歯医者の『キーン』と『ブーン』は何が違う?歯を削る高速・低速ハンドピースとタービン・コントラの使い分け|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

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歯医者の『キーン』と『ブーン』は何が違う?歯を削る高速・低速ハンドピースとタービン・コントラの使い分け

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2026年9月01日

歯医者の『キーン』と『ブーン』は何が違う?歯を削る高速・低速ハンドピースとタービン・コントラの使い分け

(歯科助手さんの治療見学ノート)

「キーン」から「ブーン」に変わったけど、何が変わったの?

こんにちは。ブランデンタルクリニックの歯科助手です。

治療中、先生の手元を見ていると、同じ1本の歯を治療しているのに器械を何度も持ち替えることがあります。

最初は「キーーン」という、いかにも歯医者さんらしい高い音。

そのあと突然、「ブーン」「ウィーン」という少し低い音に変わる。

さらに治療が進むと、もう一度高い音に戻ったり、今度は回転する器械を置いて手で使う器具へ持ち替えたりします。

患者さんから見ると、「同じ歯を削っているのに、どうして?」と不思議ですよね。

私も歯科助手として治療を見始めたころは、「最初に高速で大きく削って、最後は低速で少しだけ削るのかな?」と思っていました。

ところが、実際の歯科治療はそれほど単純ではありません。

高速か低速かだけではなく、どのような仕組みで回転しているのか、どのくらいの速さで回すのか、負荷がかかったときにどの程度回転を維持できるのか、先端にどんなバーを付けるのか、そして何を削っているのかによって器械を使い分けています。

エナメル質を削っているのか。虫歯で変化した象牙質を除去しているのか。レジンや金属などの人工材料を削っているのか。大まかな形を作っているのか、最後の仕上げをしているのか。

つまり患者さんに聞こえる「キーン」から「ブーン」への変化は、単なる音の変化ではありません。

先生が、その瞬間に行う仕事に合った器械・回転数・バーへ切り替えた結果として、音も変わっているのです。

実は「キーン」という切削音そのものが苦手な人は珍しくありません

歯医者さんの「キーン」という音。

あの音を聞いただけで、「これから削られる」と体に力が入ってしまう方もいらっしゃいます。

切削音と歯科治療への恐怖との関係は、実際に研究されています。

長崎大学のグループが学会で報告した15年間のアンケート調査では、2007年、2012年、2017年、2022年の歯学部1年生計190名を対象とし、182名から有効回答を得ています。

その解析では、「現在嫌だと思う歯科処置」のうち、切削音と現在の歯科治療への恐怖との間に有意な関連が認められました。

これは学会発表によるアンケート調査であり、すべての患者さんへそのまま当てはまるという意味ではありません。ただ、「痛みそのものよりキーンという音が苦手」「音を聞くだけで緊張する」という感覚が、決して珍しいものではないことは分かります。

だからこそ今回は、普段は見えにくい「音の向こう側」で歯科医師が何を選んでいるのかを詳しく見ていきます。

先に結論|「キーン=高速」「ブーン=低速」と音だけでは決められません

まず、このコラムで一番大切なところです。

歯科治療でよく聞く高い「キーン」という音の代表は、エアータービンです。

一方、「ブーン」「ウィーン」という比較的低い音で動く器械では、マイクロモーターとコントラアングルの組み合わせがよく使われます。

ここまで読むと、「やっぱりキーンが高速、ブーンが低速なんだ」と思いますよね。

しかし、そう言い切ることはできません。

マイクロモーターへ取り付けるコントラアングルの中には、モーターから来た回転を内部のギアで増速し、高速で歯を削るタイプもあるからです。

つまり、高速=必ずエアータービンではありません。

そして、コントラアングル=必ず低速でもありません。

患者さんには「キーン」「ブーン」という音として聞こえているものを、歯科側では、エアータービンか、マイクロモーターか、増速・等速・減速のどのコントラか、何rpmで使うか、どのバーを付けるか、という複数の条件で見ています。

そもそも「ハンドピース」とは何?

