2026年6月03日

(院長の徒然コラム)

はじめに
小児の口腔習癖は、日常臨床ではしばしば「クセ」として扱われます。
口が開いている。
指しゃぶりが残っている。
舌が前に出る。
爪を咬む。
夜中に歯ぎしりをする。
飲み込む時に口元に力が入る。
こうした所見は、保護者から見れば「そのうち治る癖」に見えるかもしれません。歯科医療者側でも、軽度であれば「経過観察」として流してしまうことがあります。もちろん、すべての口腔習癖を過剰に病的視する必要はありません。小児の発達過程では、年齢とともに自然に消退する行動も多くあります。
しかし一方で、成長期の口腔における習癖は、単なる行動ではありません。
それは、発育途上の歯列、歯槽骨、顎骨、舌、口唇、頬、嚥下様式、呼吸様式、睡眠、さらには口腔内の湿潤環境や細菌叢にまで影響しうる、反復性の機能力です。
小児の口腔習癖を読むうえで本当に重要なのは、「その習癖があるかどうか」ではありません。
何歳から続いているのか。
どのくらいの頻度で起きているのか。
日中だけなのか、睡眠中もあるのか。
どの方向に力が加わっているのか。
すでに歯列や咬合に影響が出ているのか。
嚥下、発音、口唇閉鎖、舌位、睡眠、鼻咽腔の問題とどう結びついているのか。
そこまで読み取って初めて、小児の口腔習癖は臨床的な意味を持ちます。
今回のコラムでは、小児における有害口腔習癖、いわゆる oral deleterious habits を、歯科医師・歯科衛生士をはじめとした医療従事者向けに整理します。主な対象は、口呼吸、睡眠時ブラキシズム、舌突出癖、口唇閉鎖不全、低位舌、爪咬み、口腔乾燥などです。
結論から言えば、小児の有害口腔習癖は、「悪いクセ」として叱って終わるものでも、「歯並びの問題」として矯正だけに閉じ込めるものでもありません。
それは、子どもの成長発育の方向を示す臨床サインです。

小児の有害口腔習癖は、決して珍しいものではない
まず、小児の有害口腔習癖はどの程度みられるのでしょうか。
2025年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、3〜18歳の小児を対象とした54研究、合計53,119人のデータが解析されています。
この研究では、口呼吸、指しゃぶり、舌突出癖、口唇咬癖、爪咬み、ブラキシズムなどが oral deleterious habits として扱われています。
統合有病率は28.9%でした。つまり、研究集団全体で見ると、およそ3人に1人近い小児に、何らかの有害口腔習癖が認められたことになります。
習癖別では、口呼吸が21.1%、ブラキシズムが19.0%、爪咬みが16.1%、舌突出癖が11.2%、指しゃぶりが9.9%、口唇咬癖が9.3%と報告されています。年齢別では、6〜12歳で32.1%と最も高く、3〜6歳では25.2%、12〜18歳では17.1%でした。
この「6〜12歳で高い」という点は、臨床的に非常に重要です。
6〜12歳は、混合歯列期です。第一大臼歯が咬合に参加し、前歯部交換が進み、側方歯群交換へ向かい、歯列弓幅径、咬合高径、上下顎関係、口腔周囲筋の使い方が大きく変化する時期です。つまりこの時期は、形態と機能がまだ固定されきっておらず、良い方向にも悪い方向にも誘導されうる時期です。
ここで持続する口呼吸や低位舌、舌突出癖、口唇閉鎖不全は、単なる生活習慣ではありません。永久歯列が完成する前の咬合誘導、顎顔面成長、口腔機能の成熟に影響しうる要素です。
ただし、このような有病率データを読むときには、少し冷静さも必要です。
