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歯科技工士が訪問歯科で義歯修理へ?厚労省が患者宅・口腔内での業務範囲見直し

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2026年10月07日

歯科技工士が訪問歯科で義歯修理へ?厚労省が患者宅・口腔内での業務範囲見直し

(院長の徒然コラム)

はじめに

「入れ歯が割れてしまった。でも、患者さん自身は歯科医院まで来られない」

訪問歯科診療では、こうした場面があります。

高齢や病気、障害などによって通院が難しい患者さんの場合、歯科医師が患者さんのご自宅や施設へ出向いて診療します。そこで義歯が割れていたり、人工歯が外れていたり、義歯の修理や調整が必要なことが分かったとします。

では、その義歯を作ったり修理したりする専門職である「歯科技工士」が一緒に来て、その場で修理すればいいのではないか。

患者さんから見れば、かなり自然な発想だと思います。

ところが、現在の制度では話はそれほど単純ではありません。

歯科医師は患者さんの自宅へ行って診療できます。歯科技工士が歯科医師と一緒に訪問先へ行くこと自体も、これまで行われてきました。

しかし、患者さんの居宅という場所で、歯科技工士が業として「歯科技工」を行うことについては、現行法の構造上、困難と厚生労働省は整理しています。

その境界を動かそうとしているのが、厚生労働省が2026年10月1日に公表した「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(第二次)」です。

翌10月2日には第9回検討会も開催されました。

今回の中間報告では、訪問歯科診療に歯科技工士が歯科医師と帯同し、患者さんの居宅などで歯科技工を行えるようにする方向性が示されました。

さらに、歯科医師の指示のもとで、歯科補綴物等の着脱、口腔外での調整、口腔内の計測、補綴物等を含めた口腔の可動域や弾性の確認など、一部の行為を歯科技工士が担うことについても、必要な法律上の見直しを含めて検討する方向が示されています。

ただし、最初に最も大事なことを書いておきます。

2026年10月現在、歯科技工士が患者さんの口の中で新しい診療行為を自由に行えるようになったわけではありません。患者宅での義歯修理が10月1日から一斉に解禁されたわけでもありません。

今回公表されたのは、制度改正に向けた「中間報告」です。

「これから何を変えていくのか」という方向性が、かなり具体的になった段階です。

では、何が変わろうとしているのでしょうか。

今回は少し詳しく見てみます。

2026年10月1日に「中間報告(第二次)」を公表

まず、ニュースの日付を整理しておきます。

厚生労働省は2026年10月1日、「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(第二次)」を公表しました。

翌10月2日には、第9回「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」が開催されています。

第9回検討会では歯科技工所の構造設備基準などが主な議題となっており、中間報告(第二次)は参考資料1として掲載されています。

つまり、「10月2日の会議で突然、歯科技工士が患者宅で義歯修理できることが決まった」というニュースではありません。

さらにさかのぼると、2026年7月1日の第8回検討会ですでに中間報告(第二次)の案が提示されていました。

もっとさかのぼれば、歯科技工士のチェアサイド業務や訪問歯科への関与そのものは、2020年の「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」報告書などでも議論されています。

今回突然出てきた政策ではなく、何年も続いてきた議論が、具体的な制度改正の段階へ一歩進んだと理解するのがよいと思います。

今回動こうとしているのは「二つの境界」

今回のニュースを理解するうえで、最初に二つの話を分けておく必要があります。

一つは、「歯科技工士が、どこで歯科技工を行えるのか」という「場所」の問題です。

もう一つは、「歯科技工士が、患者さんに対して何を行えるのか」という「業務範囲」の問題です。

この二つは似ているようで別問題です。

そして今回の中間報告では、制度改正へ向けた表現の強さにも違いがあります。

論点中間報告での現在地
患者宅などでの歯科技工歯科医師に帯同し、患者居宅等で歯科技工を行えるようにする方向
補綴物の着脱など一部の口腔内関連行為具体例を示し、法律上の見直しを含めて今後検討
侵襲性の高い行為患者へのリスクから歯科技工士が実施すべきではないと整理

ここを一緒にしてしまうと、「歯科技工士が患者宅へ行けるようになるなら、患者さんの口の中で何でもできるようになる」という誤解につながります。

今回の議論は、そういう話ではありません。

なぜ今は、患者宅で歯科技工を行いにくいのか

歯科技工士は国家資格を持つ専門職です。

義歯、クラウン、ブリッジ、各種補綴装置などを製作・修理・加工します。

ブランデンタルクリニックでも以前、「歯科技工士はどんな仕事?患者さんの『笑顔』と『噛む力』を支えるプロ」という記事で、基本的な仕事内容を紹介しています。

今回の焦点は、その歯科技工を「どこで行うか」です。

ここは法律を少し丁寧に見た方がよいところです。

「歯科技工士法に『患者宅で歯科技工をしてはいけない』と一文で直接書かれている」という単純な構造ではありません。

歯科技工士法では「歯科技工所」が定義され、また第18条では、歯科医師の指示書によらず歯科技工を行える例外として、病院または診療所内で、患者さんの治療を担当する歯科医師から直接指示を受けて行う場合などが定められています。

こうした現在の法体系を踏まえ、今回の中間報告は、現行法において、歯科技工士が患者居宅等で歯科技工を行うことは困難と考えられると整理しています。

つまり、「患者宅での歯科技工を直接禁止する一文がある」というよりも、現在の歯科技工士法の仕組みが、患者宅を歯科技工の場所として十分想定した制度になっていないということです。

この違いは、法律を扱う記事では大切だと思います。

歯科医師は患者宅で診療できるのに、歯科技工士は?

