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根管治療で「今日は薬を入れて仮蓋」になるのはなぜ?その日に根管充填しない理由と治療間の消毒

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チャットボット チャットボット

2026年10月01日

根管治療で「今日は薬を入れて仮蓋」になるのはなぜ?その日に根管充填しない理由と治療間の消毒

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに

根管治療のアシスタントについていると、治療の終わり方が毎回同じではないことに気づきます。

根の中を洗って、細い器具で処置して、そのまま根管充填まで進む日もあります。

一方で先生が根管の中を確認したあと、

「今日はお薬を入れて、仮のふたをしておきますね」

と患者さんに説明して、その日の治療を終えることもあります。

私も最初のころは、少し不思議でした。

せっかく根の中を洗ってきれいにしたのなら、そのまま最後まで詰めてしまわないのかな、と。

患者さんから見ても、

  • 「今日は薬を交換しただけなのかな?」
  • 「まだ治っていないということ?」
  • 「根管治療って、何回か薬を入れないと終わらないの?」

と思うことがあるかもしれません。

でも、診療を横で見ているうちに分かってきました。

「今日は薬を入れて仮蓋にする」という日は、治療が進まなかった日ではありません。

その日行うべき形成や洗浄を行い、根管内の状態を確認したうえで、

「今日は最終的な根管充填まで進むのではなく、次回来院まで根管内を管理した方がよい」

と判断された日なのです。

今回は、根管治療で使われる白い薬そのものを詳しく紹介するというより、

なぜその日に根管充填せず、薬を入れて仮蓋し、次回へつなぐことがあるのか。

その「治療と治療の間」に注目してみます。

まず整理したい――根管治療は「洗ったら、その日に詰める」とは限りません

根管治療では、歯の中にある細い根管を処置します。

感染した歯髄や壊死した組織、細菌やその産物などをできるだけ取り除き、根管内部を清掃・洗浄していきます。

大まかに見ると、

根管を探す
↓
必要な長さを確認する
↓
ファイルなどで根管を形成・清掃する
↓
洗浄する
↓
根管内の状態を確認する
↓
条件が整えば根管充填する

という流れです。

ただし、

「今日は根管形成と洗浄をした」=「今日は必ず根管充填する」

ではありません。

根管充填は、単に「穴を埋めて治療を終える処置」ではなく、処置した根管系を最終的に封鎖する大切な段階です。

だからこそ先生は、根管充填をする前に、

「この歯は今日、ここまで進めてよい状態だろうか」

と判断しています。

そもそも「根管充填」は何のためにするのでしょう?

根管治療の最後には、ガッタパーチャと呼ばれる材料やシーラーなどを使って、処置した根管を封鎖します。

これが根管充填です。

根管治療では、感染源をできるだけ減らすことが重要ですが、それだけでは終わりません。

処置した根管系を封鎖して、

  • 残存する微生物が再び増殖しにくい環境をつくる
  • 根管内の複雑な空間を封鎖する
  • その後の適切な歯冠修復と合わせて、口腔側からの再汚染のリスクを下げる

ことも重要です。

つまり根管治療では、

「感染を減らすこと」
と
「処置した根管系を封鎖して再感染を防ぐこと」

の両方が必要です。

だから、まだ追加の処置が必要だと判断している根管を、

「今日はここまで時間をかけたから、とりあえず詰めてしまおう」

とは考えません。

先生は何を見て「今日は根管充填しない」と判断しているの?

では実際に、根管充填へ進むかどうかを判断するとき、どんなことを見ているのでしょう。

一つだけの条件で決まるわけではありません。

根管の形成や洗浄を必要なところまで行えたか

根管は一本のまっすぐな管ではありません。

細く狭くなっていたり、大きく曲がっていたり、途中で枝分かれしていたりします。

以前に根管治療を受けた歯をもう一度治療する「再根管治療」では、古い根管充填材の除去や、以前の治療によって変化した根管形態への対応が必要になることもあります。

そのため、すべての歯で「一回の治療時間内に同じところまで進める」とは限りません。

無理に急いで処置を進めるより、その日に安全に行える範囲をしっかり処置して、次回に続けた方がよい場合があります。

根管内から液体がにじみ続けていないか

根尖周囲に炎症がある歯などでは、根管内に滲出液が見られることがあります。

先生が細い白いペーパーポイントを何度か根管へ入れて、取り出して確認している場面があります。

ペーパーポイントには根管内部を乾燥させる役割がありますが、同時に、

「根管内がどんな状態なのか」

を知る手がかりにもなります。

何度乾燥させようとしても液体がにじんでくるような状態では、その日の根管充填について慎重に判断することがあります。

排膿していないか

感染した根管では、膿が確認されることもあります。

「膿が出たなら、そのまま全部出して詰めればいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし根管治療では、「何か出てきたものを取り除けば、それで終わり」というわけではありません。