先生が手に持っている細長い回転器械を、広い意味で「ハンドピース」と呼びます。

患者さんから見ると、ひとまとめに「歯を削るドリル」に見えるかもしれません。

ただし、本当はハンドピースと、その先端へ取り付ける「バー」や「ポイント」は別の器具です。

ハンドピースが回転を作る、あるいはモーターから来た回転を伝える本体。

バーが実際に歯や人工材料へ接触する切削部分。

という関係です。

しかも、ハンドピースもバーも一種類ではありません。

だから先生は、治療中にハンドピースそのものを持ち替えたり、同じハンドピースを使いながらバーだけ交換したりします。

あの「キーン」の代表|エアータービンは圧縮空気で高速回転します

歯科用エアータービンは、圧縮空気によってハンドピースのヘッド内部にあるローターを回し、その回転で先端のバーを高速回転させます。

回転数は機種や使用条件によって異なります。

2013年の歯科保存学の文献では、当時の一般的な説明としてエアータービンに45万〜50万rpmという数字が記載されています。

一方、現在販売されている製品を見ると、必ずしも「45〜50万rpm」が現在のすべてのタービンを代表する数字ではありません。

たとえば2026年9月時点の現行製品例では、NSKのTi-Max Z990シリーズに28万〜36万min-1、Z890シリーズに32万〜40万min-1という仕様があります。

つまり「タービンは何rpm」と一つの固定値で覚えるのではなく、数十万回転という高速域で、機種ごとに違いがあると考える方が正確です。

何十万回転もするのに、強く押しつける器械ではありません

1分間に何十万回も回ると聞くと、「ものすごい力で歯へ押しつけて削っているのでは?」と思うかもしれません。

ところが、ここが高速切削を理解するときの大切なポイントです。

高速回転だからといって、歯へ強く押しつけて使うわけではありません。

2013年の文献では、エアータービンは非常に高い回転数を持つ一方、回転トルクが比較的小さいという特徴が説明され、一般的な説明として30〜80g程度の軽い切削圧、いわゆる「フェザータッチ」が記載されています。

ただし、この30〜80gという数字をすべてのタービン、すべてのバー、すべての治療へ当てはめることはできません。同じ論文の実験部分ではタービンの切削圧を60〜120gに設定しており、適切な切削圧は機器、バー、処置内容、研究条件によって異なります。

