2026年9月04日

(受付さんの備忘録)

はじめに
「睡眠時無呼吸のマウスピースを作りたいのですが、予約できますか?」
受付にいると、このようなお問い合わせをいただくことがあります。
「病院で睡眠時無呼吸と言われました」
「CPAPが合わなくて、マウスピースを勧められました」
「睡眠検査の結果は持っていますが、紹介状はありません」
「紹介状はあるのですが、検査結果の紙が必要なのか分かりません」
「何年か前に睡眠時無呼吸と診断されたのですが、そのときの検査結果でも大丈夫ですか?」
睡眠時無呼吸に使うマウスピースは、歯科で作る装置です。それなら、「最初から歯医者へ行って歯型を取ればいいのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
ところが、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する口腔内装置、いわゆるOA(oral appliance)は、一般的な歯ぎしり用マウスピースのように「歯型を取って装置を作ったら終わり」という治療ではありません。
医科で睡眠中の呼吸状態を調べ、睡眠時無呼吸の診断や治療方針を整理する。その情報を歯科へつなぎ、歯科では歯・歯ぐき・顎関節・噛み合わせなどを診て、口腔内装置を安全に使えるかを確認します。
装置を作製した後も、下あごを前へ出す位置を調整し、医科で治療効果を客観的に確認するための再検査につなげます。その結果によっては、さらに歯科で調整や長期管理を行います。
つまり、睡眠時無呼吸のマウスピース治療は、「医科で調べる→歯科で作る→医科で効き目を確かめる→歯科で管理する」という連携の中で行う治療です。
紹介状や睡眠検査の情報には、その「治療のバトン」をつなぐ意味があります。
睡眠時無呼吸のマウスピースは「歯型を取って作るだけ」ではありません
まず、「マウスピース」という言葉から整理してみましょう。
歯医者で使われるマウスピースには、歯ぎしり・食いしばりから歯や修復物を守るナイトガード、スポーツ用マウスガード、矯正治療のアライナー、顎関節治療用の装置など、さまざまな種類があります。
睡眠時無呼吸に対する口腔内装置も見た目は「マウスピース」に見えますが、目的も使い方も同じではありません。
歯ぎしり用ナイトガードとは目的が違います
睡眠時無呼吸に使われる代表的な口腔内装置は、下あごを前方へ移動させた位置で保持するタイプです。
下あごを前へ移動させることで、舌や周囲の軟組織も前方へ移動しやすくなり、睡眠中に狭くなる上気道を広げる方向へ働くことを利用します。
一方、一般的な歯ぎしり用ナイトガードは、歯や修復物への負担を管理する目的などで使用するもので、睡眠時無呼吸を治療するために下あごを前方へ保持する装置ではありません。
睡眠時ブラキシズムの診断とナイトガードで守れるもの・守れないものでも詳しく解説していますが、「寝るときに入れるマウスピースならどれも同じ」というわけではありません。
市販の「いびき用マウスピース」とも分けて考えます
いびきと閉塞性睡眠時無呼吸も、同じものではありません。
いびきをかく方すべてが睡眠時無呼吸とは限りませんし、反対に睡眠時無呼吸があっても、ご本人が無呼吸や重症度を自覚していないことがあります。
そのため、「いびきがあるから市販のマウスピースを使ってみよう」と自己判断することと、睡眠時無呼吸という病気に対して口腔内装置治療を行うことは分けて考える必要があります。
睡眠時のマウステーピングといびき・睡眠時無呼吸の関係についても別記事で解説しています。
なぜ最初に医科で睡眠時無呼吸を調べるの?