口呼吸ひとつを取っても、保護者問診だけで判断する研究、臨床診査を含める研究、ミラーテストやコットンテストを用いる研究、耳鼻咽喉科的評価まで行う研究では、当然ながら有病率は変わります。ブラキシズムも、保護者が音で気づいたものを拾うのか、筋電図や睡眠検査で評価するのかで意味が変わります。
したがって、28.9%という数字は、日本のすべての地域、すべての歯科医院でそのまま再現される絶対値ではありません。むしろ臨床的には、「小児の有害口腔習癖は日常診療で系統的に拾い上げるべき頻度で存在する」と読むのが適切です。

口腔習癖は、歯列に加わる“慢性的な機能力”である
歯列は、歯だけで存在しているわけではありません。
歯の位置は、舌、口唇、頬、咀嚼筋、嚥下、発音、呼吸、姿勢、咬合接触など、複数の力の均衡の中で維持されています。矯正歯科の基本に立ち返れば、歯は非常に弱い力でも、持続的に加われば移動します。これは矯正装置による力だけではなく、日常的な機能力にも言えることです。
指しゃぶりによる前歯部への持続的圧、舌突出による前歯部への反復的圧、低位舌による上顎歯列弓への支持低下、口唇閉鎖不全による口唇圧の低下、口呼吸に伴う下顎位や舌位の変化。これらは一回一回の力としては小さいかもしれません。しかし、小児の成長発育という時間軸の中で見れば、決して無視できない力になります。
正常な状態では、舌は歯列弓の内側から支持し、口唇や頬は外側から適度な圧を加えます。この内側からの舌圧と、外側からの口唇・頬圧が均衡することで、歯列弓は比較的安定した形態を保ちます。
一方で、低位舌が存在すると、上顎歯列弓への内側からの支持が弱くなります。さらに口呼吸によって口唇が離開し、口唇閉鎖が不十分になれば、前歯部の被蓋関係や口腔周囲筋のバランスにも影響します。嚥下時に舌が前方へ突出すれば、前歯部開咬やoverjet増大の維持因子となる可能性もあります。
ここで重要なのは、単純な因果関係で語りすぎないことです。
「舌突出癖があるから開咬になった」と言い切れる症例ばかりではありません。開咬があるから舌が前方へ入りやすくなることもあります。口呼吸が低位舌を生むこともあれば、すでに存在する上顎狭窄や口唇閉鎖不全が、口呼吸様式を固定化していることもあります。
小児の不正咬合と口腔機能異常は、原因と結果が一方向に並ぶというより、相互に悪循環を作ることが多いのです。
したがって臨床では、「何が原因か」を一つに決めようとしすぎるより、「現在どの機能圧の均衡が崩れているか」「その崩れが形態をどう維持しているか」「介入するならどこを断ち切るべきか」を読むことが重要です。

不正咬合を形態だけで分類すると、機能異常を見落とす
小児の不正咬合を診るとき、われわれはしばしば形態分類に意識を向けます。
叢生、上顎前突、下顎前突、開咬、交叉咬合、過蓋咬合。これらの分類は当然重要です。しかし、形態分類だけで診断を終えると、その背後にある機能異常を見落とします。
小児不正咬合患者を対象に口腔機能異常を検討した日本の研究では、不正咬合患者において、舌突出、低位舌、口腔習癖などの機能的問題が多くみられ、不正咬合の種類によって機能異常の特徴が異なることが示されています。特に開咬では、嚥下時舌突出、発音時舌突出、口呼吸、口唇閉鎖力の低下など、口腔機能の異常が強く関係する可能性があります。
開咬を単なる「前歯が噛んでいない状態」として見てしまうと、治療は装置で閉じることに偏ります。しかし、もしその開咬の背景に低位舌、異常嚥下、口唇閉鎖不全、口呼吸が存在するなら、形態だけを閉じても安定しにくい可能性があります。逆に、形態的な開咬が存在するからこそ、嚥下時に舌が前方へ介在しやすくなり、舌突出癖が固定化されている場合もあります。