大切なのは、高速=強く押す、ではないという点です。

「速い器械の方が強い」とは限らない|回転数とトルクは別です

ハンドピースを理解するとき、「何rpmで回るか」だけでは足りません。

もう一つ重要なのが、トルクです。

簡単にいうと、バーへ負荷がかかったときにも回転を続けようとする力です。

ただ空中で高速回転している状態と、実際に硬い歯や金属へバーが接触している状態は同じではありません。

エアータービンは非常に高速で回転しますが、バーへ負荷がかかると回転速度が低下しやすい特性があります。

一方、電動マイクロモーターから機械的に回転を伝える方式には、エアータービンとは異なるトルク特性があります。

そのため、「40万rpmだから20万rpmより必ず強い」「回転数が2倍なら2倍削れる」といった単純な比較はできません。

先生は回転数だけでなく、トルク、切削圧、接触時間、バー、削る対象、必要な操作性まで組み合わせて器械を選びます。

低い音の「ブーン」は何?マイクロモーターとコントラアングル

低めの「ブーン」「ウィーン」という音で使われることが多いのが、マイクロモーターです。

マイクロモーターで作った回転を、先端に取り付けたハンドピースへ伝えます。

そこでよく登場するのが、少し角度の付いた「コントラアングル」というハンドピースです。

ところが、このコントラアングルにも種類があります。

同じマイクロモーターへ取り付けても、先端のバーが同じ回転数で回るとは限りません。

1:5、1:1、5.4:1って何?コントラ内部のギア比です

歯科用コントラアングルには、「1:5」「1:1」「5.4:1」などの表示があります。

これは、モーターから受け取った回転を先端へどのように伝えるかを示す伝達比です。

1:5の増速コントラでは、モーターの回転を内部のギアで増速して先端へ伝えます。

1:1なら基本的には等速です。

さらに、回転を落として伝える減速タイプもあります。

2026年9月時点の現行製品例では、KaVo EXPERTmatic E25 Lは1:5の増速タイプで最大20万rpm、E20 Lは1:1で電動モーター使用時最大4万rpm、E15 Lは5.4:1の減速タイプで最大7,400rpmとされています。

一つのマイクロモーター系でも、組み合わせるコントラによって回転域が大きく変わることが分かります。

「1:5」は5倍強く削れる、という意味ではありません

ここは数字だけを見ると誤解しやすいところです。

1:5だからといって、「切削力が5倍」「5倍たくさん歯を削れる」という意味ではありません。

1:5は、基本的にはモーターから受け取った回転を増速して伝えるための伝達比を示しています。

実際にどの程度効率よく削れるかは、回転数だけではなく、トルク、バーの種類、バーの新しさ、削る材料、切削圧、注水などにも左右されます。

ですから、「数字が大きい器械ほど強い」と考えるのではなく、違う仕事をするために回転の伝え方を変えていると考える方が分かりやすいと思います。

研究でも「1:5で形成、1:1で仕上げ」という使い分けがあります

この違いが分かりやすく現れている研究があります。

2022年にラミネートベニアの歯の形成について調べた研究では、1:5のコントラアングルへダイヤモンドバーを装着し、20万rpm・注水下で歯を形成しています。

その後の仕上げ・表面平滑化では、1:1のコントラアングルへ持ち替え、2万rpm・注水下で研磨しています。

同じマイクロモーター系でも、20万rpmで形成する工程と、2万rpmで仕上げる工程があるわけです。

患者さんから見ると、「銀色の器械を別の銀色の器械へ替えた」くらいにしか見えないかもしれません。

しかし、その中では回転を伝える仕組みも、目的も変わっています。

先生が「先っぽの小さな棒」まで交換しているのはなぜ?

ハンドピースの先端へ取り付ける回転器具を、バーやポイントと呼びます。

実は、このバーの違いも非常に重要です。

同じ高速ハンドピースでも、取り付けるバーが変われば仕事が変わります。

ダイヤモンドポイントは「砥粒」で研削する

ダイヤモンドポイントの表面には細かなダイヤモンド砥粒が付いています。

その砥粒によって歯質や材料を研削します。

ダイヤモンドポイントにも粗さや形の違いがあり、大まかに形を作るもの、細かく仕上げるものなどを使い分けます。

カーバイドバーは「刃」で切削する

一方、カーバイドバーには刃があり、その刃で歯質や人工材料を切削します。

虫歯治療、レジンや金属の除去、根管治療の一部など、さまざまな場面で使われます。

ただし、「ダイヤモンドは歯専用、カーバイドは金属専用」という単純な分類ではありません。処置目的に応じて選択されます。

丸いバー、細長いバー、仕上げ用など形も違う

バーには材質だけではなく形の違いもあります。

先端が丸いラウンドバー、細長いフィッシャー形、テーパーの付いたもの、粗いもの、細かな仕上げ用などがあります。

2013年の抜去歯を用いた基礎研究では、エアータービン、マイクロモーターなどの器械と、ダイヤモンド/カーバイド、ラウンド/フィッシャーを組み合わせて、形成後のエナメル質の微小亀裂などが比較されています。

