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フィリップ・モリス制裁で問われた「煙が出ないタバコ」広告|IQOSから考える加熱式タバコの誤解

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2026年6月11日

フィリップ・モリス制裁で問われた「煙が出ないタバコ」広告|IQOSから考える加熱式タバコの誤解

(院長の徒然コラム)

はじめに

「煙が出ないタバコ」と聞くと、何となく身体にやさしいもののように感じるかもしれません。

紙巻きタバコよりにおいが少ない。灰が出ない。周囲に迷惑をかけにくい。歯にヤニがつきにくそう。家族に気づかれにくい。そうした印象から、紙巻きタバコからIQOSなどの加熱式タバコに切り替えた方も少なくないと思います。

しかし、歯科医師として最初にお伝えしたいのは、「煙が出ないこと」と「身体に害がないこと」は、まったく別の問題だということです。

2026年6月、イタリアでフィリップ・モリス・イタリアに対し、「smoke-free」などの広告表現をめぐって制裁金が科されたと報じられました。問題の本質は、単に海外の一企業の広告表現だけではありません。

「煙がない」「紙巻きではない」「有害物質が少ない」「スモークフリー」。こうした言葉が、患者さんや社会に「安全なのではないか」「禁煙しなくてもよいのではないか」「紙巻きタバコから切り替えれば十分なのではないか」という印象を与えることです。

加熱式タバコが口腔内に与える具体的な悪影響については、以前の記事で詳しく解説しました。

【IQOS(アイコス)などの加熱式タバコも口腔内に悪影響】

今回は、そこから一歩進めて、IQOSを中心とした加熱式タバコの広告表現、喫煙者の心理、歯科医療者の受け止め方、そして歯科医院での禁煙支援について考えてみたいと思います。

まず整理したいこと:加熱式タバコと電子タバコは同じではありません

今回の記事で主に扱うのは、IQOSなどの加熱式タバコです。

ここは最初に整理しておく必要があります。なぜなら、「新型タバコ」という言葉の中には、加熱式タバコと電子タバコが混ざって語られることが多いからです。

加熱式タバコは、タバコ葉を加熱して、ニコチンなどを含むエアロゾルを発生させる製品です。IQOS、glo、Ploomなどがこれに含まれます。IQOSは、フィリップ・モリス・インターナショナルの加熱式タバコブランドです。

一方、電子タバコは、タバコ葉ではなく、リキッドを加熱してエアロゾルを吸う製品です。日本ではニコチン入りリキッドの扱いなど、加熱式タバコとは法的な位置づけも異なります。

つまり、加熱式タバコと電子タバコは、どちらも「煙のように見えるものを吸う新しい製品」としてまとめられがちですが、仕組みも、使用する材料も、法的な分類も同じではありません。

今回の主題は、電子タバコ一般の話ではありません。フィリップ・モリスのIQOSを中心とした加熱式タバコの広告表現と、それを歯科医療の現場でどう考えるかです。

この整理をせずに話を進めると、「加熱式タバコの話をしているのか、電子タバコの話をしているのか」が曖昧になります。医療情報としては、ここを混同しないことがとても大切です。

「煙が出ない」は、歯ぐきに関係ないという意味ではありません

加熱式タバコは、紙巻きタバコのようにタバコ葉を燃焼させるのではなく、加熱によってエアロゾルを発生させる製品です。

そのため、紙巻きタバコと比べると、においが少ない、灰が出ない、煙が目立ちにくい、という印象を持たれます。

しかし、歯科医療で問題にしているのは「目に見える煙」だけではありません。

歯周病、インプラント、抜歯後の治癒、口腔粘膜の変化、口臭、歯ぐきの炎症を考えるとき、私たちはニコチン、血流、免疫、炎症反応、創傷治癒、生活習慣全体を見ています。

たとえば歯周病では、歯ぐきからの出血、歯周ポケット、歯槽骨の吸収、歯の動揺、治療後の再発リスクなどを総合して判断します。抜歯やインプラント治療では、傷口がどのように治るか、感染を起こしにくいか、周囲組織が安定するかも重要です。

