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歯周病治療で「出血率」を毎回記録するのはなぜ?BOP%の見方と10%・30%の意味

歯周病治療で「出血率」を毎回記録するのはなぜ?BOP%の見方と10%・30%の意味|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

チャットボット チャットボット

2026年10月02日

歯周病治療で「出血率」を毎回記録するのはなぜ?BOP%の見方と10%・30%の意味

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに

歯周病の検査をしていると、診療室ではこんなやり取りが聞こえることがあります。

「3、2、3……」

「ここ、BOP+です」

「次も+です」

「ここは出血なしです」

以前この日誌では、歯周検査で読み上げている「3、2、3……」という数字や、PPD、BOP、動揺度、PCRなどが何を意味しているのかをまとめました。

でも歯周病治療を続けている患者さんからすると、もう一つ疑問が出てくるかもしれません。

「前にも出血する場所を調べたのに、どうしてまた記録するんですか?」

あるいは、検査結果を見せてもらったときに、

「BOP 18%」

「出血率12%」

と書かれていて、

「この12%って、何の12%?」

と思ったことがある方もいるかもしれません。

実は、歯周病治療で記録するBOPは、単に「今日は血が出ました」という一回限りの記録ではありません。

何か所で出血したのか。

口全体では何%なのか。

どの場所から出たのか。

前回も同じ場所から出ていたのか。

その場所の歯周ポケットは何mmなのか。

プラークは残っているのか。

こうした情報を時間の中で重ねていくために記録しています。

なお、今回タイトルにある「毎回」は、歯科医院へ来院するたびに必ず全顎のBOPを測定するという意味ではありません。

初診時の歯周病検査、歯周基本治療後の再評価、継続管理中の再評価など、歯周組織の状態を確認する必要なタイミングで繰り返して記録するという意味です。

今回は、歯周検査そのものの説明からもう一歩進んで、

「BOP%という数字をどう読むのか」

を歯科衛生士の視点から詳しく見ていきます。

まず「BOP+」は何を記録しているのでしょうか?

BOPは、

Bleeding on Probing

の略です。

日本語では「プロービング時の出血」と呼ばれます。

歯周プローブという目盛りの付いた細い器具を使って、歯と歯ぐきの境目にある歯肉溝や歯周ポケットを測定したあと、出血が認められた部位をBOP+として記録します。

日本歯周病学会の資料でも、BOPは歯周病検査の正式な評価項目の一つで、プロービング後30秒以内に出血してきた部位を記録するとされています。

2025年のEuropean Workshopのコンセンサスでも、BOPはプロービング後10~30秒以内に生じる出血を記録する指標として整理され、歯周組織の炎症をモニターする主要な臨床指標として推奨されています。

ここで最初に覚えておいてほしいことがあります。

BOPは「血がどれだけたくさん出たか」を表す数字ではありません。

少し血が出たらBOP 1。

たくさん血が出たらBOP 5。

という採点方法ではありません。

基本的には測定した一つ一つの部位について、

出血した=BOP+

出血しなかった=BOP-

として記録していきます。

「歯磨きで血が出た」と「BOP+」は同じではありません

患者さんが自宅で歯を磨いたときに、

「歯ブラシに血がついた」

「フロスを通したら血が出た」

ということがあります。

これは大切なサインではありますが、歯科医院で記録するBOPとは測定条件が違います。

歯ブラシの硬さ、当てる力、フロスの通し方などは毎回同じではありません。

一方のBOPは、歯周プローブを使い、一定の方法で歯周組織を評価したときの出血反応を記録します。

ですから、

「家で血が出た場所=必ずBOP+」

とも、

「家では血が出ない=BOP-」

とも限りません。

家庭での歯ぐきの出血については別の記事で詳しく扱っていますので、今回は歯科医院で測定するBOPに絞ります。

では「BOP 20%」の20%は何の割合でしょうか?