ここには少し不思議な構図があります。

歯科医師は患者さんのご自宅へ行って診療できます。

歯科衛生士も訪問歯科のなかでさまざまな役割を担っています。

歯科技工士が歯科医師と一緒に訪問することもあります。

ところが、その患者さんの義歯を見て、「これはここを修理すれば使える」と歯科技工士が判断できる状態であっても、患者さんの居宅という場所で、その歯科技工を業として行うことには制度上の壁がある。

これは技術の問題ではありません。

制度の問題です。

1955年にできた法律と、2026年の在宅歯科医療

歯科技工士法が制定されたのは1955年です。

もちろん、その後何度も改正されています。

しかし、現在の歯科医療は当時とはかなり違います。

日本は超高齢社会となり、患者さん自身が歯科医院へ来るだけではなく、歯科医療の側が患者さんの自宅や施設へ出向く訪問歯科診療が重要になっています。

今回の中間報告も、2040年に向けて在宅歯科医療の必要性が増していくなかで、訪問歯科では補綴治療が多く行われ、歯科技工の重要性が高まるとしています。

つまり、患者さんは自宅にいる。歯科医師も自宅へ行く。しかし、歯科技工士が歯科技工を行う場所については、従来の制度とのズレが残っている。

今回の見直しは、そのズレを修正しようとしているとも言えます。

一番分かりやすい例が「訪問先での義歯修理」

今回の議論で、患者さんにも最もイメージしやすいのが義歯修理でしょう。

訪問した患者さんの義歯が割れていることが分かったとします。

現在考えられる対応の一つは、歯科医師がその場で修理する方法です。

もう一つは、義歯を患者さんから預かり、診療所内や歯科技工所で修理し、後日患者さんのもとへ戻す方法です。

厚労省の検討資料でも、この二つの流れが具体的に整理されています。

前者では、歯科医師の訪問先での滞在時間が長くなる場合があります。

後者では、修理した義歯が戻ってくるまで、患者さんが義歯なしで生活する時間が生じます。

「入れ歯を預けるだけ」でも、患者さんには大きい

歯科医療者側から見ると、「修理する間だけ義歯を預かる」という話に見えるかもしれません。

しかし患者さんにとって義歯は、単なる「歯科装置」ではありません。

食事をする。

言葉を発する。

人と会話をする。

人前に出る。

口唇や顔貌を支える。

毎日の生活のかなり多くの部分に関係します。

特に全部床義歯を普段から使用している患者さんでは、数時間でも、一日でも、数日でも、「義歯がない」ということが生活上の負担になる可能性があります。

だからこそ、その場で安全に対応可能な修理であれば、訪問した歯科技工士が修理できるようにするという制度には患者側の意味があります。

厚労省は「患者宅で歯科技工を行えるようにする」方向を示した

今回の中間報告で、場所の問題については比較的はっきりした方向が示されています。

訪問歯科診療で、歯科技工士が歯科医師に帯同し、患者さんの居宅などで歯科技工を行うことを可能とするという方向です。

ここは今回のニュースの重要な部分です。

ただし、「中間報告に書かれた」ことと、「法令がすでに変わった」ことは別です。

中間報告は今後、関係法令等の整備を行う必要があるとしています。

したがって2026年10月時点では、患者宅で歯科技工を行える制度へ変える方向が明確になったと表現するのが適切です。

ただし、患者宅は「小さな技工所」ではない

ここで現実の訪問歯科へ戻ります。

法律で可能になったからといって、患者さんの自宅で何でも安全にできるわけではありません。

歯科医院や歯科技工所には、その仕事を行うための設備があります。

一方、患者さんの自宅は医療施設ではありません。

義歯を切削すれば粉塵が出ます。

十分な照明が必要です。

作業台も必要です。

使用器具の管理も必要です。

感染対策も必要です。

材料によっては、においや刺激への配慮も必要です。

患者さんが在宅酸素療法を受けていれば、火気への注意も必要になります。

訪問歯科に関する報告でも、外来とは診療環境が異なり、人的・環境的・時間的制約があること、PPEや粉塵対策、可搬型の器械などが重要であることが具体的に述べられています。