その研究条件では、ラウンド形よりフィッシャー形のバーで微小亀裂が少ない傾向がみられました。

ただし、これは特定条件下で行われた基礎研究です。「ラウンドバーは危険」という意味ではありません。実際の臨床ではラウンドバーだからこそ適した処置もあります。

ここで知っていただきたいのは、ハンドピースの速さだけでなく、先端の材質・形・粗さまで考えて選ばれているということです。

似たようなバーでも、どのハンドピースにも付くわけではありません

ここは歯科助手として器具を準備するときにも、とても大切なところです。

見た目が似ているバーでも、軸の太さや固定方法が違い、どのハンドピースへでも自由に付けられるわけではありません。

代表的な現行製品例では、1:5の増速コントラに直径1.6mmのFGバーを使用する機種があります。

一方、1:1や減速コントラでは、2.35mmのコントラ用バーやラッチタイプのバーを使用する機種があります。

たとえばKaVo EXPERTmaticでは、1:5のE25系はFGバー、1:1のE20系や減速E15系はラッチタイプのバーを使用する仕様です。W&Hの1:5増速コントラWK-99 LTもFGバー径1.6mm用です。

もちろん、これは代表的な製品例であり、すべてのメーカー・すべてのハンドピースが同じという意味ではありません。

実際には、それぞれのハンドピースとバーのメーカー指定を確認して組み合わせます。

つまり歯科助手が次のバーを準備するときには、「先生が次に何を削るのか」だけでなく、次に使うハンドピースへ適合するバーなのかも確認する必要があります。

虫歯治療では、なぜ途中で音が変わりやすいの?

虫歯治療は、ハンドピースやバーの交換が分かりやすい治療の一つです。

歯の一番外側にあるエナメル質は非常に硬い組織です。

その内側に象牙質があり、さらに内側には歯髄、いわゆる「歯の神経」があります。

さらに、治療する歯には古いレジンや詰め物、被せ物などが入っていることもあります。

そのため治療中は、最初に何を除去するのか、どの部分の形を整えるのか、どの歯質を残すのかによって器械やバーが変わります。

硬い歯質や古い修復物へアクセスするとき

硬いエナメル質を削ったり、古い修復材料を除去したり、窩洞の外形を作ったりするときには、高速域の器械が便利な場面があります。

内部を確認しながら進むとき

内部へ進むと、マイクロモーターとラウンドバーなどへ持ち替え、歯質や材料を確認しながら処置することがあります。

2026年の再根管治療に関する総説でも、マイクロモーターとラウンドバーの用途として、髄腔壁に残るセメントやう蝕の除去などが挙げられています。

したがって、高い音から低い音へ替わったからといって、「もう削り終わった」とは限りません。

別の目的で切削を続けている可能性があります。

「低速になった=神経ギリギリ」ではありません

治療中に突然「キーン」から「ブーン」「ゴロゴロ」という低い音へ変わると、「神経のすぐ近くまで来たから慎重に削っているのかな?」と思う方もいるかもしれません。

そのような場面はあります。

しかし、低速になったことだけで、歯髄に近いとは判断できません。

レジンを整える、セメントを除去する、仮歯や材料を調整する、研磨する、といった工程でも低速域の器械を使用します。

深い虫歯では「低速なら全部取っていい」わけでもありません

さらに大切なのは、「高速か低速か」だけで虫歯の除去方法が決まるわけではないことです。

深い虫歯では、歯髄をできるだけ守るため、どこまでう蝕に影響された象牙質を除去するのかそのものを考える必要があります。

2026年に公表された臼歯の深い隣接面う蝕を含む臨床研究では、窩洞外側の壁には十分な注水下で高速ハンドピースを使用する一方、歯髄に近い内側では選択的う蝕除去の考え方に基づき、回転器具ではなく鋭利な手用エキスカベーターを使用していました。

