2026年9月12日

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに
「生体活性(bioactive)」と聞くと、なんとなく新しくて、歯にやさしくて、従来の材料より何でも優れているように感じませんか。
私も治療を見学していると、材料名に「Bioactive」と付いていたら、
「普通の白い詰め物より、歯にピタッと合いやすいのかな?」
と思ってしまいます。
ところが、2026年9月10日に『BMC Oral Health』で公開された研究を見ると、そう単純ではありませんでした。
研究では、ヒトの大臼歯36本に歯ぐきに近い位置のClass V窩洞を形成し、従来型コンポジットレジンのFiltek Z250と、「生体活性」を特徴とするACTIVA BioACTIVE Restorative、Cention Forteを比較しました。
人工唾液の中で5℃から55℃までの温度変化を1万回与え、さらに85Nの力を10万回加えたあと、micro-CTを使って歯と詰め物の間にできた隙間を調べています。
そこで確認されたのが、少し意外な結果でした。
歯と詰め物の「内部界面」にできたギャップは、従来型のFiltek Z250の方が、今回比較された2種類のbioactive材料より小さかったのです。
でも、ここで「従来型レジンの勝ち」「bioactive材料は良くない」と結論づけるのは早すぎます。
なぜなら、同じ研究で詰め物の外側の縁を見ると、老化試験後には3材料の間に有意差が認められなかったからです。
今回の研究の面白いところは、単に「新しい材料と従来材料を比べた」ことではありません。
同じ「隙間」を調べても、「内部を見るのか」「外側の縁を見るのか」で答えが違った。
今回は、「生体活性」という名前だけでは分からない歯科材料の性能について、治療を見学する歯科助手の目線から見ていきます。
そもそも「生体活性」の詰め物って何?
まず、「生体活性」という言葉から整理してみます。
歯科で使われるbioactive restorative materialには、材料によってフッ化物やカルシウム、リン酸などのイオンを放出したり、歯の周囲でアパタイト様のミネラル沈着に関わったりする性質が期待されているものがあります。
今回の原著でも、bioactive修復材料について、フッ化物・カルシウム・リン酸などのイオン放出や、酸性環境への作用、ハイドロキシアパタイト形成などが研究背景として挙げられています。
こう聞くと、
「それなら普通のコンポジットレジンより、接着も強くて、隙間も少なくて、長持ちするのでは?」
と思いたくなります。
ですが、ここが今回いちばん大切なところです。
「生体活性」は、歯科材料のすべての性能をまとめて表した成績表ではありません。
- イオンを放出する性質
- 再石灰化に関わる性質
- 強度
- 摩耗への強さ
- 重合収縮
- 吸水や寸法変化
- 接着システムとの相性
- 歯の内部への適合
- 外側の辺縁への適合
- 患者さんの口の中での長期成績
これらは、それぞれ別に評価しなければならない性能です。
一つの性質が優れているからといって、ほかの性能もすべて優れているとは限りません。
Cention ForteやACTIVA BioACTIVE Restorativeなど、イオンを放出する修復材料については、以前の歯科修復物の「フッ素再充電」理論を扱った記事でも詳しく紹介しています。

研究では36本のヒト大臼歯に72個のClass V窩洞を作った
今回の研究で使われたのは、虫歯や亀裂、形成不全のないヒト大臼歯36本です。
1本の歯につき、頬側と舌側の2か所にClass V窩洞を形成しました。
つまり、合計では72個の窩洞です。
窩洞の大きさも統一されており、
- 幅5mm
- 高さ3mm
- 深さ2mm
に設定されています。
そして、窩洞の歯冠側(噛む面側)の縁はエナメル質に、歯頸側(歯ぐき側)の縁はCEJ(セメント・エナメル境)より1mm根尖側に置かれました。
Class V窩洞は「奥歯の噛む面の虫歯」ではない
Class Vは、歯の噛む面ではなく、歯の側面のうち歯ぐきに近い歯頸部に作られる窩洞です。
そのため、今回の結果をそのまま、
「すべての奥歯の詰め物で同じ結果になる」
「前歯のレジン修復でも同じ」
と一般化することはできません。
窩洞の形や場所が変われば、残っているエナメル質や象牙質の量、接着条件、力のかかり方も変わります。

