2026年10月03日

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに
こんにちは。ブランデンタルクリニックの歯科助手です。
歯科用CT、正確にはCBCTを撮影するとき、先生が「今回どこを撮るのか」を確認しているところは何度も見てきました。
たとえば、右下の奥歯を詳しく調べたいとします。
歯の根の形を見たいのか。
根の先に病変がないか確認したいのか。
親知らずと神経との位置関係を確認したいのか。
インプラント治療のために骨の形を見たいのか。
目的によって確認したい範囲は違います。
歯科用CBCTでは、診断目的に合わせて比較的小さなFOV(field of view:撮影視野)を選べる装置があります。
だから私は以前まで、かなり単純に考えていました。
「今回のCBCTに写らない場所なら、そこにあるものは今回の画像には関係ないんじゃないの?」
たとえば右側だけを小さなFOVで撮るなら、左側にあるインプラントは最終画像には出てきません。
だったら関係ない。
そんなイメージです。
ところが、どうやらCBCTの画像はそんな単純な仕組みではありません。
2026年9月30日、BMC Oral Healthに、まさにこの疑問を調べた実験研究が公開されました。[1]
研究者たちが調べたのは、
CBCTのFOVの「外」にある金属です。
チタンインプラント。
Co-Cr、つまりコバルトクロム合金のポスト。
アマルガム修復物。
これらを最終的な5×5 cmのCBCT画像には入らない位置へ置き、その状態で画像内部にどれくらいartifactが生じるのかを調べました。
すると、
画像には写らない位置にある金属でも、画像内部のgray valueのばらつきを大きくすることが分かりました。
さらに今回の研究では、チタンインプラント条件で最も強いartifactが観察されています。[1]
「写っていないのに、どうして?」
今回は、この少し不思議なCBCTの世界を、歯科助手の目線からじっくり見ていきたいと思います。

今回調べたのは「画像に写っている金属」ではありません
歯科用CBCTと金属artifactの関係そのものは、今までにも多く研究されています。
インプラント。
金属冠。
ブリッジ。
金属ポスト。
アマルガム。
こうしたX線を強く減弱させる材料がCBCTの撮影範囲内にあると、白い筋、黒い帯、不自然な濃淡、ノイズなどのartifactが生じることがあります。
ブランデンタルクリニックのこれまでの記事でも、金属artifactについては何度か扱ってきました。
でも今回の研究は、そこから一歩外側へ進みます。
今回問題にしている金属は、
最終的なCBCT画像には入っていません。
5×5 cmの小さなFOVの外側に置かれています。
つまり、
「画像の中に写っているインプラントが画像を乱す」
という話ではなく、
「画像の外にあるインプラントまで画像を乱すことがある」
という話です。
ここが今回の論文の面白いところです。
今回のキーワードは「exomass」

論文を読むと、exomassという言葉が何度も出てきます。
普段の歯科診療で患者さんが耳にする言葉ではないと思います。
今回の文脈でいうexomassとは、単に「FOVの外にあるすべての物体」という意味ではありません。
FOVの外側にありながら、撮影時にはX線源と検出器の間に入り得て、投影データへ影響する組織や物体と考えると分かりやすいです。[1]
たとえば右下の歯だけを小さなFOVで撮影するとします。
そのとき左側の臼歯部にインプラントがあれば、インプラントは最終画像には入らないかもしれません。
でも、患者さんの口の中には当然存在しています。
つまり、
画像の外にあることと、画像形成から完全に消えることは別です。
FOVとは「最終的に画像として扱う範囲」
FOVはfield of viewの略です。
日本語では「撮影視野」などと訳されます。
歯科用CBCTでは、狭い範囲を詳しく見る小FOVから、顎全体に近い広いFOVまで、装置によって複数の選択肢があります。
ただし、ここで一つ誤解しやすいことがあります。
FOVを5×5 cmに設定したからといって、
その5×5 cmの円柱の中だけをX線が通っている
という意味ではありません。
「画像の外」と「X線が通らない場所」は同じではありません

私は以前、小FOVというと、「必要な部分だけをクッキー型で切り抜く」ようなイメージを持っていました。
右下を撮るなら右下だけ。
左側は撮っていない。
だから左側に何があっても関係ない。
でも実際のCBCTは、そんな一方向の写真ではありません。
CBCTでは、X線管と検出器が患者さんの周囲を回転します。
そして、いろいろな方向からX線を当て、多数の投影データを集めます。
そのデータをコンピューターで計算して、私たちが見る3次元画像へ再構成します。
つまり、
最終画像の外にある物体でも、撮影中のある角度ではX線源と検出器の間へ入ることがあります。
その物体が金属なら、X線を強く減弱させたり、X線のエネルギー分布を変えたり、散乱線へ影響したりすることがあります。
ですから、
FOVの外=X線の影響まで完全にゼロ
ではありません。
「写っていない」は「画像形成に参加していない」ではない
ここは今回、私が一番面白いと思ったところです。
私たちがモニターで見ているCBCTの断面画像は、その断面だけを直接撮影した写真ではありません。
いろいろな方向から集めた投影データをもとに、あとから計算して作られた画像です。
そのため、
最終画像にインプラントそのものが描かれていなくても、そのインプラントを通過したX線の影響が投影データに残ることがあります。
つまり、
画像から外れたものが、画像を作る途中からも消えているわけではない。
ということです。
今回の研究は、まさにそこを実験的に確かめています。[1]
過去の研究でもexomassは問題になっていました
今回の2026年研究が、突然まったく新しい現象を発見したわけではありません。
以前から、
FOV外にある金属がFOV内の画像へ影響する
ことは報告されてきました。
2018年には、FOV外にチタン、Co-Cr、アマルガムを置き、複数のCBCT装置でgray valueへの影響を調べた研究があります。[2]
2019年には、こうしたexomass由来のartifactへMAR、つまりMetal Artifact Reductionを使ったら改善できるのかも検討されています。[3]
2022年には、インプラントがFOV内にある場合と、FOV外=exomassにある場合を直接比較した研究もあります。[4]
つまり、
「画面の外にあるものが画面の中を乱す」
という問題は、CBCT研究の中で以前から注目されてきたテーマです。
今回の2026年研究は、そこへさらに、金属の種類、片側か両側か、kVp、mAという条件を組み合わせて調べたところが特徴です。
2026年9月30日の研究はどんな実験だった?