ここからが今回の本題です。

BOPには、一つ一つの部位について記録する、

BOP+/BOP-

という情報があります。

それを口全体で集計すると、

BOP率(BOP%)

になります。

基本的な考え方は、

BOP陽性部位数 ÷ 評価した全部位数 ×100

です。

2018年のWorld Workshopでは、BOP scoreを、評価した部位のうち出血した部位が占める割合として扱っています。研究上の全顎評価では、各歯6点を評価してBOP%を算出する方法が示されています。

例えば、28本の歯があり、それぞれ1本につき6か所を評価したとします。

28本×6か所ですから、

168部位

です。

そのうち34部位でBOP+だったとすると、

34÷168×100=約20.2%。

つまり、

BOP約20%

となります。

ですから、

「BOP 20%」=血液が20%出た

ではありません。

もちろん、

歯周組織が20%壊れた

という意味でもありません。

正しくは、

「今回評価した部位のうち、およそ20%でプロービング時の出血を認めた」

という意味です。

なぜ「34か所」ではなく「20%」と割合にするのでしょうか?

では、出血した場所が34か所なら、

「34か所」

とだけ記録しておけばよいのでしょうか。

そう単純ではありません。

患者さんによって残っている歯の本数は違います。

同じ34か所から出血していても、

評価した全部位が168か所だった人と、

評価部位が84か所だった人では、

全体に占める割合が違います。

そこで、

「いくつ出血したか」だけではなく、「評価した全体の何%だったか」

として示すことで、口全体でBOP陽性部位がどの程度広がっているかを把握しやすくします。

ただし、ここにも注意があります。

検査方法が違えば「分母」も変わります

BOP%を比較するとき、意外と忘れられやすいのが、

分母

です。

研究では1本の歯を6か所測定する全顎6点法がよく使われます。

一方、日本の実際の歯周病検査では、歯周基本検査と歯周精密検査で測定方法が同じとは限りません。

日本歯周病学会の資料では、歯周基本検査ではPPDを1歯1点以上、精密検査では1歯4点以上測定し、BOPについてもそれぞれ記録するとされています。

したがって、

異なる測定方法で算出されたBOP%を、そのまま「前回より5%良くなった」と比較するのは注意が必要です。

時間変化を評価するときには、

できるだけ同じ評価条件で比べる

ことが重要になります。

BOPでよく出てくる「10%」には何の意味があるのでしょうか?

BOPについて調べていると、

「10%」

という数字をよく目にします。

この10%は、臨床状態を分類するときに使われる重要な数字です。

ただし、

BOPだけで健康か歯肉炎かを決める数字ではありません。

2017 World Workshopを受けた2018年の分類では、歯周炎の既往がなく、付着喪失や骨吸収のないintact periodontiumについて、臨床的な歯周健康を考える一つの条件として、

BOP <10%

が使われています。

さらに、歯周炎の既往がないintact periodontiumや、歯周炎以外の理由で支持組織が減少したreduced periodontiumでは、BOP%だけでなくPPDなどの条件を組み合わせて、臨床的歯周健康や歯肉炎を分類します。

例えば歯肉炎を患者単位で考える際には、

BOP ≥10%

だけを見るのではなく、

PPDが3mm以下であること

や、歯周炎によるCAL・骨吸収がないことなど、歯周組織の背景も一緒に考えます。

一方、すでに歯周炎を経験し治療を受けた患者さんでは、同じBOP%でも別の条件と組み合わせて評価します。

つまり、

「BOP 9%だから健康、10%だから病気」

とBOP単独で診断するわけではありません。

9%なら安心、10%なら急に危険――という境界ではありません

人間の歯ぐきが、

BOP 9.9%までは完全に安全で、

10.0%になった瞬間に生物学的状態が突然変わるわけではありません。

10%という数字は、

臨床状態を一定のルールで整理し、研究や診療で共通の言葉を使うための分類上の境界

です。

さらにBOPには測定上の変動もあります。

前回9%。

今回11%。

だから、

「10%を超えた。突然歯周病が悪化した!」

とは判断しません。

私たちが一緒に見るのは、

  • どの部位がBOP+だったか
  • 前回も同じ場所だったか
  • PPDは何mmか
  • プラークは残っているか
  • CALや骨レベルはどうか
  • その他の臨床所見はどうか