比べたのは「従来型1製品」と「生体活性2製品」
比較された材料は3種類です。
| 材料 | 原著での分類 | 今回の位置づけ |
|---|---|---|
| Filtek Z250 | conventional microhybrid composite | 従来型コンポジット |
| ACTIVA BioACTIVE Restorative | bioactive hybrid composite | bioactive材料 |
| Cention Forte | bioactive alkasite | bioactive材料 |
ここでも注意が必要です。
今回の研究で「bioactive材料」として比較されたのは、ACTIVA BioACTIVE RestorativeとCention Forteという2つの特定製品です。
したがって、
「bioactive材料なら全部この結果になる」
とは言えません。
逆にFiltek Z250が良い結果だったからといって、従来型コンポジットなら何でも同じとも言えません。
これは材料カテゴリー全体の順位を決める研究ではなく、3つの具体的な修復システムを、Class V窩洞という条件で比較した研究です。

実は「詰め物の材料だけ」を比べた実験でもない
治療を見学していると、白い詰め物は材料を穴へ入れれば終わり、というわけではありません。
その前に歯の表面を処理し、接着材を使います。
今回の研究でも同じです。
Filtek Z250とACTIVAでは、エナメル質を37%リン酸で処理したあと、Tetric N Bondという接着材が使用されました。
一方、Cention ForteではCention Primerが使用されています。
つまり今回の結果を、
「詰め物本体だけの純粋な材料性能差」
と考えるのも正確ではありません。
実際の歯科治療と同じように、修復材料、接着システム、操作方法を組み合わせた結果として考える必要があります。
コンポジットレジンがどのように歯へ接着するのかについては、エッチング・プライマー・ボンディングの役割とレジン接着のしくみを解説した記事もあわせてご覧ください。

5℃から55℃を1万回、さらに85Nで10万回荷重
今回の研究は、材料を詰めてすぐ比較しただけではありません。
口の中で時間がたった状況に近づけるため、人工的な老化試験も行われました。
まず、人工唾液の中で、
5℃ ⇄ 55℃の温度変化を10,000サイクル
繰り返します。
さらにその後、咀嚼シミュレーターを使って、
85N、1.5Hzで100,000回
の機械的荷重を加えました。
修復物の中央には直径3.2mmのステンレス製の球状チップを当て、水平1mm、垂直3mmの動きも加えています。
単なる水ではなく「人工唾液」の中で試験した
ここにも、今回の研究を読むうえで大切な点があります。
老化試験に使われたのは単なる水ではなく、pH7.4の人工唾液です。
著者らは、口腔内環境へ近づけるだけでなく、bioactive材料が持つ反応性が発揮され得る環境を意識して、この人工唾液を使用しています。
つまり、bioactive材料の特徴を無視した乾燥状態だけで比べた実験ではありません。
著者らは、この一連の熱・機械的老化条件を約1年間の臨床機能を模擬したものと説明しています。
ただし、ここは誤解しないようにしたいところです。
「10万回荷重=患者さんが実際に1年間使った結果」ではありません。
実際の口の中には、唾液、細菌、プラーク、食事による酸、歯磨き、歯ぎしり、噛む位置、咬合力、唾液量など、実験室では完全に再現できない要素がいくつもあります。

今回のポイントは「外側」と「内部」の隙間を分けたこと
ここからが、この研究の特に面白いところです。
一言で「詰め物の隙間」と言っても、今回の研究では2種類に分けて評価しています。
外側の縁の隙間=辺縁ギャップ
一つは辺縁ギャップ(marginal gap)です。
歯と詰め物が接する、外側の境目に生じる隙間を指します。
歯と詰め物の中の隙間=内部界面ギャップ
もう一つが内部界面ギャップ(interfacial gap)です。
こちらは修復物の内部で、歯と材料の間に生じた空隙です。
外からそのまま目で見える場所ではありません。
家に例えるなら、外から見える壁の継ぎ目と、壁の中に生じた空間くらい違うものです。
原著でも、外側の辺縁への適合と内部界面への適合は別の現象として扱われています。
外側の縁がきれいだからといって、内部までまったく同じ状態とは限らないということです。
今回はmicro-CTを使うことで、歯を壊さずに内部の空隙を三次元的に評価しました。
なお、外側の辺縁についてはSEM(走査電子顕微鏡)でも500倍で観察されています。ただしSEMは代表的な標本を用いた定性的な確認で、今回の材料間比較の中心となる数値データはmicro-CTによる評価です。