ここから今回の主論文を詳しく見ていきます。
研究は患者さんを対象にした臨床試験ではありません。
in vitroの実験研究です。
乾燥したヒト下顎骨を使用し、その周囲には軟組織を模擬するballistic gelatinを配置しました。[1]
実際の人間の顎には、皮膚、脂肪、筋肉、粘膜、舌、唾液など、さまざまな軟組織があります。
乾燥骨だけをそのまま撮影すると、実際の患者さんを撮る状況とはX線の減弱や散乱条件がかなり違います。
そこで軟組織を模擬する材料を使って、より臨床に近い条件を作ろうとしています。
評価された金属は3種類

- チタンインプラント
- Co-Crポスト
- アマルガム修復物
さらに、金属を置かない対照条件も用意されています。
チタンインプラントは直径4.5 mm、長さ10 mm。
Co-Crポストは、根管治療した下顎第二大臼歯の近心根・遠心根へ作製・装着。
アマルガムは下顎第二大臼歯へMOD形態のbuild-upとして修復されました。[1]
この具体的な形態差は、後で結果を読むときに重要になります。
ここで重要――「材質だけ」を比較した実験ではありません
今回、「チタン」「Co-Cr」「アマルガム」を比べています。
すると、「どの材質が一番artifactを作るかを比べた実験」のように思えます。
でも厳密には違います。
同じ寸法、同じ形、同じ体積の試験片を作り、材質だけを入れ替えたわけではありません。
チタンはインプラント。
Co-Crはポスト。
アマルガムは修復物。
つまり、
材質と同時に、物体の体積・質量・形・厚さ・X線が通過する実効的な距離も違います。
この点は、査読済み論文の考察でも重要な要因として挙げられています。[1]
ここを忘れると、「チタンという材料そのものが一番悪い」という誤った読み方につながります。
金属は「片側」と「両側」に配置された
今回の研究では、金属の種類だけでなく、金属を何個置くかも比較しました。
一つの側だけに存在する、unilateral=片側条件。
左右両側に存在する、bilateral=両側条件。
片側では右下第二大臼歯部に1つ。
両側では左右の第二大臼歯部に同じ種類の金属を1つずつ置いています。[1]
患者さんによっては、片側だけにインプラントがある場合も、左右両方に複数の金属補綴物がある場合もあります。
金属artifactは、材質だけではなく、数や配置でも変わる可能性があります。
CBCTは5×5 cmの小FOV
今回使用された装置はCS 8100 3D。
FOVは5×5 cm。
voxel sizeは150 μm。
scan timeは15秒です。[1]
今回の研究テーマがexomassなので、この小FOVという設定は重要です。
FOVが小さければ、その外側に存在する歯、顎骨、補綴物、インプラントなどは増えます。
小FOVには、必要な場所を限定して撮影できる大切な利点があります。
一方、
小FOVだからこそ「外側にあるもの」の影響をどう扱うか
という問題も出てくるわけです。
撮影条件は4通り
研究者たちは、管電圧と管電流も変えました。
| 管電圧 | 管電流 |
|---|---|
| 60 kVp | 2 mA |
| 60 kVp | 10 mA |
| 90 kVp | 2 mA |
| 90 kVp | 10 mA |
60/90 kVpと2/10 mAを組み合わせた4条件です。
今回の主論文では、こうした条件を含めて合計960回の測定値が解析されています。[1]
何を測ったの?――まずMGV
今回の研究では、画像の評価指標として、MGVとSDが使われています。
まずMGV。
MGVはMean Gray Valueです。
簡単にいえば、指定した領域のgray valueの平均です。
画像の中の濃淡を数値として見たとき、その領域全体の平均的な値を見るものです。
「平均が同じ」でも画像は全然違う

ここは数字で考えると分かりやすいです。
たとえば5つの値が、98、100、101、99、102だったとします。
平均は100です。
かなり均一ですね。
では、20、55、100、145、180ならどうでしょう。
これも平均は100です。
でも、一方はほぼ均一。
もう一方は、明るい部分と暗い部分がかなり混ざっています。
つまり、
平均値だけでは「画像の中がどれだけ乱れているか」は分からない
ということです。
そこでSDを見る
SDは、standard deviation=標準偏差です。
数字が平均の周囲にどれくらいまとまっているか、どれくらい散らばっているかを見る指標です。
今回の研究では、均一な基準材料として1000 mg/mLのdipotassium phosphate(K₂HPO₄)溶液を使い、右下犬歯部に固定したROIでgray valueを測定しました。[1]
本来均一な材料なら、ROI内部の値もある程度そろってほしい。
ところがartifactの影響を受けて、ある場所は明るく、ある場所は暗く、値が大きく散らばれば、SDが大きくなります。
そのため今回の研究では、SDをartifactの程度を見る指標として使っています。
SDが大きい=画像が白い、ではありません
SDが大きいということは、「画像が白くなった」という意味ではありません。
平均値そのものではなく、値の散らばりが大きくなったという意味です。