「歯医者でマウスピースを作るのに、なぜ病院の検査が必要なの?」
ここが最も分かりにくいところかもしれません。
歯科診療をきっかけに、いびき、日中の眠気、顎顔面の特徴などから睡眠呼吸障害を疑うことはできます。しかし、口の中を診察しただけでは、睡眠中に呼吸がどの程度止まっているのか、酸素状態はどうなのか、現在どの程度の睡眠呼吸障害があるのかまでは分かりません。
いびきの大きさだけでは重症度は分かりません
睡眠時無呼吸では、大きないびき、家族からの呼吸停止の指摘、日中の眠気、起床時の頭痛、熟睡感の乏しさなどが手がかりになることがあります。
ただし、「いびきが大きいから重症」「日中眠くないから軽症」「痩せているから睡眠時無呼吸ではない」とは限りません。
そこで必要になるのが、睡眠中の呼吸を客観的に評価する検査です。
簡易睡眠検査とPSGでは調べられる内容が違います
睡眠時無呼吸の検査では、ご自宅などで行う簡易睡眠検査と、より詳しく睡眠状態を調べるPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)などがあります。
簡易睡眠検査では、呼吸、血中酸素飽和度、心拍、いびき、体位などを記録する機器があります。
一方、PSGでは呼吸や酸素飽和度だけでなく、脳波、眼球運動、筋電図なども記録し、実際に眠っていた時間や睡眠状態をより詳しく評価します。
AHIとREIは「ただの点数」ではありません
睡眠検査を受けたことがある方は、「AHIが○回でした」「REIが○回でした」と説明されたことがあるかもしれません。
AHIは、実際の睡眠時間1時間あたりに無呼吸や低呼吸が何回起こったかを見る代表的な指標です。
一方、脳波を測定しない簡易検査では、実際に眠っていた時間をPSGと同じ方法では測れないため、記録時間などをもとにREIという指標を用いることがあります。
そのため、歯科で検査結果を確認するときも、「数字がいくつだったか」だけでなく、「どのような検査で得られた数字なのか」を見ることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群とスリープスプリント(口腔内装置)の仕組みについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
「診断書が必要」と聞いたけど、本当に診断書なの?
患者さんとの会話では、「病院から診断書をもらって歯医者へ持って行けばいいですか?」という質問を受けることがあります。
ここは、「診断書」「紹介状」「診療情報提供書」「睡眠検査結果」が混同されやすいところです。
保険のOAで重要なのは、医師からの診療情報提供に基づく治療依頼です
2026年度の歯科診療報酬では、睡眠時無呼吸症候群に対する保険の口腔内装置は、医科の保険医療機関または医科歯科併設の保険医療機関の担当科医師からの診療情報提供に基づく、口腔内装置治療の依頼を受けた場合に限り算定する仕組みになっています。
医科歯科併設の病院の場合も、確定診断が可能な担当科医師からの情報提供に基づく院内紹介が必要とされています。
つまり、制度上のポイントは、「睡眠時無呼吸と書かれた診断書を患者さんが持ってくればよい」ということではありません。
患者さんからは一般に「紹介状」と呼ばれることが多いのですが、医師から歯科へ診療情報が共有され、睡眠時無呼吸に対する口腔内装置治療の依頼がつながっていることが重要です。
紹介状は「病名を証明する紙」だけではありません
歯科側では、診断名だけでなく、どのような睡眠検査を受けたのか、検査を受けた時期、AHIやREIなどの結果、現在行っている治療、CPAPの使用状況など、OA治療を考えるために必要な情報を確認します。
日本睡眠歯科学会も、医科から歯科、歯科から医科へ情報をつなぐための「睡眠歯科医療連携用診療情報提供書」のテンプレートを公開しています。
紹介状は、受付で確認して終わる事務書類というより、医科と歯科が同じ患者さんを一緒に診ていくための医療情報なのです。
睡眠検査結果の紙も必ず必要なの?
ここは、紹介状と睡眠検査結果を分けて考えます。
2026年度の保険算定要件で中心となるのは、医師からの診療情報提供に基づく口腔内装置治療の依頼です。
したがって、「睡眠検査結果の別紙を患者さんが必ず持参しなければ、絶対に保険診療ができない」と単純に言い切るものではありません。
診療情報提供書の中に、睡眠検査の種類や結果など必要な情報が記載されている場合もあります。
一方で、睡眠検査の結果そのものは、実際のOA治療を考えるうえで非常に重要な情報です。
治療前の「基準値」になるからです
たとえば、OAを使う前のAHIやREIがどの程度だったのか分からなければ、装置を使い始めた後に再検査しても、「どのくらい変化したのか」を比較しにくくなります。
また、検査では呼吸イベントの回数だけでなく、酸素状態、体位との関係など、治療方針を考える参考になる情報が得られることがあります。
睡眠検査結果は、単なる「睡眠時無呼吸と診断された証明」ではなく、治療前の状態を記録した大切な基準でもあります。
数年前の睡眠検査結果でも使える?