結果① 内部ではFiltek Z250のギャップが小さかった
まず、歯と修復材料の内部界面にできたギャップを見てみます。
老化前も老化後も、歯冠側・歯頸側の両方で、Filtek Z250はACTIVAとCention Forteより有意に小さい値を示しました。
老化後の数値は次のとおりです。
| 老化後の内部ギャップ体積 | Filtek Z250 | ACTIVA | Cention Forte |
|---|---|---|---|
| 歯冠側 | 0.938 ± 0.28 mm³ | 1.701 ± 0.49 mm³ | 1.707 ± 0.613 mm³ |
| 歯頸側 | 0.282 ± 0.12 mm³ | 1.746 ± 0.36 mm³ | 1.584 ± 0.373 mm³ |
この研究条件では、従来型microhybrid compositeのFiltek Z250の方が、今回比較された2種類のbioactive材料より内部界面のギャップ体積が小さかったことになります。
「1.746mmの隙間が開いていた」という意味ではない
ここは数値を見るときに特に注意が必要です。
表の単位はmm³です。
これは「隙間の幅」ではなく、micro-CTで設定した解析領域の中で認められた空隙の体積を示しています。
たとえば「1.746mmの幅で隙間が開いていた」という意味ではありません。
また、この数値について、
「○mm³を超えたら二次虫歯になる」
といった臨床的な合否ラインが設定されているわけでもありません。
あくまで、この実験条件の中で3材料の内部適合を比較するための指標です。

結果② Cention Forteでは歯頸側の内部ギャップが増えた
老化試験の前後を比べると、もう一つ特徴的な結果がありました。
Cention Forteの歯頸側の内部ギャップ体積は、
1.255 ± 0.21 mm³ → 1.584 ± 0.373 mm³
へ増加しました。
老化前後の差はp=0.027で、統計学的に有意でした。
一方、歯頸側の老化前後比較では、
- Filtek Z250:p=0.693
- ACTIVA:p=0.092
で、有意差は認められていません。
つまり、今回の研究で「老化によって歯頸側の内部ギャップが有意に増えた」ことが確認されたのはCention Forte群でした。
でも「Cention ForteはACTIVAより悪い」とは言えない
ここは、統計結果を読むときに間違えやすいところです。
老化後の歯頸側の平均値は、ACTIVAが1.746mm³、Cention Forteが1.584mm³でした。
そして、ACTIVAとCention Forteの材料間比較には有意差が認められていません。
つまり、
「Cention Forteでは老化前から老化後への変化が有意だった」
ことと、
「老化後のCention ForteがACTIVAより悪かった」
ことは別の話です。
後者までは、このデータから結論づけることはできません。
ところが「外側の縁」を見ると話が変わった
ここまで読むと、
「ではFiltek Z250が全部の項目で一番良かったのでは?」
と思うかもしれません。
ところが、外側の縁のギャップを見ると話が変わります。
老化後の3材料を比較すると、
- エナメル質側:p=0.353
- 象牙質側:p=0.556
で、材料間に有意差は認められませんでした。
つまり、
内部界面ではFiltek Z250に差が出た。
一方で、
外側の辺縁では、老化後に3材料の差は確認されなかった。
という結果です。
さらに老化前の象牙質側の辺縁ギャップでは、Filtek Z250はACTIVAやCention Forteより大きい値を示していました。そのFiltek Z250では、老化後に象牙質側の辺縁ギャップが有意に減少しています。
一つの材料を単純に、
「Aが1位、Bが2位、Cが3位」
と並べられないことがよく分かります。

なぜFiltek Z250の内部ギャップが小さかったの?
では、なぜ今回このような結果になったのでしょうか。
著者らはいくつかの可能性を考察しています。
Filtek Z250は高いフィラー含有量を持つ従来型microhybrid compositeで、著者らはフィラー含有量、弾性率、重合収縮、寸法安定性などの違いが内部適合に影響した可能性を挙げています。
著者らが既報から引用した弾性率は、Filtek Z250が18.5GPa、Cention Forteが10GPa、ACTIVAが4.3GPaでした。
一方、bioactive材料は水の存在下でイオンを放出するなど、水を介した反応を利用する特徴があります。
そのため著者らは、吸水やそれに伴う寸法変化が、内部応力や歯と材料との界面のずれに関係した可能性も考察しています。
ただし、ここは「可能性」です。
今回の研究は、フィラー量や吸水量、弾性率を一つずつ変化させ、どの要素が何mm³のギャップを生んだのかを直接証明した研究ではありません。
接着システム、材料組成、吸水、重合、窩洞形態など、複数の要素が重なった結果として考える必要があります。

