2026年7月28日

(受付さんの備忘録)

はじめに
鏡を見たとき、前歯の先端が少し欠けていることに気づいた。
食事中に「カリッ」と硬い物をかんだと思ったら、奥歯の一部がなくなっていた。
転倒して前歯をぶつけたものの、出血は止まり、今は痛みもない。
このようなとき、
「痛くないなら、急いで歯医者へ行かなくてもよいのでは?」
「次の定期検診まで待っても大丈夫?」
と迷う方は少なくありません。
歯が欠けたからといって、すべてのケースで夜間や休日の緊急受診が必要になるわけではありません。
一方で、痛みがないことだけを理由に、数週間から数か月そのままにするのはおすすめできません。
歯をぶつけて欠けた場合や、歯が揺れる、位置が変わった、かみ合わせがおかしい、欠けた部分に赤色やピンク色が見えるといった変化がある場合は、痛みがなくても当日中に歯科医院へご連絡ください。
外傷ではなく、ごく小さな欠けで、ほかに気になる変化がない場合でも、次の定期検診まで待つのではなく、数日以内を目安に一度確認を受けましょう。
今回は受付さんの備忘録として、歯が欠けたけれど痛くない場合の受診時期、予約時に伝えていただきたいこと、受診までの過ごし方を詳しくご案内します。

歯が欠けたけれど痛くないとき、いつ受診すればよいですか?
歯が欠けたときの受診時期は、痛みの強さだけでは決められません。
重要なのは、何が原因で欠けたのか、どのくらい欠けたのか、歯が動いていないか、位置やかみ合わせが変わっていないかという点です。
また、「何日までは必ず待ってよい」という一律の基準があるわけでもありません。
歯をぶつけて欠けた場合は、欠けた部分が小さくても、原則として当日中に歯科医院へご連絡ください。現在の状態を伺い、必要な受診時期をご案内します。
一方、外傷の心当たりがなく、歯の先端や奥歯の一部がわずかに欠けただけで、歯の揺れ、出血、しみる症状、かみ合わせの変化などがない場合には、夜間救急を探すほどの緊急性は高くないことがあります。
その場合でも、数か月先の定期検診まで放置するのではなく、できれば数日以内に予約を取りましょう。
患者さんご自身で緊急性を完全に判断するのは難しいため、迷ったときは受付へ状態をお知らせください。
歯をぶつけて欠けた場合は、当日中にご連絡ください
転倒、衝突、スポーツ、交通事故、物が顔に当たったといった外傷によって歯が欠けた場合は、食事中に歯が欠けた場合とは少し考え方が異なります。
見えている欠けが小さくても、歯を支えている歯根膜、歯根、歯槽骨などが同時に傷ついていることがあるからです。
外傷歯の診察では、欠けた部分を見るだけではありません。
歯の位置、揺れ、かみ合わせ、歯肉からの出血、歯根や周囲の骨の状態などを確認し、必要に応じて打診、触診、動揺度検査、エックス線検査などを行います。
「少し欠けただけだから」と様子を見ている間に、歯の位置のずれや歯根の損傷を見逃してしまう可能性があります。
歯の位置を元に戻す処置や、歯髄をできるだけ残す処置が検討されるケースでは、できるだけ早く状態を確認することが大切です。
そのため、外傷による欠けは、現在痛みがなくても当日中にご相談ください。
痛みがないのに、なぜ診察が必要なのですか?