つまり実際の治療は、「高速→低速→終了」という一本の流れだけではありません。

高速回転器具、低速回転器具、そして回転しない手用器具へと、目的に合わせて持ち替えることがあります。

スプーンのような手用器具へ替わることもあります

虫歯治療を見ていると、先生がハンドピースを置いて、小さなスプーンのような器具へ持ち替えることがあります。

この手用器具の詳しい役割は別の治療見学ノートで取り上げたいと思いますが、ここで覚えていただきたいのは、「虫歯治療=最初から最後まで回転器具で削る」わけではないということです。

残したい歯質、う蝕の深さ、歯髄との位置関係などを考え、必要に応じて回転しない器具も使います。

被せ物の治療でも「高速で削って、低速で終わり」とは限りません

被せ物を作る治療でも、器械やバーの持ち替えは頻繁にあります。

歯の形を大きく整える、必要なテーパーを付ける、被せ物の境目になる部分を形成する、角を整える、表面を滑らかに仕上げる。

それぞれ目的が違います。

先ほど紹介した2022年の研究では、1:5増速コントラを20万rpmで使って歯を形成し、その後1:1コントラを2万rpmで仕上げています。

一方、前歯CAD/CAM冠の形成に関する別の資料では、エアータービンまたは5倍速コントラで支台歯を形成し、最後には5倍速コントラと仕上げ用バーを使って表面を滑沢に仕上げる方法が紹介されています。

つまり、「高速は最初、低速が最後」とも限りません。

同じ高速域の器械でも、バーを変えることで粗形成から細かな仕上げまで担当することがあります。

先生がバーだけ交換したときも、治療工程は変わっているかもしれません

歯科助手として横から見ていると、ここがとても面白いところです。

患者さんには「また同じ器械で削っている」ように見えても、私たちから見ると、さっきは粗形成用、今は細かな仕上げ用、その次は別の形のバー、と変わっていることがあります。

つまり、ハンドピースそのものを持ち替えなくても、バー交換だけで治療の仕事が切り替わっていることがあります。

バーには「どのくらい速く回してよいか」まで決まっています

ここも患者さんからはほとんど見えない部分です。

「歯を削るなら、速く回せるだけ速く回した方がよく削れるのでは?」と思うかもしれません。

しかし、バーには製品・材質・形・長さなどによって使用条件があります。

特に長いバーでは重要です。

2024年に日本歯内療法学会誌へ掲載された鋳造支台築造の除去に関する総説では、根管の奥にある金属製ポストを切削するとき、25mmや28mmといったロングネックのカーバイドバーを使う場合が紹介されています。

そして、長いバーには最大回転数の指定があるため、使用条件を確認する必要があるとされています。

さらに、バーのブレが大きくなるとバーの破折につながりやすいため、そのような場面ではエアータービンより5倍速コントラの使用が望ましいと説明されています。

ここまで来ると、「高速か低速か」という二択だけでは器械を選べない理由が分かります。

普通のバーを浅く差して「長いバー代わり」にするのは危険です

同じ2024年の総説には、もう一つ興味深い注意点があります。

根管の奥へ届かせたいからといって、通常の長さのバーをハンドピースへ十分に装着せず、「半分だけ差して長く使う」ような半チャック状態は危険とされています。

必要な長さがあるなら、その用途に作られたロングネックバーを選択します。

患者さんから見ればどれも「細い棒」に見えます。

しかし歯科側では、長さ、太さ、材質、形、軸、最大使用回転数、装着状態まで確認しています。

金属を削るときは「速く削れる」だけでは足りません

再根管治療などでは、古い金属製の支台築造を除去しなければ治療を進められない場合があります。

金属は周囲の象牙質より硬い場合があり、バーが金属へ当たったときに「はじかれる」ことがあります。

2024年の総説では、金属ポストを切削する際にバーがはじかれ、周囲の根管壁を誤って削らないよう、ハンドピースを持つ手をしっかり固定することの重要性が説明されています。