つまり、形態と機能は切り離せません。
MFTを行う場合も、単に「舌を上に置きましょう」「口を閉じましょう」では不十分です。舌小帯、口蓋形態、鼻咽腔の通気、本人の理解力、家庭での実行性、歯列弓幅径、開咬の程度、口唇閉鎖力などを含めて設計する必要があります。
口腔筋機能療法は、体操ではありません。
成長期の形態と機能を読みながら、どの機能を再学習させ、どのタイミングで矯正治療や医科連携と組み合わせるかを考える、臨床設計の一部です。
口呼吸は、歯並びだけでなく気道と睡眠の入口である
口呼吸は、小児の有害口腔習癖の中でも特に重要です。
口呼吸は、見た目には「口が開いている」「鼻で息をしていない」という単純な所見に見えます。しかし背景には、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大、口蓋扁桃肥大、鼻中隔弯曲、慢性鼻閉など、耳鼻咽喉科的要因が存在することがあります。
一方で、鼻閉などの器質的要因が改善した後も、習慣性に口呼吸が残ることがあります。つまり口呼吸は、閉塞性要因と習慣性要因が混在しやすい所見です。
歯科医院で重要なのは、口呼吸を歯科だけで治そうとすることではありません。歯科が早期に気づき、必要に応じて耳鼻咽喉科、小児科、睡眠医療、矯正歯科、口腔機能管理へつなぐことです。
口呼吸が持続すると、低位舌、口唇閉鎖不全、口腔乾燥、嚥下様式の変化、発音時舌突出、歯肉炎、舌苔、口臭などがみられやすくなります。顎顔面領域では、上顎狭窄、開咬、overjet増大、交叉咬合などとの関連が議論されます。
さらに重要なのが、睡眠呼吸との関係です。
インドネシアの小児を対象にした横断研究では、8〜9歳の小児343人を対象に、臨床診査と Pediatric Sleep Questionnaire によって口呼吸と睡眠呼吸障害リスクが検討されています。その結果、95人、27.7%に口呼吸が認められ、口呼吸児では41.1%がSDBリスクありと判定されました。非口呼吸児では9.7%であり、相対リスクは4.24と報告されています。
もちろん、この研究は横断研究であり、質問紙による評価です。口呼吸が睡眠呼吸障害を直接引き起こすと断定することはできません。SDBには、気道形態、アデノイド・扁桃、肥満、神経筋機能、睡眠姿勢、鼻閉、顎顔面形態など多くの因子が関与します。
しかし、歯科臨床におけるスクリーニングの視点としては極めて重要です。
口呼吸児を見たとき、われわれは歯並びだけでなく、いびき、睡眠時開口、寝汗、夜尿、起床時口渇、日中の眠気、集中力低下、落ち着きのなさ、学習面の困難なども問診すべきです。小児の睡眠呼吸障害は、成人のように「眠い」と表現されるとは限りません。むしろ多動、易刺激性、注意散漫、学習面の問題として見えることがあります。
歯科医院はSDBを確定診断する場所ではありません。しかし、SDBの可能性に気づく最初の場所にはなりえます。

睡眠時ブラキシズムを「歯ぎしり」だけで説明してはいけない
小児の睡眠時ブラキシズムも、非常に誤解されやすい所見です。
保護者から「寝ている時に歯ぎしりをしています」と相談されることは珍しくありません。診療室で咬耗を見て、睡眠時ブラキシズムを疑うこともあります。しかし、そこで直ちに「ストレスですね」「噛み合わせですね」「マウスピースを作りましょう」と考えるのは、少し単純すぎます。
現在、睡眠時ブラキシズムは、単なる歯の摩耗現象ではなく、睡眠中の咀嚼筋活動、特に rhythmic masticatory muscle activity、すなわちRMMAとして理解されます。RMMAは、咬筋などにリズム性の筋活動が出現する現象であり、睡眠周期や覚醒応答と関係します。