歯が欠けても痛くない理由はいくつかあります。
痛みがないからといって、必ずしも歯の内部まで無傷とは限りません。
エナメル質だけの小さな欠けでは痛みが出にくい
歯の表面を覆っているエナメル質には神経がありません。
そのため、欠けた範囲がエナメル質だけに限られている場合には、痛みが出ないことが珍しくありません。
小さな欠けでは、舌で触れたときに少し引っかかる、歯の形が左右で違う、光の当たり方が変わったといったことで初めて気づくこともあります。
エナメル質だけの浅い欠けであれば、鋭い部分を滑らかに整えるだけで済む場合や、白い材料で形を回復できる場合があります。
しかし、患者さんが鏡で見ただけでは、欠けがエナメル質だけにとどまっているのか、その内側の象牙質まで達しているのかを正確に判断することはできません。
象牙質まで欠けても、必ずしみるとは限らない
エナメル質の内側には象牙質があります。
象牙質が露出すると、冷たい飲み物や風などに反応してしみることがあります。
ただし、象牙質が露出したすべての歯に、同じ強さの症状が出るわけではありません。
露出した範囲、歯髄までの距離、刺激の加わり方などによっては、象牙質まで欠けていても、ほとんど痛みを感じないことがあります。
したがって、
「冷たい物がしみないから、表面だけの欠けだろう」
とは判断できません。
歯髄に影響があっても、すぐに痛みが出ない場合がある
歯の内部には、一般に「歯の神経」と呼ばれる歯髄があります。
欠けが歯髄の近くまで達している場合や、外傷によって歯髄へつながる血管や神経が影響を受けている場合でも、直後から必ず強い痛みが出るとは限りません。
外傷後には一時的に感覚反応が低下し、冷たい刺激などを使った検査でも、歯髄の状態がすぐには判断できない場合があります。
また、歯髄の炎症の程度と、自覚症状の強さが必ずしも一致しないこともあります。
痛みの有無は重要な情報ですが、それだけで歯髄が健康かどうかを断定することはできません。
根管治療を受けた歯は、強い痛みがないまま欠けることがある
根管治療を受けた歯では、歯髄由来の冷たい物への痛みや、歯の内部から生じる痛みは現れません。
しかし、歯を支えている歯根膜や、周囲の歯肉、骨には感覚があります。そのため、破折や炎症によって、かんだときの痛みや歯肉の腫れが生じることがあります。
一方、破折の初期には強い症状が出ない場合もあります。
「神経を取った歯だから痛くないのは当然」
「痛くないから欠けても問題ない」
とは考えず、被せ物の下に残っている歯質や、歯根まで亀裂が及んでいないかを確認する必要があります。
患者さんのいう「歯が欠けた」には、いくつかの状態があります
受付へ「歯が欠けました」とご連絡をいただいても、実際に診察すると、天然歯ではなく詰め物や被せ物が欠けていたということがあります。
反対に、「詰め物が取れただけだと思っていた」というケースで、詰め物の周囲に残っていた天然歯も一緒に欠けていることがあります。
患者さんご自身で正確に見分ける必要はありません。
歯が欠けたと感じたら、残っている歯と、その周囲の状態を確認することが大切です。

天然歯の一部が欠けた
前歯の先端や角、奥歯の山になっている部分などが欠けた状態です。
エナメル質だけの小さな欠けから、象牙質や歯髄に達する大きな欠けまで、深さはさまざまです。
欠けた範囲が同じように見えても、歯髄までの距離は歯の部位や年齢によって異なります。
白い詰め物が欠けた
コンポジットレジンなどの白い詰め物は、天然歯と似た色をしています。
そのため、欠けた物を見ても、天然歯なのか詰め物なのか分からないことがあります。
詰め物だけが欠けている場合もあれば、その下で虫歯が進んでいる場合や、周囲の天然歯が薄くなって欠けている場合もあります。
インレーや被せ物が欠けた
セラミック、ジルコニア、CAD/CAM冠、金属などの修復物も、強い力が加わると欠けたり外れたりすることがあります。
修復物の一部が欠けただけに見えても、かみ合わせに変化が生じたり、内側の歯が露出したりしている可能性があります。