白い部分と黒い部分が混在していても、平均値は変わらないことがあります。
だから、MGVとSDを両方見た今回の設計には意味があります。
MGVには対照との明確な差が出なかった
今回の研究では、FOV外に金属を置いた各条件と、金属を置かなかった対照を比較したとき、MGVには統計学的な有意差が確認されませんでした。[1]
これはかなり面白い結果です。
FOV外に金属があるからといって、画像内部が単純に全体として明るくなる。
あるいは全体として暗くなる。
という結果ではありませんでした。
平均だけを見ると、大きな違いは見えなかったのです。
でもSDを見ると違いが見えた
ところが、gray valueのばらつきを示すSDでは違いが現れました。
査読済みBMC Oral Health論文は、チタンインプラントで最も大きなartifactが生じたと報告しています。[1]
ここから、
「平均は大きく変わらなくても、内部は乱れていることがある」
という今回の研究の重要なポイントが見えてきます。
材質別にまとめると、チタン群が最も大きかった

| 条件 | SD of gray value |
|---|---|
| チタンインプラント | 89.62±141.52 |
| Co-Crポスト | 66.06±68.06 |
| アマルガム | 46.06±39.28 |
| 金属なし対照 | 40.65±38.36 |
査読済み本文では、チタンインプラント群が最も大きく、次いでCo-Cr、アマルガム、対照の順でした。[1]
ただし、Co-Crとアマルガムの差はP=0.110で有意ではありませんでした。
また、アマルガムと対照の差もP=1.00で有意ではありませんでした。[1]
356.17±255.17という数字が一番目立つ

今回のBMC Oral Health抄録には、チタンで最大のartifactとして、SD 356.17±255.17という大きな数字が示されています。[1]
数字だけを見ると、「チタンインプラントのSDは356.17だった」と思いたくなります。
でも、ここはかなり注意が必要です。
356.17±255.17は「チタン全部の平均」ではない
査読済み本文の条件別Table 2を見ると、この356.17±255.17は、
左右両側にチタンインプラントを置き、60 kVp・10 mAで撮影した特定条件
で記録された最大値です。[1]
つまり、
チタンインプラント群全体の平均SDが356.17だったわけではありません。
材質全体をまとめたチタン群のSDは、先ほど示した89.62±141.52です。
「最大条件の値」と「チタン群全体の値」を混同しないことが大切です。
356という数字は「画像の濃さ」でもない
もう一つ。
356.17は、「骨の濃さが356」とか、「インプラントの濃さが356」という意味でもありません。
これはSDです。
つまり、gray valueがどれくらい散らばったかという数字です。
だから、「インプラントがある患者さんは356になる」でもありません。
「356を超えたら診断できない」という基準でもありません。
今回の実験の中で、どの条件で画像内部の不均一性が強くなったかを見る指標です。
SDが高い=診断精度が何%落ちた、でもありません
ここはさらに大事です。
今回の研究では、歯科医師が画像を見て、根尖病変を正しく診断できるか、歯根破折を見抜けるか、骨欠損を発見できるかを調べたわけではありません。
今回測ったのは、画像の物理的なばらつきです。
ですから、SDが高くなったから、「診断精度が20%落ちた」「見逃しが2倍になった」という話ではありません。
画像品質を測る研究と、診断精度を測る研究は、似ていますが別の研究です。
今回の記事では、この線を越えて結論づけないようにしたいと思います。
金属が片側より両側にある方がSDは大きかった

次に、金属の数と配置です。
査読済み本文では、
片側条件:50.31±54.05
左右両側条件:70.87±106.59
でした。
両側条件の方が有意に高く、P<0.01でした。[1]
つまり、
何の金属かだけでなく、いくつ、どこにあるかもartifactの程度に関係した
ということです。
「反対側だから無関係」とは限らない
これは臨床を見ている助手として、とても分かりやすい結果でした。
右下の歯だけを撮りたい。
左側のインプラントは画像に入らない。
だから関係ない。
そう考えがちです。
でもCBCTは、いろいろな角度から投影データを集めます。
ある方向からX線を当てたとき、FOV外の左側インプラントがX線経路へ入り、その影響を受けたX線が検出器へ届く可能性があります。
だから、どこを画像として表示するかだけでなく、その周囲に何が存在するかも画像形成では重要になります。
金属artifactは「白い筋」だけではない
金属artifactという言葉を聞くと、金属の周囲から白い光の筋が伸びるような画像を想像する方もいると思います。
でもartifactはそれだけではありません。
- 白いstreak
- 黒いstreak
- dark band
- 不自然な濃淡
- noise
- gray valueの不均一化
など、いろいろな形があります。
ですから、白い線が見えない=artifactがないとも限りません。
なぜ金属があると画像が乱れるの?