小児の一次性睡眠時ブラキシズムを対象とした研究では、基礎疾患のない6〜15歳の小児を対象に終夜ポリソムノグラフィが行われています。この研究では、睡眠時ブラキシズム群でも、睡眠構築、脳波活動、自律神経活動の周期的変動は大きく障害されていない一方で、RMMAは全セグメントで対照群より多く、特にREM直前のNREMセグメントで発生しやすいことが示されています。さらに、RMMAの約70〜90%は覚醒応答を伴っていました。
この知見は、臨床的に重要です。
小児の睡眠時ブラキシズムを「噛み合わせの問題」とだけ捉えると、睡眠生理の視点を失います。咬耗や歯ぎしり音は確かに重要な入口ですが、そこから睡眠、覚醒応答、気道、口呼吸、いびき、日中症状、心理社会的背景へ評価を広げるべきです。
また、咬耗は過去の履歴であり、現在の睡眠時ブラキシズムを直接証明するものではありません。保護者報告も、音を伴うものは拾いやすい一方、音のない筋活動は見逃される可能性があります。逆に、音が大きいから重症とは限りません。
小児の睡眠時ブラキシズムに対して、ナイトガードを入れるかどうかは慎重に判断すべきです。乳歯列・混合歯列では成長発育が進行しており、装置が必ずしも第一選択とは限りません。歯の著しい咬耗、歯痛、咀嚼筋痛、顎関節症状、睡眠の質、いびき、口呼吸、日中の症状などを総合して考える必要があります。
睡眠時ブラキシズムは、「歯が削れる問題」である前に、睡眠中の顎口腔機能が発するサインです。

舌突出癖と低位舌は、前歯部だけの問題ではない
舌突出癖は、前歯部開咬と結びつけて語られることが多い所見です。嚥下時に舌が上下前歯間に介在する。発音時に舌が前方へ出る。安静時舌位が低い。こうした所見は、開咬、overjet増大、発音、嚥下、口唇閉鎖と密接に関係します。
しかし、舌突出癖を「舌が前に出るクセ」として単純化してはいけません。
舌突出は、口呼吸、低位舌、口唇閉鎖不全、鼻咽腔疾患、上顎狭窄、前歯部開咬、異常嚥下と一体で現れることがあります。前歯部に空隙があれば、舌はそこに入りやすくなります。舌が入り続ければ、開咬は維持されやすくなります。つまり形態が機能を誘導し、機能が形態を固定するという循環が生じます。
ここで必要なのは、舌だけを叱る指導ではありません。
「舌を出さないで」
「口を閉じて」
「正しく飲み込んで」
こうした指導は、背景にある低位舌や鼻閉、口唇閉鎖不全、歯列形態を無視して行うと、うまくいかないことがあります。舌が正しい位置に安定するためには、舌が上がれる口腔内環境、鼻で呼吸できる気道環境、口唇を閉じられる筋機能、場合によっては歯列形態の改善が必要です。
舌突出癖は、舌の悪い動きではなく、口腔機能全体の協調性の乱れとして捉えるべきです。
口呼吸は、口腔微小環境にも影響しうる
口呼吸の議論では、どうしても歯列や顎顔面形態、睡眠呼吸に注目が集まります。しかし、歯科臨床ではもう一つ重要な層があります。
それが口腔微小環境です。
口呼吸が続くと、口腔内を空気が通過し、歯面や粘膜が乾燥しやすくなります。唾液による自浄作用や緩衝作用、抗菌作用、粘膜保護機能が十分に働きにくくなる可能性があります。臨床的には、口腔乾燥、口臭、舌苔、歯肉炎、プラーク停滞、う蝕リスクの増加として見えることがあります。
2026年に報告された研究では、口呼吸児と鼻呼吸児の唾液を比較し、唾液中のイオン、免疫タンパク、細菌叢が検討されています。その中では、口呼吸児においてCl⁻濃度の低下、SIgAおよびPRDX5の上昇、細菌叢richnessの増加が報告されています。
