迷いなく同じ方向を向いてケアに当たることができるのです。

特に、田村氏らが指摘した発話障害の分野では、言語聴覚士との連携が欠かせません。

舌の筋力の限界値を知ることで、無理のない発話練習や、食事のペース配分をアドバイスできるようになります。

歯科が数値というエビデンスを提供し、多職種がそれに基づいて専門性を発揮する。

この連携の中心に、「舌」があるのです。

第12章:終わりに:一生を舌の力を維持したまま終わるために

今回のコラムでは、舌圧という視点から、歯科医療が持つ可能性を多角的に掘り下げてきました。

私たちはこれまで、どれほど多くの「舌のサイン」を見逃してきたでしょうか。

患者様が「最近、何となく飲み込みにくい」と訴えた時。

あるいは「しゃべりづらくなった」と感じた時。

そこには必ず、数値に現れる変化が起きています。

その変化を科学的に捉え、適切な介入を行うことで、私たちは一人の人生を大きく変えることができます。

最期まで自分の口で家族と語らい、おいしい食事を味わい、安らかに眠る。そんな当たり前の幸せを支えているのは、わずか数十kPaの「舌の力」なのです。

《参考文献》

①尾関麻衣子, 遠又靖丈, 平澤玲子, 他.

舌圧と栄養状態との関連:歯科外来患者を対象とした横断研究(2025)

②津賀一弘

オーラルフレイルと舌圧検査の関係

顎機能誌(2020)

③内田浩江, 宮川明子

市販菓子が潰れる圧を利用した舌圧の目安の作成(2024)

④桝井悦子, 柿本和俊, 元根正晴

健常非高齢成人の最大舌圧とサルコペニア因子および背景因子との関連

歯科医学(2024)

⑤山本賢吾, 大木幹文, 清野由輩, 山下拓

CPAPを要する睡眠時無呼吸症患者における舌圧測定の試み(2023)

⑥小松寛, 松尾貴央, 岩田健太郎, 東別府直紀

脳卒中を除く急性期嚥下障害患者の舌圧による予後予測の予備的検討

保健医療学雑誌(2024)

⑦吉川峰加

舌圧を補綴歯科治療の成功に役立てよう

日補綴会誌(2025)

⑧神﨑智子, 山岡茉以, 平野容子, 三原千惠

摂食嚥下障害患者における頭部挙上評価と舌圧・摂食嚥下機能・栄養状態との関連について

日本栄養治療学会誌(2024)

⑨田村俊暁

神経筋疾患に伴う発話障害における舌の筋力低下

新潟医療福祉会誌(2024)

⑩畑田晶子, 花谷早希子, 古賀恵, 新井麻実, 磯貝友希, 大岡知子, 畠中能子

成人健常者の舌圧と握力との関連

日衛学誌(2026)

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