ここから少し物理の話になります。
代表的な仕組みの一つが、beam hardeningです。
beam hardeningとは何か
歯科用CBCTで使われるX線は、すべて同じエネルギーではありません。
いろいろなエネルギーのX線光子が混ざっています。
高密度の金属を通ると、比較的低エネルギーの光子がより多く吸収されます。
すると、金属を通過した後のX線は、通過前より平均的に高いエネルギーへ偏ります。
これが、beam hardeningです。
この変化を画像再構成で完全に扱えないと、本来存在しない濃淡やstreakなどが現れます。
ただしartifactの原因はbeam hardeningだけではない
金属artifactを全部、「beam hardeningのせい」で終わらせるのも正確ではありません。
- scatter
- photon starvation
- quantum noise
- beam hardening
- projection dataの不完全性
- reconstruction上の問題
など、複数の要因が関係します。
そして今回のテーマであるexomassでは、さらにFOV外の情報をどう扱うかという問題が加わります。
exomassを理解するための「truncation」
ここで、truncationという言葉が出てきます。
小FOVでは、患者さんの顎顔面全体を画像として再構成しません。
でも実際のX線は、FOVの境界線にぶつかった瞬間に消えるわけではありません。
FOV外の骨や歯や金属も通過します。
ところが、最終的な再構成では、その外側の情報を完全な形では扱えません。
つまり、
検出器が受け取った投影情報と、再構成しようとしている範囲との間に不整合が生じる
ことがあります。
exomassは、この問題と深く関係します。
「画像の外に追い出したらartifactも消える」とは限らない
普通に考えると、金属をFOVの外へ出せば、画像には写らないのだからartifactも減りそうです。
でも過去研究では、必ずしもそうではありません。
2022年には、チタン、チタンジルコニウム、ジルコニアのインプラントについて、FOV内にある場合と、exomassにある場合を比較した研究があります。[4]
この研究では、全体としてexomass条件でより大きなSDが認められました。
つまり、
金属を画像から外せば、金属の影響まで自動的に外れるわけではない
ということです。
kVpを上げるとSDは有意に低下した
今回の研究では、撮影条件についても明瞭な結果が出ています。
管電圧では、90 kVpの方が60 kVpよりSDが有意に低くなりました。
査読済み本文では、管電圧の主効果はP<0.001です。[1]
さらにfactorial ANOVAでは、今回評価した4因子のうち、管電圧がSDへ最も大きなeffect sizeを示したと報告されています。[1]
kVpは何を変えているの?
kVpは、X線管にかける電圧です。
これを高くすると、一般にX線のエネルギーと透過性が高くなります。
そのため今回のような条件では、金属による強い減弱やbeam hardeningの影響が小さくなる方向へ働く可能性があります。
mAを上げてもSDは有意に低下した
管電流についても、10 mAの方が2 mAよりSDが有意に低くなりました。
こちらも主効果はP<0.001です。[1]
mAは主に発生するX線光子の量に関係します。
低mAでは検出器へ届く光子数が少なくなり、量子ノイズが増えやすくなります。
kVpとmAは同じ「強さ」ではない
ここで、「どちらも数字を上げるとartifactが減った」とだけ覚えるのは少し危険です。
kVpとmAでは、物理的な意味が違います。
kVpは主にX線のエネルギーや透過性に関係します。
一方mAは、主に発生するX線光子の量に関係します。
ですから、kVpを上げたときと、mAを上げたときに、SDが下がった背景が完全に同じとは限りません。
「10 mAの方が良かった」のに、最大値も10 mAだったのはなぜ?

ここで、少し不思議な点があります。
全体としては10 mAの方が2 mAよりSDが低かった。
ところが、全条件中最大の356.17±255.17は、
両側チタンインプラント+60 kVp+10 mA
で記録されています。[1]
一見すると矛盾しているように見えます。
でも、今回のfactorial ANOVAでは、金属種・金属数・kVp・mAの間に複数のinteraction=交互作用が確認されています。
- 金属種×金属数:P<0.001
- 金属種×管電流:P<0.001
- 金属種×管電圧:P<0.001
- 金属数×管電流:P<0.001
- 金属数×管電圧:P=0.007
さらに、すべての3因子交互作用と、4因子の交互作用も有意でした。[1]
つまり、
「mAを上げれば、どんな金属・配置・kVp条件でも必ずartifactが減る」
と単純には読めません。
10 mAが有利だったのは、全体をまとめて見た主効果です。
一方、個別の金属・配置・電圧の組み合わせでは、異なる挙動が起こり得ます。
この点を理解すると、最大値が10 mA条件だったことと、全体として10 mAでSDが低かったことは矛盾しません。
なら90 kVp・10 mAで全部撮ればいい?
