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口腔内スキャナーで歯型が3Dになるのはなぜ?カメラで読み取る光学印象のしくみ

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2026年8月11日

口腔内スキャナーで歯型が3Dになるのはなぜ?カメラで読み取る光学印象のしくみ

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに

歯の詰め物や被せ物を作る治療を見学していると、「そろそろ型取りかな」と思う場面があります。

昔からよく使われている型取りでは、トレーという器具に印象材を盛り、口の中に入れて歯の形を写し取ります。

ところが最近は、先生が手にしているのが型取り材ではなく、先端に小さなカメラのような部分が付いた細長い機械、ということがあります。

先生がその機械を奥歯から前歯へ動かしていくと、モニターの中には歯が少しずつ現れ、最後には口の中の歯並びが立体的な模型のように完成していきます。

見学していて不思議だったのは、ここでした。

普通の写真を撮っているように見えるのに、どうしてカメラだけで「歯型」ができるのでしょうか。

口腔内スキャナーとは?「写真を撮るカメラ」とは少し違います

この機械は口腔内スキャナー(Intraoral Scanner:IOS)と呼ばれます。口の中の形を光学的に読み取り、コンピューター上に三次元のデータを作る装置です。

患者さんへの説明では「カメラで口の中を読み取ります」と表現することがありますが、一般的な写真用カメラとまったく同じものではありません。

普通の写真では、主に色や明るさを平面的な画像として記録します。一方、口腔内スキャナーでは、歯や歯ぐきの表面がどこにあり、どのような凹凸をしているのかという三次元的な形状情報を取得していきます。

つまり、単に「歯の写真を撮って、あとから無理やり立体にしている」というより、最初から3Dの歯型を作るために必要な光学情報を集めていると考えるほうが近いのです。

光を使うと、どうして歯の凹凸まで分かるのでしょう

口腔内スキャナーにはさまざまな機種があり、三角測量、共焦点方式、ステレオ撮影など、立体情報を取得する原理も機種によって異なります。

細かな方式は違っても、大切なのは光学的な情報から表面の位置や奥行きを計算しているという点です。

歯の咬む面には細かな溝があります。外側には丸みがあり、歯と歯の間にはくぼみがあります。スキャナーはこうした表面の違いを大量に読み取り、「ここは少し高い」「ここは溝になっている」「この面は少し奥にある」といった位置関係をデータへ変換していきます。

その情報が積み重なることで、モニターの中に平面写真ではなく立体的な歯が現れてきます。

なぜ一回だけ撮らず、歯の上をずっとスキャンするの?

治療を見ていると、先生は一か所で「パシャッ」と撮って終わるわけではありません。

奥歯から隣の歯へ、さらに前歯へ。咬む面から外側、内側へとスキャナーを動かしていきます。

これは、口腔内スキャナーが歯列全体を一枚の画像で一度に読み取っているわけではないからです。

小さな範囲の情報を連続して取得し、前に読み取った部分と重なっているところを手掛かりにしながら、少しずつ大きな3Dデータへつなげています。

このように複数のデータをつなぎ合わせる処理は、スティッチングと呼ばれます。

イメージとしては、小さな地図を何枚もつないで大きな地図を作るようなものです。前の地図にも次の地図にも同じ交差点が写っていれば、「ここでつながる」と判断できます。

口腔内スキャナーでも、歯の輪郭や溝などの共通する特徴を利用しながら、位置関係を合わせていきます。

歯がある場所のほうがスキャンしやすいことがあるのはなぜ?

スティッチングの仕組みを知ると、口腔内スキャンにも得意な条件と難しい条件がある理由が見えてきます。

天然歯には、たくさんの特徴があります。

奥歯なら咬頭や溝、前歯なら切縁や輪郭があり、一本一本の形や向きも少しずつ違います。こうした特徴は、コンピューターが「今どこを読み取っているのか」を判断する目印になります。

一方、歯がない部分では、似た形をした滑らかな粘膜が広く続くことがあります。さらに粘膜は硬い歯と違って動くこともあります。

例えるなら、模様がはっきりしたジグソーパズルと、ほとんど同じ色でできたジグソーパズルの違いです。

目印が多いほど位置合わせを行いやすく、似た形が長く続くほど難しくなることがあります。

ただし、これは「歯がない人には口腔内スキャナーが使えない」という意味ではありません。無歯顎のスキャン技術も進歩していますが、治療内容や必要な情報によって従来法との使い分けが重要になります。

スキャン中、助手さんがずっと唾液を吸っているのはなぜ?