右手だけでなく、反対の手も添えてレストを増やし、バーの動きを安定させる方法まで記載されています。

ここでは、速く削れることより、狙った場所だけを削れることが重要になります。

根管治療後に歯の中へ入れるポストそのものについては、「根管治療後、歯の中に白い棒を入れるのはなぜ?ファイバーポストの役割・必要なケースと限界」でも詳しく解説しています。

根管治療では「高速か低速か」以上に、削る方向が重要です

根管治療の内部は、歯の表面とはまったく違います。

根管は細く、歯根の中を複雑な形で走っています。

2026年の再根管治療に関する総説では、エアータービンとダイヤモンドポイント/カーバイドバーを使ってメタルコアやレジンコア、根管口付近の材料を除去する方法が紹介されています。

一方、根管内部まで切削能力の高い器具で追っていくと、根管壁の過剰切削、間違った方向への切削、穿孔、レッジ形成などのリスクが高くなるため注意が必要とされています。

同資料には、切削能力の高い器具を使用した際に穿孔が生じた症例も提示されています。

つまり、「高速は危険、低速なら安全」という話ではありません。

どの器械を、どの方向へ、どの位置まで使用するかが重要です。

「よく削れる器械」が、いつも一番よい器械ではありません

歯科治療は少し不思議です。

工場で材料を加工するなら、「より速く、よりたくさん削れる機械」が優秀に思えるかもしれません。

しかし、歯は削ったあとに元へ戻すことができません。

削る必要がある場所だけを削る。

残すべき歯質を残す。

狙った方向へ器械を動かす。

必要な視野を確保する。

これらも非常に重要です。

「切削能力が高いこと」と「その治療に最適なこと」は必ずしも同じではありません。

高速器械と低速器械では「水」の使い方も違う?

歯を高速で削ると摩擦などによって熱が発生するため、注水による冷却が重要です。

この点については、以前の治療見学ノート「歯を削るとき水がたくさん出るのはなぜ?切削熱から歯の神経を守る注水とバキュームの役割」で詳しく紹介しました。

ただし、「高速=水が出る」「低速=水が出ない」とも限りません。

2022年の研究では、1:5コントラを20万rpmで使う形成時だけでなく、1:1コントラを2万rpmで使用する仕上げ時にもスプレー注水を行っています。

つまり、低速なら発熱を考えなくてよいわけではありません。

回転数、切削圧、バー、接触時間、削る材料、注水条件などが関係します。

また過去の切削研究では、形成時間が長くなる場合には、注水下であっても発生する熱が長時間加わる可能性について考察されています。

今回は「ハンドピースを持ち替える理由」が主題なので、注水についての詳しい内容は上の記事へ譲ります。

「キーン」という音は、回っているバーだけの音ではありません

エアータービンの甲高い音。

あの独特な音は、高速で回転するバーだけによって作られているわけではありません。

2001年に高速エアータービンの音を測定した研究では、測定された音の周波数は条件によって幅があり、平均約6.9kHzと報告されています。

また、2022年の振動音響解析では、エアータービン内部の空気の共鳴が特徴的な音へ関与する可能性が示され、解析上は約4.5kHz付近に特徴的なピークが示されています。

研究方法も対象機種も異なるため、「歯医者のキーンは必ず○○Hz」という固定値ではありません。

高速回転、圧縮空気、タービン内部の構造、空気の共鳴、バー、実際に歯へ当てたときの負荷などが重なって、患者さんが聞く音になります。

そのため、同じ高速域でも、電動モーター+増速コントラではエアータービンとは音の質が違って感じられることがあります。

「ブーン」の方が歯に響く感じがすることもあります

患者さんによっては、「キーンという高い音より、低いゴロゴロした振動の方が嫌」と感じることがあります。

これも不思議なことではありません。

治療中に感じているのは、空気中を伝わる音だけではないからです。

ハンドピース自体の振動、バーと歯が接触する感覚、歯や顎の骨を介して伝わる振動、トルク、削っている材料、接触時間などが一緒に感じられます。

したがって、「高速なら怖い」「低速なら快適」と一概には言えません。

患者さんには「音」、歯科側には「条件の組み合わせ」

同じ治療中の出来事でも、患者さんと歯科側では見えているものがかなり違います。

患者さんには、「キーン」「ブーン」「ゴロゴロ」「振動」「水」として感じられます。

一方、歯科医師は、駆動方式、ギア比、回転数、トルク、切削圧、バーの材質・形・粗さ、バーの軸、何を削るのか、注水するか、どの方向へ動かすのか、といった条件を見ています。

治療途中で再び「キーン」に戻ることがあるのはなぜ?