外れた詰め物や被せ物が見つかった場合は、捨てずにお持ちください。
再装着できるかどうかは診察後の判断になりますが、修復物の破損状態や、内側の歯の状態を確認するためにも役立ちます。
虫歯で弱くなった歯が崩れた
転倒したわけでも、特別に硬い物をかんだわけでもないのに、食事中に突然歯が欠けることがあります。
この場合、歯の内部で虫歯が進み、表面に残っていた薄い歯質が食事の力で崩れた可能性があります。
虫歯は、必ず強い痛みを伴って進むわけではありません。
特に、過去に大きな詰め物をした歯では、詰め物の周囲に残っている歯質が薄くなっている場合があります。
表面だけを埋めればよいのか、虫歯を除去する必要があるのか、被せ物で歯を守る必要があるのかは、実際に確認しなければ判断できません。
歯に入った亀裂の一部が欠けた
奥歯では、長期間繰り返しかかってきた力によって亀裂が生じ、その一部が欠けることがあります。
以前から特定の場所でかんだときだけ痛む、硬い物をかんだ瞬間に違和感がある、冷たい物が時々しみるといった症状がみられることもあります。
一方、亀裂が入っていても、初期にはほとんど自覚症状がないケースもあります。
亀裂や歯根破折は、通常のレントゲン写真だけでは分からないこともあります。
視診、透照診、かみ合わせの検査、歯周ポケットの検査などを組み合わせ、残っている歯の状態を評価します。
痛みがなくても、当日中に連絡してほしい状態
歯が欠けても痛くない場合、患者さんが最も迷うのは、「今日相談する必要があるのか」という点だと思います。
次のような変化がある場合は、痛みがなくても当日中に歯科医院へご連絡ください。

転倒や衝突で歯をぶつけた
外傷による破折では、欠けた部分だけでなく、歯の位置や周囲の組織にも損傷が及んでいる可能性があります。
見た目には小さな欠けでも、歯根膜の損傷、歯根破折、歯槽骨骨折などを伴っている場合があります。
欠けた部分に赤色やピンク色が見える
破折面に赤色やピンク色の部分が見える場合は、歯髄が露出している可能性があります。
歯の中央付近からにじむような出血がある場合も同様です。
歯髄をできるだけ残せるかどうかは、受傷からの時間だけでなく、露出した範囲、出血や汚染の状態、歯根の成長段階、歯の揺れや位置の変化などを総合して判断します。
早く診察を受けるほど、選択できる処置を検討しやすくなります。
時間がたっていたとしても、患者さんご自身で「もう神経は残せない」と判断せず、できるだけ早くご相談ください。
歯が揺れている
歯が揺れている場合、単に歯冠が欠けただけではなく、歯を支える歯根膜や歯槽骨に損傷が及んでいる可能性があります。
歯根が折れているケースでも、歯が揺れることがあります。
動いているかを確かめるために、指で強く押したり、何度も舌で揺らしたりする必要はありません。
普段とは違う動きがあると感じたら、そのままの状態でご連絡ください。
歯の位置が変わったように見える
隣の歯より短く見える、長く伸びたように見える、斜めになっている、内側や外側へずれている場合は、歯の脱臼性外傷が疑われます。
位置がずれた歯では、できるだけ早い段階で元の位置へ戻す処置が必要になることがあります。
患者さんご自身で押し戻そうとせず、そのまま受診してください。
以前と同じようにかめない
口を閉じると、欠けた歯だけが先に当たる。
左右の奥歯が同時にかみ合わない。
歯が少し高くなった、または低くなったように感じる。
このようなかみ合わせの変化は、歯の位置がずれていることを示している可能性があります。
見た目ではほとんど分からない程度の変化でも、かみ合わせにははっきり現れることがあります。
歯肉のきわから出血している
歯の周囲から出血している場合、歯肉が切れただけのこともありますが、歯が動いたことで歯肉溝から出血している可能性もあります。
また、破折線が歯肉より深い位置まで達していることもあります。
歯肉からの出血が続く場合は、清潔なガーゼなどで軽く押さえ、早めにご相談ください。