また、義歯製作は手技が多く、必要な器械・器材や診療回数も多いため、訪問診療では難しくなる場合があります。

したがって制度が変わったとしても、すべての義歯修理が患者宅で完結するわけではないでしょう。

現場で安全に対応できる修理と、設備の整った歯科技工所で行うべき修理を分ける必要があります。

もう一つの大きな論点——「患者さんの口の中を触る?」

今回の中間報告には、もう一つ大きなテーマがあります。

歯科技工士の業務範囲そのものの見直しです。

こちらは「患者宅で歯科技工をする」という場所の問題とは分けて考える必要があります。

歯科技工士は国家資格者ですが、「自分が作った義歯だから、自分で患者さんの口から外し、自分で入れて、自分で試適してよい」という制度ではありません。

患者さんの口腔内で行う行為については、現在の歯科技工士法に明確な境界があります。

現行法第20条には何が書かれているのか

この話を理解するうえで重要なのが、歯科技工士法第20条です。

現在の歯科技工士法では、歯科技工士が業務を行う際、印象採得、咬合採得、試適、装着など、歯科医師でなければ衛生上の危害を生じるおそれがある行為を行ってはならないと定めています。

つまり、歯科技工士が補綴物を作る国家資格を持っているからといって、患者さんの口腔内でその補綴物に関する行為をすべて自由に行えるわけではありません。

この条文が示している現在の境界を前提に、「そのなかに、教育と安全管理を整えれば歯科技工士へ任せられる行為はないか」と改めて検討しているのが今回の議論です。

厚労省が例示したのは、どんな行為か

今回の中間報告では、歯科医師の指示のもとで歯科技工士が行うことが考えられる行為として、例えば次のものが示されています。

  • 口腔内での歯科補綴物等の着脱
  • 口腔外での補綴物等の調整
  • 口腔内の計測
  • 補綴物等を含めた口腔の可動域の確認
  • 弾性の確認

ここで重要なのは、これらはすでに解禁された行為ではないという点です。

中間報告が示したのは、こうした行為を歯科技工士が歯科医師の指示のもとで行うことが考えられる、という例示です。

そのうえで、現在は歯科技工士が行えない行為のうち、歯科技工士が担うことでより質の高い補綴物の製作や歯科医療の提供につながると考えられる一部の行為について、歯科医師の指示下で業として行わせることが適当か、必要な法律上の見直しを含めて検討するとしています。

つまり、場所については「可能とする」という比較的強い方向が示されている一方、具体的な診療行為については、例示された行為を含め、今後さらに線引きを詰める段階です。

義歯を「外すだけ」でも法律上は小さな話ではない

例えば、義歯の適合状態を歯科技工士が確認するとします。

患者さんの口の中に入っている義歯を観察したい。

外した状態も見たい。

もう一度口腔内へ入れて確認したい。

臨床的には自然な流れです。

しかし現在の業務範囲では、歯科医師が義歯を外す、歯科技工士が見る、歯科医師が義歯を入れる、歯科技工士がまた確認する、という形になることがあります。

中間報告でも、義歯の咬合状態や適合状態などを確認する際、歯科技工士が確認するたびに歯科医師が着脱を行うのは、歯科医師・歯科技工士双方にとって非効率だという趣旨の意見が紹介されています。

一見、「入れ歯を外すだけ」に見える行為でも、患者さんの口腔に直接触れる以上、法律上は重要な境界になります。

今回、その境界を細かく見直そうとしているのです。

ただし「口の中を触れる=歯を削れる」ではない

ここはかなり重要です。

今回の報告を、「これから歯科技工士が歯まで削るようになる」と読むべきではありません。

中間報告は、侵襲性の高い行為については、患者へのリスクの観点から歯科技工士が実施すべきではないと明確に整理しています。

つまり今回検討されているのは、「現在は歯科医師の業務に含まれているものを全部歯科技工士へ移す」ことではありません。

例えば、補綴物を外す、口腔外で調整する、寸法や可動域などを確認する。

こうした比較的低侵襲で、歯科技工そのものとの関連が強い行為について、十分な教育を受け、安全に行えるなら、歯科医師の指示下で歯科技工士が担えるのではないかという議論です。