口腔内スキャンを見学していると、先生だけでなく、横にいる助手さんもかなり忙しく動いています。

バキュームで唾液を吸い、必要に応じて歯を乾燥させ、舌や頬、口唇がスキャナーの前へ入り込まないように補助します。

これも、口腔内スキャナーが光学的に表面を読み取る機械だからです。

歯の上を唾液や血液が覆っていると、反射の状態や境界の認識が変わり、本来記録したい歯面の形状を安定して取得しにくくなることがあります。

また、スキャン中に舌や頬が視野へ入り続けると、動いている組織までデータへ入ってしまいます。

つまり助手さんが行っている吸引や排除は、単に先生がカメラを動かしやすくするためだけではありません。

スキャナーが本当に読みたい歯の表面を、見やすい状態に保つことも精密なデジタル印象の一部なのです。

高性能なカメラなら、歯ぐきの中まで見える?

ここは、口腔内スキャナーを理解するときにとても大切なポイントです。

口腔内スキャナーは、歯ぐきや歯の向こう側を透視する機械ではありません。

被せ物を作るために歯を形成した場合には、歯と被せ物の境界になる部分を正確に記録する必要があります。

ところが、その境界が歯ぐきに完全に隠れていたり、出血で覆われていたりすると、光学的に読み取りにくくなります。

そのため、必要に応じて歯ぐきとの境界を見える状態に整え、出血や唾液をコントロールしてからスキャンします。

実際に、型取りの前に歯を整える理由でも、詰め物・被せ物が合うためには、スキャンそのものだけでなく、歯の形や境界、歯ぐき、唾液などを事前に整えることが大切だと解説しています。

被せ物の型取り前に歯ぐきへ細い糸を入れ、歯ぐきを一時的に避ける処置を行うことがあるのも、「記録したい境界をきちんと見える状態にする」という目的が関係しています。

高性能なスキャナーを使えば自動的に正確になるのではなく、正確に読み取れる口腔内環境を作ることまで含めて大切なのです。

上の歯と下の歯を別々に読むのに、どうして噛み合わせまで分かるの?

口腔内スキャンでは、上の歯列と下の歯列をそれぞれ読み取ります。

でも、それだけでは大切な情報が一つ足りません。

上の歯と下の歯が、実際にはどの位置関係で噛み合っているのかという情報です。

そこで上下の歯列を読み取ったあと、患者さんに「いつもの位置で噛んでください」とお願いし、噛んだ状態を頬側からスキャンします。

この情報を手掛かりに、別々に作られた上顎と下顎の3Dデータをコンピューター上で位置合わせします。

つまり、最後に横から少しだけスキャンするのは単なる追加写真ではありません。

「この位置で上下の歯が噛んでいます」とコンピューターへ教えるための大切な工程なのです。

モニターの歯が本物のような色に見えるのはなぜ?

最近の口腔内スキャナーでは、モニター上にかなりリアルな色で歯や歯ぐきが表示されることがあります。

そのため「カラー写真をそのまま3Dにしているのかな?」と思うかもしれません。

しかし、立体的な形状情報と色情報は同じものではありません。

口腔内スキャナーでは表面の三次元形状を取得し、機種やシステムによってはそこへ色情報も組み合わせて表示できます。

つまり、色が付いているから3Dなのではなく、3Dの形状データに色情報も利用できるようになっていると考えると分かりやすいでしょう。

スキャンしてできた3Dの歯型は、そのあと何に使うの?

スキャンが終わり、モニター上に歯列が完成すると、それで全部終わったように見えます。

しかし、実際にはここからが「デジタルの歯型」の仕事の始まりです。

口腔内スキャナーで取得した3Dデータは、画面で眺めるだけの画像ではありません。

詰め物や被せ物を作る場合には、そのデータを利用してCADで補綴物を設計し、その設計をもとにCAMによるミリングなどの製作工程へ進めることができます。

口の中をスキャンする → デジタルの歯型になる → コンピューター上で詰め物・被せ物を設計する → 材料から補綴物を製作する

という流れです。保険診療で使われるCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの特徴や、セラミックとの違いについては、別のコラムで詳しく解説しています。