「5年前に睡眠時無呼吸と言われたのですが、そのときの結果があります」というケースもあります。
古い検査だからといって、患者さん自身で「もう使えない」と判断して捨てる必要はありません。手元に残っていれば、受診時にお持ちください。
ただし、睡眠時無呼吸の状態はずっと一定とは限りません。
- その後、体重が大きく変化した
- 年齢を重ねた
- 鼻や喉の病気・手術などがあった
- 症状が以前と変わった
- CPAPなど治療内容が変わった
このような場合には、昔の検査結果と現在の状態が一致していない可能性があります。
そのため、検査がかなり前のものである場合には、現在の状態を確認するために医師が再検査を検討することがあります。
「○年以上経った結果は無効」という一律の期限を患者さん側で決めるのではなく、いつ検査したのか、その後何が変わったのかを伝えることが大切です。
紹介状があれば、その日にマウスピースを作り始められる?
ここも受付で誤解されやすいところです。
医師から口腔内装置治療の依頼があったからといって、必ずその日に型取りまで進められるとは限りません。
医科では睡眠中の呼吸状態や全身状態を評価します。一方、歯科では、その装置を実際に歯や顎で支え、安全に長期間使用できるかを確認します。
歯・歯ぐき・顎関節・顎の動きを確認します
睡眠時無呼吸用OAは、毎晩何時間も装着し、下あごを普段より前へ移動させた状態で使用します。
そのため歯科では、たとえば次のような点を確認します。
- 残っている歯の状態
- 虫歯の有無
- 歯周病や歯の動揺
- 被せ物・ブリッジ・インプラントなどの状態
- 現在の噛み合わせ
- 顎関節や咀嚼筋の状態
- 口をどのくらい開けられるか
- 下あごをどのくらい前へ動かせるか
虫歯や歯周病の治療を先に行うこともあります
たとえば、OAを支える歯に大きな虫歯がある、歯が強く動揺している、進行した歯周病があるなどの場合には、先に必要な歯科治療を行った方がよいことがあります。
紹介状を持っていることと、その日にOA製作を開始できることは別なのです。
顎関節の状態も大切です
OAは下あごを前へ移動させて使用するため、顎関節や顎周囲の筋肉の状態も確認します。
もともと顎が強く痛む、口が開きにくい、下あごを前へ動かしにくいなどの問題がある場合には、先に顎関節の診査や治療を考えることがあります。
顎の痛みや開口障害がある方は、顎の関節が鳴る・痛い・口を開けにくいときの顎関節症についても参考にしてください。

なぜOAを作る前に噛み合わせを記録するの?
睡眠時無呼吸のOAでは、治療を始める前の噛み合わせを記録しておくことも大切です。
たとえば、前歯の前後・上下の重なり、どの歯が接触しているか、開口量などです。
なぜなら、OAは長期間にわたり、歯列や顎に一定の力を加える装置だからです。
治療前の状態を記録していなければ、数か月後や数年後に噛み合わせが変化したとき、「以前からこの状態だったのか」「OA使用後に変化したのか」を比較しにくくなります。
睡眠時無呼吸のマウスピースは、一度作れば完成?
ここからが、一般的な「マウスピースを作る」というイメージと大きく違うところです。
OAは、完成した装置を受け取った瞬間に治療が完了するわけではありません。
下あごを前へ出す位置を調整します
下あごは、前へ出せば出すほど必ず良いというものではありません。
前方へ移動させることで上気道を広げる効果を期待する一方、歯や顎関節、筋肉への負担も考える必要があります。
そのため、装着後は、毎晩使えているか、歯や顎に痛みがないか、いびきや日中の眠気がどう変化したか、噛み合わせに変化がないかなどを確認しながら、必要に応じて下あごを前へ出す位置を調整します。
この下あごの位置を段階的に調整することを「タイトレーション」と呼ぶことがあります。本記事では、ここからは分かりやすく「調整」と表現します。
「いびきが止まった」だけで治ったと判断しない理由
OAを使い始めて、「家族にいびきが静かになったと言われた」「朝すっきり起きられるようになった」という変化があれば、良い兆候の一つかもしれません。
しかし、それだけで睡眠時無呼吸が十分改善したと判断することはできません。
睡眠時無呼吸は眠っている間に起きています。ご本人は無呼吸そのものを認識できないことが多く、いびきが減っても呼吸イベントや低酸素が残っている可能性があります。
反対に、自覚症状だけでは分かりにくい改善が、睡眠検査では確認できることもあります。
そのため、OAを実際に使用した状態で、睡眠中の呼吸がどの程度改善したかを客観的に確認することが重要です。
なぜマウスピースを作った後、もう一度医科へ戻るの?