なぜ、歯科技工士が患者さんを直接見る必要があるのか

ここが今回の制度見直しのなかで、個人的にはかなり興味深いところです。

歯科技工士は通常、歯科医師から渡されたさまざまな情報をもとに補綴物を製作します。

模型。

口腔内写真。

歯の色。

咬合。

印象。

デジタルデータ。

歯科技工指示書。

こうした情報から患者さんの口腔内を想像し、補綴物を作ります。

しかし、患者さん本人を直接見ることでしか分かりにくい情報もあります。

模型には「唇」がない

義歯を考えてみます。

模型には顎堤があります。

デジタルデータなら口腔の形態を非常に細かく記録できます。

しかし、模型を机の上に置いても、患者さんが笑ったときに前歯がどう見えるかは完全には分かりません。

唇がどこまで歯を覆うのか。

前歯がどの程度見えるのか。

口唇がどれくらい支えられているのか。

人工歯の排列が顔貌と調和しているのか。

会話したときにどのように動くのか。

頬や舌との関係はどうか。

義歯が実際の口腔内でどのように動くのか。

こうした情報には、模型や写真だけでは伝わりにくい部分があります。

中間報告でも、義歯の排列状態や口唇との調和は、患者さんの口腔内で確認した方が効率的で、質の高い義歯製作につながるという趣旨の意見が紹介されています。

「指示書だけでは認識しにくい点」がある

中間報告には、歯科技工士自身が患者さんの口腔内を理解することによって、指示書だけでは認識しにくい点も理解できる、という趣旨の記載があります。

ここは今回の制度見直しの本質の一つだと思います。

単純に、「歯科医師が忙しいから、歯科技工士へ仕事を回す」というだけの話ではありません。

患者さんから歯科技工士までの情報伝達経路を短くする話でもあります。

現在は、患者さん→歯科医師が確認→模型・写真・データ・指示書へ変換→歯科技工士が情報を読み取る、という流れが中心です。

これが場面によっては、患者さん→歯科医師と歯科技工士が一緒に直接確認する、という形になる。

もちろん診断や治療計画を歯科技工士が決めるわけではありません。

しかし、補綴物を実際に作る人が、患者さん本人を直接確認できるというのは、補綴治療全体で考えるとかなり大きな変化です。

実は歯科技工士が患者さんを見ること自体は珍しくない

ここで一つ誤解を避けておきたいことがあります。

今回の制度改正によって、初めて歯科技工士が患者さんの前に出てくるわけではありません。

2020年度の厚生労働科学研究では、歯科技工士を対象に、診療への立ち会いや訪問診療への帯同について調査しています。

日本歯科技工士会会員から無作為抽出した6,000人と、日本歯科技工所協会会員78人、計6,078人を対象とした郵送調査で、有効回答は1,899人、有効回答率は31.2%でした。

この調査では、診療に立ち会った経験がある:81.8%でした。

また現在の立ち会いについて、「ある」25.9%、「ときどきある」31.3%で、合計すると57.2%です。

つまり、回答者のなかでは、現在も半数を超える人が何らかの形で診療に立ち会うことがあると回答していました。

一番多いのはシェードテイキング

診療へ立ち会う内容で多かったのは、歯冠修復時のシェードテイキング78.8%です。

ほかにも、補綴装置の装着時52.3%、有床義歯製作時の口腔内観察49.2%、ろう義歯試適時43.8%などが挙げられていました。

つまり、「これまで歯科技工士は患者さんを一度も見ず、技工所の中だけで仕事をしてきた」という説明も正確ではありません。

患者さんの歯の色を直接見たり、義歯製作に立ち会ったり、補綴物が口腔内へ入る場面を確認したりする歯科技工士は以前からいます。

今回変わろうとしているのは、患者さんを見るかどうかではなく、歯科技工士自身が患者さんに対してどこまで行為を担えるかという境界です。

訪問歯科への帯同経験は17.3%

同じ調査では、「訪問歯科診療に帯同した経験がある」と回答した歯科技工士は17.3%でした。

診療室への立ち会い経験81.8%と比べれば、訪問への帯同経験はかなり少なくなります。

そして、訪問帯同経験のある歯科技工士が行っていた内容のなかで、「有床義歯製作・修理時に立ち会う」83.6%が最多でした。

ここは数字の読み方に注意が必要です。

「全国の歯科技工士の83.6%が訪問義歯修理へ行っている」わけではありません。

訪問歯科への帯同経験がある回答者のなかで、83.6%が有床義歯製作・修理時への立ち会いを挙げたという数字です。

それでも、今回の中間報告で「訪問歯科」「歯科技工士」「義歯修理」が一緒に議論されている背景がよく分かります。

全く新しい役割を突然作るというより、すでに一部で行われてきた連携について、制度とのズレを整理しようとしているのです。

歯科医師側もチェアサイド連携に肯定的だった

同じ2020年度研究では、歯科医師側にも調査が行われています。

対象は、日本歯科医師会会員1,036人、日本補綴歯科学会専門医1,164人、日本老年歯科医学会の専門医・会員1,000人、計3,200人。

有効回答は1,427人、有効回答率44.6%でした。

「歯科技工士がチェアサイドで診療の一部に携わること」について、「賛成」「どちらかというと賛成」を合わせた回答は、92.2%でした。

また、歯科技工士が訪問診療先へ帯同して診療の一部に携わることへの肯定的回答は、78.4%でした。

ただし、「歯科医師の92.2%が今回の法改正案に賛成している」という意味ではありません。

質問されたのは、歯科技工士のチェアサイド参画に対する考えです。

それでも、歯科医師側にも、歯科技工士とのより直接的な連携を求める意見がかなり存在していたことは分かります。

では、なぜ今まで業務範囲を広げなかったのか

「そこまで肯定的なら、もっと早く変えればよかったのでは?」と思うかもしれません。

しかし、患者さんの口腔内で何かを行うということは、単なる作業分担の話ではありません。

医療安全。

感染対策。

患者さんへの説明。

全身状態への配慮。

患者さんとのコミュニケーション。

急変したときの対応。

誰が判断するのか。

誰が中止を決めるのか。

歯科医師の指示をどのように受けるのか。

さまざまな問題があります。

歯科技工士が補綴物を非常に精密に作れることと、患者さんへ直接対応する能力を持つことは、完全に同じではありません。

「作る技術」と「患者さんに対応する技術」は別

歯科技工士教育に関する報告でも、従来、歯科技工士は技工室内での業務が主体となり、患者さんや他職種と直接接する場面は限られてきたこと、専門的な歯科技工技術に比べ、チェアサイドで必要になる医療専門用語やデータを扱う能力などを学ぶ機会が少ないことが指摘されています。