といった情報です。

10%は重要な数字ですが、生物学的な崖ではありません。

もう一つ出てくる「30%」は、10%とは役割が違います

BOPにはもう一つ、

30%

という数字も登場します。

2018年のTrombelliらのcase definitionでは、歯周炎のない患者さんで歯肉炎を患者単位で分類するとき、

BOP 10%以上30%以下

を限局型、

BOP 30%超

を広範型、としています。

ここは細かいようですが大切です。

30%ちょうどは限局型に含まれ、30%を超えると広範型

という定義です。

そして、10%と30%は、

同じ物差し上の「軽症・中等症・重症」という単純な段階ではありません。

10%は、

臨床的健康と歯肉炎を区別する分類に関係する境界。

30%は、

歯肉炎がどの程度の範囲へ広がっているかを分類する境界。

という違いがあります。

「BOP 30%=歯周組織が30%壊れた」ではありません

これは患者さんに特に誤解してほしくないところです。

BOPが30%だったからといって、

歯槽骨が30%なくなった

わけではありません。

歯周病が30%進行した

わけでもありません。

30%の歯を将来失う

という意味でもありません。

BOP 30%が意味するのは、

評価した部位のうち、およそ30%でプロービング時の出血を認めた

ということです。

BOPは主として、

診査時に表現されている歯肉・歯周組織の炎症反応

を見る臨床指標です。

過去にどれだけ骨が失われたかを、そのまま%で表している数字ではありません。

ここからが大切です――同じ「BOP 20%」でも中身は同じではありません

では、二人の患者さんがどちらも、

BOP 20%

だったとしましょう。

同じ状態でしょうか。

必ずしもそうではありません。

Aさん

BOP+の部位が口全体に少しずつ散らばっていて20%。

Bさん

右下の奥歯周囲など、限られた場所へBOP+が集中して20%。

BOP%だけを見れば同じです。

でも、

炎症反応がどこに存在するか

は違います。

だから歯周検査では、

「BOP 20%」

という全体の数字だけを保存するのではなく、

一つ一つの測定部位のBOP+/-

も記録します。

歯周チャートが細かいのには理由があります。

BOPには「患者単位」と「部位単位」の読み方があります

ここを分けて考えると、BOPがとても分かりやすくなります。

患者単位

BOP 8%

BOP 18%

BOP 42%

という見方です。

口全体として、BOP陽性部位がどの程度の割合を占めるかを見ています。

部位単位

例えば、

右下6番遠心舌側 BOP+

という見方です。

さらに過去の記録があれば、

前々回 +

前回 +

今回 +

という時間情報まで加わります。

ここが非常に重要です。

全顎BOPが8%しかなくても、

ある一か所だけが何度測ってもBOP+

ということはあり得ます。

ですから、

「BOP 8%だから口の中すべてが問題なし」

という読み方はしません。

患者単位の数字と、部位単位の記録を両方見ます。

だからBOPは繰り返して記録する意味があります

ここまで来ると、最初の疑問への答えが見えてきます。

どうして前にも測ったのに、またBOPを調べるのでしょうか。

それは、

一回のBOP+だけより、BOP+/-が時間の中でどう変化したかの方が多くの情報を持つからです。

例えばある部位が、

初診 +

再評価 -

次回 -

となれば、

その部位では治療やセルフケアの後に出血反応が認められなくなったことが分かります。

反対に、

初診 +

再評価 +

次回 +

なら、

同じ場所でBOP+が繰り返されています。

あるいは、

初診 -

再評価 -

次回 +

なら、

以前は出血しなかった場所に変化が起きています。

今日の+だけでは分からないことが、時間を重ねると見えてきます。

4回のBOP記録とアタッチメントロスの関係を調べた古典研究があります

BOPを繰り返し記録する意味を考えるうえで、有名な古典研究があります。

Langらは1986年、55人・1,054ポケットを対象に、直近4回のリコール時にBOP+だった頻度によって部位を分類しました。

そのうえで、その4回のリコールを含む観察期間に、2mm以上のプロービングアタッチメントロスが認められたかを後ろ向きに評価しました。

これは、「4回測り終えた後の未来を予測した前向き研究」ではありません。

2mm以上のアタッチメントロスを認めた割合は、

0/4回:1.5%

1/4回:3%

2/4回:6%

3/4回:14%

4/4回:30%

でした。

BOP+が繰り返される部位ほど、同じ観察期間にアタッチメントロスを認めた割合も高くなっていました。

ここで大事なのは、

「4回全部BOP+なら、これから30%の確率で悪化する」

という読み方をしないことです。