睡眠時無呼吸のOA治療を理解するとき、ここがとても大切です。
治療は「医科から歯科への一方通行」ではありません。

医科で治療前の状態を調べる
睡眠検査を行い、睡眠時無呼吸の状態を評価します。その情報をもとに、口腔内装置治療が検討される場合には歯科へ情報がつながります。
歯科でOAを作り、調整する
歯・歯周組織・顎関節・噛み合わせなどを診査し、口腔内装置を使える条件を確認してから作製します。装着後は、必要に応じて下あごの位置を調整します。
OAをつけた状態で治療効果を確認する
OAを継続して使用でき、症状や口腔内の状態が安定してきたら、紹介元の医療機関などで治療効果を客観的に評価するための睡眠検査につなげます。
結果によっては、さらに歯科で調整する
再検査で十分な効果が得られていない場合には、下あごの位置をさらに調整できるかを歯科で検討することがあります。
一方、歯や顎への負担が大きい場合や、OAでは十分な効果が得られない場合には、医師と相談して別の治療法を検討することもあります。
この往復まで含めて、睡眠時無呼吸のOA治療なのです。
実は一番途切れやすいのは「マウスピースを受け取った後」です
受付として特に覚えておきたいのが、この点です。
OAを受け取るまでは、「睡眠時無呼吸を治療したい」という目的がはっきりしています。
ところが、装置を使い始めて「いびきが減った」「よく眠れるようになった」「とりあえず毎晩使えている」と感じると、もう治療が終わったように思ってしまうことがあります。
その結果、「もう一度病院で検査を受けなくてもいいかな」「特に困っていないから歯医者にも行かなくていいかな」となり、医科と歯科の連携が途中で途切れてしまうことがあります。
国内の実臨床研究でも、OA治療では再評価や継続通院から患者さんが離れてしまうことが課題として報告されています。
マウスピースを受け取った日が、治療のゴールではありません。
「使えているか」「本当に効いているか」「歯や顎に問題が起きていないか」まで確認していくことが重要です。
長く使うなら、歯並びや噛み合わせのチェックも必要です
OAの副作用というと、最初の数日間の違和感だけを想像するかもしれません。
実際には、使い始めの時期に起こりやすい症状と、長期間使用した後に確認される変化は分けて考える必要があります。
最初の時期に起こることがある症状
- 歯が締めつけられる感じ
- 顎や筋肉の違和感
- 唾液が増える
- 口が乾く
- 朝、噛み合わせがいつもと違う感じがする
症状の強さや続く時間によっては、装置や下あごの位置の調整が必要です。
数か月・数年後に出てくる変化もあります
OAを長期間使用すると、下あごを前方へ保持する力を歯列で支えるため、歯や噛み合わせに変化が生じることがあります。
国内でOAを2年以上使用した成人男性20人を調べた研究では、平均約3年8か月の使用後に、前歯の傾きや、前歯の前後・上下の重なりに変化が認められました。
ただし、この研究は20人の成人男性を対象としたものであり、装置の設計や歯並び、歯周組織、使用期間、下あごの前方移動量などによって個人差があります。
「OAを使えば誰でも同じだけ歯が動く」という意味ではありません。
大切なのは、最初に痛くなかったから、その後何年間も歯科で確認しなくてよい装置ではないということです。
自費なら紹介状なしで歯医者だけで作れる?