そして、チーム医療のなかで活動する人材を育てるには、コミュニケーション能力やデータ分析力を高める教育が必要だとされています。

例えば、技工所で義歯を非常に上手に修理できる人でも、認知症がある患者さんへどう説明するか。

患者さんが途中で拒否したらどうするか。

出血したらどうするか。

体調が悪化したらどうするか。

在宅酸素を使用している患者さんでは何に注意するか。

どこから歯科医師へ判断を戻すか。

こうした能力は、また別に必要です。

厚労省も「既資格者には一定の研修が必要」としている

そのため今回の中間報告では、歯科技工士が歯科診療行為の一部を担う場合、患者さんとのコミュニケーションや、院内感染対策をはじめとした医療安全などについて十分な知識が必要とされています。

そして、これから歯科技工士になる人に対する卒前教育の充実だけでなく、すでに歯科技工士資格を持っている人についても、一定の研修が必要と明記されています。

ここはかなり重要です。

単に法律だけ変えて、「今日からこの業務もしてください」という制度ではない。

業務を広げるなら、教育も変える必要がある、という考えです。

ただし、研修が何時間になるのか、どこが実施するのか、修了試験があるのか、研修を終えた人だけが新たな行為をできるのか。

こうした具体的な制度は、2026年10月時点ではまだ確定していません。

歯科技工士は実際に減っている

今回の制度見直しの背景には、歯科技工士という職種そのものの将来もあります。

厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例」によると、2024年末の就業歯科技工士数は、31,733人です。

2022年は32,942人でした。

つまり2年間で1,209人、3.7%減少しています。

以前の時点と比べても、就業歯科技工士は長期的に減少しています。

年齢構成も高齢側へ移っており、中間報告は50歳以上が半数を超えるとしています。

歯科技工士養成施設への入学者も減少しており、中間報告によれば2010年度から2024年度までの15年間で約半減しています。

人を増やすことだけではなく、限られた歯科技工士の専門性を、どの場面で使うのかという問題も出てきます。

「31,750人」と「31,733人」——一次資料でも数字が違う

今回資料を確認していて、少し興味深い数字の違いがありました。

2026年10月1日に公表された中間報告(第二次)の本文では、2024年の業務従事者数が31,750人と記載されています。

一方、厚生労働省が公表している「令和6年衛生行政報告例」の統計表では、2024年末の就業歯科技工士数は31,733人です。

また、中間報告の供給推計の基礎となった検討会資料でも、2024年の値として31,733人が用いられています。

今回の記事では、公表統計である令和6年衛生行政報告例の31,733人を採用します。

差は17人です。

記事の結論が変わるほどの違いではありません。

しかし、一次資料でも数字が完全には一致しないことがあります。

だからこそ、「厚労省資料に書いてあるから正しい」で終わらず、可能なら元の統計まで戻って確認することが大切だと思います。

2034年には約2万7千人——ただし「予言」ではない

歯科技工士の将来供給についても推計されています。

厚労省の供給推計では、2034年の就業歯科技工士数について、基準となる中位推計で27,375人とされています。

大まかに言えば、2034年に約2万7千人です。

しかしこれは、「2034年になれば必ず2万7千人になる」という予言ではありません。

2024年の就業者数をベースに、継続就業者率、新規参入者、就業者率など一定の条件を置いて計算した推計です。

例えば20代の就業率が65%または70%へ改善するシナリオでは、約2万8千人まで供給が増える推計も示されています。

将来推計を見るときには、数字そのものだけでなく、どの前提を置いたシナリオなのかを見る必要があります。

供給は2034年、需要の比較図は2035年——同一年ではない

さらに注意したい点があります。

中間報告本文の小括では「2034年までの就業歯科技工士の供給推計と需要推計」とまとめられています。

一方、中間報告末尾の参考資料3に掲載された比較図では、供給推計は2034年、需要推計は2035年として示されています。

本稿では、図に明示された年を区別して記載します。

参考資料3では、供給推計の中位が2034年27,375人。

これに対し、2035年の需要推計は、歯科技工作業の効率化をどの程度見込むかによって、

  • 5%効率化:27,688人
  • 10%効率化:26,231人
  • 20%効率化:23,316人

とされています。

したがって、2034年の供給値と2035年の需要値は、厳密には同一年の直接比較ではありません。

また、「2034年には技工士が2万7千人しかいないから、必ず大幅な人手不足になる」と単純に結論づけることもできません。

将来の需要は、デジタル化、作業効率、就業率、補綴需要、歯科医療提供体制などによって変わります。

今回の業務拡大は「人手不足だから何でもやらせる」話ではない

ここはかなり大切です。

歯科技工士が減る。

だから、歯科医師の仕事まで歯科技工士へ回す。

という単純な話ではありません。

中間報告では、若年層の確保、離職防止、就労環境、待遇改善、デジタル技術、リスキリング、生産性向上、歯科技工所同士の連携、歯科技工所の規模など、さまざまな要素が一緒に議論されています。