PRDX5は酸化ストレス関連のマーカーとして解釈されます。SIgAは局所免疫応答と関係します。つまり、口呼吸によって口腔内の乾燥や湿潤環境の変化が起こり、それに対して局所免疫や細菌叢のバランスが変化する可能性がある、という見方ができます。
ただし、この領域は慎重に扱うべきです。対象数が小さく、研究デザイン上、口呼吸が細菌叢変化を直接引き起こすと断定することはできません。口腔清掃状態、食生活、う蝕経験、歯周状態、矯正装置の有無、鼻咽腔疾患、地域差など、多くの因子が関与します。
それでも、歯科臨床における視点としては重要です。
「磨き残しがあるから歯肉炎になった」
「甘いものが多いからう蝕リスクが高い」
もちろんそれも正しいのですが、口呼吸によって口腔内の乾燥、唾液環境、局所免疫が変化している可能性も考える必要があります。特に、前歯部歯肉炎、口臭、舌苔、起床時口渇、口唇乾燥がみられる小児では、口腔清掃指導だけでなく呼吸様式の評価も行うべきです。

歯科医院で拾うべき臨床サイン
小児の有害口腔習癖を評価する際、歯科医院で見るべきものは歯並びだけではありません。
安静時に口唇が閉じているか。
口唇閉鎖時にオトガイ部が過緊張していないか。
舌は上顎前歯部口蓋側、切歯乳頭付近へ自然に上がっているか。
舌が低位に落ちていないか。
嚥下時に舌が前方へ突出しないか。
発音時に舌が歯列を越えていないか。
口腔乾燥や舌苔、口臭、歯肉炎がないか。
咬耗が年齢に比して強くないか。
いびきや睡眠時開口、起床時口渇がないか。
日中の眠気、集中困難、落ち着きのなさがないか。
これらの所見は、一つ一つは小さなサインです。しかし複数が重なると、単なる「歯並びの問題」ではなく、口腔機能、呼吸、睡眠、成長発育が絡んだ状態として見えてきます。
たとえば、開咬、低位舌、口唇閉鎖不全、いびき、起床時口渇が同時に存在する小児を見た場合、単に「前歯が噛んでいません」と説明して終わるのは不十分です。そこには、鼻呼吸の可否、睡眠呼吸、嚥下様式、舌位、口唇閉鎖、顎顔面成長が関与している可能性があります。
この観察は、歯科医師だけの仕事ではありません。むしろ定期管理の中で継続的に観察できる歯科衛生士の役割が大きい領域です。
口腔清掃状態、歯肉炎、口唇閉鎖、食事中の口の使い方、舌癖、口呼吸傾向、保護者の訴え。これらを毎回少しずつ拾い上げることで、小児の口腔機能異常は早期に見えてきます。
小児歯科・矯正歯科・予防歯科は、本来ここでつながるべきです。

介入とは、すぐに装置を入れることではない
小児の口腔習癖を見つけたとき、臨床判断は二つの極端に振れやすくなります。
一つは、何でも早く介入しようとする立場です。
もう一つは、「まだ小さいから様子を見ましょう」と先送りしすぎる立場です。
どちらも危険です。
早期介入とは、早期に装置を入れることではありません。早期に問題を認識し、発育段階、頻度、持続時間、力の方向、歯列変化、機能異常、鼻咽腔疾患、睡眠症状、家庭環境を評価し、必要な介入のレベルを決めることです。
指しゃぶりがあっても、年齢が低く、頻度が少なく、形態変化がなければ経過観察でよいこともあります。一方で、混合歯列期に入り、開咬やoverjet増大が明らかで、舌突出や口唇閉鎖不全が強ければ、MFTや矯正相談を検討すべきです。
口呼吸があっても、鼻閉が強ければ、まず耳鼻咽喉科的評価が必要です。鼻で呼吸できない子に「口を閉じなさい」と指導しても、それは治療ではなく無理を強いるだけです。