そのときに、「煙が見えにくいから大丈夫」とは言えません。

見た目の煙が少ないことと、歯ぐきや粘膜、治療後の治癒に影響しないことは、同じではないからです。

「煙が出ないから安全」ではなく、「煙が見えにくくても、喫煙としてのリスクは残る」。

この認識が出発点になります。

「スモークフリー」という言葉の危うさ

フィリップ・モリスに対する制裁報道で問題になったのは、「smoke-free」や「smoke-free products」といった表現です。

英語の「smoke-free」は、直訳すれば「煙がない」「煙が出ない」といった意味に見えます。企業側からすれば、燃焼しない製品であることを説明する言葉だという主張になるのかもしれません。

しかし、医療者が注意しなければならないのは、その言葉を受け取る患者さんが、どのように理解するかです。

「煙がない」と聞くと、多くの人は「害が少なそう」と感じます。「紙巻きタバコではない」と聞くと、「もう喫煙者ではない」と感じる人もいます。「有害物質が少ない」と聞くと、「歯周病やインプラントには関係ない」と受け取る人もいるかもしれません。

ここに広告表現の危うさがあります。

医療では、「ある成分が少ない可能性がある」ということと、「病気のリスクがない」ということは、明確に分けて考えます。

仮に一部の有害物質が紙巻きタバコより少なかったとしても、それだけで「歯周病に影響しない」「インプラント治療に問題ない」「抜歯後の治癒に影響しない」とは言えません。短期的な成分データと、長期的な臨床結果は別の問題です。

これは歯科治療でも同じです。

レントゲンで小さく見える病変でも、長期的に進行することがあります。痛みが弱くても、根の先に炎症が残っていることがあります。出血が少なくても、喫煙者では炎症が見えにくくなっていることがあります。

表面上の見え方だけでは、医療判断はできません。

だからこそ、「煙が出ない」という言葉を、そのまま「安全」と読み替えてはいけないのです。

日本では、加熱式タバコはすでに珍しいものではありません

加熱式タバコの問題は、日本では特に重要です。

日本ではIQOS、glo、Ploomなどの加熱式タバコが急速に普及しました。加熱式タバコは、もはや一部の人だけが使う珍しい製品ではありません。

国内の喫煙実態を調べた研究では、2021年時点で、喫煙者のうち加熱式タバコを使用している人の割合が47.2%、電子タバコが16.5%と報告されています。また、紙巻きタバコ、加熱式タバコ、電子タバコなど、複数の製品を併用している喫煙者も32.8%いました。

さらに、加熱式タバコのブランドではIQOSが50.9%と報告されており、日本の加熱式タバコ市場においてIQOSが非常に大きな存在であることが分かります。

これは歯科医院にとっても重要です。

歯科医院で患者さんに「タバコは吸っていますか」と聞いたとき、患者さんが「吸っていません」と答える。ところが、詳しく聞くと「紙巻きはやめました。IQOSだけです」と言われる。

このような場面は、今後ますます増えていくはずです。

患者さんに悪気があるわけではありません。「紙巻きタバコをやめた」ことを「禁煙した」と感じている方もいます。「加熱式タバコはタバコとは少し違う」と感じている方もいます。

しかし、歯科医療ではその違いを曖昧にしてはいけません。

紙巻きタバコか、加熱式タバコか。加熱式タバコだけなのか、紙巻きとの併用なのか。1日にどのくらい使っているのか。禁煙したい気持ちはあるのか。

これらは、歯周病治療、抜歯、インプラント、メインテナンスを考える上で、重要な医療情報です。

【歯周病治療】

加熱式タバコは「禁煙への一歩」ではなく「吸い続ける逃げ道」になることがある

加熱式タバコを考えるとき、化学物質の話だけでは不十分です。むしろ、患者さんの心理を考えることが重要です。

紙巻きタバコを吸っている人の中には、少なからず後ろめたさがあります。

家族に嫌がられる。子どもの前で吸いにくい。職場で肩身が狭い。飲食店で吸えない。本当は身体に悪いと分かっている。歯医者でも注意されるかもしれない。

この「吸いにくさ」や「後ろめたさ」は、本来なら禁煙を考えるきっかけになることがあります。

ところが、そこで加熱式タバコが現れると、心理の流れが変わります。

「これならにおいが少ない」
「周りに迷惑をかけにくい」
「紙巻きよりはマシだろう」
「自分は健康に気をつけている方だ」
「完全にやめなくても、これで十分ではないか」