複数の歯が一緒に動く
隣り合う複数の歯が、ひとかたまりになって動くように見える場合は、歯だけでなく、歯を支える歯槽骨が損傷している可能性があります。
この場合は、痛みが軽くても早急な診察が必要です。
欠けた部分が舌や頬に当たる
鋭くなった歯の縁が舌や頬に当たり、傷ができている場合があります。
歯の内部に対する緊急性が高くなくても、粘膜の傷が広がる可能性があるため、早めにご相談ください。
子どもの永久歯が欠けた
生えたばかりの永久歯は、歯根がまだ完成していないことがあります。
このような歯では、歯髄をできるだけ保存することが、その後の歯根の成長に関係します。
子どもは痛みや違和感をうまく説明できないこともあるため、「本人が痛くないと言っているから」と様子を見続けず、永久歯をぶつけて欠けた場合は、当日中に歯科医院へご相談ください。
乳歯の外傷でも、下で育っている永久歯に影響を与える場合があります。外傷後しばらくして歯が変色したり、歯肉が腫れたりすることもあるため、痛みがなくても確認と経過観察が必要です。
頭や顔を強く打った場合は、医科での対応を優先することがあります
転倒や事故によって歯が欠けた場合には、歯だけに注意が向きやすくなります。
しかし、頭部や顎顔面への強い外傷を伴っている場合は、歯科治療よりも医科での評価を優先しなければならないことがあります。
意識がぼんやりしている、受傷時の記憶がない、強い頭痛がある、吐き気や嘔吐がある、めまいが続く、鼻や耳から出血している、口が開きにくい、顎の形が明らかに変わっているといった場合は、医科の救急受診を検討してください。
呼吸が苦しい、意識状態がおかしい、出血が止まらないなど、生命に関わる可能性がある場合は、歯科医院への連絡よりも救急要請を優先してください。
小さな欠けなら、次の定期検診まで待ってもよいですか?
外傷の心当たりがなく、前歯の先端がほんの少し欠けただけで、歯の揺れ、出血、しみる症状、かみ合わせの変化もない場合には、夜間救急を受診するほどの緊急性は高くないことがあります。
ただし、それは「治療しなくてもよい」「数か月放置してよい」という意味ではありません。
欠けた部分に鋭い縁が残っているかもしれません。
象牙質がわずかに露出しているかもしれません。
欠けたところから亀裂が続いている可能性もあります。
また、詰め物の周囲に虫歯があり、天然歯が内側から弱くなっていることもあります。
小さな欠けでほかに異常がなさそうな場合は、
今日中の緊急処置が必要とは限りませんが、数日以内を目安に一度確認を受ける
という考え方がよいでしょう。
旅行や仕事などですぐに受診できない事情がある場合も、まずは受付へご連絡ください。欠けた原因や現在の状態を伺い、受診時期をご案内します。
前歯が欠けた場合と、奥歯が欠けた場合では確認する点が異なります
前歯が欠けた場合
前歯は、転倒や衝突などの外傷によって欠けることが多い部位です。
特に上の前歯は、外からの力を受けやすい位置にあります。
前歯が欠けた場合には、欠けた大きさだけでなく、歯が内側へ押し込まれていないか、外側へ傾いていないか、歯肉から出血していないか、唇の内側に傷がないかも確認します。
見た目を早く元に戻したいと考える方も多いと思いますが、最初に歯髄、歯根、歯を支える組織の状態を確認し、そのうえで修復方法を検討します。
奥歯が欠けた場合
奥歯では、硬い物をかんだことをきっかけに歯が欠ける場合があります。
ただし、その一回の食事だけが原因とは限りません。
歯ぎしりや食いしばり、長年の咀嚼によって繰り返しかかってきた力、古い詰め物の周囲に残った薄い歯質、内部の虫歯などが重なり、最後に加わった力で欠けることがあります。
奥歯の一部が欠けた場合には、欠けた場所だけを詰めればよいのか、亀裂が残っていないか、かみ合わせから歯を守る必要があるかを確認します。
特に、以前に根管治療を受けて大きな被せ物をしている歯では、痛みがなくても歯根方向へ破折が及んでいる可能性があります。