感染源となっている根管内を形成・洗浄し、必要な感染管理を行ったうえで、根管充填へ進める状態なのかを判断します。

出血が続いていないか

根管内では、処置中に出血が見られることもあります。

もちろん、出血があったというだけで必ずその日の根管充填ができない、という意味ではありません。

どこからの出血なのか、どの程度続いているのか、根管内の状態はどうなのかなどを確認します。

痛みや腫れはどう変化しているか

患者さんが感じている症状も大切な情報です。

  • 自発痛があるか
  • 噛んだときに痛いか
  • 歯を軽くたたいたときの痛みはどうか
  • 腫れはないか
  • 前回と比べてどう変化したか

ただし、

「痛いから絶対に根管充填できない」

でも、

「痛くなくなったから必ず根管充填できる」

でもありません。

症状も、根管内の状態を判断するための情報の一つです。

「根管が乾くか」を何度も確認するのはなぜ?

根管充填の前には、洗浄した根管内部を乾燥させます。

診療を見ていると、先生が細い白い紙を何本も交換していることがあります。

これはペーパーポイントです。

根管内の水分を取るだけでなく、出血や滲出液が続いていないかなどを確認する助けにもなります。

ここで注意したいのが、

「乾いた=完全に無菌になった」ではない

ということです。

根管内を肉眼で見て、

「菌がゼロになりました」

と確認できるわけではありません。

逆に、一度湿っていたからといって、

「根管治療が失敗した」

という意味でもありません。

乾燥できるかどうかは、根管充填へ進むかどうかを考えるときの一つの臨床情報です。

実は「薬を入れる前」に、その日の感染管理はかなり進んでいます

患者さんから見ると、治療の最後に先生が入れる「白い薬」が、一番「消毒らしいもの」に見えるかもしれません。

でも、根管治療の感染管理は、その薬を入れた瞬間に始まるわけではありません。

その前に、

  • ファイルなどによる機械的な形成・清掃
  • 次亜塩素酸ナトリウムなどを用いた根管洗浄
  • 必要に応じたEDTAなどによる処置

を行っています。

つまり、

「最後に入れた薬=その日の消毒全部」ではない

のです。

根管治療では、

形成する
洗う
必要に応じて薬を置く
外から再汚染されないよう閉じる

という複数の処置を組み合わせて感染を管理しています。

ファイルが通った場所だけが「根管全部」ではありません

歯の根の中は、思っている以上に複雑です。

教科書の図を見ると、一本の根の中を一本の細い管が走っているように見えるかもしれません。

実際には、

  • 側枝
  • イスムス
  • フィン状の空間
  • 根尖付近の細かな分岐
  • 象牙細管

など、器具が直接触れにくい場所があります。

2026年に日本歯科保存学雑誌へ掲載された総説でも、根管系には機械的清掃が到達しにくい領域が存在し、洗浄や機械的清掃だけで根管内を完全に無菌化することは困難であると整理されています。