では「生体活性」には意味がなかったの?
いいえ。
今回の結果は、「bioactiveという考え方には意味がない」というものではありません。
そもそもbioactive材料は、内部のギャップだけを小さくするために作られた材料ではありません。
今回の原著でも、カルシウム、リン酸、フッ化物などのイオン放出や、アパタイト様のミネラル沈着などが議論されています。
著者らは、こうしたイオンを介した反応が、外側の辺縁に二次的な封鎖層を形成し、辺縁の安定に関係する可能性についても考察しています。
つまり、
「生体活性がある」ことと、「内部ギャップが一番小さい」ことは別の性能です。
新しい材料だから、接着も一番、強度も一番、隙間も一番少ない、虫歯も一番少ない、寿命も一番長い、という「全部入りの1位」になるわけではありません。
「隙間が少ない」=「二次虫歯にならない」でもない
さらに大切なのがここです。
内部ギャップが少ないことは、修復材料を評価するうえで重要な指標の一つです。
しかし、
「内部ギャップが少ない=患者さんで二次虫歯が少ない」
とそのまま置き換えることはできません。
今回の原著自身も、実験室で確認されたギャップ形成と、実際の臨床で起こる修復物の失敗との明確な関係は、まだ十分に証明されていないと説明しています。
二次虫歯には、
- プラーク
- 糖分摂取
- フッ化物の利用
- 唾液
- 清掃状態
- 修復物の形態や劣化
- 接着界面
- 患者さん自身の虫歯リスク
など、多くの要因が関係します。
今回の研究で測定したのは、あくまで人工老化後の内部界面と外側の辺縁に生じた空隙です。
患者さんの、
- 二次虫歯の発生率
- 修復物の脱落率
- 破折率
- 何年間使えたか
を比較した研究ではありません。