ここで、歯科助手としてはとても単純な疑問が浮かびます。
「じゃあartifactが減りやすい条件で、全部撮ればいいのでは?」
でも、もちろんそうではありません。
今回の研究で見ているのは、artifactを減らす方向です。
実際の患者さんを撮影するときには、患者線量とのバランスも考えなければなりません。
kVpやmAの変更は患者線量にも関係しますが、線量の変化は装置、照射時間、パルス、FOV、撮影方式などにも左右されるため、「数字を上げた割合だけ線量も増える」と単純化することはできません。
したがって、今回の結果は、
「金属がある人は90 kVp・10 mAで撮影するべき」
という臨床推奨ではありません。
「一番きれいな画像」と「一番適切な検査」は同じではない
画像診断で必要なのは、何が何でも最高画質の画像を作ることではありません。
診断したいものがきちんと評価できる画質を確保しながら、必要以上の放射線を使わない。
このバランスが大切です。
たとえば、歯内療法で細い根管や歯根周囲の小さな変化を見たい場合。
インプラント治療前に骨の幅や高さ、下顎管との位置関係を確認したい場合。
埋伏智歯と神経の位置を見たい場合。
必要な画像特性は同じとは限りません。
日本の歯科用CBCTでも条件はかなり幅広い
Japan DRLs 2025に関連する国内調査では、標準的な体格の成人男性に使用されていた歯科用CBCTの撮影条件は、
- 管電圧:80~120 kV
- 管電流:3~10 mA
- 照射時間:6.7~35.8秒
と幅がありました。[9]
FOVも、直径40~230 mm、高さ40~170 mmとかなり幅があります。
つまり、今回の実験で90 kVpや10 mAがartifact低減に有利だったからといって、その設定をすべてのCBCT装置、すべての患者さん、すべての診断目的へそのまま当てはめることはできません。
日本のDRLはFOV別に設定されている
| FOV面積 | PKAのDRL値 |
|---|---|
| 小FOV<40 cm² | 720 mGy・cm² |
| 中FOV 40~100 cm² | 1,500 mGy・cm² |
| 大FOV>100 cm² | 2,200 mGy・cm² |
Japan DRLs 2025では、標準的な体格の成人男性について、歯科用CBCTのFOV面積別にDRLが設定されています。[9]
ただしDRLは、
「この値まで患者さんへ放射線を当ててよい」という線量限度ではありません。
施設や検査プロトコルで典型的に使われている線量を見直し、最適化を進めるための指標です。
同じ小FOVでも診断目的によって必要な画質は違う
Japan DRLs 2025の報告で興味深いのは、同じ小FOVでも、歯内療法とインプラント術前検査では必要な解像度やノイズの程度が違うと指摘されていることです。[9]
つまり、「小FOVだからこの設定」と一律には決められません。
何を見たいのか。
どの程度細かく見なければならないのか。
患者さんの体格はどうか。
装置は何か。
こうした条件を合わせて考える必要があります。
小FOVは悪いのでしょうか?
ここで逆方向の誤解も避けたいと思います。
「小FOVだとexomassの問題があるなら、大きなFOVで撮ればいいのでは?」
と思うかもしれません。
でも、それも今回の研究から導ける結論ではありません。
小FOVには、必要な撮影範囲へ限定できるという重要な利点があります。
一方、FOVを小さくすれば、その外側に存在する顎骨や歯や補綴物の割合が増えます。
ですから、
小FOVを適切に使うこと
と、
exomassの影響を理解すること
は、どちらか一方ではなく、両方必要です。
最近の研究でもexomassは確認されています
今回の2026年論文だけではありません。
Oliveiraらは、5つの豚顎、4種類のCBCT装置を使い、pure titanium、titanium-zirconium alloy、zirconium dioxideのインプラントを比較しました。[6]
小FOVのexomassにインプラントがある場合、全体としてvoxel value inhomogeneityやimage noiseが増える傾向が確認され、とくにzirconium dioxideで影響が大きくなりました。
この研究は2024年12月にオンライン公開され、2025年4月号に掲載されています。
つまり、
「FOV外のインプラントが画像品質へ影響する」という現象は、装置や研究系を変えても繰り返し検討されている
ことが分かります。
ところが過去研究では「アマルガムが一番強い」
今回の2026年研究では、チタンインプラント群で最も強いartifactが観察されました。
でも過去の研究を見ると、話は簡単ではありません。
2018年の研究では、チタン、Co-Cr、アマルガムをexomassへ置き、複数のCBCT装置で比較しました。[2]
この研究では、アマルガムが最も大きなvoxel value variabilityを生じました。
さらに別の研究でも、アマルガム、Co-Cr、チタンの順で影響が大きかった結果があります。[5]
つまり、今回の2026年研究と過去研究では、
「一番artifactが大きかった材料」が違います。

研究によって順位が逆になるのは、研究が間違っているから?
そうとは限りません。
むしろ、ここが金属artifactの難しいところです。
artifactは、材質名一つだけで決まるものではありません。
- 原子番号
- 密度
- 体積
- 厚さ
- 形状
- X線が金属内を通過する距離
- 金属の個数
- 配置
- ROIまでの距離
- FOV
- voxel size
- kVp
- mA
- CBCT装置
- 検出器
- 再構成アルゴリズム
- MAR
など、多くの条件が関係します。
この条件が違えば、結果が変わる可能性があります。
チタンインプラントとCo-Crポストは「金属の塊」として同じではない
今回の研究で、チタンインプラントが最も大きなartifactを示したことを考えてみます。
チタンの原子番号だけを見て、「チタンだから一番強かった」と説明するのは難しい。
なぜなら、チタンは、インプラントという比較的大きな立体構造として使われているからです。
インプラントには直径、長さ、テーパー、スレッド、内部構造があります。
見る角度によって、X線が通過する金属の厚さも違います。
Co-Crポストは、もっと細長く、歯根内に存在します。
アマルガムは、歯冠部の修復物です。
つまり、材質と形状を完全には切り離せない比較です。
だから「チタンが一番悪い」とは書けない
今回の結果を、
「CBCTではチタンが一番artifactを作る」
と一般化するのは危険です。
正確には、
今回の装置・配置・FOV・物体形状・撮影条件の組み合わせでは、チタンインプラント群で最も大きなartifactが観察された。
です。
この一文なら、研究の結果を伝えながら、他の条件へ無理に広げません。
アマルガムに有意差がなかった=artifactがない、でもない
今回、アマルガムと対照の差はP=1.00でした。[1]
では、「アマルガムならCBCTに影響しない」のでしょうか。
違います。
過去研究では、アマルガムが最も大きなartifactを示したものがあります。[2]
今回の有意差なしは、「今回の実験条件で、対照との統計学的な差を確認できなかった」という意味です。
作用が絶対にゼロという意味ではありません。
「有意差なし」の読み方も大事
研究を読むと、「有意差あり」「有意差なし」という言葉がよく出ます。
有意差なしというのは、必ずしも、「まったく同じ」「何の影響もない」を意味しません。
研究デザイン、ばらつき、サンプル数、測定方法、効果の大きさなどによって、差を統計学的に検出できるかは変わります。
今回のアマルガムも、この研究だけを根拠に「artifactを作らない材料」とすることはできません。
インプラントでも材料によって違う
「インプラント」という言葉でも、材料は一つではありません。
2022年の研究では、チタン、チタンジルコニウム、ジルコニアを比較しました。[4]
この研究では、
ジルコニア > チタンジルコニウム > チタン
の順でgray value variabilityが大きくなりました。
さらにOliveiraらのex vivo研究でも、ジルコニア系材料でより大きな影響が観察されています。[6]
つまり、「インプラントだからこの程度のartifact」と一括りにはできません。
MARを使えば全部解決する?