睡眠時ブラキシズムがあっても、咬耗だけで装置を入れるのではなく、いびき、睡眠時開口、日中症状、咀嚼筋痛、顎関節症状、歯の知覚症状を含めて評価すべきです。
習癖の名前だけで介入を決めるのではなく、習癖がどの程度形態と機能に影響しているかで判断する必要があります。
保護者への説明では、責める言葉を避ける
小児の口腔習癖を説明するとき、言葉の選び方も重要です。
「悪いクセです」
「やめないと歯並びが悪くなります」
「ちゃんと口を閉じましょう」
これらの言葉は分かりやすい一方で、保護者や本人を責める響きになることがあります。特に指しゃぶり、爪咬み、口唇咬癖には、安心、緊張、不安、集中、退屈など心理的要素が関わることがあります。口呼吸には、本人の努力ではどうにもならない鼻閉やアデノイド・扁桃の問題が隠れていることもあります。
私は、保護者には「悪いクセ」というより、「今の口の使い方が、歯並びや顎の成長、睡眠に影響している可能性があります」と説明する方がよいと考えています。
そのうえで、「今すぐ全部治す」という話ではなく、「まず何が背景にあるかを確認しましょう」と伝えます。
鼻は通っているか。
夜はいびきをかいていないか。
日中も口が開いているか。
飲み込む時に舌が出ていないか。
前歯が閉じにくくなっていないか。
朝、口が乾いていないか。
歯ぎしり以外に睡眠の問題はないか。
こうした観察の視点を保護者と共有することが、治療の第一歩です。
小児の口腔習癖を、歯科から医療へ読み広げる
小児の有害口腔習癖は、歯科の領域にとどまりながら、同時に歯科だけでは完結しないテーマです。
歯列、咬合、舌、口唇、嚥下、発音、口腔乾燥、歯肉炎。これらは歯科が最も見つけやすい所見です。一方で、鼻閉、アデノイド、扁桃、睡眠呼吸、日中の集中力、行動面の問題は、医科との連携が必要になることがあります。
だからこそ、歯科医院の役割は大きいのです。
小児は、自分の呼吸や睡眠の異常をうまく言語化できません。保護者も、毎日見ている子どもの口唇離開や口呼吸を「いつものこと」として見過ごすことがあります。歯科医院は、定期的に口腔内と顔貌、口唇、舌、歯肉、咬耗、歯列を観察できる場所です。そこで気づけることは多いはずです。
小児の口腔習癖を「クセ」として終わらせないこと。
歯並びだけでなく、口腔機能、呼吸、睡眠、口腔微小環境まで含めて評価すること。
必要に応じて、歯科の外へつなげること。
これが、これからの小児歯科・矯正歯科・予防歯科に求められる視点だと思います。
終わりに
小児の口腔習癖は、決して珍しいものではありません。近年のメタ解析では、小児のおよそ3割近くに何らかの有害口腔習癖が認められ、特に混合歯列期で高い頻度が示されています。
しかし重要なのは、有病率そのものではありません。
その習癖が、どの年齢で、どのくらいの頻度で、どの方向へ、どの程度の時間、成長中の歯列や口腔機能に影響しているのかを読むことです。
口呼吸は、歯列だけでなく、気道、睡眠、口腔乾燥、唾液環境、細菌叢に関わる可能性があります。
睡眠時ブラキシズムは、単なる歯ぎしりではなく、RMMA、睡眠周期、覚醒応答と関連する現象です。
舌突出癖や低位舌は、開咬やoverjetの問題であると同時に、嚥下、発音、口唇閉鎖、口腔周囲筋機能の問題でもあります。
小児の有害口腔習癖は、悪いクセではありません。
それは、成長発育の方向を示すサインです。
歯科医院で拾える、子どもの呼吸・睡眠・口腔機能のサインです。
歯科医療者がその視点を持つことで、単なる歯並び相談は、より広い成長発育支援へと変わっていきます。
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