また、システムによっては医院で取得した3Dデータを歯科技工所へデジタルで送ることもできます。従来のように石膏模型そのものを運ばず、口腔内の情報をデータとして歯科技工へつなげられることも、デジタルワークフローの特徴です。

メリットは「型取り材を口に入れなくてよい」だけではありません

口腔内スキャナーの説明では、「従来の型取りより楽」という部分が注目されることがあります。

確かに、印象材や大きなトレーを口の中に入れる必要がない方法は、型取りが苦手な方や嘔吐反射が強い方にとって負担を減らせる場合があります。嘔吐反射が強く、歯科治療や型取りが苦手な方が受診前に伝えておきたいことについても別のコラムで解説しています。

ただし、口腔内スキャンの意味は快適性だけではありません。

従来の方法では、口の中の形を印象材へ写し、その印象へ石膏を流して模型を作り、その模型を使って技工作業を進める方法が広く行われてきました。

口腔内スキャナーでは、口の中の表面形状から直接デジタルデータを作れるため、症例や製作方法によっては印象材から石膏模型へ形を移す中間工程を減らすことができます。

また、読み取った直後にモニター上でデータを確認できるのもデジタルならではの特徴です。

一方で、「口腔内スキャンなら必ず従来法より快適」「必ず精度が高い」と一律に決められるわけではありません。治療内容や口腔内の条件によって適した方法は変わります。光学印象のメリット・デメリットについては、こちらでより詳しくまとめています。

日本の保険診療でも口腔内スキャンは使われるようになっています

日本の保険診療では、2024年6月にCAD/CAMインレーを対象として口腔内スキャナーによる光学印象が導入されました。

さらに2026年度の診療報酬改定では、CAD/CAM冠の製作時にも光学印象の対象が広がっています。

ただし、口腔内スキャナーを使った治療がすべて保険診療になるわけではなく、対象となる補綴物や治療方法、施設基準などには条件があります。

「カメラで型取りをしたから自費診療」「スキャナーを使えば必ず保険」といった単純な区分ではないため、実際の治療内容については診察時に確認する必要があります。

口腔内スキャナーには、こんな使い方もあります

一度うまくいった仮歯の形を記録する

口腔内スキャナーは、削った歯の形を読み取るだけに使うとは限りません。

たとえば治療途中の仮歯を一定期間使ってもらい、見た目や噛み合わせ、形が良好だった場合、その状態をスキャンして最終的な被せ物の設計へ反映できることがあります。

つまり、「今うまくいっている形」をデジタルデータとして保存するという使い方もできます。

インプラントの位置情報を伝える

インプラントでは、必要に応じてスキャンボディと呼ばれる専用の部品を装着し、その形を読み取ることで、インプラントがどの位置・方向に入っているかをデジタル上へ伝える方法があります。

患者さんから見ると小さな部品ですが、コンピューターにとってはインプラントの位置を伝えるための重要な目印になります。

口腔内スキャナーなら、どんな型取りでもできる?

ここまで見ると、「それなら今後は全部スキャナーでよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、口腔内スキャナーも万能ではありません。

単冠や比較的短い範囲では良好な精度が報告されている一方、非常に長い範囲や全顎では、少しずつ取得したデータをつなげるスティッチングの影響を受けやすくなることがあります。

また、深く歯ぐきに隠れた境界、出血や唾液を十分にコントロールしにくい場所、広く動く粘膜、特徴の少ない無歯顎などでは、より慎重なスキャンや別の方法が必要になる場合があります。

従来のシリコーン印象などのほうが必要な情報を記録しやすい症例もあります。

大切なのは、「どちらが新しいか」ではなく、「その治療に必要な情報を、どの方法なら正確に記録できるか」で使い分けることです。

ブランデンタルクリニックでも、症例によって型取り方法を使い分けています

広島市中区立町のブランデンタルクリニックでは、詰め物や被せ物を作る際の印象採得に、主にiTeroによる口腔内スキャンを使用しています。

一方ですべての症例をスキャナーだけで行うわけではなく、治療する場所や歯ぐきの状態、必要な精度や記録する範囲などを考え、シリコーン印象やアルジネート印象など従来の方法を選ぶこともあります。