ここまで読んで、「なら金属artifact低減機能を使えばいいのでは?」と思います。
CBCT装置の中には、MAR=Metal Artifact Reductionと呼ばれる機能を備えたものがあります。
金属によって生じた不自然な画像を、再構成や補正処理によって減らそうとする機能です。
では、exomass由来のartifactも、MARで全部消せるのでしょうか。
2019年研究ではMARで十分改善しなかった
2019年の研究では、5×5 cm FOVの外側にチタンやCo-Crを置き、2種類のCBCT装置でMARを検討しました。[3]
その結果、この研究では、exomass由来のvoxel value variabilityをMARで有効に低減できませんでした。
つまり、「金属artifactだからMARをONにすれば解決」とはいきませんでした。
でも2024年研究ではMARでCNRが改善した
ところが、別の研究では違う結果が出ています。
Soltaniらの2024年研究では、チタンとジルコニアのインプラントをFOV内とFOV外に配置し、MARあり・なしで比較しました。[7]
結果は、FOV内でもFOV外でも、MAR使用によってCNRが有意に改善しています。
つまり、こちらではMARの効果が確認されています。
「2019年は効かなかった、2024年は効いた」――どちらが正しい?
両方です。
使用装置も違います。
MARアルゴリズムも違います。
金属材料も違います。
評価している指標も違います。
2019年研究ではvoxel value variability。
2024年研究ではCNR=contrast-to-noise ratio。
ですから、「MARは効く」「MARは効かない」の二択だけで決めるのではなく、どの装置で、何を補正し、何を評価した研究なのかを見る必要があります。
画像がきれいになった=真実を完全に復元した、でもない
MARや将来のAI画像補正についても同じです。
画像処理をすると、streakが減る。
黒い帯が目立たなくなる。
境界が見やすくなる。
ノイズが減る。
こうした改善は臨床的に有用なことがあります。
でも、
見た目がきれいになったことと、元々失われていた情報を完全に復元したことは同じではありません。
補正後画像だけを絶対視しないことが大切です。
今回の研究は「診断精度」を直接測っていない
ここは何度でも強調していいと思います。
今回の2026年研究は、画像物理の研究です。
gray value。
SD。
artifact。
撮影条件。
そうしたものを評価しています。
一方、「この画像で本当に病気を診断できるか」を直接調べた研究ではありません。
つまり、
画像が乱れたことと、診断が失敗したことは同義ではありません。
artifactがあると診断に影響する可能性はある
もちろん、artifactが臨床でまったく無意味なわけではありません。
金属artifactが強ければ、本来見たい構造が見えにくくなることがあります。
逆に、存在しない暗い線や帯が、病変のように見えることもあります。
特に、歯根破折、根管、根尖部、インプラント周囲骨、小さな骨欠損など、細かな構造を見るときには注意が必要です。
ただし、今回の2026年研究自体が、その診断精度を測定したわけではありません。
この線引きは守ります。
in vitro研究だからできたこと
今回の研究は、完全なin vitro研究です。
これは一見、「患者さんでやった研究より弱いのでは?」と思うかもしれません。
でも、in vitroだからこそできることがあります。
実際の患者さんで、同じ人にチタンを置いたり外したり、Co-Crへ交換したり、アマルガムへ変えたり、片側から両側へ増やしたり、60 kVpと90 kVpを何度も撮り比べたりすることはできません。
研究モデルなら、他の条件をできるだけ揃えて、一つの要素だけを変えられます。
今回なら、金属種、片側・両側、kVp、mAを系統的に調べられました。
これはin vitro研究の大きな強みです。
でも患者さんの口の中はもっと複雑
一方、実際の臨床では、条件はもっと複雑です。
- 顎骨の大きさ
- 骨密度
- 軟組織の厚さ
- 歯の本数
- 補綴物の数
- インプラントの位置
- 金属冠
- ポスト
- 根管充填材
- ジルコニア
- 撮影中の体動
など、多くの条件が違います。
だから、今回の数値を、そのまま患者さん一人ひとりへ当てはめることはできません。
使用装置が一つだったことも限界
CBCTは、どの装置でも同じ画像ができるわけではありません。
- X線源
- 検出器
- 撮影軌道
- basis image数
- reconstruction algorithm
- voxel size
- FOV
- MAR
などが違います。
今回の研究は、CS 8100 3Dという一機種で行われています。[1]
同じ金属を別のCBCT装置で撮れば、同じSDになるとは限りません。
この点でも、356.17という数字を普遍値として扱わないことが大切です。
2026年10月1日時点ではArticle in Pressです
今回のBMC Oral Health論文について、もう一つ知っておきたいことがあります。
この記事を執筆している2026年10月1日時点では、今回の論文はArticle in Pressとして早期公開されています。[1]
査読を通過し、受理され、DOIが付与され、引用可能な論文です。
一方、Springer Natureは、現在公開されている版について、今後編集を経たVersion of Recordへ自動的に置き換えると説明しています。
研究そのものが未査読という意味ではありません。
ただ、表記や編集上の整理が最終版で変わる可能性はあります。
今回のように細かな数値を扱う場合は、最終版公開後に再確認する価値があります。
撮影前に「撮る場所の外」も見る意味

ここまで読んで、歯科助手として診療室で見る光景の意味が少し変わってきました。
今回見たいのは、右下の歯。
でも先生は、口の中全体や、過去のパノラマ、以前のCBCT、補綴物、インプラントの位置などを確認している。
私は以前、「今回撮る歯だけ分かればいいのでは?」と思うこともありました。
でも今回の研究を見ると、
FOVに入らない場所に何があるかも、画像形成と無関係ではない
と分かります。