ここも保険診療と病気そのものの診療を分けて考える必要があります。
医師からの診療情報提供に基づく口腔内装置治療の依頼という要件は、日本で睡眠時無呼吸症候群に対するOAを保険診療として算定する際のルールです。
したがって、「世の中のすべてのいびき用装置は、紹介状がなければ歯科で一切作れない」という意味ではありません。
しかし反対に、「自費なら睡眠検査や医科での評価を飛ばし、歯医者だけで睡眠時無呼吸の治療を完結させてよい」という意味でもありません。
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、病気そのものを適切に評価し、OAを使用した後には治療効果を客観的に確認することが重要です。
保険診療と自費診療の違いについては、保険診療と自費診療はいつ説明される?受付でできること・診察後に決まることも参考にしてください。
予約するときに伝えていただくとスムーズなこと
睡眠時無呼吸のマウスピースについて歯科へ相談するときは、すべての情報が完全にそろっていなくても構いません。
まずは、分かる範囲で現在の状況を伝えてください。
受付で確認しやすいのは、次のような内容です。
- すでに睡眠時無呼吸と診断されているか
- 医師から口腔内装置・マウスピース治療を勧められているか
- 診療情報提供書・紹介状を持っているか
- 睡眠検査結果を持っているか
- いつごろ、どのような睡眠検査を受けたか
- CPAPを現在使用しているか、以前使用したことがあるか
- 虫歯・歯周病・顎関節症など現在治療中の歯科疾患があるか
- 以前、睡眠時無呼吸用OAを作ったことがあるか

「紹介状がないから予約できないだろう」「検査結果の紙をなくしたから相談できないだろう」と自己判断して、相談そのものを諦める必要はありません。
現在どこまで検査や診断が進んでいるのかを伝えていただければ、次に何を確認する必要があるのか整理しやすくなります。
よくある質問
Q. 睡眠検査結果はあるけど、紹介状がありません
睡眠検査を受けた結果だけ手元にあり、「睡眠時無呼吸でした」と説明されたものの、歯科への診療情報提供書やOA治療依頼を受け取っていないケースです。
保険で睡眠時無呼吸症候群に対するOAを作製する場合には、医師からの診療情報提供に基づく口腔内装置治療の依頼が必要です。
そのため、検査を受けた医療機関へ確認が必要になる場合があります。
ただし、患者さん自身には、手元の書類が診療情報提供書なのか、単なる検査結果なのか分かりにくいこともあります。お持ちの書類を確認したうえで、まず歯科へ現在の状況を伝えてください。
Q. 紹介状はあるけど、睡眠検査結果の紙がありません
診療情報提供書の中に、睡眠検査の種類やAHI・REIなど必要な情報が記載されている場合があります。
そのため、「検査結果の別紙がない=絶対に受診できない」と自己判断する必要はありません。
予約時に「紹介状は持っていますが、検査結果の別紙があるか分かりません」と伝えてください。
Q. 数年前に睡眠時無呼吸と診断されましたが、最近は病院へ行っていません
以前の検査結果が残っていれば持参し、いつ診断されたか、どこで検査したか、以前CPAPやOAを使用していたか、現在の症状がどう変化しているかを分かる範囲で伝えてください。
何年も前の検査結果だけをもとに、現在の治療方針をそのまま決められるとは限りません。現在の状態を改めて医科で評価する必要がある場合があります。
Q. CPAPが苦手なので、すぐマウスピースへ変えたいです
CPAPのマスクや空気圧が合いにくい、出張や旅行で使いにくい、眠っている間に外してしまうなどの理由から、OAを希望される方もいます。
実際に、CPAPを継続しにくい患者さんでOAが治療選択肢になることがあります。
ただし、現在CPAP治療を受けている方が、自己判断でCPAPを中止してOAへ切り替えることは避けてください。
現在CPAPを管理している医師へ「口腔内装置も検討したい」と相談し、現在の睡眠検査結果や全身状態も含めて治療方針を検討してもらうことが大切です。
Q. いびきだけですが、睡眠時無呼吸用のマウスピースを作れますか?
歯科での問診や口腔・顎顔面の所見から、睡眠時無呼吸を疑うきっかけを見つけることはできます。
しかし、いびきだけから「単純ないびきなのか、睡眠時無呼吸があるのか」を確定することはできません。
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、睡眠検査に対応する医療機関で呼吸状態を評価してもらうことが重要です。