こうして、禁煙に向かうはずだった気持ちが、加熱式タバコによって一時停止してしまうことがあります。

日本の質的研究では、紙巻きタバコを使用していた喫煙者が加熱式タバコを習慣的に使うようになる過程が分析されています。その研究では、喫煙者が非喫煙者との人間関係や自身の健康への後ろめたさを抱える中で加熱式タバコに出合い、結果として「タバコを吸い続けるための逃げ道」になっていくプロセスが示されています。

さらに、加熱式タバコの使用によって、喫煙本数の増加や禁煙意識の低下が起きていたことも報告されています。

これは非常に重要な視点です。

加熱式タバコは、禁煙できない人を一時的に支える「途中段階」になる場合もあるかもしれません。しかし、現実には「禁煙に向かう途中」ではなく、「禁煙しなくてもよい理由」になってしまうことがあります。

歯科医療者が見るべきなのは、ここです。

紙巻きタバコから加熱式タバコに変えた。それで本当に禁煙に近づいているのか。それとも、吸い続ける生活を維持しやすくなっているのか。

この問いを避けてはいけません。

「紙巻きよりマシ」という言葉だけでは、歯科治療は守れません

加熱式タバコを使っている患者さんから、「紙巻きよりはマシですよね」と言われることがあります。

この言葉に対して、歯科医療者は慎重に答える必要があります。

たしかに、加熱式タバコと紙巻きタバコは同じものではありません。燃焼の有無、におい、発生する成分の量などに違いがあります。だからといって、「では歯科治療上は問題ありません」とは言えません。

歯科治療で私たちが気にしているのは、歯ぐきの炎症が落ち着くか、歯周ポケットが改善するか、歯ぐきからの出血が減るか、抜歯後に傷がきちんと治るか、インプラント周囲の組織が安定するか、メインテナンス中に再発しにくいか、口腔粘膜に異常が出ていないか、という臨床的な結果です。

一部の成分が少ない可能性があることと、これらの治療結果に影響しないことは同じではありません。

「紙巻きよりマシかもしれない」という言葉は、患者さんを安心させるには便利です。しかし、その安心が禁煙を遠ざけたり、治療上のリスクを過小評価させたりするなら、医療者としては注意が必要です。

歯科医療では、加熱式タバコを「安全な代用品」として扱うのではなく、あくまで「禁煙支援の対象」として扱うべきだと考えます。

歯科雑誌や医療者向け媒体に広告が入ることの問題

加熱式タバコの広告で問題になるのは、患者さん向けの宣伝だけではありません。

歯科医師や歯科衛生士など、医療者向けの媒体に広告やPR記事が入り込むこともあります。これは、一般向け広告とは別の意味で注意が必要です。

なぜなら、医療者向け媒体に掲載されると、情報に「専門性の雰囲気」が加わるからです。

歯科医師向けの媒体に載っている。歯周病治療に関するデータが紹介されている。歯の着色や歯肉細胞への影響が少ないように見える。学会や専門家の言葉と並んでいる。

こうなると、患者さんだけでなく、医療者側も「歯科領域でもある程度認められているのではないか」と受け取ってしまう可能性があります。

もちろん、研究そのものを否定する必要はありません。加熱式タバコの影響を調べる研究は必要です。問題は、その研究や広告をどう読むかです。

その研究は誰が行ったのか。資金提供や利益相反はどうなっているのか。非喫煙者との比較があるのか。紙巻きから完全に切り替えた人と、併用している人を分けているのか。観察期間は十分か。評価しているのは一時的な成分変化なのか、実際の歯周病の進行や歯の喪失なのか。インプラントや抜歯後の治癒といった臨床結果まで見ているのか。

こうした点を見ずに、「少ない」「低減」「安全そう」という表現だけを受け取るのは危険です。

医療者は、広告をそのまま読むのではなく、広告の裏側にある前提条件を読まなければなりません。

歯科医療者側にも、加熱式タバコへの理解が求められます

加熱式タバコの問題は、患者さんだけの問題ではありません。歯科医療者側にも、理解と対応が求められます。

香川県歯科衛生士会会員を対象にした調査では、解析対象187名のうち、臨床に従事する歯科衛生士の歯周病患者への禁煙支援実施率は50.9%でした。また、加熱式タバコに関する認識を正しく持っていた人は20.2%と報告されています。