それによって、撮影条件を考えるときの情報になったり、撮影後に「なぜこの場所にartifactが出ているのか」を解釈する手掛かりになったりします。
外せる金属と外せない金属
撮影前には、取り外せる金属類を外すことがあります。
たとえば、眼鏡、ピアス、ネックレス、可撤性義歯などです。
一方、インプラント、金属冠、ブリッジ、メタルポスト、アマルガムなどは、撮影するからといってその場で外せるものではありません。
だから大切なのは、
「金属をゼロにしてから撮る」
ことではなく、
「どこに何があるのかを把握して撮る」
ことです。
撮影条件を決めるのも「画質づくり」の一部
CBCT画像が完成してから、モニター上で明るさやコントラストを調整する。
断面を動かす。
MARを使う。
こうしたことも大切です。
でも、画像の質は撮影後だけで決まるわけではありません。
FOV。
kVp。
mA。
voxel size。
患者さんの位置。
金属の配置。
体動。
こうした条件は、撮影前から決まっています。
つまり、
CBCTの画質づくりは、撮影ボタンを押す前から始まっています。
患者さんの位置付けも大切
今回の主論文はin vitroなので、患者さんの動きはありません。
でも実際の診療では、位置付けも重要です。
顔が傾いている。
顎がずれている。
撮影中に動く。
嚥下する。
こうしたことでもartifactは起こります。
今回の記事は金属exomassが主役ですが、現実のCBCT画像では、金属だけが画質を左右しているわけではありません。
「インプラントがある患者さんはCBCTを撮れない」ではありません
ここまで金属artifactについて書くと、反対に不安になる方もいるかもしれません。
「インプラントがあるならCBCTを撮っても意味がないの?」
そういう研究ではありません。
今回示されたのは、
FOV外の金属でも画像品質へ影響し得る
ということです。
影響があることと、診断できないことは別です。
診断したい場所、artifactの位置、必要な解像度、装置、撮影条件、臨床所見などを総合して画像を評価します。
「小FOVもダメ」ではありません
同じように、今回の記事は、「小FOVを使わない方がいい」という話でもありません。
必要な範囲にFOVを絞ることには意味があります。
むしろ、小FOVを適切に使いながら、その外側にあるものが画像へ影響する可能性も理解することが今回の教訓です。
「高い撮影条件で撮ればいい」でもありません
今回、90 kVp、10 mAの方向で全体としてSDが低下しました。
でも、これは「常に高い撮影条件を選べばいい」という意味ではありません。
撮影条件の変更は患者線量にも関係します。
必要な診断情報を得るための画質と、放射線量を合わせて最適化する必要があります。
「MARをONにすればいい」でもありません
MARも同じです。
研究によって、効果が見られたものも、十分ではなかったものもあります。[3][7]
何を改善したいのか。
装置は何か。
金属は何か。
どこにあるのか。
評価指標は何か。
それによって結果が変わります。
結局、何が一番面白かったのか
今回の研究を読んで、一番面白かったのは、チタンの数字でも、kVpの数字でもありませんでした。
私にとって一番面白かったのは、
「画像の外」という考え方そのものです。
今まで私は、CBCT画像に入っている範囲を、そのまま「撮影した世界」だと思っていました。
でも実際には、その画像を作るためのX線は、もっと広い現実の中を通っています。
そこに何があるかで、最終画像が変わることがあります。
「見えていないもの」が画像に影響している
これは少し不思議です。
患者さんのモニターを見ると、5×5 cmの中に歯や骨が見えます。
その外側は表示されません。
でも、表示されていない場所にあるインプラントが、その5×5 cmの中の画像へ影響しているかもしれない。
画面だけを見ていると、その原因は見えません。
だから、画像だけでなく、患者さん全体を見ることが大切なのだと思います。
最初の疑問に戻ります
最初に、こんな疑問がありました。
「先生、そのインプラントは今回のCBCTには写らないですよね?」
確かに、最終画像には写らないかもしれません。
でも、
画像を作る途中のX線まで、そのインプラントを無視してくれるわけではありません。
FOV外の金属でも、投影データへ影響し、FOV内のgray valueを乱すことがあります。
「写っていないから関係ない」とは限らなかったのです。
今回の研究から覚えておきたいこと① FOV外の金属も画像へ影響する
CBCTのFOV外にある金属でも、FOV内の画像品質へ影響することがあります。
画像に写っているかどうかだけでは判断できません。
今回の研究から覚えておきたいこと② 今回最大だったのはチタンインプラント
今回の研究では、チタンインプラント群で最も大きなartifactが観察されました。
全条件中の最大値は、両側チタン+60 kVp+10 mAのSD 356.17±255.17でした。[1]
ただし、これはチタン群全体の平均SDではありません。
今回の研究から覚えておきたいこと③ 「チタンが最悪」という意味ではない
過去研究では、アマルガムが最大だった研究もあります。[2]
ジルコニアインプラントがチタンより強いartifactを生じた研究もあります。[4][6][7]
だから、材質名だけで単純な順位表を作ることはできません。
今回の研究から覚えておきたいこと④ 金属の数も関係した
今回、片側より左右両側の方がSDは高くなりました。
片側50.31±54.05に対し、両側70.87±106.59、P<0.01です。[1]
今回の研究から覚えておきたいこと⑤ kVp・mAでartifactは変わる
今回の条件では、90 kVpは60 kVpより、10 mAは2 mAよりSDが有意に低くなりました。
いずれも主効果はP<0.001です。[1]
ただし複数の交互作用があるため、「数字を上げればどんな条件でも必ずartifactが減る」と単純化はできません。
今回の研究から覚えておきたいこと⑥ MARにも限界と装置差がある
2019年研究では、exomass artifactへ十分な改善が得られませんでした。[3]
一方、2024年研究ではCNR改善が確認されています。[7]
つまり、MARの効果も装置、材料、位置、評価指標によって変わります。