患者さんを3年間追った別研究ではACTIVAを含む4群に差が出なかった
では、実際の患者さんを追跡した研究ではどうなのでしょうか。
2026年に『Clinical Oral Investigations』で報告された別の無作為化臨床試験では、64人の患者さんを4種類の材料群に分けています。
- 高粘度グラスアイオノマー
- 高フィラーの注入型コンポジットレジン
- レジン添加型グラスアイオノマー
- ACTIVA BioACTIVE Restorative
ただし、この研究は今回のClass V研究と同じ治療ではありません。
深いClass II窩洞の歯ぐき側マージンを材料で持ち上げるDeep Margin Elevation(DME)に使用し、その上からCAD/CAM onlayを装着しています。
3年間の結果では、全修復物の生存率は100%で、FDI基準による臨床評価でも材料群間に有意差は認められませんでした。
さらに、この研究では3年間、4群すべてで二次虫歯は確認されていません。
もちろん、これを根拠に、
「ACTIVAと従来材料の寿命は必ず同じ」
と言うこともできません。
使われた場所も、窩洞形態も、修復方法も今回のClass V実験とは違うからです。
ただ、ここから分かる大切なことがあります。
実験室で内部ギャップに差が出たことを、そのまま患者さんでの寿命差へ変換することはできない。
研究で「何を測ったのか」を分けて考える必要があります。
新しい材料だから「全部上」ではない
今回の論文を見ていて、歯科助手として一番覚えておきたいのはここでした。
治療室には、たくさんの歯科材料があります。
患者さんから見ると、
「一番新しいものを使えばいいのでは?」
「生体活性と書いてある材料の方がいいのでは?」
と思うこともあるかもしれません。
でも、歯科医師が修復材料を選ぶときには、
- どこの歯なのか
- どんな形の窩洞なのか
- エナメル質がどのくらい残っているか
- 象牙質への接着が必要か
- 唾液や出血を避けて防湿できるか
- どの方向からどのくらいの力がかかるか
- どの接着システムを組み合わせるか
- 修復範囲がどのくらい大きいか
- 強度、審美性、イオン放出など何を材料に求めるか
といった条件を総合して考えます。
「bioactiveだからこれ」「新しいからこれ」と、一つの言葉だけで決まるものではありません。
修復材料を単純な一つのランキングで決められない理由については、Deep Margin Elevationの材料選択とエビデンスを詳しく検討した院長コラムでも取り上げています。
歯科助手さんが今回の論文から覚えておきたいこと
「生体活性」と聞くと、私は最初、
「従来の材料より何でも優れている新世代の材料」
のようなイメージを持ちそうになります。
でも今回の研究を見ると、材料にはそれぞれ違う評価軸があることがよく分かります。
今回の条件では、内部界面のギャップ体積はFiltek Z250の方が小さかった。
ところが、老化後の外側の辺縁ギャップでは3材料に有意差がなかった。
さらに、その内部ギャップの差だけでは、患者さんの二次虫歯や修復物寿命までは分かりません。
同じ「詰め物の隙間」という言葉でも、どこを、どの方法で、何のために測ったのかで意味が変わります。
材料名だけを見るのではなく、
「この研究では、何を測ったの?」
まで確認することが大切なのだと思いました。
よくある質問
生体活性の詰め物は普通のレジンより悪いのですか?
いいえ。
今回の研究で分かったのは、特定のClass V窩洞、特定の老化条件で、ACTIVA BioACTIVE RestorativeとCention ForteよりFiltek Z250の内部界面ギャップ体積が小さかったということです。
bioactive材料全般が従来型レジンより劣るという意味ではありません。
内部に隙間があると必ず虫歯になりますか?
必ずではありません。
内部ギャップは重要な研究指標ですが、二次虫歯はプラーク、食生活、フッ化物、清掃状態、唾液、患者さん自身の虫歯リスク、修復物の状態など多くの要因が関係します。
今回の研究は、二次虫歯の発生率を比較した研究ではありません。
0.938mm³や1.746mm³は、隙間の幅ですか?
違います。
mm³は、micro-CTで設定された解析領域内に認められた空隙の体積です。
「1.746mmの幅で歯と詰め物が離れている」という意味ではありません。
Filtek Z250の方が長持ちするという研究ですか?
違います。
今回比較した主な項目は、歯と修復物の内部界面に生じたギャップと、外側の辺縁に生じたギャップです。
患者さんの口の中で何年間残ったかを比較する臨床寿命研究ではありません。
10万回荷重=口の中で1年間使ったのと同じですか?
同じではありません。
著者らは今回の熱・機械的老化試験を約1年間の臨床機能を模擬したものと説明していますが、人工唾液中の実験と実際の人の口の中の1年間は完全には一致しません。
歯医者では何を基準に詰め物の材料を選ぶのですか?
修復する部位、窩洞の形、残っている歯質、咬合、防湿のしやすさ、接着方法、必要な強度や審美性などを総合的に判断します。
「新しい材料だから」という理由だけで一律に決まるわけではありません。
まとめ
今回の2026年9月10日公開の研究では、ヒト大臼歯36本に72個のClass V窩洞を形成し、従来型のFiltek Z250と、ACTIVA BioACTIVE Restorative、Cention Forteを比較しました。
pH7.4の人工唾液中で5~55℃の温度変化を1万回与え、さらに85Nの荷重を10万回加えたあとにmicro-CTで評価すると、内部界面のギャップ体積はFiltek Z250の方が今回の2種類のbioactive材料より小さい結果でした。
また、Cention Forteでは老化後に歯頸側の内部ギャップ体積が有意に増加しました。
一方、老化後の外側の辺縁ギャップには3材料間の有意差がありませんでした。
つまり、今回の研究が教えてくれるのは、
「生体活性」という一つの特徴だけで、接着、内部適合、辺縁適合、二次虫歯、耐久性まで全部を判断することはできない
ということです。
そして今回の結果だけから、
- Filtek Z250の方が患者さんの口の中で長持ちする
- bioactive材料は二次虫歯になりやすい
- Cention ForteはACTIVAより劣る
- bioactive材料全般が従来型レジンより劣る
と結論づけることもできません。
白い詰め物について基本から知りたい方は、コンポジットレジンの適応・寿命・変色・修理について解説した記事もあわせてご覧ください。
以前治療した白い詰め物が欠けた、取れた、境目が気になる、噛むと違和感があるといった場合は、材料名だけで自己判断せず、現在の歯と修復物の状態を歯科医院で確認してもらうことが大切です。
ブランデンタルクリニックは立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階です。4階まではエレベーターをご利用いただけます。当日のお電話でのご相談も受け付けており、急患は同日対応も可能です。
参考文献
- Sağun AA, Çatak C, Ocak M, Oğlakçı Özkoç B, Eligüzeloğlu Dalkılıç E. Effect of aging on cavity adaptation of Class V cavities restored with bioactive restorative materials: a Micro-CT and SEM analysis. BMC Oral Health. 2026. doi:10.1186/s12903-026-09642-3. Article in Press.
- Roshdy BN, Eltoukhy RI, Ali AI, Mahmoud SH. Effect of deep margin elevation with different injectable materials on performance of CAD/CAM-fabricated nanoceramic-resin onlays: 3-year randomized clinical trial. Clinical Oral Investigations. 2026;30:41. doi:10.1007/s00784-025-06705-7.