欠けた破片や外れた詰め物は捨てないでください
欠けた歯の破片が見つかった場合は、小さくても捨てずにお持ちください。
破片の大きさ、形、保存状態、破折面との適合などによっては、元の歯へ接着できる可能性があります。
破片は強く洗ったり、こすったりせず、乾燥や紛失を避けて清潔な容器に入れてください。
保存方法に迷う場合は、来院前に歯科医院へご確認ください。
外れた詰め物や被せ物も、そのままお持ちください。
ただし、ご自身で家庭用接着剤を使って戻してはいけません。
家庭用接着剤は口の中で使用することを前提に作られておらず、歯や修復物を傷めたり、正しい位置へ戻せなくなったり、その後の治療を難しくしたりする可能性があります。
唇や頬に傷があり、破片が見つからない場合
歯をぶつけて唇や頬の内側が切れているのに、欠けた破片が見つからない場合は、そのことも必ずお知らせください。
まれに、歯の破片が唇や頬の傷の中へ入り込んでいることがあり、必要に応じて画像検査で確認します。
傷の中を患者さんご自身で探したり、強く押したりしないでください。

歯が一部欠けた場合と、歯が丸ごと抜けた場合は対応が異なります
歯の一部が欠けた場合と、歯が根ごと丸ごと抜けた場合では、緊急性も対応も異なります。
永久歯が丸ごと抜けた場合は、受診までの時間と歯の保存状態がその後の経過に大きく関係します。
通常の「歯が少し欠けた」という相談とは分けて、直ちに歯科医院へご連絡ください。
抜けた永久歯は、歯根の表面を触ったり、乾燥させたりしないことが重要です。詳しい扱い方は、電話で受付へご確認ください。
一方、乳歯が丸ごと抜けた場合は、保護者の方が元の場所へ戻そうとしないでください。
下で育っている永久歯へ影響する可能性があるため、そのまま歯科医院へご連絡ください。
受診までに気をつけていただきたいこと
受診までの間は、欠けた歯へ必要以上の力や刺激を加えないことが大切です。
欠けた側で硬い物をかまない
氷、ナッツ、硬いせんべいなど、強い力が必要な食べ物は避けてください。
欠けた歯の反対側を使い、できるだけ軟らかい食事を選びましょう。
小さな欠けに見えても、残った歯質が薄くなっている場合があります。硬い物をかむことで、欠けがさらに広がる可能性があります。
熱すぎる物や冷たすぎる物を避ける
象牙質が露出している場合には、熱い物や冷たい物が刺激になることがあります。
現在しみていなくても、受診までは極端な温度の飲食物を避けると安心です。
歯磨きを完全にやめない
欠けた部分が気になるからといって、歯磨きを中止すると、汚れがたまって歯肉の炎症につながります。
強くこする必要はありませんが、歯ブラシで周囲をやさしく清潔に保ちましょう。
外傷による出血がある場合や、歯が大きく動いている場合は、清掃方法について歯科医院の指示を受けてください。
舌や指で何度も触らない
欠けた部分が気になると、舌や指で何度も触りたくなります。
しかし、鋭い破折面によって舌を傷つけたり、動いている破折片へ力を加えたりする可能性があります。
確認のために歯を揺らすことも避けてください。
自分で削ったり接着したりしない
爪やすりなどを使って欠けた部分を削ると、欠けが広がったり、必要以上に歯を失ったりする可能性があります。
外れた詰め物や歯の破片を、瞬間接着剤などで付けることも避けてください。
そのままの状態で診察を受けることが大切です。
ご予約の際、受付へ伝えていただきたいこと
「歯が欠けました」とご連絡をいただいたとき、受付では痛みの有無だけでなく、いくつかの点を確認します。
質問が多いと感じられるかもしれませんが、受診時期を判断し、診療側へ状態を正確に伝えるために必要な情報です。

まず、いつ欠けたのかをお知らせください。
つい先ほど欠けたのか、前日なのか、数日前から欠けていたのかによって、考え方が変わります。外傷の場合は、受傷した時刻も重要な情報です。
次に、何をしていたときに欠けたのかを伺います。