だから根管治療は、

「ファイルで全部削り取れば終わり」

ではありません。

形成と洗浄を感染管理の中心にしながら、必要な症例では治療間の薬剤も利用します。

そこで使われることがあるのが「治療間の薬」です

複数回に分けて根管治療を行う場合、治療と治療の間に根管内へ薬剤を置くことがあります。

代表的なのが水酸化カルシウムです。

水酸化カルシウムは強いアルカリ性を示し、多くの根管内微生物に対する抗菌作用が知られています。

純粋な水酸化カルシウムペーストでは、pHはおよそ12.5〜12.8とされています。

細菌のタンパク質や細胞膜、DNAなどへの影響が抗菌作用に関係すると考えられ、細菌由来のエンドトキシンに対する作用も研究されています。

ただし、ここで一番大切なのは、

水酸化カルシウムは「その日の形成や洗浄の代わりになる薬」ではない

ということです。

根管形成と洗浄が感染管理の中心です。

そのうえで、必要と判断された場合に治療間薬剤を組み合わせます。

「治療間」という時間そのものを感染管理に使う

治療間薬剤の特徴は、診療室にいる時間だけ作用するものではないことです。

根管形成と洗浄を行ったあと、薬剤を置き、仮蓋をします。

患者さんはそのまま帰宅します。

そして次の予約まで、根管内薬剤が置かれた状態になります。

2023年にInternational Endodontic Journalへ掲載されたGulabivalaとNgのレビューでは、複数回来院法では、初回の化学的・機械的清掃後に治療間薬剤を置くことで、残った細菌を減らしたり活動しにくくしたりすること、残存する組織や毒素へ作用すること、治療間での細菌の再増殖を抑えることなどが治療上の考え方として整理されています。

つまり治療間は、

「次の予約を待っているだけの空白期間」

ではありません。

診療室で行った処置と、次回来院で行う処置をつなぐ治療工程の一部です。

でも「薬を入れたら根管内が完全に無菌になる」わけではありません

ここはとても大切です。

水酸化カルシウムには長い使用実績があります。

一方で、

「入れておけば根管のすべての細菌を確実に消せる」

という薬ではありません。

Sathornらは2007年、水酸化カルシウム貼薬の抗菌効果について系統的レビュー・メタ解析を報告しました。

対象となったのは8研究・257症例です。

水酸化カルシウム貼薬前後で、細菌培養が陽性だった根管の割合がどう変化したかを統合すると、リスク差は−21%、95%信頼区間は−47%〜6%、P=0.12で、統計学的に明確な差にはなりませんでした。

ただし、この数字は読み方に注意が必要です。

8研究すべてが、

「水酸化カルシウムを使った群」と「使わなかった群」

を直接比較したわけではありません。

無貼薬の対照群を含んでいたのは8研究中1研究で、多くは同じ根管について、水酸化カルシウムを入れる前と入れた後の培養状態を比較した研究でした。

したがって、このメタ解析から、

「水酸化カルシウムには効果がない」

と結論づけるのは適切ではありません。

むしろ、

「水酸化カルシウムを入れれば、すべての感染根管が確実に培養陰性になるとは言えない」

と読むのが適切です。

「消毒」という言葉から、

薬を入れれば無菌になる

というイメージを持ちやすいのですが、実際の根管治療はそれほど単純ではありません。

なぜ強いアルカリ性の薬でも全部の菌を消せないの?