もちろん、これは一地域の調査であり、全国の歯科衛生士全体をそのまま表すものではありません。また、調査時期や対象にも限界があります。

それでも、この結果は大切です。

歯科医院は、歯周病、口臭、抜歯、インプラント、予防歯科、メインテナンスなど、喫煙と深く関わる場面を日常的に扱っています。それにもかかわらず、医療者側が加熱式タバコを十分に理解していなければ、患者さんに適切な説明はできません。

「紙巻きではないなら大丈夫です」
「においが少ないなら問題ないでしょう」
「IQOSはタバコとは少し違いますね」

こうした曖昧な説明は、患者さんの誤解を強める可能性があります。

歯科医療者は、加熱式タバコもタバコ製品として問診に含めること。歯周病治療や外科処置、インプラント治療のリスク説明に反映すること。禁煙支援の対象として扱うこと。これらを、今後ますます意識する必要があります。

問診では「タバコを吸っていますか」だけでは足りない時代です

新型タバコ時代の歯科問診では、「タバコを吸っていますか」という一言だけでは不十分になりつつあります。

患者さんの中には、紙巻きタバコをやめた時点で「禁煙した」と考えている方がいます。加熱式タバコを使っていても、「これはタバコではない」「煙が出ないから喫煙には入らない」と感じている方もいます。

そのため、歯科医院側は、もう少し具体的に確認する必要があります。

紙巻きタバコは吸っているのか。IQOS、glo、Ploomなどの加熱式タバコは使っているのか。電子タバコやベイプは使っているのか。紙巻きと加熱式を併用しているのか。1日にどのくらい使っているのか。いつから使っているのか。禁煙したい気持ちはあるのか。

このように聞いてはじめて、治療上必要な情報が見えてきます。

患者さんにとっても、これは責められるための質問ではありません。

歯ぐきの治療を安全に進めるため。抜歯後の治癒を見込むため。インプラント治療のリスクを説明するため。メインテナンスの間隔を考えるため。口腔粘膜の変化を見逃さないため。

そのために必要な医療情報です。

歯周病・インプラント・抜歯では、特に申告してほしい

加熱式タバコを使用している方に、特に伝えたい場面があります。

歯周病治療を受けている方、歯ぐきから出血しやすい方、口臭が気になる方、インプラント治療を検討している方、抜歯や外科処置の予定がある方、口内炎や粘膜の違和感が治りにくい方、定期検診で歯ぐきの状態を見ている方。

これらの場面では、加熱式タバコの使用状況も必ず伝えてください。

予防歯科・定期検診

「紙巻きではないから言わなくてよい」と判断しないでください。

歯科医院は、患者さんを叱るために喫煙状況を聞いているわけではありません。より安全に治療を進め、できるだけ長く歯を残し、治療後の再発を防ぐために聞いています。

特に歯周病では、喫煙によって炎症の見え方が変わることがあります。抜歯やインプラントでは、治癒や感染リスクを考える必要があります。メインテナンスでは、再発リスクに応じて通院間隔を調整することもあります。

加熱式タバコであっても、治療計画に関わる情報であることに変わりはありません。

ハームリダクションという言葉を、歯科では慎重に扱うべきです

加熱式タバコの議論では、「ハームリダクション」という言葉が出てくることがあります。

ハームリダクションとは、完全にやめることが難しい行動について、まず害を減らす方向を考えるという考え方です。医療や公衆衛生の分野では、状況によって重要な考え方になることがあります。

しかし、加熱式タバコを歯科医療で扱う場合、この言葉は慎重に使う必要があります。

なぜなら、加熱式タバコが「禁煙までの途中段階」ではなく、「このままでよい」という到達点になってしまうことがあるからです。

紙巻きタバコから加熱式タバコに変えた。においが少なくなった。家族に注意されにくくなった。喫煙場所を見つけやすくなった。紙巻きよりは健康に気をつけている気がする。だから禁煙しなくてもよい。

この流れになってしまうと、歯科医療者が目指すべき禁煙支援から遠ざかります。

もちろん、禁煙は簡単ではありません。依存の問題もありますし、生活習慣、ストレス、職場環境、家族関係なども関わります。だからこそ、患者さんを責めるだけの禁煙指導はうまくいきません。