転倒や衝突、スポーツなどで歯をぶつけたのか、食事中に硬い物をかんだのか、特にきっかけがなく欠けていることに気づいたのかをお伝えください。
どの歯が欠けたのかも、分かる範囲で構いません。
歯の番号まで分からなくても、「右上の奥歯」「左上の前歯」などで十分です。
欠けた範囲については、「角がほんの少し」「歯の4分の1程度」「歯の半分近く」「被せ物が丸ごと外れた」など、見た目で分かる範囲をお知らせください。
欠けた部分に赤色やピンク色が見える場合は、その点も必ずお伝えください。
歯の揺れや位置の変化も重要です。
指で無理に揺らす必要はありませんが、普段と比べて動く感じがある、隣の歯と高さが違う、斜めになったように見えるといった変化がないかをご確認ください。
口を閉じたときに、その歯だけが先に当たる、左右が均等にかみ合わない、歯が伸びたように感じる場合もお知らせください。
出血している場合は、欠けた歯の中央からなのか、歯肉のきわからなのか、唇や頬が切れているのかを、分かる範囲でお伝えください。
現在は痛くなくても、欠けた直後には一時的に痛かった、冷たい物がしみた、かむと違和感があったという情報も重要です。
以前に詰め物、被せ物、根管治療などを受けた歯かどうかも、覚えている範囲でお知らせください。
欠けた破片や外れた詰め物、被せ物が見つかっている場合は、持参できるように保管してください。
破片が見つからなくても診察や修復は可能です。破片を探すために受診を遅らせる必要はありません。
お子さんの場合は、乳歯か永久歯か分かる範囲でお伝えください。分からない場合は、そのまま受付へお知らせいただければ問題ありません。
写真があると、状態を共有しやすくなることがあります
公式LINEなどでご相談いただく際、可能であれば欠けた歯の写真があると、位置やおおよその範囲を共有しやすくなることがあります。
歯だけを極端に拡大した写真に加えて、どの歯か分かるように少し離れた写真もあると参考になります。
ただし、写真だけで欠けの深さ、歯髄の状態、歯根破折、歯槽骨の損傷などを診断することはできません。
写真上では小さな欠けに見えても、診察やエックス線検査が必要になる場合があります。
写真はあくまで受付時の情報共有を助けるものであり、歯科医師による診察の代わりにはなりません。
歯科医院では、欠けた部分だけを見ているわけではありません
歯が欠けたときの診察では、単に穴を埋められるかどうかだけを確認しているわけではありません。
まず、欠けた部分がエナメル質だけなのか、象牙質や歯髄まで達しているのかを調べます。
そのうえで、歯の揺れ、位置、かみ合わせ、歯肉からの出血、周囲の歯の状態などを確認します。
外傷が原因の場合には、打診や触診、動揺度検査なども重要です。
詳しくは、当院のコラム
「歯医者で歯をたたく・歯ぐきを押す・歯を揺らすのはなぜ?打診・触診・動揺度検査で分かること」
でも解説しています。
歯髄の反応を調べます
必要に応じて、冷たい刺激などを用いて、歯髄の感覚反応を確認します。
ただし、これは歯髄の血流を直接見ている検査ではありません。
特に外傷直後には、一時的に反応しにくくなることがあります。
そのため、一度の検査で反応が弱かったからといって、その場ですぐに「神経が死んでいる」と断定できない場合があります。
反対に、初回の検査で反応があったとしても、その後に歯髄の状態が変化する可能性があります。
外傷歯では、経過を追いながら繰り返し確認することが重要です。
必要に応じてエックス線検査を行います
歯根の状態、歯の位置、歯槽骨、根の周囲の変化などを確認するため、エックス線撮影を行うことがあります。
ただし、歯の亀裂や歯根破折は、角度や破折の状態によって、通常のレントゲン写真に明瞭に写らない場合があります。
症状、視診、触診、打診、歯周ポケットの検査などを合わせて判断し、必要に応じて撮影方向を変えたり、歯科用CTを検討したりします。
歯科用CTと通常のレントゲンの違いについては、
「歯科用CTとレントゲンの違い」
をご覧ください。
欠けた歯は、どのように治すのですか?