「pHが12を超えるほど強いアルカリなのに、どうして全部消えないの?」

と疑問に思うかもしれません。

理由は一つではありません。

根管の形が複雑だから

水酸化カルシウムを根管へ入れても、すべての細かな側枝や根尖分岐へ同じように行き渡るとは限りません。

薬剤が届きにくい場所があります。

細菌が象牙細管へ入り込むことがあるから

歯の象牙質には非常に細かな象牙細管があります。

根管感染では、その内部へ細菌が侵入することがあります。

バイオフィルムを作ることがあるから

根管内の細菌は、液体の中に一個ずつ浮かんでいるだけではありません。

根管壁などに集まり、バイオフィルムと呼ばれる集団を形成することがあります。

バイオフィルムの状態では、浮遊している細菌とは薬剤への反応が異なることがあります。

アルカリ環境への抵抗性を示す微生物もいるから

Enterococcus faecalisやCandida albicansなどは、水酸化カルシウムへの抵抗性が研究されてきた微生物です。

ただし、

「根管治療が治らないのは全部E. faecalisのせい」

というほど単純ではありません。

根管治療の経過には、根管の形態、清掃の到達性、再感染、治療前の状態など、さまざまな要因が関係します。

象牙質そのものが作用を弱めることもあるから

試験管の中と、人間の根管の中は同じ条件ではありません。

根管内には象牙質、壊死組織、タンパク質などさまざまなものがあります。

象牙質には、水酸化カルシウムによる強いアルカリ環境を緩衝し、その抗菌作用を弱める可能性があることも報告されています。

つまり、

「薬そのものはpH12を超えるから強力」

という情報だけでは、実際の根管内でどこまで作用するかを説明しきれないのです。

だったら長く薬を入れておけばいい?――それも単純ではありません

ここまで読むと、

「完全に効くまで、長く入れておけばいいのでは?」

と思うかもしれません。

でも、これも単純ではありません。

水酸化カルシウムには感染管理上の利点がある一方、その作用には限界があります。

そして治療の最終目的は、

水酸化カルシウムを長期間入れておくこと

ではありません。

条件が整った段階では、根管を適切に封鎖して治療を次の段階へ進める必要があります。

また、水酸化カルシウムを使用した場合、根管充填前には可能な限り除去します。

水酸化カルシウムが残存すると、使用するシーラーによっては硬化や封鎖性などへ影響する可能性が研究されているためです。

一方で、複雑な根管系から水酸化カルシウムを完全に除去することも容易ではありません。

ですから、

「長く置けば置くほど丁寧」
「何回も交換すればするほど良い」

というものではありません。

そして、治療間では「仮蓋」もとても重要です

水酸化カルシウムなどを根管内へ入れたあと、その上を仮の材料で閉じます。

患者さんからすると、

「薬が出てこないようにふたをしている」

くらいに見えるかもしれません。

もちろんそれも役割の一つですが、仮蓋にはさらに重要な意味があります。

口の中と、処置した根管をできるだけ隔離することです。

口の中には多くの細菌が存在します。

せっかく根管形成・洗浄を行い、根管内へ薬剤を置いても、上から唾液や口腔内細菌が入り続ければ困ります。

2013年の日本歯科保存学雑誌の論文でも、仮封が不完全な場合には、根管内へ置いた薬剤の漏洩や、口腔内細菌の根管内への侵入が生じ、治療成果を低下させる可能性が述べられています。

治療間は「中を管理して、外から入れない」

私はこの考え方を知ってから、根管治療で先生が薬を入れて仮蓋する場面の見え方が変わりました。

根管内では、

必要に応じて治療間薬剤を使い、残存する微生物や根管内環境を管理する。

その外側では、

仮蓋で口腔からの新しい汚染をできるだけ防ぐ。

つまり、

中を管理して、外から入れない。

この二つがセットになっています。

薬だけを入れて終わりではありません。

仮蓋だけをしていれば根管内の感染管理が終わるわけでもありません。

次の予約では、前回の薬をそのまま残して根管充填するわけではありません

次回来院すると、まず仮蓋を外します。

そして前回入れた根管内薬剤を可能な限り除去し、必要に応じて再度根管形成や洗浄を行います。

大まかには、

仮蓋を外す
↓
根管内へ再びアクセスする
↓
前回の薬剤を除去する
↓
再洗浄する
↓
必要なら追加の形成・清掃を行う
↓
根管内の状態を確認する
↓
根管充填へ進むか、もう一度治療間を設けるか判断する

という流れです。

ですから、

「薬を入れたら、次回はその薬ごと詰める」

わけではありません。

次回来院で見ているのは「薬が効いたか」だけではありません

ここも、私が最初に誤解していたところでした。

「薬を入れたあとだから、次回は薬が効いたかを見るのかな」

と思っていました。

もちろん治療間薬剤による感染管理は重要です。

でも、複数回来院とした場合、次回来院にはもう一つ大きな意味があります。

前回の治療後、その歯がどう変化したかを改めて評価できることです。

2023年のGulabivalaとNgのレビューでは、複数回来院法には、再度化学的・機械的清掃を行う機会が得られることに加えて、根管充填前に滲出液や排膿の有無など、治療後の根尖周囲組織の反応を確認できるという側面が整理されています。

診療では、

  • 前回から腫れていないか
  • 自発痛はどうか
  • 噛んだときの痛みはどうか
  • 排膿はないか
  • 滲出液はどうか
  • 根管を乾燥できるか
  • 追加処置が必要か

などを確認します。

これは、

「経過を見るためだけに、わざと治療を延ばしている」

という意味ではありません。

あくまで、その症例で複数回来院とした場合には、

治療間を経た次回来院で、新しい臨床情報を得たうえで次の処置を判断できる

ということです。

私は、

「治療間は、必要に応じて薬剤を作用させる時間であると同時に、次の判断に使える情報が増える時間でもある」

と考えると、とても分かりやすいと思っています。

痛みがなくなったら、もう根管充填していい?