この研究は1986年の特定集団を対象にした後ろ向き解析です。

今回の記事でこの研究から読み取りたいのは、

一度だけのBOP+/-と、同じ部位で繰り返されるBOP+/-は、情報量が同じではない

という点です。

逆に「何度測っても出血しない」ことにも情報があります

BOPには少し面白い特徴があります。

「BOP+なら、その場所が将来必ず悪くなる」

というほど、陽性所見だけで未来を正確に当てられるわけではありません。

一方で古典研究では、

繰り返しBOP-であること

が、歯周組織の安定を支持する情報として高い陰性的中率を示しました。

よく引用される「BOP陰性なら98%」を誤解しないでください

1990年、Langらは歯周治療後にメインテナンスへ移行した41人を2年半追跡しました。

リコール間隔は2~6か月。

各メインテナンス時にBOPを評価し、2mm以上のプロービングアタッチメントロスを歯周病進行と定義しています。

結果は、

陽性的中率6%

陰性的中率98%

でした。

ここだけを見ると、

「血が出なければ98%安全?」

と思ってしまいます。

しかし、そういう意味ではありません。

まず、この98%は、

一回だけBOP-だった深い歯周ポケットの安全率

ではありません。

メインテナンス中にBOPを繰り返して評価した研究から得られた値です。

さらに重要なのが、この研究では、

BOP+だった部位には再器具処置が行われていた

という点です。

BOP+部位をそのまま放置して自然経過を見た研究ではありません。

ですから、

「BOP+でも6%しか進行しないから治療しなくていい」

と読むこともできません。

この研究から読み取るべきなのは、

継続してBOP-であることは、治療・管理下における歯周組織の安定を支持する有用な情報になる

という点です。

BOP+は「悪化確定」、BOP-は「安全確定」ではありません

ここまでを一度整理します。

BOP+

炎症反応を示す重要な臨床所見です。

ただし、

BOP+=その部位の歯周病が必ず進行する

ではありません。

BOP-

安定を支持する重要な情報になります。

ただし、

BOP-=その歯は絶対安全

でもありません。

なぜなら歯周病では、

  • ポケットの深さ
  • CAL
  • 骨吸収
  • 根分岐部病変
  • 動揺
  • プラークコントロール
  • 過去からの変化

なども評価するからです。

BOPはとても大切ですが、BOPだけで歯周病の現在や未来を全部決める検査ではありません。

同じ「BOP 20%」でも、前回40%だった人と前回20%だった人は違います

今度は部位ではなく、患者さん全体のBOP率を時間軸で見てみましょう。

Aさん

初診 40%

再評価 20%

Bさん

初診 20%

再評価 20%

現在のBOP率だけなら、どちらも20%です。

でも経過は違います。

Aさんでは、

40%から20%へBOP陽性部位の割合が減少しています。

Bさんでは、

全体の割合は変わっていません。

さらにBさんでも、

前回BOP+だった場所が今回はBOP-になった代わりに別の場所が+になり、結果として20%なのか。

それとも、

前回と同じ場所が今回もBOP+で20%なのか。

これでも意味が変わります。

だからBOPは、

現在値だけを見る数字ではありません。

現在値+分布+時間

で読みます。

歯科衛生士が前回の検査表を見返すのは、このためです

歯周病治療の患者さんを担当するとき、私は今回の口の中だけを見ているわけではありません。

前回の歯周チャートを見ると、

「あ、この奥歯は前回BOP+だったな」

「ここは前回5mmだった」

「この辺りは前回も磨き残しが多かった」

という情報があります。

そして今回の検査結果を重ねます。

BOP率は下がったか。

BOP+だった場所は減ったか。

同じ場所が残っていないか。

以前落ち着いていた場所に新しく+が出ていないか。

そうやって見ていくと、

歯周チャートは単なる数字の表ではなくなります。

その患者さんの歯ぐきが時間の中でどう変わったかを記録した地図

になります。

PCR 20%とBOP 20%――同じ「20%」でも意味は全く違います

歯周検査では、

PCR

という%も出てきます。

PCRはPlaque Control Recordの略で、プラークが付着している歯面の割合を評価する指標です。

一方のBOP%は、

プロービングで出血した評価部位の割合。

同じ「%」ですが、見ているものは違います。

簡単に整理すると、

指標主に見ているもの表し方
PCRプラークが付着している歯面%
BOPプロービング時に出血した評価部位%
PPD歯肉溝・歯周ポケットの深さmm

日本歯周病学会の歯周精密検査でも、BOPとPCRは別々の項目として記録されます。

プラークが減ればBOPも同じ割合だけ下がるのでしょうか?