しかし、患者さんに寄り添うことと、加熱式タバコを安全な代用品のように扱うことは違います。

歯科医療の立場では、「紙巻きよりマシかもしれない」という地点で止めるのではなく、最終的にはニコチンを含むタバコ製品から離れる方向を支援する必要があります。

電子タバコも「身体によいもの」ではありません

ここまで、主にIQOSなどの加熱式タバコについて述べてきました。

ただし、電子タバコについても、「身体によいもの」と考えるべきではありません。

加熱式タバコと電子タバコは、仕組みも法的な位置づけも異なります。加熱式タバコはタバコ葉を加熱する製品であり、電子タバコはリキッドを加熱してエアロゾルを吸引する製品です。そのため、今回の記事では両者を混同しないよう、主に加熱式タバコを中心に扱いました。

しかし、電子タバコであっても、吸い込むものが単なる水蒸気になるわけではありません。製品や使用条件によっては、有害化合物の発生が問題になります。また、海外では電子タバコ・ベイプに関連した肺障害が大きな問題になったこともあります。

電子タバコについては、加熱式タバコとは別に整理すべき点が多いため、別の機会に改めて詳しく解説したいと思います。

大切なのは、「紙巻きタバコではないから安全」「煙が少ないから健康的」と短絡的に考えないことです。歯科医療の立場では、加熱式タバコであっても、電子タバコであっても、使用している場合は問診で伝えていただくことが大切です。

広告の言葉ではなく、患者さんの未来を見る

今回のフィリップ・モリス制裁のニュースは、海外の一企業の問題として片づけるべきではありません。

「煙が出ない」「スモークフリー」「有害物質が少ない」「においが少ない」「紙巻きではない」。こうした言葉は、患者さんの判断に影響します。そして、ときには医療者の判断にも影響します。

しかし、歯科医療者が見るべきものは、広告の言葉ではありません。

その患者さんの歯ぐきは安定しているのか。歯周病は進行していないか。抜歯後にきちんと治る状態か。インプラントを長く維持できる環境か。口腔粘膜に変化はないか。口臭や出血は改善しているか。そして、ニコチン依存から少しでも離れる方向に進めているか。

そこを見る必要があります。

医療者が企業広告の言葉をそのまま患者さんに渡してしまえば、患者さんの健康判断を誤らせる可能性があります。

逆に、医療者が情報を整理し、「ここまでは分かっている」「ここから先はまだ分かっていない」「だから安全とは言えない」と伝えることができれば、患者さんはより良い選択をしやすくなります。

終わりに:IQOSも、歯科ではきちんと伝えてください

IQOSなどの加熱式タバコは、紙巻きタバコとまったく同じものではありません。

しかし、「同じではない」ことと、「安全である」ことは違います。「煙が出ない」ことと、「歯ぐきに影響しない」ことも違います。「有害物質が少ない可能性がある」ことと、「禁煙しなくてよい」ことも違います。

歯科医療では、加熱式タバコも重要な喫煙情報です。

歯周病治療、抜歯、インプラント、口腔粘膜の異常、口臭、歯ぐきの出血がある方は、紙巻きタバコだけでなく、加熱式タバコの使用についても歯科医院で伝えてください。

ブランデンタルクリニックでは、患者さんを責めるためではなく、より安全で長持ちする治療につなげるために、生活習慣や喫煙状況も含めてお口の状態を確認しています。

【ネットや広告の医療情報に惑わされないために】

「煙が出ないから大丈夫」ではなく、「煙が見えにくくても、歯科治療に関わるリスクは残る」。

この理解が、歯と歯ぐき、そして全身の健康を守る第一歩になります。

参考文献

Reuters. Italy fines Philip Morris €7 million over ‘smoke-free’ marketing claims. 2026.

Philip Morris International. IQOS explained.

田淵貴大. 新型タバコ時代の禁煙支援. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2024;32(2):138-142.

宮田瑠里子, 尾﨑伊都子, 門間晶子. 喫煙者が加熱式タバコを「タバコを吸い続けるための逃げ道」とするプロセス. 日本看護研究学会雑誌. 2022;45(5):937-950.

渡邊千花ほか. 香川県歯科衛生士会会員の加熱式タバコを含めた喫煙状況や禁煙支援に対する意識に関する調査. 日本禁煙学会雑誌. 2025;20(3):44-50.

滝野出海, 本宮淳弘, 中井里史. 加熱式たばこ・電子たばこの喫煙実態・変遷に関する研究. 室内環境. 2023;26(3):181-194.

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