今回の研究から覚えておきたいこと⑦ SDは診断精度そのものではない
今回測ったのはgray value variabilityです。
病変を見つけられる確率を直接測ったものではありません。
数字の意味を越えて結論づけないことが大切です。
歯科助手として今日覚えておきたいこと

今まではCBCT撮影を見ると、「どの歯をFOVの中心へ入れるのか」ばかり気にしていました。
でも今回の研究を読むと、
「FOVの外に何があるのか」
も無関係ではないことが分かりました。
画像に写っていないものでも、画像を作る途中では影響していることがあります。
だから先生が、口腔内全体を確認する。
過去のパノラマを見る。
以前のCBCTを見る。
インプラントの位置を確認する。
補綴物を確認する。
そうした一見地味な確認にも意味があります。
CBCTの画像は、
画面に見えている範囲だけで作られているわけではありませんでした。
「撮る場所」だけでなく、「その周囲に何があるか」。
そこまで含めて一枚の画像が作られている。
また一つ、治療を見学しながら勉強になりました。
参考文献
- Moshfeghi M, Ghazizadeh Ahsaie M, Jamalzadeh N, Arianezhad SM. Improving image quality of CBCT in the presence of metallic objects outside the field of view: effects of different materials and exposure parameters – an experimental study. BMC Oral Health. 2026. doi:10.1186/s12903-026-09927-7.
- Candemil AP, Salmon B, Freitas DQ, Ambrosano GMB, Haiter-Neto F, Oliveira ML. Metallic materials in the exomass impair cone beam CT voxel values. Dentomaxillofac Radiol. 2018;47(6):20180011. doi:10.1259/dmfr.20180011.
- Candemil AP, Salmon B, Freitas DQ, Ambrosano GMB, Haiter-Neto F, Oliveira ML. Are metal artefact reduction algorithms effective to correct cone beam CT artefacts arising from the exomass? Dentomaxillofac Radiol. 2019;48(3):20180290. doi:10.1259/dmfr.20180290.
- Kocasarac HD, Koenig LJ, Ustaoglu G, Oliveira ML, Freitas DQ. CBCT image artefacts generated by implants located inside the field of view or in the exomass. Dentomaxillofac Radiol. 2022;51(2):20210092. doi:10.1259/dmfr.20210092.
- Safi Y, Ghazizadeh Ahsaie M, Jafarian Amiri M. Effect of the Field of View Size on CBCT Artifacts Caused by the Presence of Metal Objects in the Exomass. Int J Dent. 2022;2022:2071108. doi:10.1155/2022/2071108.
- Oliveira ML, Dagassan-Berndt D, Sampaio-Oliveira M, Simonek M, Kühl S, Bornstein MM. Evaluation of Exomass-Related Artefacts Caused by Dental Implants of Different Materials in Cone-Beam Computed Tomography Scans: An Ex Vivo Study. Clin Oral Implants Res. 2025;36(4):449-459. doi:10.1111/clr.14394.
- Soltani P, Moaddabi A, Mehdizadeh M, Bateni MR, Naghdi S, Cernera M, Mirrashidi F, Azimipour MM, Spagnuolo G, Valletta A. Effect of a metal artifact reduction algorithm on cone-beam computed tomography scans of titanium and zirconia implants within and outside the field of view. Imaging Sci Dent. 2024;54(4):313-318. doi:10.5624/isd.20240029.
- Habibzadeh S, Ghoncheh Z, Kabiri P, Mosaddad SA. Diagnostic efficacy of cone-beam computed tomography for detection of vertical root fractures in endodontically treated teeth: a systematic review. BMC Med Imaging. 2023;23:68. doi:10.1186/s12880-023-01024-3.
- 大髙祐聖, 三島章, 西川慶一. 日本の診断参考レベル(2025年版)に関する報告―口内法X線撮影,パノラマX線撮影および歯科用コーンビームCT―. 歯科放射線. 2025;65(2):47-59. doi:10.11242/dentalradiology.65.47.