患者さんにとって、痛みがなくなることは大きな変化です。

「もう痛くないから治ったのでは?」

と思うのも自然です。

ただし、

痛みがなくなったこと=根管内が無菌になったこと

ではありません。

痛みは患者さんが感じる症状です。

根管治療では、それに加えて、必要な形成・洗浄を終えられているか、根管内の状態はどうかなども見ます。

反対に、治療後に多少の違和感があるからといって、ただちに治療失敗を意味するわけでもありません。

症状は重要ですが、症状だけで根管治療の成否や根管充填の可否を決めるわけではありません。

レントゲンの黒い影が消えるまで薬を交換するの?

根尖性歯周炎がある歯では、レントゲン写真で根の先に黒っぽい透過像が見えることがあります。

「この影が完全になくなるまで薬を交換して、それから根管充填するのかな?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、根尖周囲の骨が治癒するには時間がかかります。

根管内部の感染源へ治療を行ったあと、周囲組織や骨が治癒してレントゲン像に変化が現れるのは、その後です。

そのため、

根尖の透過像が完全に消えるまで薬を交換し続け、そのあとで初めて根管充填する

というものではありません。

感染源を制御する過程と、その後に起きる根尖周囲組織の治癒には、異なる時間軸があります。

では、一回で根管充填する治療は手抜きなのでしょうか?

ここまで「治療間に薬を置く意味」を書くと、

「それなら毎回、薬を入れて何回かに分けた方が丁寧なのでは?」

と思うかもしれません。

でも、それも違います。

根管治療には、一回の来院で形成・洗浄から根管充填まで行う方法もあります。

そしてここは、現在のガイドラインを見るととても興味深いところです。

2023年にEuropean Society of Endodontology(ESE)が公表したS3レベルの臨床診療ガイドラインでは、永久歯の無症候性根尖性歯周炎について、

必要な臨床処置を適切に行うことができた場合には、治療間の水酸化カルシウムを使用せず、1回で根管治療を完了する方法

を強く推奨しています。

この推奨は、4件の無作為化比較試験、計437人のデータに基づいています。

このうち、厳格なX線的治癒基準を用いた3研究を統合した解析では、1回法が複数回法より良好で、RR 1.10、95%CI 1.03〜1.19、P=0.007でした。