プラークは歯肉炎・歯周炎にとって非常に重要です。

プラークコントロールが改善すれば、歯肉の炎症も改善していくことが期待されます。

でも、

PCRが40%から20%になったら、BOPも必ず40%から20%になる

という一対一の関係ではありません。

PCRはプラーク付着状態。

BOPはプロービングに対する歯周組織の出血反応。

関係はありますが、同じものを測ってはいません。

国内の一症例報告では、34歳女性に歯周基本治療を行った結果、

初診時には、

PCR 57.1%

BOP 38.1%

だったものが、

再評価時には、

PCR 17.9%

BOP 10.1%

まで低下していました。

両方とも改善していますが、

変化量は同じではありません。

もちろん、これは一症例です。

この数字を、

「歯周基本治療をすると平均してBOPが28ポイント下がる」

という治療効果の平均値として使うことはできません。

ここで分かりやすいのは、

PCRとBOPを別々に測って経過を見る意味

です。

「磨けているか」と、

「歯ぐきがどう反応しているか」は、

関連していても同じ指標ではありません。

PPDとBOPも、どちらか一つだけでは足りません

もう一つ重要なのが、

PPDとBOPの関係

です。

PPDは、歯肉溝や歯周ポケットの深さ。

BOPは、その部位をプロービングした際の出血反応。

例えば、

4mm・BOP-

という場所と、

4mm・BOP+

という場所があります。

深さは同じ4mmでも、BOPという別の情報が加わっています。

ここで少しややこしいのが、国際ガイドラインには似た数字が違う目的で登場することです。

「治療後の安定」と「治療エンドポイント」は同じ条件ではありません

EFPのS3ガイドラインでは、歯周治療後のstable periodontitis patientについて、

BOP <10%

PPD 4mm以下

4mmの部位にはBOPを認めない

という状態が示されています。

一方で、積極的な歯周治療の治療エンドポイントについては、

BOPを伴う4mm超のポケットが残っていないこと

そして、

6mm以上の深い歯周ポケットが残っていないこと

が目標として示されています。

似ていますが、

「患者全体を安定と分類する条件」

と、

「残存ポケットへ追加治療を検討する治療エンドポイント」

は同じ概念ではありません。

ここで、4mm・BOP+についても整理しておきましょう。

4mm・BOP+の部位が残っている場合、その患者さんは「安定した歯周炎患者」の条件からは外れます。

ただし、その部位にどのような追加治療が必要かは、BOPだけで決めるのではありません。ポケットの深さ、局所の解剖、プラーク、その他の臨床所見なども含めて判断します。