治療方法は、欠けた大きさだけでなく、欠けた深さ、歯髄の状態、歯根の完成度、亀裂の有無、残っている歯質、かみ合わせなどによって決まります。
ごく小さな欠けを滑らかに整える
エナメル質だけの小さな欠けで、歯の強度や見た目への影響が少ない場合には、鋭い部分を滑らかに整えて経過を見ることがあります。
白い材料で形を回復する
欠けた範囲に応じて、コンポジットレジンと呼ばれる白い材料で修復することがあります。
特に前歯では、周囲の歯の形や色を確認しながら、欠けた部分を再現します。
欠けた破片を接着する
破片の状態がよく、残っている歯と適合する場合には、破折片を接着できることがあります。
元の歯の形や色、表面の質感を生かせる可能性がある方法ですが、すべての破片を戻せるわけではありません。
歯髄を保護する処置を行う
欠けが歯髄に近い場合や、歯髄が露出している場合でも、状態によっては歯髄を残す処置を検討します。
特に根が完成していない永久歯では、歯髄を保存することが、その後の歯根形成に重要です。
露出した歯髄の範囲、出血の状態、受傷からの時間、汚染の程度などを確認して治療方法を判断します。
根管治療が必要になることがある
歯髄が回復できない状態になっている場合や、歯髄壊死、根の周囲への感染などが確認された場合には、根管治療が必要になることがあります。
ただし、「歯が欠けたら必ず神経を取る」というわけではありません。
診察前から治療内容を決めつけず、まずは歯髄を残せる状態かどうかを確認します。
被せ物で歯を守ることがある
奥歯が大きく欠け、残っている歯質が薄くなっている場合には、詰め物だけでは再び割れる可能性があります。
歯の状態に応じて、歯の一部または全体を覆う修復物で守る治療を検討することがあります。
保存が難しい破折もある
破折線が歯肉より深い位置や、歯根の深部まで達している場合、歯を保存することが難しくなることがあります。
しかし、見えている欠けが大きいからといって、必ず抜歯になるわけではありません。
反対に、見た目の欠けが小さくても、歯根方向に深い亀裂が及んでいる場合があります。
歯を残せるかどうかは、欠けた面の大きさだけでは判断できません。
欠けた部分を治すだけでなく、欠けた原因も確認します
歯が欠けたときには、欠けた部分を元の形へ戻すことだけでなく、なぜその歯が欠けたのかを確認することも大切です。
一度だけ強い衝撃が加わった外傷とは異なり、食事中に奥歯が欠けた場合には、内部の虫歯、古い詰め物の周囲に残った薄い歯質、歯ぎしりや食いしばり、かみ合わせの偏りなど、複数の原因が重なっていることがあります。
欠けた部分だけを修復しても、原因となる力や虫歯が残っていれば、同じ場所や別の部分が再び欠ける可能性があります。
診察では、破折の深さだけでなく、詰め物や被せ物の状態、かみ合わせ、反対側の歯、歯ぎしりや食いしばりの痕跡なども確認し、必要に応じて再発を防ぐ方法を検討します。
見た目を治した後も、経過観察が必要になることがあります
欠けた部分を修復して歯の形が元に戻ると、「これで完全に治った」と感じるかもしれません。
しかし、外傷によって欠けた歯では、見た目の修復が終わった後も、歯髄や歯根の周囲に変化が起こらないか確認する必要があります。
経過中に確認したいのは、歯が灰色や茶色に変わる、歯肉に小さなできものができる、歯肉が腫れる、かむと違和感が出る、冷たい物への反応が変わる、一度修復した部分が再び欠けるといった変化です。
外傷を受けた歯の長期的な変化については、
「外傷後、痛みがなくても経過観察が必要な理由」
で詳しく解説しています。
よくあるご質問
痛くなければ、歯の神経は大丈夫ですか?