つまり少なくとも、

「治療間に水酸化カルシウムを置いた方が、必ず治癒しやすい」

とは言えません。

条件が整った無症候性根尖性歯周炎では、ESEのガイドラインは1回法を支持しています。

ただし「最新ガイドラインでは全部1回でいい」でもありません

ここはとても重要です。

先ほどのESEの推奨対象は、

永久歯の無症候性根尖性歯周炎

です。

したがって、この推奨の根拠を症候性・急性の根尖性歯周炎や根尖膿瘍などへ、そのまま外挿することはできません。

また、その日に必要な根管形成・洗浄などの臨床処置を適切に完了できることも前提です。

つまり、

「ESEが1回法を推奨しているから、どの根管治療も全部その日に根管充填すればいい」

という意味ではありません。

反対に、

「1回法が正しく、複数回法は古い」

という話でもありません。

今回の記事で一番大事なのは、まさにここです。

「1回法か複数回法か」より、「この歯は今日、根管充填へ進めるか」

患者さんからすると、

「一回で終わる方がいいの?」

「何回か薬を入れる方が丁寧なの?」

と考えたくなります。

でも実際には、

1回法 vs 複数回法

という単純な勝負にしてしまうと、本質から離れてしまいます。

大切なのは、

その歯について、その日の必要な処置をどこまで行えたか。

そして、

今日、根管充填へ進める条件が整っているか。

ということです。

根管の形。

感染の状態。

初めての根管治療なのか、再根管治療なのか。

滲出液や排膿の有無。

症状。

その日の形成・洗浄の到達度。

これらは歯によって違います。

だから、

「一回で終わる=上手」
でも、
「何回も薬を交換する=丁寧」
でもありません。

症例ごとに判断する必要があります。

「あと何回、薬を交換しますか?」に最初から一つの答えがない理由

受付や診療室でも、

「あと何回くらいかかりますか?」

と聞かれることがあります。

これは当然気になることだと思います。

仕事や学校の予定もありますし、通院回数は患者さんにとって大切です。

ある程度の治療計画や見通しをお伝えすることはできます。

ただ、根管治療では次回来院時の状態によって判断が変わることがあります。

  • 前回から症状がどう変化したか
  • 根管内の状態はどうか
  • 追加の形成や洗浄が必要か
  • 根管充填まで進めるか

そのため、

治療開始前から「必ずあと○回薬を入れれば終わる」と機械的に決められるものではありません。

逆に「薬交換だけを何度も続けること」が治療目的でもありません

一方で、

「根管治療は薬を何度も交換するほど良い」

というわけでもありません。

治療間薬剤は、必要な場面で使う感染管理の手段です。

その薬を何回交換したかが治療の目的ではありません。

適切に処置をしているのに症状や所見が改善しない場合には、

  • 未処置の根管がないか
  • 複雑な根管形態が関係していないか
  • 再感染が起きていないか
  • 歯根破折など別の問題がないか
  • 穿孔などがないか
  • 通常の根管治療だけでは対応しにくい問題がないか

など、別の原因を考える必要が出てくることもあります。

「薬を交換し続ければ、そのうち必ず治る」

という考え方ではありません。

仮蓋をしたあとは、30分ほど飲食を控えてください

当院では、根管治療後に仮蓋をした場合、30分ほど飲食を控えていただくようご案内しています。

仮封材が落ち着くまで待っていただくためです。

ただし、仮封に使う材料や方法は歯科医院によって異なります。

「根管治療後は全国どこでも必ず30分」という意味ではありませんので、実際には治療を受けた歯科医院からの指示に従ってください。

治療間に仮蓋が大きく欠けたり外れたりしたら?

仮蓋には、処置した根管を口腔内からできるだけ隔離する役割があります。

そのため、

  • 仮蓋が大きく取れた
  • 明らかに穴が開いている
  • 食べ物が中へ入る感じがする
  • 強い痛みや腫れが出てきた

という場合には、

「中に薬が入っているから次の予約までそのままでいいだろう」

と自己判断せず、治療を受けている歯科医院へ連絡してください。

歯科助手から見ると「今日は薬の日」ではなくなりました

以前の私は、根管治療を見ながら、

「今日は洗浄の日」

「今日は薬を交換する日」

「今日は根管を詰める日」

というように、それぞれ別々の処置として見ていました。

でも今は少し違います。

形成する。

洗浄する。

根管内を確認する。

必要なら薬を入れる。

仮蓋をする。

複数回来院とした場合には、次回来院で前回からの変化も確認する。

そして条件が整ったところで根管充填する。

全部がつながっています。

だから「今日は薬を入れて仮蓋します」という日は、

単に薬を交換しただけの日ではありません。

その歯について今日できる感染管理を行い、

「今日は最終的に閉じるところまでは進めず、治療間を設けよう」

と判断した一日なのだと分かるようになりました。

「薬を入れて仮蓋」は、何もしないで待っている時間ではありません

根管治療で薬を入れて仮蓋する日は、

治療が進まなかった日ではありません。

その日の形成や洗浄を行い、

根管内の状態を確認し、

必要なら治療間薬剤を置き、

仮蓋によって口腔からの再汚染を防ぎ、

複数回来院とした場合には次回来院で再評価する。

そこまで含めて一つの治療工程です。

ただし、

薬を入れれば根管内が完全無菌になるわけではありません。

長く薬を置けば置くほど良いわけでもありません。

何回も薬を交換するほど丁寧というわけでもありません。

そして、

一回で根管充填まで進める治療が手抜きというわけでもありません。

少なくとも無症候性根尖性歯周炎では、必要な処置を適切に行える場合、ESEのS3ガイドラインは治療間の水酸化カルシウムを使用しない1回法を推奨しています。

一方で、その根拠を症候性・急性の根尖性歯周炎や根尖膿瘍などへ、そのまま広げることはできません。

結局のところ、根管治療の目的は、

「薬を何回入れたか」を競うことではありません。

その歯の感染をできるだけ制御し、根管系を適切に封鎖し、その後の歯冠修復まで含めて再感染を防ぎ、根の周囲の組織が治癒しやすい環境をつくることです。

次に診療室で、

「今日はお薬を入れて、仮のふたをしておきますね」

という説明を聞いたとき。

私はもう、

「今日は薬だけの日なんだ」

とは思いません。

その歯が今日どこまで進める状態なのかを確認して、次の治療へつなげるための一日なんだ。

そんなふうに見るようになりました。

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