虫歯を取る途中で高速から低速へ替わった。

それなら普通は、「もう高速は使わない」と思いますよね。

でも、そのあと再び高い音に戻ることがあります。

たとえばレジンを詰めたあと、形を整えるために別のバーを使用することがあります。

被せ物の形成でも、一度確認してから別のバーで追加形成や仕上げを行うことがあります。

虫歯を除去したあとコンポジットレジンを接着するときには、切削から接着操作へ移ります。その工程については「虫歯治療で青い薬・酸っぱい薬を塗るのはなぜ?エッチング・プライマー・ボンディングの役割とレジン接着の仕組み」でも詳しく紹介しています。

治療は「高速→低速→終了」という一直線ではなく、必要に応じて工程を行き来します。

歯科助手は「次に鳴る音」を予想しながら準備しています

治療を横から見ている歯科助手にとって、先生のハンドピースやバーの交換は大きな情報です。

「今は大まかな形成かな」

「そろそろ別のバーに替わりそう」

「次は低速のラウンドバーかな」

「もう少しで仕上げ用かな」

「このあとは接着操作へ移りそう」

など、治療の流れを読みながら次の器具を準備します。

そして先ほど説明したように、同じように見えるバーでもハンドピースへ適合する軸が違うことがあります。

ですから、ただ「次のバー」を出せばよいのではなく、次の処置・次のハンドピース・適合するバーをセットで考える必要があります。

先生の治療が止まらずスムーズに次の工程へ移れるように、その先を予想して準備することも歯科助手の大切な仕事です。

使い終わったバーをつけたまま扱わないことにも理由があります

ハンドピースの安全管理は、患者さんの口の中で回転している時間だけではありません。

バーは回転していなくても鋭利です。

過去の日本歯科衛生学会の施設報告では、切削バーやスケーラーチップの放置による器具刺し事故への対策として、次の作業へ移る前にバーやチップを外す、またはハンドピースごと所定の場所へ置くという運用を周知し、その後インシデント報告が減少したことが報告されています。

これは一施設の報告であり、すべての歯科医院が同じ手順を採用しているという意味ではありません。

ただ、患者さんの口から器械を出したら終わりではなく、取り外し、洗浄、滅菌、再準備まで含めて器械管理であることが分かります。

よくある疑問|「キーン」が大きいほど、たくさん歯を削っていますか?

いいえ。

音の大きさや高さだけでは、歯をどのくらい削っているかは判断できません。

高速でも短時間だけ仕上げをしている場合がありますし、反対に低い音の器械を長く使用する場合もあります。

よくある疑問|低速の方が削りすぎにくいですか?

低速だから自動的に歯を削りすぎなくなるわけではありません。

削除量には、回転数だけでなく、バー、切削圧、接触時間、歯質・材料、術者の操作などが関係します。

よくある疑問|低い音になったら神経の近くですか?

必ずしもそうではありません。

深い虫歯の処置中に低速へ替える場合はありますが、レジンの調整、研磨、セメント除去などでも低速域を使用します。

音だけで歯髄までの距離を判断することはできません。

よくある疑問|「1:5」なら5倍強く削れるの?

いいえ。

1:5は主に回転を増速して伝える伝達比を示すもので、切削力や削除量が5倍という意味ではありません。

実際の切削には回転数、トルク、バー、切削圧、材料、注水などが関係します。

よくある疑問|「キーン」がしなければ高速ではありませんか?