今回の業務範囲見直しは、そのなかの一つです。

むしろ、限られた専門職を、それぞれが最も専門性を発揮できる仕事へ配置し直すという側面が大きいと思います。

歯科技工所の約7割が「一人技工所」

制度を現場へ導入するときには、さらに現実的な問題があります。

中間報告では、歯科技工所の約7割が、従事する歯科技工士が1人の歯科技工所とされています。

これを考えると、「患者宅へ行けるようになったから、技工士もどんどん訪問すればいい」とは簡単に言えません。

一人で歯科技工所を運営している技工士が、患者さんの自宅へ片道30分かけて行く。

30分診療に立ち会う。

30分かけて帰る。

それだけで1時間半です。

その間、歯科技工所の通常業務は止まります。

移動費も必要です。

大きな歯科技工所なら訪問担当者を作れるかもしれません。

一人技工所では難しいかもしれません。

都市部と地方でも事情は違うでしょう。

制度上「できる」ことと、実際に全国へ「普及する」ことは別です。

診療報酬や費用の評価も必要になる

歯科技工士が訪問先へ行けば、当然、時間と費用がかかります。

技工所を離れている時間は、通常の製作業務ができません。

交通費もかかります。

研修にも時間が必要です。

患者対応が増えれば責任も増えます。

それなのに、経済的な評価が何もなければ、制度として広がりにくい可能性があります。

過去の厚労省資料でも、歯科技工士がチェアサイドで診療の一部に携わる際の課題として、現在の業務範囲、必要な教育、診療報酬上の評価などが挙げられていました。

法律を変えるだけでは、現場の仕組みは完成しません。

CAD/CAMで歯科技工士はいらなくなる?

もう一つ、歯科技工士という職業を考えるときに避けられないのがデジタル化です。

歯科技工の世界はすでに大きく変化しています。

以前は、ワックスアップ、埋没、鋳造、研磨といった手作業中心の工程が大きな割合を占めていました。

現在は、CADによる設計、CAMによる切削、ジルコニア、口腔内スキャナ、模型を作らない技工、3Dプリンタなどが広がっています。

歯科技工に関する総説でも、手作業中心だった工程からCAD/CAMへ移行し、口腔内スキャナや3Dプリンタが歯科技工の流れそのものを変えていることが論じられています。

では、「機械が作るなら歯科技工士はいらなくなるのか」というと、これもそれほど単純ではありません。

機械は患者宅へ行ける時代になった

訪問歯科でも技術は進んでいます。

可搬型の口腔内スキャナ。

携帯型の診療機器。

3Dプリンタによる義歯製作。

訪問先で使いやすい材料。

こうした技術が少しずつ増えています。

訪問歯科に関する報告でも、可搬性の高い口腔内スキャナや3Dプリンタなど、デジタル機器の応用によって、従来より効率的に義歯製作を行える可能性が論じられています。

考えてみれば少し象徴的です。

口腔内スキャナは患者宅へ持って行ける。

データは遠隔で送れる。

歯科医師も患者宅へ行く。

3Dプリンタで義歯を作る時代にもなった。

それでも、歯科技工士がどこで歯科技工をするのかという制度は、従来の枠組みを残している。

今回の見直しには、技術や医療提供体制の変化へ制度を合わせていく意味もあるのでしょう。

しかし、機械が進歩しても患者さんを自動では診られない

デジタル化は重要です。

しかし、デジタル化すれば全部解決するわけではありません。

訪問歯科に関する報告でも、便利な機器や高性能な材料があっても、患者さんの内科的な急変や誤嚥を自動的に防げるわけではなく、自動的に適切な義歯形態が得られるわけでもない、という趣旨が述べられています。