ですから、

「4mmなら全部悪い」

でも、

「BOPがなければ深くても全部大丈夫」

でもありません。

BOPは「今、骨が溶けている割合」を測る検査ではありません

BOP、PPD、CAL、X線写真。

歯周病ではいろいろな検査を使います。

なぜこんなに必要なのでしょうか。

それぞれ見ているものが違うからです。

BOPは主に、

診査時に表現されている炎症反応

を見ます。

PPDは、

歯と歯ぐきの境目がどのくらい深くなっているか

を見ます。

CALやX線による骨レベルは、

これまでにどれだけ支持組織が失われてきたか

を考える材料になります。

ですから、

初診時BOP 40%だった人が治療後10%になったとしても、

「失われていた骨の30%が戻った」

という意味ではありません。

炎症反応が改善することと、

過去に生じた支持組織破壊が存在することは、

別の時間軸の情報です。

治療済みの歯周炎患者では、同じBOP 8%でも背景があります

BOP 8%。

数字だけを見ると10%未満です。

では、それだけで何も考えなくてよいのでしょうか。

ここでも患者さんの背景が大切です。

これまで歯周炎になったことがなく、付着喪失や骨吸収のない人のBOP 8%。

以前に歯周炎で支持組織を失い、治療後に安定している人のBOP 8%。

同じ数字でも、

歯周組織の過去は同じではありません。

2018年の分類でも、歯周炎治療後の患者については、BOPだけでなくPPDや過去の付着喪失を含めた背景を踏まえて評価する考え方が示されています。

つまり、

BOPが10%未満になれば、過去の歯周炎歴までリセットされる

わけではありません。

初診・再評価・継続管理――同じBOPでも、見る目的が少しずつ変わります

「毎回BOPを記録する」といっても、

来院するたび必ず全く同じ全顎検査をする

という意味ではありません。

歯周病検査や再評価など、必要なタイミングで繰り返して記録します。

そして同じBOPでも、治療の段階によって私たちが知りたいことは少しずつ変わります。

初診時

今、どこに炎症反応があるのか。

口全体でどの程度広がっているのか。

歯周基本治療後

治療やセルフケアによって、BOP+だった場所がどう変わったか。

再評価

どこにBOP+が残っているのか。

残ったPPDとどう組み合わさっているのか。

継続管理中

以前落ち着いていた場所に再びBOP+が現れていないか。

国内の歯周治療資料でも、継続管理中には必要に応じて歯周病検査による再評価を行い、歯周組織の状態や残存病変、再発・重症化リスクを踏まえて治療内容を判断するとされています。

だから同じ検査を繰り返しているように見えても、

その時々で問いかけている内容は同じではありません。

BOP 9%から11%へ――2ポイント増えたら本当に悪化したのでしょうか?

BOPは便利な数字ですが、血液検査の分析装置のように機械が自動で決める数値ではありません。

歯周プローブを人が使って測定します。

そのため、

  • プロービングする力
  • プローブの角度
  • プローブの位置
  • プローブ先端の形状や径
  • 歯肉の形態
  • 測定間隔
  • 患者さん側の条件

などの影響を受けます。

2025年のEuropean Workshopでも、BOPの再現性にはプロービング圧や角度、測定間隔などが影響し、強すぎる力では外傷による偽陽性が増える可能性があると整理されています。

ですから、

前回9%。

今回11%。

という数字だけで、

「2ポイント悪化した!」

とは判断しません。

反対に、

前回40%。

今回15%。

さらに以前BOP+だった部位の多くがBOP-になった。

という大きな変化なら、読み取れる情報も増えてきます。

小さな数字の差だけでなく、全体の傾向と部位の変化を見る。

これもBOPを繰り返して記録する理由です。

約0.25Nの軽い力で見る――BOP検査は「血を出す検査」ではありません

BOPを説明すると、

「器具を歯ぐきへ入れて、血が出るか試しているんですか?」

と思われるかもしれません。

でも目的は、

血を出すことではありません。

歯周組織を一定の条件で評価したときに、出血反応が現れるかを見ることです。

2025年のEuropean Workshopでは、約0.25Nのプロービング力で生じるBOPが、組織学的な歯周炎症をよく反映すると整理されています。

一方、0.25Nを超える強いプロービングでは、外傷によるBOP偽陽性が増える可能性があります。

つまり、

BOP検査は「血が出るまで強く突く検査」ではありません。

できるだけ測定条件をそろえて、歯周組織の炎症反応を観察する検査です。

喫煙などでBOPが少なく見えることもあります

BOPだけを絶対視しない理由はもう一つあります。

2025年のEuropean Workshopでは、BOP+となる確率には歯肉の血管分布や角化状態などの局所因子に加えて、喫煙状態や性ホルモン状態などの患者側因子も関係すると整理されています。

そのため、

「血が出ていないから必ず炎症がない」

とも断定できません。

喫煙者で歯肉出血が少なく見える問題については別の記事で詳しく扱っていますので、今回は深入りしません。

大切なのは、

BOPには大きな臨床価値がある一方、それだけですべてを決めない

ということです。

BOPは「0%を目指す点数ゲーム」ではありません

患者さんに検査結果を説明していると、

「前回15%で、今回は8%なら、次は0%にしないとダメですね」

と思われるかもしれません。

もちろん、BOP+の部位が減っていくことは、炎症反応の改善を示す大切な材料です。

でも歯周病治療の目的は、

BOPという数字だけを0にすることではありません。

見るのは、

  • BOP
  • PPD
  • CAL
  • 骨レベル
  • PCR
  • 動揺
  • 根分岐部
  • 歯の保存状態
  • セルフケア
  • 患者さんごとのリスク