いいえ。

1:5増速コントラのように、マイクロモーターから高速回転を作る器械があります。

エアータービンとは駆動方式が違うため、同じ高速域でも音の質が違って感じられることがあります。

よくある疑問|高速の方が痛いですか?

「回転数が高い=痛い」と単純には言えません。

痛みには虫歯の深さ、歯髄の状態、麻酔、切削熱、振動、切削圧、不安や緊張など多くの要素が関係します。

また、切削音と歯科恐怖との関連が報告されているように、実際には痛みがなくても「音そのものが怖い」と感じることがあります。

よくある疑問|歯医者によって「キーン」の音が違うのはなぜ?

使用しているハンドピースの機種、駆動方式、バー、回転設定、負荷条件などが違うからです。

同じ医院でも、治療内容によって音は変わります。

よくある疑問|音が変わったら、治療が次へ進んだということ?

多くの場合、何らかの条件が変わっています。

  • ハンドピースを替えた
  • バーを替えた
  • 回転数を替えた
  • 削る対象が変わった
  • 粗形成から仕上げへ移った
  • 切削から別の処置へ移った

などが考えられます。

ただし、音だけから具体的な治療内容を断定することはできません。

「キーン」や振動が苦手なら、治療前に教えてください

「歯医者さんそのものは大丈夫だけど、音だけが苦手」という方もいらっしゃいます。

その場合は、治療前に伝えていただいて構いません。

器械にはそれぞれ役割があるため、「高速器械を一切使わない」など治療内容によっては対応できないこともあります。

ただ、器械を使う前に声をかける、途中で短い休憩を入れる、止めてほしいときの合図を決める、何をしているところなのか説明するなど、相談できることがあります。

まとめ|「音を替えた」のではなく「その仕事に合う器械へ替えた」

歯医者さんで聞こえる「キーン」と「ブーン」。

最初は、「キーン=高速で強く削る」「ブーン=低速で少しだけ削る」と思いやすいかもしれません。

でも実際には、エアータービン、マイクロモーター、1:5増速コントラ、1:1等速コントラ、減速コントラなどがあり、さらにダイヤモンドポイント、カーバイドバー、ラウンドバー、仕上げ用バーなどを目的に応じて組み合わせています。

そこへ、回転数、トルク、切削圧、注水、バーの長さ、バーの軸、最大使用回転数、削る材料、削る方向といった条件も加わります。

つまり先生は、「どの器械が一番強いか」ではなく、「今この場所で何をするために、どの組み合わせが適しているか」を選んでいます。

患者さんには、その持ち替えが「キーンからブーンへ変わった」という音として聞こえているのです。

次に治療中の音が変わったときには、「先生が次の仕事に合う器械やバーへ替えたのかな」と少しだけ思い出してみてください。

ブランデンタルクリニックは広島市中区立町、立町駅徒歩1分の立町中央ビル4階にあります。4階まではエレベーターをご利用いただけます。

器械の音や振動が苦手で歯科受診をためらっている方も、予約時や来院時に遠慮なくお伝えください。急な歯の痛みや腫れなどがある場合は当日電話受付可・急患同日可ですが、診療状況を確認したうえで来院時間をご案内しています。

参考文献・参考資料

  1. 澤瀬萌々、近藤好夫、伊藤李香ほか.15年間における歯学生の歯科治療恐怖に関する調査.第62回日本小児歯科学会大会発表資料.
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  16. NSK-Nakanishi Japan. Ti-Max Z990/Z890 製品仕様.現行製品情報、2026年9月確認.
  17. KaVo Dental. EXPERTmatic handpieces & contra-angles. E25 L/E20 L/E15 L 現行製品仕様、2026年9月確認.
  18. W&H. Synea Straight & Contra-angle Handpieces. WK-99 LTほか現行製品仕様、2026年9月確認.

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