痛みがないことだけでは、歯髄が健康かどうかを判断できません。
エナメル質だけの浅い欠けで痛みがない場合もあれば、歯髄に影響があっても、まだ症状が出ていない場合もあります。
欠けた部分が小さければ放置できますか?
小さな欠けは、当日中の緊急処置が必要ではないこともあります。
ただし、欠けの深さ、象牙質の露出、亀裂、虫歯などは見た目だけでは判断できません。数日以内を目安に確認を受けましょう。
夜に歯が欠けました。翌日の相談でも大丈夫ですか?
外傷の心当たりがなく、小さな欠けだけで、歯の揺れ、出血、位置やかみ合わせの変化、赤色やピンク色の露出などがなければ、翌診療日にご連絡いただけることがあります。
歯をぶつけた場合や、歯が動く、位置が変わった、歯の中央から出血しているといった場合は、当日中の相談を優先してください。
欠けた破片をなくしてしまいました
破片が見つからなくても、歯を修復する方法はあります。
破片を探すために受診を遅らせる必要はありません。
唇や頬に傷があり、破片だけが見つからない場合は、そのことを受付へお知らせください。
歯が欠けたのか、詰め物が欠けたのか分かりません
患者さんご自身で見分ける必要はありません。
白い詰め物やセラミックは天然歯に近い色をしているため、見た目だけでは判断しにくいことがあります。
欠けた物が残っていれば持参し、残っている歯と合わせて確認します。
痛くなってから予約してもよいですか?
痛みが出てからではなく、欠けたことに気づいた時点でご相談ください。
早めに確認することで、欠けが広がる前に歯を保護できたり、歯髄を残す治療を検討できたりする場合があります。
以前に神経を取った歯なので、急がなくてもよいですか?
根管治療済みの歯では、強い痛みがないまま歯質や歯根が割れることがあります。
神経を取った歯だからこそ、痛みの有無だけで判断せず、早めに状態を確認しましょう。
痛みがなくても、迷ったときは受付へご相談ください
歯が欠けたとき、すべてのケースで緊急処置が必要になるわけではありません。
前歯の先端がほんの少し欠けただけで、外傷の心当たりがなく、歯の揺れ、出血、しみる症状、かみ合わせの変化もない場合には、夜間救急を受診するほどの緊急性は高くないことがあります。
しかし、痛みがないという理由だけで、欠けた深さ、歯髄の状態、亀裂の有無を判断することはできません。
歯をぶつけて欠けた場合、欠けた部分に赤色やピンク色が見える場合、歯が揺れる場合、位置やかみ合わせが変わった場合、歯肉から出血している場合は、当日中にご連絡ください。
外傷ではない小さな欠けで、ほかに異常がない場合でも、次の定期検診まで数か月待つのではなく、できれば数日以内を目安に確認を受けましょう。
ご予約時には、いつ、何をしているときに欠けたのか、どの歯がどのくらい欠けたのか、歯の揺れや出血、かみ合わせの変化がないか、欠けた破片が残っているかをお伝えください。
ブランデンタルクリニックでは、電話、公式LINE、WEBからご予約いただけます。
歯をぶつけた、歯が揺れている、位置やかみ合わせが変わった、欠けた部分に赤色やピンク色が見えるなど、当日中の判断が必要と思われる場合は、できるだけお電話で現在の状態をお知らせください。
受付で内容を伺い、必要な受診時期をご案内します。
参考資料
- 日本外傷歯学会「歯の外傷治療ガイドライン」令和5年10月改訂
- Bourguignon C, Cohenca N, Lauridsen E, et al. International Association of Dental Traumatology guidelines for the management of traumatic dental injuries: Fractures and luxations. Dental Traumatology. 2020.
- American Association of Endodontists. Recommended Guidelines of the American Association of Endodontists for the Treatment of Traumatic Dental Injuries.