などです。

特に歯周炎を経験した患者さんでは、

「BOPが10%未満になったから、もう歯周病とは無関係」

というわけではありません。

治療後に安定していても、歯周炎既往のある患者さんは再発リスクを踏まえた継続管理が必要です。

ちなみに、BOP%だけでは表せない炎症を「面積」で考える研究もあります

少し発展的な話です。

BOP%は、

何%の部位で出血したか

を表します。

でも同じBOP 20%でも、

浅い場所でBOP+が20%なのか、

深い歯周ポケットでBOP+が20%なのかでは、

炎症を起こしている歯周組織の広がりが同じとは限りません。

そこで研究では、

PISA(Periodontal Inflamed Surface Area)

という指標を使うことがあります。

Nesseらは2008年、CAL、歯肉退縮、BOPなどの臨床情報をもとに、

BOPを認める歯周ポケット上皮の推定表面積をmm²で表す

方法を提案しました。

PISAは、

歯周炎症の負荷を「面積」として捉えようとする指標

です。

ただし、実際の炎症組織を直接測定した面積ではありません。

あくまで臨床測定値から算出した推定値です。

ここでも結局、

どんな一つの数字にも役割と限界がある

ということが分かります。

歯科衛生士としてBOPの表を見るとき、私が一番見たいこと

私が歯周チャートを見るとき、

「今日はBOP 12%ですね」

という数字だけを見て終わることはありません。

気になるのは、

前回は何%だったのか。

どの場所がまだBOP+なのか。

そこは前回も+だったのか。

その場所のPPDは何mmなのか。

プラークが残りやすい場所なのか。

セルフケアを少し変えることで改善できそうなのか。

です。

例えば、口全体ではBOP率が大きく下がっていても、

奥歯の一か所だけ、

ずっと+。

そんなときは、

「全体としてはかなり落ち着いています。でも、ここだけもう少し一緒に見ていきましょう」

という話になります。

反対に、

BOP率自体は前回とそれほど変わっていなくても、

以前ずっと出血していた場所が落ち着いていることもあります。

だから、

BOP率は成績表というより、経過表。

私はそんなふうに考えています。

まとめ――BOP率は「今日の点数」ではなく、歯ぐきの時間記録です

BOPは、

Bleeding on Probing=プロービング時の出血

を記録する臨床指標です。

そしてBOP%は、

血液の量ではなく、評価した部位のうちBOP+だった部位の割合

です。

BOP 20%なら、

「歯周組織が20%壊れた」

という意味ではありません。

10%という数字は、臨床的歯周健康や歯肉炎を整理するときに使われる一つの基準です。

ただし、

BOPだけで健康/病気を決めるものではありません。

PPDやCAL、歯周炎の既往などと組み合わせて使います。

また、

9%なら絶対安全、10%なら急に危険

という生物学的な境界でもありません。

30%という数字は、歯肉炎がどの程度の範囲に広がっているかを分類するときに使われます。

2018年の定義では、

10%以上30%以下が限局型、30%超が広範型

です。

しかし、

BOP 30%=歯周組織が30%破壊された

という意味ではありません。

そして何より大切なのは、

同じBOP 20%でも中身は同じではない

ということです。

どこから出血したのか。

同じ場所なのか。

前回は何%だったのか。

BOP+が繰り返されているのか。

PPDはどうなのか。

PCRはどうなのか。

そうした情報を重ねて初めて、BOPという数字の意味が見えてきます。

1986年の古典研究では、直近4回のBOP陽性頻度が高い部位ほど、同じ観察期間に2mm以上のアタッチメントロスを認めた割合も高くなっていました。

一方、1990年の研究では、治療・メインテナンス下でBOP陰性が継続することが歯周組織の安定を支持する有力な情報になりました。

どちらも、

一回の+/-だけより、繰り返して記録することに意味がある

ことを考える材料になります。

だから私たちは、必要な歯周病検査のタイミングでBOPをもう一度記録します。

今日のBOP率は、

今日一日の歯ぐきの点数ではありません。

前回、その前の検査表と重ねながら、

「どこが落ち着いて、どこをもう少し一緒に見ていこうか」

を考えるための数字です。

だから私は今日も、歯周チャートに小さな「+」と「-」を一つずつ記録しています。

参考文献

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