立町駅から徒歩1分の当院でも、デジタルかアナログかを先に決めるのではなく、その患者さんの治療に必要な情報をきちんと記録できる方法を選ぶことを大切にしています。

デジタルだから、人の技術がいらなくなるわけではありません

モニター上で歯列が自動的に完成していく様子を見ていると、「そのうち機械が全部やってくれるのかな」と思ってしまいます。

でも実際の治療を見ると、そうではありません。

スキャンする前には口腔内を整える必要があります。先生はスキャナーをどこから、どの方向へ動かすかを考えます。助手さんは唾液を吸い、歯を乾燥させ、舌や頬を避けます。

読み取り後には、必要な部分がきちんと記録されているかを確認します。

その先でも、歯科医師や歯科技工士が、被せ物の形、材料、隣の歯との接触、噛み合わせなどを考えながら設計・製作・調整していきます。

口腔内スキャナーは、人の技術を必要なくする機械ではありません。

人が扱う「歯型」を、物理的な模型だけでなくデジタルデータとしても扱えるようにしてくれる道具なのだと思います。

助手さんの見学メモ|「カメラがすごい」だけではありませんでした

最初に口腔内スキャナーを見たときは、「型取りがカメラでできるなんて便利だな」くらいに思っていました。

でも仕組みを知ってから治療を見てみると、少し違って見えます。

先生がスキャナーを歯に沿ってゆっくり動かしているのは、歯列全体の写真を一枚撮っているからではありません。

小さな範囲を少しずつ読み取り、それまでに取得した情報とつなぎながら、3Dの歯型を作っています。

その横で助手さんが唾液を吸ったり、歯を乾かしたり、頬や舌を避けたりしているのも、単にカメラを入れやすくするためだけではありません。

スキャナーが読みたい歯の表面を、きちんと見える状態にするためです。

そして、どんなに高性能なスキャナーでも、歯ぐきに隠れて見えない場所を透視できるわけではありません。

だから大切なのは、「新しい機械を使っているから正確」ということではなく、仕組みを理解し、正確に読み取れる環境を整え、取得したデータをきちんと確認すること。

型取りそのものがなくなったというより、「口の形を記録する方法が、印象材だけでなく、光とデジタルデータにも広がった」と考えると、口腔内スキャナーの役割が分かりやすい気がしました。

よくある質問

口腔内スキャナーから放射線は出ますか?

通常の口腔内スキャンは、レントゲンやCTのようにX線を使って歯や骨の内部を撮影する検査ではありません。光学的に口の中の表面形状を読み取り、3Dデータを作ります。

そのため、口腔内スキャンとX線写真・CTでは得られる情報も役割も異なります。歯科用CTと普通のレントゲンの違いについては、こちらで詳しく解説しています。

口腔内スキャナーで歯の根まで見えますか?

通常の光学印象で中心となるのは、口の中から見えている歯や歯ぐきなどの表面形状です。歯根や顎骨内部の状態を確認する必要がある場合は、デンタルX線写真やCTなど別の検査を使います。

口腔内スキャナーだけで虫歯も全部分かりますか?

3Dの歯が表示されるからといって、それだけで虫歯の有無や深さをすべて診断できるわけではありません。一部の機器には光学的な付加機能がありますが、通常の光学印象と虫歯診断は同じものではありません。

虫歯の診断では、口の中の診察や必要に応じたX線検査などを組み合わせて判断します。

口腔内スキャンなら絶対に型取り材を使わなくて済みますか?

治療内容や口腔内の状態によります。口腔内スキャンが適している症例もあれば、シリコーン印象など従来の方法のほうが必要な情報を記録しやすい症例もあります。

何度も同じ場所へスキャナーを戻すのは失敗したからですか?

必ずしも失敗ではありません。モニターで確認して情報が不足している場所を追加で読み取っていることがあります。一方、基準となるデータ自体に問題がある場合には、より広い範囲を読み直すこともあります。

最後に噛んで横からスキャンするのはなぜですか?

上顎と下顎を別々に読み取っただけでは、実際にどの位置で噛んでいるかが分からないためです。噛んだ状態を頬側から読み取ることで、上下の3Dデータの位置関係を合わせます。

口腔内スキャンは痛いですか?

口腔内スキャンそのものは、歯を削る処置ではありません。ただし、スキャナーの先端が口唇や頬に触れる感覚や、口を開けている負担を感じることはあります。治療部位の状態や嘔吐反射の強さによって感じ方には個人差があります。

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