最後に患者さんを見るのは人です。

だからこそ、デジタル化、業務範囲の見直し、教育、医療安全、多職種連携。

これらは別々の話ではありません。

歯科技工士が「患者さんから見える職業」になるかもしれない

患者さんは、自分を治療した歯科医師を知っています。

担当している歯科衛生士を知っている方も多いでしょう。

しかし、「自分の被せ物を作った歯科技工士は誰ですか?」と聞かれて答えられる患者さんは、それほど多くないと思います。

外部の歯科技工所で作られた補綴物なら、患者さんと歯科技工士が一度も顔を合わせないことも珍しくありません。

しかし今後制度が変われば、シェードを確認する、義歯試適へ立ち会う、患者さんの顔貌を見る、義歯の動きを見る、訪問診療へ同行する、義歯修理に関わる。

そうした場面で、患者さんの前へ歯科技工士が出る機会が増える可能性があります。

「技工所で歯を作っている人」から、「患者さんを直接見ながら、歯科医師と一緒に補綴治療を支える専門職」へ。

患者さんから見える歯科技工士の姿そのものが変わる可能性があります。

ただし、業務を増やすだけでは職業の魅力は上がらない

一方で、歯科技工士が減っているからといって、患者対応も追加、訪問も追加、研修も追加、責任も追加。

それだけで待遇が変わらないのなら、歯科技工士という職業の魅力が高まるとは限りません。

むしろ、負担だけが増える可能性もあります。

今回の中間報告でも、待遇改善や就労環境の整備、若年層の確保、離職防止、生産性向上などが一緒に議論されています。

業務範囲拡大だけを切り取るのではなく、歯科技工士という職業全体をどう持続可能にするのかという問題として考える必要があります。

患者さんにとって、何が変わる可能性があるのか

制度が適切に整えば、患者さん側にもいくつかのメリットが考えられます。

訪問先で対応可能な義歯修理なら、義歯を長時間預からなくて済む可能性がある。

歯科技工士が患者さん本人を見ることで、歯科医師から歯科技工士へ情報を伝える過程を短縮できる可能性がある。

技工士が補綴物製作に必要な情報を直接得られる可能性がある。

そして、歯科技工士に任せられる仕事を適切に分担できれば、歯科医師は診断や治療など、歯科医師でなければできない仕事へ時間を使いやすくなるかもしれません。

ただし、「歯科技工士が直接見れば必ず良い義歯になる」「患者宅なら必ず即日修理できる」「治療時間が必ず短くなる」とは言えません。

実際に制度が導入されたあと、臨床結果や患者満足度、安全性、費用対効果などを検証していく必要があります。

新しい制度には、新しい患者説明も必要になる

制度が変われば、患者さんからこんな質問が出てくるでしょう。

「この人は歯医者さんではないんですか?」

「なぜこの人が私の入れ歯を外すんですか?」

「歯科技工士というのは、どんな資格ですか?」

「どこまでこの人がやって、どこから歯科医師がやるんですか?」

どれも当然の疑問です。

歯科技工士は国家資格職ですが、一般の患者さんにとっては、歯科医師や歯科衛生士ほど仕事内容が知られていないかもしれません。

患者さんへ直接関わる場面が増えるなら、誰が、どんな資格で、何をするのか。誰の指示で行うのか。どこまでが歯科技工士の仕事なのか。

患者さんにも分かるように説明する必要があります。

中間報告でも、医療関係者だけでなく、国民に対して歯科技工士の業務内容を適切に周知し、理解を得る必要性が指摘されています。

「誰の仕事か」から「どの行為なら安全に任せられるか」へ

今回の議論を見ていると、医療職の業務分担の考え方そのものも変わってきているように感じます。

これまでは、「これは歯科医師の仕事」「これは歯科技工士の仕事」と、職種単位で線を引く考え方が強くありました。

しかし、患者さんへの侵襲が低いのか。

十分な教育で安全性を担保できるのか。

歯科技工士の専門性と強く関係する行為なのか。

歯科医師の指示のもとで行えるのか。

そうした条件を一つずつ検討して、行為単位で境界を引き直す方向へ進む可能性があります。

もちろん、患者安全が最優先です。

効率を上げるために患者さんへのリスクを上げてしまえば、本末転倒です。

では、いつから変わるのか

患者さんにとって最も気になるところかもしれません。

2026年10月現在、「○月○日から全国の歯科技工士が患者宅で義歯修理を行える」という施行日は決まっていません。

また、補綴物の着脱や口腔内計測などについて、「この日から全歯科技工士が行ってよい」という具体的な業務範囲も確定していません。

今回の中間報告は、場所については、患者宅などで歯科技工を行えるようにする方向を示しました。

一方、具体的な歯科診療行為については、歯科医師の指示のもとで歯科技工士に行わせることが適当なものについて、必要な法律上の見直しを含めて検討するという段階です。

そして、既資格者研修、卒前教育、医療安全、感染対策、患者説明、法令整備、報酬体系、実際の運用方法など、まだ決めなければならないことが多くあります。

制度が変われば、訪問歯科はこんな姿になるかもしれない

あくまで将来の一例として考えてみます。

患者さんの自宅へ、歯科医師と歯科技工士が一緒に訪問する。

患者さんの義歯が割れている。

まず歯科医師が、患者さんの口腔内や全身状態を確認し、診断する。

修理で対応可能なのか、新製が必要なのか、その場での処置が安全なのか、判断する。

歯科技工士が義歯の状態を直接確認する。

制度上認められた範囲で、必要な計測や確認を行う。

患者宅で安全に修理可能なら、歯科技工士がその場で歯科技工を行う。

修理後は、歯科医師が患者さんの口腔内で最終確認する。

一方、複雑な破折や設備を必要とする修理なら、歯科技工所へ持ち帰る。

そうした役割分担になれば、歯科医師は歯科医師にしかできない仕事をする。

歯科技工士は歯科技工士にしかできない仕事をする。

という専門性の使い分けが、より明確になるかもしれません。