Q. 他院で作った睡眠時無呼吸用マウスピースを作り直したいです
以前作ったOAが割れた、合わなくなった、外れやすくなった、歯科治療後に歯の形が変わったなどで作り直しを希望することもあります。
この場合も、単に古い装置をそのまま新しくコピーすればよいとは限りません。
現在の歯や噛み合わせの状態に加えて、そのOAが睡眠時無呼吸にどの程度効いていたのか、現在の睡眠呼吸状態はどうなのかも重要です。
使用中または以前使用していたOAが残っていれば、受診時に持参してください。以前の睡眠検査結果や治療経過が分かる資料があれば、それらも役立ちます。
Q. 睡眠時無呼吸は何科で調べるの?
睡眠時無呼吸を診療している医療機関は、「睡眠科」という名前だけではありません。
実際の医科歯科連携では、睡眠専門外来、睡眠時無呼吸専門クリニック、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、一般内科、循環器内科など、さまざまな医療機関から歯科へ患者さんが紹介されています。
大切なのは診療科名だけを見ることではなく、睡眠時無呼吸の診察や必要な睡眠検査に対応している医療機関かを確認することです。
受付は「診断する場所」ではなく、治療の情報をつなぐ場所です
受付で、「私のAHIならマウスピースで治りますか?」「この紹介状なら絶対に保険で作れますか?」「CPAPよりOAの方が私には合いますよね?」と聞かれることがあります。
ただ、これらは受付だけで判断できる内容ではありません。
保険診療と自費診療はいつ説明される?受付でできること・診察後に決まることでもお話ししたように、受付の役割は診断や治療方法を決定することではなく、患者さんが持っている情報や困っていることを診療室へ正しくつなぐことです。
睡眠時無呼吸のOA治療では、それに加えて、医科から受け取った情報を歯科へつなぎ、歯科での治療経過を再び医科へつなぐ役割があります。
紹介状、睡眠検査結果、現在のCPAP使用状況、OA装着後の経過、再検査結果。
一つ一つは書類や数字に見えますが、すべて治療を途中で切らさないための情報です。
睡眠時無呼吸のマウスピースは「医科と歯科で一緒に行う治療」です
睡眠時無呼吸のマウスピースについて、「どうして歯医者だけで作れないの?」という疑問への答えは、医科と歯科で確認する内容が違うからです。
睡眠中に呼吸がどの程度乱れているのか、酸素状態はどうなのか、どのような治療方針を考えるのか。ここでは医科での評価が重要です。
一方、その口腔内装置を支えられる歯があるか、歯周病や虫歯はないか、顎関節は大丈夫か、下あごを安全に前へ動かせるか、長期間使って噛み合わせが変わっていないか。ここは歯科が確認します。
そして装置を作った後には、再び睡眠検査で治療効果を客観的に確認し、その結果を歯科での調整や維持管理へつなげていきます。
医科で診断・評価すること。歯科で口腔内装置を作ること。医科で効果を確かめること。歯科で長く安全に使えるよう管理すること。
この流れ全体が、睡眠時無呼吸に対する口腔内装置治療です。
紹介状は「歯医者へ入るための許可証」ではありません。
睡眠検査結果も「病名を証明する紙」だけではありません。
どちらも、医科と歯科が同じ患者さんを安全に診ていくための大切な情報です。
ブランデンタルクリニックは広島市中区立町、立町駅から徒歩1分の立町中央ビル4階にあり、エレベーターでお越しいただけます。
睡眠時無呼吸の口腔内装置について相談したい方は、WEB・LINE・電話からご予約ください。紹介状や睡眠検査結果をお持ちの場合は、予約時にその旨を伝えていただくと確認がスムーズです。
書類がそろっているか分からない場合も、分かる範囲で現在の状況をお伝えください。
なお、睡眠時無呼吸のOA相談そのものは通常の予約診療ですが、同時に強い歯の痛みや腫れ、装置の破損で口腔内を傷つけているなど急な歯科症状がある場合には、当日電話受付・急患の同日相談にも対応しています。
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度 歯科診療報酬点数表に関する事項.I017-1-2 睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置.
- 厚生労働省.令和8年度 歯科診療報酬点数表.I017-1-2 睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置.
- 日本睡眠歯科学会.医療従事者の皆様へ/診療ガイドライン・睡眠歯科医療連携用診療情報提供書.
- 渡辺崇文,槙原絵理,八木まゆみ,大楠弘通,李宙垣,有田正博.睡眠時無呼吸患者に対するOA治療における医科歯科連携と技工指示の重要なポイント.日本補綴歯科学会誌.2024;16:34-39.
- 槙原絵理.閉塞性睡眠時無呼吸患者への口腔内装置療法における多職種連携について.九州歯科学会雑誌.2024;78(4):RV00005.
- 吉田智美,竹山雅規,網谷季莉子ほか.口腔内装置(OA)の長期使用によって閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者で生じる形態学的副作用とその予測についての側面頭部エックス線規格写真を用いた研究.睡眠口腔医学.2023;10(1):16-24.
- 奥野健太郎,眞砂彩子,王麗欽ほか.大阪歯科大学附属病院睡眠歯科センターにおける医科歯科連携の臨床統計的検討.歯科医学.2024;87(2):116-120.
- 柳本惣市.睡眠呼吸障害における口腔内装置による治療の役割.睡眠口腔医学.2022;8(3):52-55.
- Ramar K, Dort LC, Katz SG, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy. J Clin Sleep Med. 2015;11(7):773-827.