歯科技工士が「歯科医師になる」話ではない

今回のニュースを短い見出しだけで見ると、「歯科技工士の業務をどんどん歯科診療へ広げるのか」と思うかもしれません。

しかし今回の中間報告は、そう単純な内容ではありません。

歯科医師の指示のもと。

歯科技工に必要な範囲で。

患者さんへのリスクを考える。

侵襲性の高い行為は除く。

必要な教育を行う。

既資格者にも研修を行う。

医療安全を確保する。

そうした前提があります。

歯科医師を歯科技工士へ置き換えるのではありません。

むしろ、現在の医療提供体制に対して少し不自然になっている職種間の境界を、患者安全を保ちながら引き直すという話に近いと思います。

「物を作る人」から「補綴治療を一緒につくる人」へ

歯科技工士の仕事は、すでに大きく変わり続けています。

アナログ技工。

CAD/CAM。

ジルコニア。

口腔内スキャナ。

模型レス。

3Dプリンタ。

そして今度は、患者さんとの距離まで変わる可能性があります。

これまで、患者さんから離れた歯科技工所で、歯科医師から送られた情報をもとに補綴物を作ることが中心だった歯科技工士が、必要な場面では患者さん本人を直接見る。

歯科医師と一緒に義歯を見る。

口唇との調和を見る。

患者さんの口腔で補綴物がどう動くのかを見る。

訪問診療にも同行する。

そうなれば、歯科技工士は単に「物を作る人」ではなく、「補綴治療を歯科医師と一緒につくる人」として、患者さんからも見えやすくなるかもしれません。

まとめ——「口の中を触る時代」は近づいた。でも、まだ始まってはいない

2026年10月1日、厚生労働省は「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(第二次)」を公表しました。

そこで示された大きな方向性の一つが、訪問歯科診療に歯科技工士が歯科医師と帯同し、患者さんの居宅などで歯科技工を行えるようにすることです。

そしてもう一つが、補綴物の着脱、口腔外での調整、口腔内計測、可動域や弾性の確認などについて、歯科医師の指示下で歯科技工士が担えるか、法律上の見直しを含めて検討することです。

一方、侵襲性の高い行為は患者さんへのリスクから歯科技工士が行うべきではないとされています。

2026年10月現在、患者宅での歯科技工も、新しい口腔内行為も、今日から全国一律に始まったわけではありません。

法令整備。

教育。

既資格者研修。

感染対策。

医療安全。

患者説明。

報酬。

訪問にかかる時間。

歯科技工所の人員。

まだ解決すべき課題は多くあります。

それでも、これまで患者さんから少し離れた場所で補綴物を製作してきた歯科技工士が、必要な範囲で患者さんを直接見て、歯科医師と一緒に治療を支える。

その方向へ制度が具体的に動き始めたことは、今回の中間報告から読み取れます。

歯科技工士が歯科医師になるのではありません。

大切なのは、「誰の仕事を奪うのか」ではなく、患者さんに安全でより良い歯科医療を届けるために、それぞれの専門職が、どこで、何を担うのが最も合理的なのか。

今回の中間報告は、70年以上続いてきた歯科技工という仕事の境界線を、在宅医療、デジタル技術、多職種連携の時代に合わせて、もう一度引き直そうとする議論でもあるのだと思います。

その境界線が実際に動いたとき、患者さんから見える「歯科技工士」という職業の姿も、今とは少し違ったものになっているかもしれません。

参考文献

  1. 厚生労働省.歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(第二次).2026年10月1日.
  2. 厚生労働省.第9回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会.2026年10月2日.
  3. 厚生労働省.第8回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 資料1「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(第二次)(案)」.2026年7月1日.
  4. 歯科技工士法(昭和30年法律第168号).第18条,第20条ほか.
  5. 厚生労働省.令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況「就業歯科衛生士・歯科技工士及び歯科技工所」.2024年末現在.
  6. 厚生労働省.第7回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会資料.就業歯科技工士の供給推計・需要推計.2026年3月2日.
  7. 厚生労働省.第5回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 資料1.診療室のチェアサイドにおける立ち会い、訪問歯科診療への帯同等に関する2020年度調査結果.2025年8月6日.
  8. 厚生労働省.歯科技工士の養成・確保に関する検討会 報告書.2020年3月31日.
  9. 古屋純一,鈴木鵬生,田畑友寛,平山茉奈.歯科訪問診療で用いる器械・器材.日本歯科理工学会誌.2025;44(3):97-100.doi:10.18939/jsdmd.44.3_97
  10. 小林平,木村健二.歯科医療の過去・現在・未来―歯科医師と歯科技工士の立場から―.日本デジタル歯科学会誌.2025;15(2):111-117.doi:10.57516/jdd.15.2_111
  11. 天池千嘉子,計良倫子.M短期大学専攻科教育向上のための取り組みと今後の展望―歯科技工士専攻科教育の検討―.日本歯科衛生学会雑誌.2024;19(1):105.

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